はじめに
はじめまして。want.jp株式会社でHead of Dataを務めている細田です。
want.jpでは、「あらゆる日本商品を、 日本と同等の価格で、 世界のどこでも送料無料で3日で届ける」というコンセプトで、 100以上の国・地域に向けたグローバルEC事業を展開しています。
そこで得られる膨大な世界中の需要データをインサイトを持った形でメーカーにフィードバックし、 従来の「世界流通のあたりまえ」を根底からデータドリブンに変えてゆくことをビジョンに、 急成長しています。
Dataチームは、1年前にスタートしました。初期はSinkCapitalのみなさまにもサポート頂き、ビジネスの成長と組織拡大が続く混沌の中、データ分析基盤の基礎を作る事ができました。
スムーズにいかない場面もありましたが、社内/外問わずサポートをもらい、多くの成果を出すことができました。今回は、発生した課題をどのように管理し、解決してきたかをご紹介します。
・・・とその前にデータチームとしての成果を自慢させてください。
2022年の主な成果
- 会社全体や各事業部門向けの基本的なダッシュボード整備や分析活動
- 売上やKPIの詳細把握に1-2週間かかっていた作業が数秒で完了するように。
- データとプロダクト開発チーム、マケプレ運営チームで連携し、会社全体の利益率改善や売上増加へ貢献
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ユニットエコノミクスを可視化・詳細分析できるダッシュボード
- ユニットエコノミクスとは、事業の健全性を測る指標の1つです。want.jpでは世界各国の越境ECの健全性をはかるため、1注文単位をユニットとし、コストと利益の予実管理を行い、事業の振り返りに活用しています。
- 越境ECには、商品の仕入以外にも配送業者、各国の関税、現地サービス税などが発生し、1注文ずつのコスト/利益のトラッキングを行う事は非常に困難です。want.jpでは事業の初期からこのデータ整備に取り組み、データドリブンな意思決定を行なっている事が特徴です。
画像は、とあるセグメント内で国や配送業者ごとに注文ごとにコストと利益を集計した例。ここから詳細な分析を行い、各事業部門でのアクションにつなげています。
- データチームでは手作業による集計を半自動化し、より詳細な分析が行えるテーブルを作成しました。
- 最近では上記に加え、開発チームと共同で新たにログデータを拡充させたことにより、より詳細な予実管理ができるようになりました。
データチームを取り巻く環境
今年はビジネス成長が早すぎて要求がすぐ変わるし、データの発生元も課題山積という状態でした。
1. ビジネス成長が速すぎる
次々に世界中のマーケットプレイスが開設され、展開国が増えます。また始めたばかりの国で急激に売上が伸びてしまう場合がある為、「優先度が変わった。XXXのデータをみてYYYを確認したい。これは重要かつ緊急度が高い。いつできるか。」といった会話が当時は日常茶飯事です。
加えて、当時はデータ分析基盤が初めてできた時期なので、周囲からもリクエストが頻繁にありました。(今は基本的なダッシュボード整備によりリクエストが減りました)
2. プロダクトも業務も発展途上。データは整備されていなくて当たり前。
世界中のマーケットプレイスごとに、思想・業務・プロダクトの開発状況が異なるため、横串をさしたデータ集計が非常に困難です。
データマネジメントの課題は業務フローやプロダクトが原因で発生する事が多く、単純なデータ側でのクレンジング作業だけで解決しない問題も存在しています。
越境ECの全世界のデータを横断的にみているデータチームにとって、複雑な課題にすぐ対処する事は不可能でした。社内での優先度も常に変わるため、予めどのような課題を無視できるかを判断する事も困難でした。
このままでは自分もチームも考える事が多すぎて困るため、いかに脳内メモリをあけ、効率よく課題を一つずつ潰していけるかを考えました。
スプレッドシートではじめた課題管理票
1年を通じて運用した課題管理表はこのような構成です。
以前、緊急度や重要度も入れた時期もありましたが、年間を通じて運用しなくても問題が起きなかったため、省略しています。重要度や緊急度が低いものは期日を後回しにしていけば良いからです。
主な項目
- 課題番号
- 課題・リスク・Todoの分類
- 課題タイトル
- 課題内容
- 資料(課題の詳細がわかる参考資料や、SlackのスレッドのURL)
- 起票者
- 起票日
- Status
