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データと向き合い、Mac移行の最適解を探す旅:あるMacユーザの試行錯誤

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ChatGPT Image 2025年6月10日 21_52_12_opt.jpg

Macを新調するたびに浮上する「データ移行」という大きな課題。「クリーンインストール」という言葉には、すべてがリセットされるような、クリーンで理想的な響きがあります。しかし、長年使い込んだ環境には、そう簡単には手放せない価値と、再構築の困難さが伴います。

ノートパソコンは、いわば「知的生産の実験場」です。本稿は、パーソナルかつプロフェッショナルな環境の移行に直面したユーザが、感覚的な「思い込み」から脱却し、データという客観的な事実に導かれ最適解を見出すまでの、思考と試行錯誤の記録です。

第1部:思考の整理 - 移行計画を立てる上での「自分なりの物差し」

本格的な調査に先立ち、複雑な問題をシンプルに捉えるため、自分なりの思考のフレームワークを設けることにしました。あくまで判断の「物差し」です。

1.1. Macの中身を「3種類」に分類して考える

Macの中にある無数のファイルを、私は以下の3種類に分類し、価値とコストを見積もりました。

知的生産環境の3要素分類

  1. 保全すべき”資産”

    • 説明: 再現が困難、または失うと知的生産性に深刻な影響を及ぼすもの。
    • : 業務効率化やアイデア検証のために構築した開発環境、VM上の実験環境、プロトタイピングの成果物、各種ツールの設定。
  2. 整理すべき”負債”

    • 説明: 明らかに不要で、ストレージ等のリソースを浪費しているだけの過去の遺物。
    • : 一度試して使わなくなったアプリの残骸、役割を終えた巨大なキャッシュ。
  3. 不可避の”コスト”

    • 説明: どんな方法を選んでも、必ず手作業で対応しなくてはならないこと。
    • : 各種サービスのライセンス再認証、セキュリティ設定のデバイス再登録。

「クリーンインストールのメリット(負債の解消)」と「デメリット(資産の再構築コスト)」を、客観的に天秤にかけることができます。

第2部:実践記録 - 私のMacの中身と、下した決断

ここからは、実際に自分のMacの環境を調査し、結論に至るまでのプロセスを記します。

2.1. 調査プロセスと、その時々の心の声

当初は「今回こそクリーンインストールか…」と漠然と考えていました。しかし、データは全く違う現実を突きつけてきたのです。

~/Libraryの探索:巨大フォルダとの遭遇

まず、最も混沌としている~/Libraryフォルダから調査を開始しました。

$ du -sh ~/Library/* | sort -rh | head -n 5
30G	/Users/User/Library/Containers
28G	/Users/User/Library/Application Support
12G	/Users/User/Library/Caches
5.1G	/Users/User/Library/Group Containers
3.4G	/Users/User/Library/Developer

調査開始、わずか数分。ContainersApplication Supportの2つだけで、実に約60GB。この時点で、楽観的な見通しは消え、これが骨の折れる調査になることを覚悟しました。

「負債」と「資産」の特定

次に、この2つの巨大フォルダを深掘りし、「負債」と「資産」を具体的に特定していきました。

# Application Supportの調査(負債の探索)
$ du -sh ~/Library/Application\ Support/* | sort -rh | head -n 2
9.5G	/Users/User/Library/Application Support/Autodesk
4.6G	/Users/User/Library/Application Support/OpenEmu

# Containersの調査(資産の探索)
$ du -sh ~/Library/Containers/* | sort -rh | head -n 3
 15G	/Users/User/Library/Containers/com.utmapp.UTM
5.7G	/Users/User/Library/Containers/com.apple.mediaanalysisd
4.5G	/Users/User/Library/Containers/com.goodnotesapp.x

発見:

  • 負債: 以前少し触ったAutodeskのデータ(9.5GB)など、今はもう使っていないものが多数。
  • 資産: ちょっとした検証に使うUTMの仮想マシン(15GB)や、思考の核であるGoodnotesのノート(4.5GB)。これらは、私にとってかけがえのないものです。

「負債」を消すために「資産」を危険に晒すのは、あまりにも割に合わない。この時点で、私の心は大きく「完全移行」へと傾きました。

決定打:知的生産を支える環境の価値

最後に、私のワークフローの根幹を成す、少し特殊な環境の棚卸しを行いました。

$ du -sh ~/.[^.]* | sort -rh | head -n 3
 34G	/Users/User/.ollama
 10G	/Users/User/.cache
8.9G	/Users/User/.nvm

最近、業務でその活用を検討することも多いローカルLLMの実験環境(~/.ollama)が34GB。Obsidianのプラグイン開発などもろもろのコーディングにつかうNode.jsの環境(~/.nvm)が8.9GB。

これらは単なる余技ではなく、私の仕事の質と効率を支える基盤です。この環境が一度失われれば、その再構築にかかる時間はもちろん、思考の勢いや試行錯誤の機会そのものが奪われてしまう。このデータを前にして、私の迷いは完全に消えました。

2.2. 私の最終結論

調査結果を「自分なりの物差し」で測り、最終的な戦略を決定しました。

個人環境の評価

  • 保全すべき”資産” (約62.4GB)

    • 内訳: 業務に直結する実験・開発環境、VM、ノートなど、長年かけて作り上げたもの。
    • 評価: これを手作業で再現するコストは、時間的にも機会損失の観点からも計り知れない。
  • 整理すべき”負債” (約10.7GB)

    • 内訳: Autodesk関連など、正体がはっきりしている不要ファイル群。
    • 評価: ピンポイントでの削除が可能。このために全てを破壊する必要はない。
  • 不可避の”コスト”

    • 内訳: 各種サービスの再認証作業。
    • 評価: どうせ手間がかかるなら、他の部分のコストは極限まで減らすべき。

導き出した結論:
「移行前に、旧Macで不要な”負債”を掃除する。その後、磨き上げた”資産”を、移行アシスタントで丸ごと新Macへ運ぶ」。これが、私にとって唯一の最適解でした。

この記録が、同じようにMacの移行で悩む誰かの、思考の整理の一助となれば幸いです。

環境

  • MacBook Pro (14-inch, 2021)
  • macOS 15.4.1(Sonoma)
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