現行機種だと…

国内現行機種に搭載されている科学定数は

キヤノン F-789SG：79種類
シャープ Tシリーズ（501を除く）：52種類
カシオ ClassWiz CW：47種類
カシオ fx-375ES A：40種類

となっており、単位換算と違ってキヤノンの充実ぶりが目立つ。
本記事では3メーカーを一覧表で比較してみた。

搭載されている科学定数の比較表

No	科学定数	記号	キヤノン	カシオ	シャープ
1	陽子質量	$m_p$	○	○	○
2	中性子質量	$m_n$	○	○	○
3	電子質量	$m_e$	○	○	○
4	中間子質量	$m_μ$	○	○	○
5	ボーア半径	$a_0$	○	○	○
6	プランク定数	$ℎ$	○	○	○
7	核磁子	$μ_N$	○	○	○
8	ボーア磁子	$μ_B$	○	○	○
9	換算プランク定数	$ℏ$	○	○	○
10	微細構造定数	$α$	○	○	○
11	古典電子半径	$r_e$	○	○	○
12	コンプトン波長	$λ_c$	○	○	○
13	陽子磁気回転比	$γ_p$	○	○	○
14	陽子コンプトン波長	$λ_{c,p}$	○	○	○
15	中性子コンプトン波長	$λ_{c,n}$	○	○	○
16	リュードベリ定数	$R_∞$	○	○	○
17	（統一）原子質量単位	$u$	○	○	○
18	陽子磁気モーメント	$μ_p$	○	○	○
19	電子磁気モーメント	$μ_e$	○	○	○
20	中性子磁気モーメント	$μ_n$	○	○	○
21	中間子磁気モーメント	$μ_μ$	○	○	○
22	ファラデー定数	$F$	○	○	○
23	素電荷	$e$	○	○	○
24	アボガドロ定数	$N_\rm{A}$	○	○	○
25	ボルツマン定数	$k$	○	○	○
26	理想気体のモル体積	$V_m$	○	○	○
27	モル気体定数	$R$	○	○	○
28	真空中の光速度	$c_0$	○	○	○
29	第1放射定数	$c_1$	○	○	○
30	第2放射定数	$c_2$	○	○	○
31	シュテファン・ボルツマン定数	$σ$	○	○	○
32	真空の誘電率	$ε_0$	○	○	○
33	磁気定数	$μ_0$	○	○	○
34	磁束量子	$Φ_0$	○	○	○
35	標準重力加速度	$g$	○	○	○
36	コンダクタンス量子	$G_0$	○	○	○
37	真空中の特性インピーダンス	$Z_0$	○	○	○
38	摂氏温度	$t$	○	○	○
39	ニュートン重力定数	$G$	○	○	○
40	標準気圧	atm	○	○	○
41	陽子G係数	$g_p$	○
42	$λ_{c,n}/2π$	$ƛ_{c,n}$	○
43	プランク長	$l_P$	○	○
44	プランク時	$t_P$	○	○
45	プランク質量	$m_P$	○
46	原子質量定数	$m_u$	○
47	電子ボルト	eV	○		○
48	モルプランク定数	$N_\rm{A}ℎ$	○
49	ウィーン変位法則定数	$b$	○
50	Siの格子定数	$a$	○
51	ハートリーエネルギー	$E_\rm{h}$	○		○
52	ロシュミット定数	$n_0$	○
53	コンダクタンス量子の逆数	$G_0^{-1}$	○
54	ジョセフソン定数	$K_\rm{J}$	○	○	○
55	フォンクリッツィング定数	$R_\rm{K}$	○	○	○
56	$λ_c/2π$	$ƛ_c$	○
57	トムソン断面	$σ_e$	○
58	電子磁気モーメント異常	$a_e$	○
59	電子G係数	$g_e$	○
60	電子磁気回転比	$γ_e$	○
61	中間子磁気モーメント異常	$a_μ$	○
62	中間子G係数	$g_μ$	○
63	中間子コンプトン波長	$λ_{c,μ}$	○
64	$λ_{c,μ}/2π$	$ƛ_{c,μ}$	○
65	タウコンプトン波長	$λ_{c,τ}$	○
66	$λ_{c,τ}/2π$	$ƛ_{c,τ}$	○
67	タウの質量	$m_τ$	○	○
68	$λ_{c,p}/2π$	$ƛ_{c,p}$	○
69	シールド陽子磁気モーメント	$μ'_p$	○
70	中性子G係数	$g_n$	○
71	中性子磁気回転比	$γ_n$	○
72	重陽子質量	$m_d$	○
73	重陽子磁気モーメント	$μ_d$	○
74	エリオン質量	$m_h$	○
75	シールドエリオン磁気モーメント	$μ'_h$	○
76	シールドエリオン磁気回転比	$γ'_h$	○
77	アルファ粒子質量	$m_α$	○
78	シールド陽子磁気回転比	$γ'_p$	○
79	陽子磁気シールド補正	$σ'_p$	○
80	フォンクリッツィング定数の協定値	$R_{\rm{K}-90}$		○
81	ジョセフソン定数の協定値	$K_{\rm{J}-90}$		○
82	電子の比電荷	$-e/m_e$			○
83	循環量子	$h/2m_e$			○
84	天文単位	AU			○
85	パーセク	pc			○
86	炭素(C-12)のモル質量	$M$(¹²C)			○
87	微細構造定数の逆数	$α^{-1}$			○
88	陽子電子質量比	$m_p/m_e$			○
89	モル質量	$M_u$			○

定数の表記はキヤノンのものを基本としており、No1～No79はF-789SGの説明書と同じ番号。
カシオfx-375ES AはNo1～No40の定数が搭載されており、番号も同じ。
カシオClassWizのうち、原子質量単位/定数は初代が$u$、CWが$m_u$と表記を変えている。
キヤノンはそれぞれNo17とNo46に搭載しているが、同一の値。
本表では下位互換に鑑みNo17のみに○をつけた。

CODATAのバージョンに注意

どの関数電卓も、科学定数の値は科学技術データ委員会(CODATA)が発表した値を元に収録している。
CODATAは4年ごとに定数表を作成しており、最新のものは2022年版（2024年5月発表）である。

国内各機種は発売開始時点で最新のCODATAに準拠した値を搭載しているが、すでに発売から10年以上経過している機種もあるため、何世代も前の値となっているものがある。
上位桁に関しては問題がないと思うが、下位桁は定数によっては改定の度に微細な変更が生じることがある。
厳密性を求める計算は関数電卓の値に頼らず、最新のCODATAを参照した方がよい。

各機種が参照しているCODATAは以下の通りである。

カシオ ClassWiz CW：CODATA(2018)
シャープ Tシリーズ：CODATA(2014)
カシオ fx-375ES A：CODATA(2014)
キヤノン F-789SG：CODATA(2010)
カシオ ClassWiz初代：CODATA(2010)

なお、このところの記事で褒めすぎの感があるClassWizクローン機であるが、EXクローン機は全てCODATA(2010)、CWクローン機はCODATA(2018)となっており、自社で値を更新する気は無いらしい。

また、今回比較表に載せなかったが、TI-30X Pro MathPrintは科学定数を20種類搭載し、CODATA(2014)を参照している。