シャープ機は複素数機能が使いづらい
本日のツイート
この方が指摘する通り、シャープの関数電卓は複素数機能が使いづらいことは確か。
今回は各社関数電卓の複素数機能を見てみる。
キー操作を表にまとめる
各機種で複素数に関する文字や関数を呼び出すキー操作がどうなっているか、表にまとめた。
文字・関数 | カシオ CW |
カシオ EX |
キヤノン | カシオ ES |
シャープ |
---|---|---|---|---|---|
$i$ | [SHIFT][9] | [ENG] | [ENG] | [ENG] | [D°M′S] |
∠ | [CATALOG][→][↓][OK] | [SHIFT][ENG] | [∫] | [SHIFT][(-)] | [2ndF][,] |
絶対値 | [CATALOG][↓][↓][↓][→][↓][↓][OK] | [SHIFT][(] | [Abs] | [SHIFT][hyp] | [2ndF][(-)] |
偏角(arg) | [CATALOG][→][↓][↓][OK] | [OPTN]1 | [Apps]3 | [SHIFT][2]1 | [MATH]1 |
共役複素数(conjg) | [CATALOG][→][↓][↓][OK] | [OPTN]2 | [Apps]4 | [SHIFT][2]2 | [MATH]0 |
実部抽出(real) | [CATALOG][→][⇓][↓][↓][OK] | [OPTN]3 | [Apps]5 | - | [MATH]2 |
虚部抽出(imag) | [CATALOG][→][⇓][↓][↓][↓][OK] | [OPTN]4 | [Apps]6 | - | [MATH]3 |
▶r∠θ | [FORMAT][↓][↓][↓][OK] | [OPTN][↓]1 | [Apps]1 | [SHIFT][2]3 | ([2ndF][8]) |
▶a+b$i$ | [FORMAT][↓][↓][OK] | [OPTN][↓]2 | [Apps]2 | [SHIFT][2]4 | ([2ndF][9]) |
キヤノンF-789SGの使いやすさが際立っている。$i$も∠も絶対値もシフト無しで入力可。関数は全て[Apps]キーに集約されている。
次点が初代ClassWiz(EX)。∠がシフト側だが、$i$の裏に割り当てているのでこちらもわかりやすい。関数は全て[OPTN]キー内。
シャープ機も似たような割り当てとなっている。∠は$i$と隣接したキーの[2ndF]側、関数は[MATH]キー。ただし、絶対値は開き括弧が付かないため、手動で括弧を入れる必要がある。また、極座標・直交座標変換は式内関数がなく、表示モードの切替キーのみとなっていることに注意が必要である。
カシオESは[OPTN]キーがないため、複素数メニューが[SHIFT][2](CMPLX)に割り当てられている。また、ES機には実部抽出・虚部抽出機能がない。これらの機能を使いたい場合、別の機種が良いだろう。
上記機種と比較すると、ClassWiz CWは煩雑なキー操作が必要である。$i$すらシフトが必要であり、∠に至ってはメニューの奥深くに埋もれている。∠を多用する複素数計算をするなら、ClassWiz CWは絶対に勧めない。
(なお、中国版のfx-991/999CN CWに限り∠が[SHIFT][8]に割り当てられており、そのクローンであるdeli D999/992CN Proも同一キーに∠が割り当てられている。次期CW機で他地域の機種も同様のキー割当とするか注目である。)
複素数計算がしづらいClassWiz CWを発売し、複素数計算のキー操作が容易な初代ClassWiz(EX)を販売終了にしたカシオの愚行。しかもカシオ機で代替となるESシリーズには実部抽出・虚部抽出機能が無い。
ますますEXと同じ操作体系を持つEXクローン機を勧めたくなってしまう。
シャープ機はMメモリしか使えない
シャープ機の複素数機能の弱点はメモリ機能である。
カシオ・キヤノンが全ての文字メモリを使えるのに対し、シャープ機はMメモリしか使えない。このため、複数の値をメモリに入れて演算させることが不可能である。前述の方が使いづらいと言及した理由はおそらくこのメモリ機能の件ではなかろうか。
また、シャープ機で複素数計算を行うと答は必ず小数に変換され、ルートを含む式では表示できない。
説明書を確認し、できれば実機を操作してから購入したい
前述の方にはF-789SGも候補として勧めたが、古い機種のため気が進まないようだった。
しかし、新しい機種が必ずしもよいとは限らない。CWのような特定用途には非常に使いづらい製品も世に出てしまう。
今回のように、複素数計算を多用するなど主たる用途がはっきりしている場合、まずは各機種の製品画像ならびに説明書をダウンロードし(国内現行機種は全てWebから入手可能)、該当機能の操作について確認してほしい。たいていの説明書には具体的なキー操作が書いてあるため、イメージしやすいだろう。
ただし、シャープ機が複素数機能で文字メモリを使えない件はメモリ機能のところで言及されている。該当機能以外の部分にも注意点が書かれている場合があるので、できれば説明書をくまなく読むことを勧める(多くのPDF説明書は文字検索が可能であるため活用したい)。
購入前に実機を試す機会があればさらに望ましい。
シャープ機やキヤノン機はプラスチックパッケージのためパッケージの上から操作を試すことができ、さらにシャープ機は海外モデルのPCエミュレータが無料公開されているため購入前の確認がしやすい。
カシオ機は紙箱包装になったため、残念ながらパッケージの上から操作を試すことができなくなってしまった。家電量販店の店舗によっては展示品を用意しているところもあるため、そうした場所等で操作を試すとよいだろう。