はじめに
- 心理的安全性は手段であって目的ではない。
- 心理的安全性を追求した結果、どのような状態になりたいのかが大事(議論できるとか)で、それに足る心理的安全性があれば良い。
- Googleの研究結果は相関関係であって因果関係ではない。
- 心理的安全性が上がればチームが効果をあげるかどうかはわからない。効果とは何かから規定するのがいいんじゃない?何を目指しているの?
- Googleの研究結果は、母集団もGoogle内部に限った話であって、どんな状況でも通用するとは言ってない。
- ただ参考になればと思って公開してくれている。
Googleの研究結果
詳細はちゃんと上のページ見てね。
影響(相関)があったと特定された因子
- 心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
- 相互信頼: 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。
- 構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Google では、短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われています。
- 仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
- インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
それほど影響(相関)がなかったと特定された因子
- チームメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り働くこと)
- 合意に基づく意思決定
- チームメンバーが外交的であること
- チームメンバー個人のパフォーマンス
- 仕事量
- 先任順位
- チームの規模
- 在職期間
注意事項(抜粋)
- どの組織でも同じであるとは限りません。
- 「効果的なチーム」の定義はGoogleが独自に定義しています。確認しましょう。
心理的安全性が語られる文脈
よくある話
- メンバーが懸念を表明することでより良い結論に至れるはずが、メンバーから意見が上げにくい状況にあるために、結論のレベルが低い。
- ヒヤリハットなど含め、現場のまずいことを報告しにくい状況にあるために、隠す方向に行ってしまい、大きな問題に至ってしまう。
そもそもの話
- そもそも心理的安全性を提唱したのはGoogleというのはやや語弊があり、エイミー・エドモンソン博士という方が適切らしい。
- 書籍は以下の2つが日本語訳も出てるのでお勧め。「チームが機能するとはどういうことか」から入るのがいいと思う。
ラーニングゾーンを目指す
引用元: 日経クロストレンド - 心理的安全性が高い=ヌルい職場は誤解 学習するチームの作り方
「コンフォートゾーン」は良さげな表現に聞こえますが、要は「不安はないが学習のない状況(ぬるい状況)」です。
メンバーとして不満はないかもしれませんが、組織としてこの状況は困ります。
目指すのは右上の「ラーニングゾーン」と呼ばれる領域です。(図上は「学習と高いパフォーマンス」)
「心理的安全性」は手段であって目的ではない
心理的安全性だけを追い求めると、ラーニングゾーンではなく、コンフォートゾーンに陥りがちです。
また、心理的安全性とは「お金」みたいなもので、それを価値に変えない限りは、それ自体は何ももたらしてくれません。
心理的安全性を求めたくなる状況下においては、心理的安全性を通して達成したい状態があるはず。
例えば「不具合報告において報告者に負担がかかりがちで隠蔽の方向に行ってしまうのを解消したい」など。
目的はそっちであって、心理的安全性そのものではないはず。
測定・評価
心理的安全性を測定する方法もGoogleで公開されています。
チームの心理的安全性がどの程度のレベルであるかを調べる際、エドモンソン氏は、次の文が自分自身に強く当てはまるかどうかをチームメンバーに尋ねます。
- チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
- チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
- チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
- チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
- チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
- チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
- チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
心理的安全性自体はこれで測定できるのだと思います。
ただ個人的には、その先にある「不具合報告において報告者に負担がかかりがちで隠蔽の方向に行ってしまう」という課題を解消できたのか?で評価する方が良いと思っています。
まとめ
- 心理的安全性は手段であって目的ではない。
- 心理的安全性が必要だと感じた理由を解消することこそが目的であるはず。
次回予告
本記事は、2022アドベントカレンダーです!
次回は、「CI/CDをよく分かってなかった自分に捧ぐ」!