目次
※ 記事を書いてたらやたら「はじめに」が異様に長くなってしまいましたので、時間のない方は飛ばしてお読みください。
はじめに
これってどんな記事?
ITパスポート・基本情報技術者試験・応用情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が運営している国家試験(国家資格ではないのでご注意を)です。
またG検定は日本ディープラーニング協会が実施している、ディープラーニングを扱う人向けのジェネラリストとしての試験です。
ITに関心のある大学生やITエンジニアなど、この4つの試験のいずれかを受けようと思っている人は非常に多いと思いますが、「みんなどんな感じで勉強しているのかな?」とか「自分には難しいのかな…」などが気になって何となく一歩踏み出せない人もいるかもしれません。
また、これらについては大抵それぞれ独立した記事になっていることが多いので、都度調べないといけない面倒くささもありそうです。
それなら、未経験でITエンジニアに転身してからの半年で、右も左も分からないながらほぼ勢いと根性でこの4つの試験に合格できた自分の経験が少しでも誰かの背中を押すことになれば!と思い、記事にすることにしました。
「自分にできるかどうか分からないから試験に踏み出せない…」という人へ
このあとのバックグラウンドでも書きますが、僕は元々IT畑とは無縁の人だったので、この気持ちはめちゃめちゃ分かります。
が、もしこのような迷いで躊躇しているのであれば、「ゆーて大体頑張ればできないわけがない」ので(※個人の感想です)、ぜひテキストや過去問で勉強を始めてみてください。
まぁどうせやらなければ進みませんし、何か失敗しても別に困りませんので、ひとまずやってみて少しでも進んだら儲けものということでひとつ、どうでしょうか?笑
(もう一歩背中を押されたい人は、「おわりに」も読んでみてください)
筆者のバックグラウンド
ITに詳しい状態から勉強をスタートした人の話だと恐らくこの記事を読んでいる人の参考にならない気がしますが、僕は元々ITに精通していたわけでもなく、かといって「Excelってどうやって使うんですか…?」というほどでもないので、そのあたりが分かるようにバックグラウンドを簡単に自己紹介します。
大学・大学院時代
僕は工学系の出身で、化学工学を専攻していました。
授業の中にはプログラミングで化学プラントの反応設計をするものもありましたが(Fortran懐かしい)、当時の僕は面白いくらいにプログラミングが全く理解できず、数回授業に出たのち「なんでコンピュータがifやらforやら英語を理解できるんだ!?」と叫んでそのままフェードアウトしました。今思い出しても本当に可哀そうです。
父はコンピュータ関連の会社に勤めていたのですが、「ワイはコンピュータとかマジでよく分からんからそっちには行けないなー!」なんて言っていたくらいでした。
人生というのは本当に分かりません。
新卒では鉄鋼メーカーに入社
大学院修了後は製鉄メーカーに入社し、生産技術エンジニアとして工場に勤務していました。
デスクワークでは操業データをExcelであれこれ集計したりグラフにしたりパワポで説明資料作ったりしていたので、この辺りのツールは仕事で使うには困らないくらいでした(大抵の理系学部出身者はそうですね)。
あとは、ヘルメットを被って工場に行っては「ヨシ!」とか「ご安全に!」とか叫んで回ったり鉄粉と油にまみれた現場を汗だくになって歩き回ったりと、プログラミングとは一切関わりがありませんでした。
2年目の後半になった辺りから、色々なきっかけによって自分の見つめ直しを始め(「尿路結石の痛みを現場のおっちゃん達と分かり合えるようになった」というエピソードからお察しください)、3年目の終わり頃には「ITエンジニアになりたいな」と考えるようになり、そこからProgateやドットインストール、AtCoderでプログラミングの独学を始めました。
この時に気付きましたが、Excelをちょっと使っていたおかげで「あれ?プログラミングって結局決まった文法をちゃんと守って書けばその通りに動いてくれるし(気分で行動を変えたり反乱を起こしたりしないぞ)、考え方もExcelの関数を打ち込んでた時と似てるな?」と思い、いつの間にかプログラミングへの苦手意識が減っていたように思います。
そして4年目を終えるタイミングで縁あって退職、業務としては未経験のIT業界に身を置くことになりました。
なぜ資格試験を受けたのか?