- 担当
- 期日
- 完了日
- 対応状況
- 次の確認予定日
このシートの目的
- 課題やリスクを個人の頭の中にためず、適切に忘れられるようにする
- 思い出すタイミングは決めておき、何度も同じ課題について短い時間で考える
- 他チームと連携する課題は「ボールが落ちやすい」ため、常に適切なタイミングで思い出せるようにする
「脳がパンクして自分もチームメンバーももたない」という事が一番困るため、書きやすさを重視して厳しいルールは設けずはじめました。
使い方
課題・リスク発見時
- 起きた事、課題だと考えているポイントを書く。
- 汚くて良いので速く書く。(簡潔に、誰が読んでもわかるように書ける事が理想ですが、それを気にして何も書けない事のほうが問題)
- 後日、自分の文章を直したければ、書き直すのはOK。
- 期日は、記載者の勘で良いから書く。その時、「次の確認予定日」も必ず書く。
- 明確に、他PJとのクリティカルパスになる事がわかっていれば、意識して適切な期日を書いた上で、課題内容にもその点を明記しておく。
- ※一年超えの課題も存在します
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対応予定があれば「状況」に次の一手を書く。
- 複数名が状況をアップデートする事がある為、書いた日付、名前、アップデートを行なったMTG名などを、内容と合わせて書いておく。
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基本的に、進展があればすぐに「状況」セル内を更新する。最新更新は常に一番上にくるように書きます。
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他チームが担当すべき課題であれば、他チームの名前も「担当」欄に書いておく。
- このシートはまずはデータチーム内で運用するため、データチームのメンバーが、定期的に担当者へヒアリングして状況をシートに更新する。
定期的な旋回活動
- 1-2週間もしくは月に1回は、「次の確認予定日」でフィルターをかけ、全課題をチーム全員で確認する。
- 次アクションが決まっていない課題が残っていたら、その場で決める。
- アクションが決められない場合、次に思い出す日「次の確認予定日」だけを決めておく。
- 他チームに相談すべき内容だが、他チームにすぐにボールをパスできないような状況の場合、この時も「次の確認予定日」だけを決めて、その日は忘れる。
- 課題を確認し終えたら、来月・来期・来年どのような状態になるべきか、などブレスト形式で意見交換し、ロードマップのインプットとなりうる情報を整理する。
注意点
- 他チームに影響する内容をデータチームで勝手に期日を先延ばしにする事はしません。
- チーム内で完結しない課題はステークホルダーに報告し、どのような対応をとる予定かをSlackやミーティングで報告しています。
シート運用による効果
- 大量の課題、予想外の事態が起きても、頭がパンクする事はなくなりました
- 「課題は書けば、しかるべきタイミングで必ず解決できる」という自信につながっています
- ロードマップがない状態でも期日を記載者の勘で書いてみては訂正を繰り返す事で、ボトムアップ的に各チームの動きや大きなマイルストーンの傾向がみえてくるようになりました。課題の期日に対する見極めや「次の確認予定日」を設定するタイミングが正確になってきています。
今後やりたいこと
来年以後は、経営計画の整備に伴い、データのロードマップも整備していきます。今年はボトムアップ式で0→1をつくるフェーズでしたが、来年以後は1→10, 10→100の成果を出していくためにも、プロジェクトマネジメントを重視し、プロジェクト推進に強いチーム運営に注力する予定です。
この場合でも、課題表の運用は継続し、課題表からボトムアップ的にプロジェクト方針の方向転換を検討するためのパスを残した運用設計にする予定です。(スプレッドシートではないツールの検討もするかもしれません)
最後に
ここまで読んで頂きありがとうございました。
今回こちらの記事を投稿するにあたり、データ分析基盤の立ち上げで大変お世話になったSinkCapitalの @Booklin さんに声を書けてもらいました。お声がけありがとうございました。
こちらの記事がデータマネジメントに従事する方に少しでもお役に立てたら幸いです。
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