概要
機会があっていろいろ調べたので,電子工作で通信モジュールを使って何かをするときに関係してくる電波法についてまとめた.
特に,ドローンや小型ロケットなどの空中物体に関する項目が多めである.
【注意】
間違った情報が含まれている可能性もあります.
何が起きても一切責任はおいません.
目次
電波の用語
小難しい話は嫌いだし分からないのでしません,厳密には間違ってると思います.
周波数
電磁波が1秒間に何回波打つか.単位は「Hz(ヘルツ)」
周波数が高いほど,障害物に弱く,通信速度が速くなる
以下代表的な周波数
AMラジオ: 700KHz
FMラジオ: 80MHz
テレビ: 500-800MHz
携帯電話: 700-3500MHz(3.5GHz)
GPS: 1.5GHz
Wifi・Bluetooth: 2.4GHz
帯域幅
周波数ピッタリだけで通信しているわけではない.
例えば,WiFiの1chは2401~2423MHzであり,22MHzの幅がある.
この幅は広いほど通信速度が速くなる.
通信速度
そのままの意味.どれだけの情報を送れるか.
代表的な単位はbpsであり,1bpsは1秒に1bit送れる.8bit = 1Byteである.B/s(毎秒1Byte)を使うこともある.
接頭語(Kilo,Mega,Giga)ごとの感覚的な速さを以下に示す.
bps: 温度計などのセンサーデータなど.1秒に10回以上のレートでFloatなどを送信しようとすると一瞬で足らなくなる.
kbps: 加速度などをリアルタイムで送ったりできる.画像も20世紀のPCくらいの速度で送れる.動画は厳しい.
Mbps: 動画などを送れる.
Gbps: ほぼ何でもできる.
空中線電力
送信電力などといったりもする.空中線はアンテナをさし,アンテナに流れる電力が空中線電力である.受信電力とは別.
単位はmW(ミリワット)またはdBm(デシベルミリワット).大きいほど電波が強く,遠くまで届く.以下に換算式と感覚的な強さを示す.
(dBm) = 10×log10(mW)
例)20mWをdBMであらわすと,10×log10(20) = 10×1.3 = 13(dBm)
1mW: めっちゃよわい.Bluetoothなど.10m以下.
10mW: よわい.特小など.数mから良くて数100m
100mW: ちょっと強い.数10mから良くて数km
1W: つよい.市街地でも数100m以上
受信電力
送信された電波が受信機に届いたときに流れる電流.-80dBmとかそういう大きさが普通で,すごく微弱.単位はdBmであるが,mWとの換算式が送信電力と異なる.
(dBm) = 20×log10(mW)
よって,例えば-80dBmは0.0001mWである.
技適
車検みたいなもの.技適認証のない通信機の使用は違法.
日本の総務省が発行しているものはMICなどと略され,アメリカはFCC,欧州はCEである.
マイナーな海外企業製品は大抵FCCなどのみでMICはない.当然,MICの記載が無ければ国内使用不能.
パンピーに縁のある無線局区分
免許の要らない無線局
・微弱無線局・・・ラジコン用73MHz帯など
・小電力無線局
- 特定小電力無線局・・・420MHz帯,920MHz帯など
- 小電力データ通信システム・・・2.4GHz帯,WiFi・Bluetoothなど
免許が必要な無線局
・携帯局陸上移動局
- 無人移動体画像伝送システム・・・ドローン用
・陸上移動局・・・携帯電話,スマホなどのキャリア通信など
電子工作で使う主な帯域
技適を取得した通信機で出力制限を守れば,免許なしで使える帯域を記載する.
420MHz帯特定小電力無線局
特小トランシーバーなどでよくつかわれる.空中線電力は最大10mW.
秋月電子などでの取り扱いは少なく,電子工作にはそんなになじみがないと思う.
920MHz帯特定小電力無線局
電子工作で通信といったらコレ.
空中線電力は最大20mW.モノによっては数km届くものもある.
帯域幅500kHz程度と狭いため通信速度は数kbpsと遅い.
2.4GHz帯小電力データ通信システム
特定小電力無線局とは異なる.
WiFiやドローンのカメラ伝送などが含まれる.キャリア通信は含まないので注意.
空中線電力は最大10mW/MHzである.
これは帯域幅1MHzあたり10mWという意味であり,例えばISM帯では20MHzの帯域幅が使用できるので,帯域をフルに使用すると最大200mWということになる.
上記の通り,920MHz帯とは比にならない帯域幅があるので,通信速度は数100kbpsから数10Mbpsと速い.
WiFi・Bluetooth
電波法上の区分ではないが,特にWiFi・Bluetoothは一般に浸透した規格であるので記載した.上記小電力データ通信システムに分類される.
なお,5GHz帯のWiFiは国内で制限されているため室内でしか使用できない.
IoTでよく使われるので通信モジュールが充実している.簡単に使える.
無人移動体画像伝送システムについて
無人移動体画像伝送システムとは,産業ドローンなどのより高度な無人機技術を活用するために整備された無線区分の名称である.使用するには無線局免許が必要.
169MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯が割り当てられていて,169MHz帯以外は最大1Wまでの送信が可能である.
なお,先述の通り日本では無免許で屋外で5GHzを使用することはできない.
よってFPVドローンなど5GHzを使用しているものは問答無用でこの区分かそれ以上になる.つまり免許が必要.
【番外編】実は免許が必要なキャリア通信(スマホなど)
両者スマホで使えるという共通点はあれど,キャリア通信とWiFiは電波法上の区分が明確に異なる.
WiFiは小電力無線局であり,キャリア通信は陸上移動局である.
前者は無免許で使えるのに対し後者は免許が必要である.
出力も600mW又は800mWと高め.
ではなぜ普通に使えるかと言えば,キャリア側が免許を持っていて通信を管理しているからである.SIMカードはその通信の管理も兼ねている.
さらに,先述の通りキャリア通信は"陸上"移動局であるので,基本的に陸上でしか利用できない.海も空もダメ.
例外として許されるのは沿岸海域や日常生活で宙に浮いたとかそういうレベルである.
よって,携帯をドローンに乗っけてネットでLive中継とかそういうのはできないのである.
物理的又はソフト的に通信機能をなくすなどの改造を施すと,技適が適用されなくなり不法無線局になるので注意.
SIMカードを抜くなどすれば許される可能性はあるが,子細は不明である.
【番外編】中・長距離無線システムの規格
これは電波法の区分ではなく通信規格の話となる.
中・長距離で使われる無線システムをいくつか以下に示す.
・IEEE 802.11ax (普通のWiFI)・・・普通のWiFi.通信距離100mくらい
・IEEE 802.11ah (WiFi HaLow)・・・最近出てきた長距離WiFi.最大1km届くらしい.920MHz帯を使用している.
・ZigBee・・・低・中速で1,2km程度.
・Wi-Sun・・・中速で1,2km程度.
・LPWA (Low-Power, Wide Area)・・・
- セルラ系LPWA・・・キャリア通信.IoT向け.制約は前章参照.
| LTE-M・・・IoTデバイス用,キャリア通信
- 非セルラ系LPWA・・・LPWAのうちアンライセンスバンドを使うもの.
| LoRaWAN・・・低速で通信距離最大10km
| "そのほか,日本の技適を受けた機器を販売する規格に,Sigfox,ZETA,Weightless,Wi-Sun,EnOcean Long Range,ELTRESがある"(引用文献1より引用)
引用文献
・よくわかるワイヤレス通信第二版,田中博,川喜田佑介,東京電機大学出版局,P163