まず僕自身のスタンスは、少なくともタイトルにあるこれら4つの試験については「試験に合格できることと実務で力を発揮できることにはギャップがあるので、あくまで資格は資格である」と思っています。
ただし、受けること自体にもちゃんと意味があるとも考えています。
具体的には、以下の5つを考えて資格試験を受けようと決めました。
- ITを生業にするにあたって、基礎的な理解や感覚は会話をするうえでも必要。
- 自分の現在位置や今後目指したい姿を見つけるために、早く頭の中に全体地図が欲しい。
- 一口に「IT」といっても範囲が広すぎて沼なので、モチベーション維持のためには「勉強するための期間・範囲を区切るマイルストーン」があった方がよく、それには資格試験が一番イメージに合う。
- 転職の際に履歴書に書ける資格としてはどれだけ意味があるか分からないが、「必要があることをちゃんと自走して勉強できる人」と知ってもらうには良い指標かもしれない。
- てか資格試験受かったら会社からお小遣いもらえる規則あるんですけど!ヤッタネ!
特に 3. についてですが、転職が決まったタイミングで「よし!なにか勉強しよう!」と意気込んではみたものの、「IT」が広すぎて本当に何から手を付けていいのか分からなかったのです。
『 無限の選択肢があることは、選択肢が全くないのと同じである。』
これは食べログで居酒屋を検索していた時に僕が生み出したすごくいい格言なのですが、このままだと結局勉強モチベが上がらず都心に引っ越してきたのをいいことに飲んで遊んで過ごす危険があるな…と思い、とにかく期間・勉強範囲を限定して目の前にやることが明確化されている状態を作るべきだと思い、それに資格試験がちょうどよいと思ったのでした。
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さぁお待たせしました!
よくある情報商材ではこのくらい長い前置きで焦らして焦らし切った後に「お支払いはコチラから!」のボタンがありますが、この記事の前置きが長いのは単純に僕の悪い癖です。
ここから本題です。
いらっしゃいませ。
本記事の構成
各試験とも、
- 勉強期間
- 勉強方法(使ったテキストなど)
- 試験を受けてみての感想
の3点を簡単に載せたいと思います。
それぞれの試験がどんなものか、どんな人を対象にしているのか、等々については様々なサイトで詳しく説明されていますのでそちらに任せたいと思います。
また勉強時間についてですが、基本的には期間中ほぼ毎日「平日なら1時間以上、休日なら2、3時間以上」くらいのイメージです。
家だと勉強できない人なので、通勤の電車でテキストを読んだり、仕事帰りにカフェによったり、休みの日は友達とカフェで勉強したりして勉強時間を確保していました。
コロナ禍もあり、たまたま友達と遊びに出かける機会が少なかったことも偶然いい方向に働きました。
ITパスポート
勉強期間
ITの会社に転職するまでに、プログラミング自体の勉強は多少していましたが、「IT全般の知識」というものは勉強するのが初めてだったこともあり、約1ヶ月半でした。
とは言いつつ、試験まで2週間くらいのタイミングで「あ、これはもう余裕そうだな」という状態になったので、実際には試験を受ける前に基本情報も申し込んでしまい、試験直前は基本情報の勉強に移っていました。
勉強方法
使用テキスト:『イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生のITパスポート教室』
使用サイト:ITパスポート過去問道場
僕は「せっかくなら受かるための勉強というよりは体系的に学びたいなぁ」と思ったので、まずはテキストを1周読んでから、あとは過去問道場で問題をひたすら解き、分からなかったらテキストに戻って該当箇所を読む、を繰り返しました。
ただし、「試験に効率的に合格したい」という場合には、むしろ逆算方式で勉強をした方がよく最初から過去問をひたすら解く派の人もいると思いますので、それが合う人はそれでもいいと思います。
試験を受けてみての感想
ざっくりと「ITってこんなもんでっせ」という部分を理解するものですが、ストラテジー系・マネジメント系・テクノロジー系と3分野あり、全くIT業界の知識がない人が2、3日でクリアできるほどではないなと思います。
人によっては「最初から基本情報の試験でいいっしょ!」と言う人もいますが、本当にIT初心者で理解できるか不安だったり、例えば事務職などで「会社から求められているスキルとしてもITパスポートで十分だ」という人はこの試験を受けて損はないと思います。
