2024年5月、TwilioからDTMF（プッシュ信号）に関するアップデートが発表されました。
Changelog: DTMF Support for A, B, C, D, and W tones
これにより、Play動詞で A〜D や w/W のDTMFトーンが正式にサポートされるようになりました。 これまで 0〜9 と *# しか使っていなかった方にとっては、思わぬ発見かもしれません。
実は自分もTwilioを5年以上使っていますが、このDTMFに数字以外の入力ができることを全く知りませんでした。今回のアップデートをきっかけに、実際に数字以外のDTMFトーンを送受信するサーバーをExpressで構築し、試してみました。
ちなみに、2025年5月20日時点のTwilio Programmable Voice Javascript sdkでは未対応です。
現時点で対応しているのは、
- 動詞の digits 属性(TWIML)
- の sendDigits 属性(TWIML)
- Call Resource の SendDigits パラメーター(REST API)
- Twilio Studio の Say/Play ウィジェット内の Digits
- Twilio Studio の Make Outgoing Call ウィジェット内の Send digits  
構成と目的
今回は以下のようなシンプルな構成で検証を行います。
- Twilio APIから電話を発信（curl）
-
/make-callエンドポイントでDTMFを自動送信 -
/incoming-call側でDTMFの入力を受け取り、ログに出力
事前準備
- Twilioアカウント
- 電話番号を２個購入済み
- Node
- ngrok
- curl
Node.js (Express) 実装
コード
まずはExpressサーバーをセットアップします。
npm init -y
npm install express body-parser
const express = require('express');
const bodyParser = require('body-parser');
const app = express();
app.use(bodyParser.urlencoded({ extended: false }));
// Twilioからの発信時にDTMFトーンを自動送信
app.post('/make-call', (req, res) => {
res.type('text/xml');
res.send(`
<Response>
<Pause length="3"/>
<Play digits="0923712w3WABCD#"/>
</Response>
`);
});
// 着信時にDTMF入力を促す
app.post('/incoming-call', (req, res) => {
res.type('text/xml');
res.send(`
<Response>
<Gather action="/dtmf-handler" method="POST" numDigits="20" finishOnKey="#">
<Say>DTMFトーンを入力してください。最後にシャープを押してください。</Say>
</Gather>
<Say>入力がありませんでした。</Say>
</Response>
`);
});
// DTMFを受信した際の処理
app.post('/dtmf-handler', (req, res) => {
const digits = req.body.Digits;
const callSid = req.body.CallSid;
console.log(`[DEBUG] CallSid: ${callSid}, DTMF received: ${digits}`);
res.type('text/xml');
res.send(`
<Response>
<Say>入力されたDTMFは ${digits} でした。</Say>
</Response>
`);
});
const PORT = 3000;
app.listen(PORT, () => {
console.log(`Server is running on port ${PORT}`);
});
サーバーの起動
このサーバをnpmで起動します。
npm start or node server.js
ngrokを使って公開します。
node http 3000 --subdomain=testsubdomain
Twilio側の設定
次にTwilioコンソールで着信する電話番号に、上記のサーバで構築したTwiMLのURLを設定します。
- Twilioコンソールにアクセス
- Phone Numbers→Manage→Active Numbersで今回受電で使う電話番号をクリック
- Configureタブ
- A Call Comes inをWebhookで設定、URLにNgrokのURL＋サーバで作った「/incoming-call」を入れる
htttps://<subdomain>.jp.ngrok.io/incoming-call
電話を発信
curlコマンド
TwilioのREST APIを使って電話を発信し、指定エンドポイントにアクセスさせます。
curl -X POST https://api.twilio.com/2010-04-01/Accounts/<account_sid>/Calls.json \
--data-urlencode "To=+8150XXXXXXX" \
--data-urlencode "From=+8150YYYYYYY" \
--data-urlencode "Url=https://your-ngrok-url.ngrok.io/make-call" \
-u <account_sid>:<your_auth_token>
| パラメータ | 説明 | 値 |
|---|---|---|
| To | 電話の架電先番号 | +8150XXXXXXX(Twilioの電話番号#1) |
| From | 電話のかけ元番号 | +8150YYYYYYY(Twilioの電話番号#2) |
| Url | TwimlのURL | https://<subdomain>.jp.ngrok.io/make-call |
DTMFトーンの種類と意味
| トーン | 説明 |
|---|---|
| A〜D | 特殊な音声通信機器制御、レガシーPBXや軍用装置向けに設計されたトーン |
| w | 0.5秒の待機を意味するポーズ |
| W | 1秒の待機を意味するポーズ |
これらのトーンを組み合わせることで、より複雑なIVRシナリオや、レガシー機器とのインターフェースを構築することが可能になります。
実行結果
DTMFトーンを送信後、受信側のログに以下のように表示されます。
[DEBUG] CallSid: CAxxxxxxxxxxxxxxxx, DTMF received: 09237123WABCD#
また、音声ガイダンスで「入力されたDTMFは 09237123WABCD# でした」と返されます。
使用頻度とユースケースについて
Twilioユーザーの多くは 0〜9、*、# のトーンで十分なケースがほとんどです。
しかし、以下のような場面では A〜D や w/W トーンが必要になるそうです。
- 特殊なIVRメニューの制御
- 古いPBXや独自開発の音声装置との接続
- ハードウェアデバイスやゲート制御機器へのコマンド送信
- システムの応答速度に合わせたDTMF送信の調整
実際の使用頻度は高くないかもしれませんが、「既存システムとの連携」や「特定のプロトコル要件」に直面したときに、このアップデートが非常に重要になる場面があります。
もしあなたの業務で、レガシーIVRやハードウェア制御機器と接続するような場面があれば、今回のアップデートが突破口になる可能性があります。
まとめ
- TwilioがPlay動詞でのABCD/Wトーン送信に対応
- Node.js + Expressで送受信の実装は容易
- 特定の業務や既存システムとの接続において、この機能が有効に活用できる
今まで使ったことがない方も、検証環境でぜひ一度試してみることをおすすめします。