F-715SAとfx-290Aを比較する
電卓の日企画:関数電卓(1行機)あれこれ(おまけあり)に続いて、今回は2行機について徹底比較をしてみる。
現行の機種はキヤノンF-715SA/F-715SG(色違いで機能は同一、以下F-715SAで記述)とカシオfx-290Aの2つのみである。そして面白いくらい両者の特徴が異なる。その特徴を踏まえて一方を選び購入されたい。
実売価格はそれほど変わらない(今回通販ストア経由で購入したが、20円だけF-715SAの方が高かった)が、fx-290Aの方が多く流通し、入手しやすいと思われる。アマゾンではF-715SA/F-715SGがしばらく品切となっている。
表示部
まずはF-715SAとfx-290Aの外観を確認しよう。同じ大きさに見えるようサイズを調整しているが、実際はfx-290Aの方がわずかに小さい。
1行目に注目。fx-290Aが縦6ドットに対してF-715SAは縦7ドット。1ドットの違いだが、自然な文字の形となるため見やすく感じる人もいるだろう。2行目の数字もF-715SAの方が大きい。
一方、F-715SAはコントラスト調整の機能が無い。前機種のF-715Sにはあったようだが本機では削除され、周辺の環境によってはデメリットと言える。fx-290Aはコントラストが調整できる上はっきりとした黒色で表示されるため、コントラスト面の見やすさはfx-290Aの方がよい。
文字の大きさで選ぶか、コントラストの良さで選ぶか。これが第一の選択である。
機能
概ね同程度の機能が備わっているが、F-715SAのキーが2つ多いことからわかるように、若干であるがF-715SAの機能が多くなっている。
- F-715SAのみの機能:最小公倍数、最大公約数、logab、商および剰余、0~9キーのメモリ機能(計17メモリ)、アンドゥ、式のコピー
- fx-290Aのみの機能:単位換算
F-715SAで特筆すべきはlogabだろう。fx-82MSに準じる機能数の関数電卓はlogabがついておらず、底がeや10以外の対数計算は複数に分ける必要が出てくる。本機はlogabが加わっていることで任意の底の対数計算を容易に行える。この点だけでF-715SAを選択しても良い位だ。
最小公倍数や最大公約数は、カシオ(主に上位機種に搭載)が2数までに対してキヤノンは3数まで可能となっている。使用機会のある人は少ないかもしれないが、必要な人にとってはキヤノン機の方が便利だろう。
商および剰余機能は剰余表示が2キーとなる点が惜しい([Shift][Q↔r]もしくは[RCL][D])。なお実行時に商はメモリC、剰余はメモリDに自動保存される。
一方のfx-290Aの機能はほぼfx-82MSと同じである。追加されたのは単位換算。108種類(54対)の単位換算が可能であり、ケース裏面の番号表に従って指定する。もちろんほとんどの複数行機にも単位換算機能はあるが、手軽な2行機に付いているからこそ重宝する人もいるだろう。
(追記):エイプリルフール企画:関数電卓の精度を比較するの記事で、F-715SAの内部計算桁数が16桁、fx-290Aの内部計算桁数が15桁と、F-715SAの精度がよいことを示したが、この内部計算桁数が結果に現れる事例を海外の掲示板で見つけたので紹介する。
[sharp]EL-509X 小数点6桁目にある結果 標準偏差を求める
小数点以下6桁の数で標準偏差を求めたところシャープ機で0になってしまうという問題提起だが、fx-290Aで求めてもやはり標準偏差は0になってしまう。一方、F-715SAで求めると記事のコメント通りに xσn = 2.059126028×10^-6, xσn-1 = 2.170509413×10^-6 と求められる(韓国ダイソーで売られている関数電卓で正しい値が出たと書かれているのにびっくり。注文したので到着次第確かめることにする)。
もちろん、カシオES機やClassWizでも同様に求めることができるが、fx-290Aの精度はこの程度であることを踏まえた方がよいかもしれない(とはいえ、シャープの複数行機でも0になってしまうのだけれど)。
まとめ
結論として、単位換算・表示画面のコントラスト・入手のしやすさで選ぶならfx-290A、logabなどの機能面で選ぶならF-715SA/F-715SGということになる。
キヤノン機の存在のありがたみを感じる2行機比較であった。
なお、シャープの2行機は独特の操作体系で、国内販売が継続されていたらまさに三者三様であった。PCで動くエミュレータが海外サイトにある(Wのつかない500番台のものが2行機)ので、気になる人は試してみてほしい。米アマゾン等から購入も可能(送料もかかるので値が張る)。
最後にカシオ2行機のクローンに触れる。fx-82MS初代にそっくりの形状のもの(激安)もあれば、991MSの機能を複数行機の筐体に載せこんだもの(そこそこの値段)、右側に電子メモ帳が付いたもの(高い)まである。
2番目の商品の例として、アマゾンではNEWYESのものが2色販売されている。なぜかメーカー公式に製品が載ってない機種。991MSベースなので上記2機種より断然機能が多いが、簡単な演算でも結果表示に一瞬間がある仕様で、キータッチも安っぽい。通常はfx-290Aより値段が高いものの、現在(2025/3/31時点)スマイルSaleでfx-290Aより若干安くなっている。筐体色の好みや、表示部がF-715SAよりさらに巨大で見やすく感じる人もいるであろうから取り上げた(お勧めはしがたいので自身でレビューを見て判断を)。