僕自身としては、結果的に基本情報の準備に役立ったのでヨシ!くらいの感想です。
基本情報技術者試験
勉強期間
約1ヶ月でした。
ITパスポートは一問一答のマークシートですが、基本情報からはそれを「午前問題」と呼び、さらに問題文に対してマークシートの小問が5個程度用意されている2つ目の試験(いわゆる「午後問題」)が追加されるので、早くこちらに慣れたいところです。
ちなみに「午前問題」「午後問題」は、名前から勘違いしやすいですが、かつて筆記試験で2部構成でやっていた時の名残で午前・午後とついているだけであり、2022年8月現在の基本情報はコンピュータで別々に受験するので実際に試験を受ける時間帯とは全く関係ありません。(詳しくは公式へ)
勉強方法
使用テキスト:『出るとこだけ! 基本情報技術者 テキスト&問題集』
使用サイト:基本情報技術者過去問道場
勉強方法は、ITパスポートと同じくテキストを読んでから、過去問道場をやっていました。
ただし基本情報からは、全分野が出るのではなく、一部が選択問題になります。
試験までの時間も限られているので、自分の好みやこれから必要そうな知識を鑑みて、どれを選択するかをある程度絞ってから勉強しました。
最終的には受験しなかった分野も勉強しましたが、知識を吸収するという目的ならこれはこれで損はないはずです。
ITパスポートよりも用語の知識を覚えていないといけないので、これに少し時間を使いすぎてしまいました。
また知識を前提として午後問題の文章題を解く必要があり、こちらに慣れるのにもっと時間が必要でした。いっそのこと、午前問題が4割くらい分かればもう早々に午後問題の過去問に移って、こちらも少し考えて分からなかったらすぐ答えを見たりテキストを見たりして勉強していく方が良かったかも知れません。
ということで勉強時間の配分としては、なるべく早く午後問題に触れて試験イメージを持つようにした方がいいと思います。
試験を受けてみての感想
完全にIT初心者が受ける場合は、ちょっと難しく感じるかもしれませんし慣れるのにも時間がかかりますので、2~3ヶ月くらいは見てもいいかもしれません。
ITパスポートに受かっている人は、コンスタントに勉強できていれば1ヶ月程度で大丈夫そうです(僕はそうでした)。
ストラテジー系・マネジメント系・テクノロジー系それぞれの領域があるため、ITエンジニアになって半年くらい働いていても何かしらは必ず初めて触れる分野がありますので、テキストを読んであとは根気よく過去問をひたすら解くのが良いと思います。
応用情報技術者試験
勉強期間
1ヶ月半~2ヶ月くらいです。
ちょっとモチベーション維持に苦労したタイミングだったこともあってか、ややギリギリでした。
難易度の上がり方はITパスポートから基本情報へのステップよりもだいぶ大きい気がするので、基本情報に受かったばかりの人でも「毎日みっちり勉強しないと1ヶ月では間に合わないかも知れない」かな、という印象です。
実務経験が豊かだったり物覚えが早い優秀な人だったりバリバリ勉強できる人だったりしない限りは、2ヶ月程度は余裕を持って勉強期間を取ることをおすすめします。
勉強方法
使用テキスト:『応用情報技術者 合格教本』
使用サイト:応用情報技術者過去問道場
応用情報でも、やっぱりIパ・基本情報と変わらず必要範囲のテキストを一周してあとは過去問道場をひたすら解いていました。
特色は、応用情報からは筆記試験になること(2022年8月現在)、そしてなんといっても午後問題の形式です。
基本情報は午前・午後ともに選択式のマークシートですが、応用情報の午後問題は選択式だけでなく記述問題も登場します。これをクリアするには、知識を持っていることは大前提として、それを問題の状況に合わせて適切な言葉にする必要があるので、そこがなかなか高いハードルでした。
僕は試験直前まで平均得点が合格水準の6割前後だったので、本番も結構ドキドキでした。
試験を受けてみての感想
基本情報などから比べても、実務よりのシチュエーションで設定された具体度の高い問題になっているので、実際のビジネスシーンとか実務の流れとかってこんな感じでイメージしていれば良いのかな?と思いながら勉強していました。
そういう点では、応用情報に受かっていると、「実務のイメージをちょっとは持てている人」という風に思ってもらえるかもしれません(そうだといいな)。
応用情報は午前問題もそれなりに苦労しましたが、午後問題は基本情報にはなかった記述問題が出てくるので、これに慣れるのにだいぶ時間を要します。結局はとにかく過去問を解いて必要があればテキストで復習することを繰り返すのが一番です。
