はじめに
複素解析の講義を履修しました。留数を求める課題を解いてみたので、その過程の備忘録を残します。あっていないかもしれませんが、何かお気づきの点がございましたらご指摘ください。
留数について
テイラー展開は微分の操作が含まれていることからわかるように正則な点のまわりでしか機能しません。一方ローラン展開はその結果などを活用して非正則点(特異点)のまわりでも機能します。
留数とはそのローラン展開で求まる第-1項目というべき項の係数です。この後求めるので覚えなくてもいいです。
またはロピタルを繰り返して特異点への極限を得る方法でも手に入ります。
内容: 以下の留数を求めよ。
問題1
f(z) = \frac{1}{sin(z)}
z-n\piとの積の極限を求めているのは係数だけに用があるからです。
Res(\frac{1}{sinz}) = \lim_{z \to n\pi} \frac{z-n\pi}{sinz} \\
= \lim_{z \to n\pi} \frac{1}{cosz} \\
= (-1)^n \\
問題2
f(z) = tan(z)
Res(tanz) = \lim_{z \to \frac{(2n+1)\pi}{2}}(z-\frac{(2n+1)\pi}{2})\frac{sinz}{cosz} \\
= \lim_{z \to \frac{(2n+1)\pi}{2}}\frac{zsinz-\frac{(2n+1)\pi}{2}sinz}{cosz} \\
= \lim_{z \to \frac{(2n+1)\pi}{2}}\frac{sinz+zcosz-\frac{(2n+1)\pi}{2}cosz}{-sinz} \\
= \lim_{z \to \frac{(2n+1)\pi}{2}}\frac{sinz}{-sinz} \\
= -1 \\
おまけ
Cを4点\pm 1 \pm \pi i を頂点とする正の向きの長方形とするとき,
\oint_C \frac{1-e^z}{1+e^{2z}} dz を求めよ。
$1 + e^{2z} = 0$より, $z = \frac{(2n + 1)\pi i}{2}$と求まる。C内部の特異点は$\pm \frac{\pi i}{2}$である。
Res(\frac{\pi i}{2}) = \left[ \frac{1-e^z}{(1+e^{2z})'} \right] = \left[ \frac{1-e^z}{(2e^{2z})} \right] = \frac{-1+i}{2} \\
Res(-\frac{\pi i}{2}) = \left[ \frac{1-e^z}{(1+e^{2z})'} \right] = \left[ \frac{1-e^z}{(2e^{2z})} \right] = \frac{-1-i}{2}
\oint_C \frac{1-e^z}{1+e^{2z}} dz = 2\pi i(\frac{-1+i}{2} + \frac{-1-i}{2}) \\
= -2\pi i
というように線積分を行うことができる。
問題1の別解法
ローラン展開は特異点のまわりで級数展開する必要があることを忘れがちなので注意です。今回でいうと$sin(z)=0$で非正則でありその$z=n\pi$が特異点です。(不定形となる場所=特異点です。)
つまり、
\frac{1}{sin(z)} = ... + \frac{?}{z-n\pi} + ...
のような形で終える必要があります。それでは始めます。
sin(z) = z - \frac{z^3}{3!} + \frac{z^5}{5!} - ... \\
\frac{1}{sin(z)} = \frac{1}{z} * \frac{1}{(1 - \frac{z^2}{3!} + \frac{z^4}{5!} - ...)} \\
\frac{1}{1-w} = 1 + w + w^2 + ...よりw = (\frac{z^2}{3!} - \frac{z^4}{5!} + ...)として,\\
\frac{1}{sin(z)} = \frac{1}{z} * (1 + w + w^2 + ...) \\
= \frac{1}{z} * (1+ \frac{z^2}{3!} - \frac{z^4}{5!} + ... + \frac{z^4}{3!3!} + ... ) \\
= \frac{1}{z} * (1+ \frac{z^2}{3!} + \frac{7z^4}{360} + ...) \\
\frac{1}{z} + \frac{z}{3!} + \frac{7z^3}{360} + ... \\
計算が面倒のためwとw^2のはじめの項のみ書きました。係数は多項定理で求めます。
sin(z) = sin((z - n\pi) + n\pi) \\
= (-1)^n * sin(z - n\pi) \\
\frac{1}{sin(z)} = (-1)^n * \frac{1}{sin(z-n\pi)} \\
=\frac{(-1)^n}{z-n\pi} + \frac{(-1)^n}{3!}(z-n\pi) + \frac{(-1)^n7}{360}(z-n\pi)^3 + ... \\
この$\frac{(-1)^n}{z-n\pi}$が第-1項です。つまりこの項の係数$(-1)^n$が$\frac{1}{sin(z)}$の留数です。(nは整数です)
このように変形を繰り返して求めることもできました。
問題2の誤った解法
f(z) = \frac{sin(z)}{cos(z)}
sin(z)は特に問題なし。cos(z)は$z = \frac{(2n+1)\pi}{2}$で不定形を作ることは明らかです。よってそのまわりでローラン展開します。
まず$\frac{1}{cos(z)}$の留数を求めます。
cos(z) = cos((z - \frac{(2n+1)\pi}{2}) + \frac{(2n+1)\pi}{2}) \\
= (-1)^{n+1}sin(z - \frac{(2n+1)\pi}{2}) \\
留数のみほしいので$z - 特異点$と$\frac{1}{cos(z)}$の積で極限を求めます。
z を \frac{(2n+1)\pi}{2}に近づけます。\\
\lim \frac{{z - \frac{(2n+1)\pi}{2}}}{cos(z)} \\
= (-1)^{n+1} \lim \frac{{z - \frac{(2n+1)\pi}{2}}}{sin(z - \frac{(2n+1)\pi}{2})} \\
ロピタルの定理を用います。\\
= (-1)^{n+1} \lim \frac{{1}}{cos(z - \frac{(2n+1)\pi}{2})} \\
= (-1)^{n+1}
$sin(z)$についても同様の極限を求めます。$(-1)^n$と求まります。
二つの積は-1の奇数乗なのでtan(z)の留数は-1と求まります。
偶然あっていただけでした。ばらして求めるのはよくないです。
おわりに
留数定理で複素積分が簡単に解けるらしいです。実関数積分にも応用できるらしいので勉強を続けたいです。
知恵袋でお世話になった方々に感謝します