はじめに
Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018年12月22日の投稿です。
- もしVRのことわからないという人がいたらごめんなさい。VR自体の説明はしてません。
- 技術的な細かい解説は長くなりすぎるので今回はしませんが、質問がありましたら喜んでお受けします。
軽く自己紹介
現在フリーランスのプログラマーで、元時代工房です。
アクセシビリティで知ってることは時代工房仕込みです。
FUNCTION TALES 所属。
3〜4年前ぐらいからCGの勉強も初めて、VRとかゲームの開発は2年前ぐらいからやり始めました。
BlindStation とは
アクセシビリティの祭典2018に出展した VRコンテンツです。
VRで全盲の視覚障害者の体験をしてもらいます。
架空の地下鉄の駅が舞台で、制限時間内に電車に乗れればクリア、
時間がすぎて電車が発車してしまうとゲームオーバーです。
先にコンテンツの詳しい説明を読みたい方は完成したBlindStationへ。
開発環境・体制・期間
環境
Unreal Engine 4 (ゲームエンジン)
HTC VIVE (VR デバイス)
あとは Autodesk Maya(3Dモデリング) Adobe 製品(UI関連) など
体制
3Dモデルのデザインと制作を1名
プログラミングを1名(僕)
他、ナレーションなど音声を読んでもらった方2名
期間
だいたい2週間ほどだったと思います。
きっかけ
最初はアクセシビリティとは関係ないところから始まりました。
VR でコンテンツ、ゲーム作ってる時に一番問題になるんですが。
酔うんです、VRって。
ちょっと移動しただけでもすぐ酔います。
よく「空を自由にとびたいな〜♪」的なことを言われるんですが(気持ちはわかるし僕もそうなんですが)
そんなことをすれば地獄のVR酔いがあなたを襲います。
- 「テレポートにすれば酔わない」
- 「視界をある程度限定すればマシ」
- 「椅子をゆらせばいいんじゃない」
- 「無重力空間だったらいけんじゃね」
等々、色々と手はありますし考えたんですが。
追い込まれた挙句
「見えなければ、どれだけ移動しても酔わない」
という本末転倒な結論に。
ですが、そこから
「見えないなら、見えない人のことを体験してもらったらどうか?」
というところから、まずは試作品を作りました。
試作品は迷路を作って、そこで何人かに遊んでもらいました。
※最初に作った試作品
調べたこと
アクセシビリティの祭典にブースを出すことが決まって、
本格的に作り始めることになりました。
コードを書くより、デザインを始めるよりも、何よりも先にリサーチです。
全盲の視覚障害者の方にインタビュー
作ろうと思ってるものを説明し、実際に何を頼りに歩いているのかなどをお聞きしました。
点字ブロックや白杖を購入
※実際に購入した白杖と点字ブロックです。
実際の駅の調査
京都の地下鉄の駅で写真や動画を撮りまくってました。
壁や床に向けて撮ってたので、かなり怪しかったと思います。
完成したBlindStation
駅構内、改札の外からスタートです
(※この画面は、外部モニターに出力してる画面です。左上の赤枠が、実際に体験してる人の視点です)
実際の体験している際の視点はこんな感じです。
白杖で触った場所がハイライトします。点字ブロックに触れると、コントローラーのバイブレーションで手に感触が伝わります。
右手は、お金を出したり、点字を読むのに使います。
※うけがよかった、100円玉が無限に出て来る財布
※点字は、触れた箇所からもじが浮かび上がります。
いざ出展
出展当日は、たくさん体験する人が来てくれました。ありがとうございました。
やってもらってわかったこと
- 券売機にお金を入れるアクションはほぼ説明なしでできる
- 電車に乗り込めた人は 50%
- 電車がどちらのホームにつくかを気づけた人は 0%
- 階段中腹の踊り場で戸惑う人が多い
- 聴覚障害の人もやってくれた → 字幕を用意しておけばよかった
- 視覚障害者の人もやってくれた → 音声の充実がかなり必要
特に面白かったのが「3. 電車がどちらのホームにつくかを気づけた人は 0%」なんですが、ホームに降りた時点で左右どちらに目的の電車が来るのかわかってた人はいませんでした。
点字案内板と階段。ホームに降りてからもホームドアに書いてあるんですが、制限時間があるので焦ったのと、普段からそこにあることを知らないんだと思います。
「4. 階段中腹の踊り場で戸惑う人が多い」は、階段中腹の踊り場まで降りた時点で、ホームに降りたと思った人が多かったのと、次の階段に差し掛かるまでの距離が、白杖が届かない距離で、次の点字ブロックがないと思って戸惑って止まってしまう人が多かったです。実際には階段を降りて行くときは怖くて手すりを使うと思いますので(今回は真ん中から降りる人が多かった)、バーチャルでやってるならではの現象だったのかと思います。
5,6は改善を求められる内容でしたし、視覚障害の方に体験したいと言っていただいたのは驚きました。
出展側で大変だったこと
- 安全性の確保に一人付いていないといけない
- ヘッドホン越しの説明は大変
体験中は完全に目が覆われるので、周りのものにぶつかったりしないように、一人は見ていないといけません。
終わった後にゆっくり感想を聞いたり、ブースの他ものも説明するとなったら一人では厳しいですね。
あとは、ヘッドホンをしている状態の人に外から説明するので、終始大きな声を出していましたので、次の日は声がカスカスになりました。中に音声を送れるマイクなどは必須だと思います。
まとめ
入り口に立ってもらうことが大事
視覚障害者の体験は、目を閉じればできるんです。
でも、何のきっかけもなければやらないですし、公共の場所でやると危ないです。
VRだったら、安全に。興味を持ってもらえるきっかけにもなりやすいんじゃないでしょうか。
これまで見えてなかったものが見えるようになった
前よりも点字案内板や点字ブロックが目に入るようになりましたし、
視覚障害者の方が困ってる事への理解も深まったと思います。
自分も見てる世界が変わったので、少しでも体験してもらった人に同じ感覚になってもらえれば嬉しいです。
思わぬ収穫
主催者の車椅子の方に見える状態でやってもらったが、かなりテンションが上がって楽しんでもらえました。
「初めて階段降りた」とおっしゃってました。
車椅子の方が色々なところに行けたり、障害者の方が現実ではできないことがVRではできるようになるというのもひょっとしたらアクセシビリティに関係する事になるのかもしれません。
明日のWebじゃないアクセシビリティ Advent Calendarは、junnama.nodaさんの「Plain Englishとやさしい日本語のはなし」です。