あとよく考えたら、応用情報に受かった後も趣味で午後問題を解き続けてみるとだいぶ生きた知識が身に付いて良いんじゃないか?と思っています。(思っているだけ)
G検定
勉強期間
G検定の勉強としては3週間くらいです。
が、業務でオライリーの「ゼロから始めるディープラーニング」を読み、畳み込みニューラルネットワークを使った画像認識系AIの開発をしていたので、特にニューラルネットワークに関するおおまかな基礎的な素養が多少ありました。
ここを加味すると、もう少し初心者で始める場合には1ヶ月くらいは見てもいいかもしれません。
G検定は大学時代の研究室の同期や後輩もそれぞれ受けたようでしたが、2人に勉強期間を聞いてみると「1~2週間」とのことでした。ただ『その2人の「そんなに勉強してないわ~」を自分に当てはめてはいけないぞ』という神のお告げが聞こえた気がしたので、僕は3週間取りました。結果的にはこれでちょうどよかったです。
勉強方法
使用テキスト:『ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト』
使用サイト:「Study-AI」
G検定は、主催する日本ディープラーニング協会から公式テキストが出ているので、まずはこちらを一周しました。
勉強期間3週間のうち、これを読み切るのに2週間くらいかかった気がしますw
過去問については、これまでに挙げてきた過去問道場のような過去問・解説が豊富な媒体があまりありませんが、僕は上記のサイトを使いました。
G検定は試験中のネット検索などが許されていますので(今後変更されるかも知れませんので、受験の際は必ず最新の情報をご確認ください!)、残りの1週間ではここで問題を解いたり、覚えきれそうにないものはExcelにまとめるなどして、試験当日の準備をしました。
試験を受けてみての感想
歴史や過去の大会に関する知識など、そこまで必要なのかなぁと思う問題も多いのですが、G検定はもともと試験中のチートシートやネット検索が許可されているので、この辺は対策次第です。
ディープラーニングを扱うプログラミング的な技術が向上するわけではありませんが、ディープラーニングの種類やそのアルゴリズムの思想など、全体を体系的に俯瞰する視野が試験勉強を通して広がるので、そういう試験(なのでジェネラリスト)だと思って受験してください。
実装力を身につけることが目的であれば「試験の趣旨が違う」が答えになりますが、エンジニアとしては「手段であるIT・AIをいかに目的のためにして利用するか?(あるいは「利用しない」か?)」を考える全体観も必要だと思いますので、その最初の一歩にはちょうどよいと思います。
なので、AIをあまりやったことのない管理職の人などにも向いているかも知れません。
僕は実案件を細かくやっているだけでは必ずしも身に付かない知識を吸収できて結果的には理解度があがったので、やってよかったなと思っています。
おわりに
試験勉強に対するハードルは個人それぞれだと思います。
僕は「まぁみんながこれだけ受かってるなら自分にもできるはずだよな!」と思って勉強を始めましたが、やっぱり腰を据えてやらないと分量も少なくはないですし、特に応用情報は「これ本当に勉強間に合うか…?」と不安になることもありました。
なので「やろうかな…どうしようかな…できるかな…」と迷ってしまう気持ちもよく分かります。
が、迷うなら「自分にこの試験を受ける目的・必要性があるかな?時間かけてやるだけのリターンがあるかな?」で迷う方が良いかなと思います。
きっと本記事くらいの試験であれば、大抵の人にとっては「できないなんてありえない」と思っています。未来は「できるようになる」の一択であり、人によって違うのは「そのために必要な期間」だけだからです。
その期間は、知識のバックグラウンドによっても変わりますし、勉強の効率や1日に充てられる勉強時間によっても変わるのが難しいところです。だから、まずは過去問やテキストなどをパラパラ見てみたり難易度を調べてみたりして、現在地と到達地点の差をおおよそ測ることが必要です。
ということで、僕は「できるかどうかで迷うくらいなら思い切って申し込んでしまって(エイヤで「申込み」と書いてあるボタンを押してみればよいのです)、もう『やるしかない』状態にしてしまい、あとは間に合わせるためにはどう勉強したら良いかを考える方向にシフトする」のがよいと思います。
期日が決まるのがやはり試験の良い点ですね。
この記事が少しでもあなたの参考に、力になれたら幸いです。