「もうかりまっか?」と聞かれたとき、ほとんどの人は「ぼちぼちでんな!」と言いたくなるでしょうか。これは、質問に対する定番の返答があるからです。
私は、それと同じように、上司からの「どうだった?」には「楽しかったです!」という回答でいいと考えています。この記事では、その理由についてお話したいと思います。
「どうだった?」という暴力
もちろん、上司の「どうだった?」には「きちんと状況を説明してください」という意図が含まれているんですが、ぶっちゃけて言うとそんなものはクソくらえでございます。
だってそうでしょう。コミュニケーションは双方の努力によって進むものです。上司がその努力を丸投げするというのなら、こちらもそうさせてもらっても構わないはずです。
ここでいう『努力』とは、お互いにコミュニケーションコストを払っているか?ということです。「どうだった?」という簡単で曖昧な質問というのは、回答者に「多くの話題の中から、相手が何を求めているかを確認しながら進めていく」というコストを強制していることになります。
無能な上司の多くは、この「コミュニケーションコスト」というものを理解していないか、もしくは知らないため、コミュニケーション能力に問題があります。
報告のレベルは聞き方に依存する
多くの会社で新入社員の研修が終わるこの時期、Twitter(現X)でも風物詩のように「新入社員の報告レベルが低い!」と話題になっています。
「新入社員に「研修はどうだった?」と聞いたところ、「楽しかったです!」としか回答されなかった。」
こんな話が出たときに、大半の人は「あー…頭の悪い子が入ってきたんだなー」と思ってしまうようです。これに私はイライラします。いやいや!ちょっと待てよと。悪いのは質問者でしょう?と思うわけです。質問が幼稚すぎるでしょう?と。
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「研修でやったこと、研修のなかで起こったこと」なんていうのは、様々な記憶が混じった、非常にぐちゃぐちゃな状態で保存されているわけです。それに対して漠然とした質問をされても、曖昧な回答になってしまうというものです。
さらに、人は、出された質問が理解できない場合、それを簡単な質問に置き換えてしまいます。例えば、「半年後の総理大臣の支持率はどれくらいだと思いますか?」と聞かれた時に、「今の政策の人気はどれくらいか」を答えてしまうようにです。
つまり、新入社員の中では「研修はどうだった?」は「楽しかったか、楽しくなかったか」もしくは「しんどかったか、楽だったか」などのような簡単な質問に置き換えられてしまうわけです。
上司との会話で緊張し、「早く答えなきゃ!」と焦ってしまう新入社員…たった一言の短い質問ですし、「どうだった?」「楽しかったです!」となるのは会話のテンポ的にも自然な気すらしてきます。
なので、そんな幼稚な質問をしておいて、回答に期待をし過ぎるのはどうかと思うわけですよ。挙句の果てに「今年の新入社員は頭が悪い」というのです。
それは上司という立場だから「なんかあの人苦手だなぁー」で済まされているのであって、家族や友人にも同じ態度であるのなら、下される評価は「あの人は面倒くさい」「コミュニケーション能力が低い」というものになるでしょう。
「今日のご飯は?」「なにか面白いことない?」「最近どう?」など、日々の会話の中でも他人に負担をかけていることは想像に難くありません。
上司のソレは直らない
残念ながら、40~50歳を超えても、そのような無能な質問をする上司は、一生直らない可能性が高いです。理由について、この記事では2つほど取り上げます。
①自分が悪いということを自覚しなければならない
これができる人が非常に少ないです。特に、大人になればなるほど、まず「相手が悪い」から議論がスタートするので、そもそもお話になりません。万が一、気が付けたとしても、半世紀近くそのやり方で生きてきた人が、急にアップデートなんてできるものでしょうか。
かなりの訓練と、それに付き合ってくれる人が必要です。
②無能な質問をしていることを誰にも指摘されない
そもそも、誰も何も言ってくれなくなります(あるいは諦められます)。やはり、歳を重ねるごとに学ぶ機会は少なくなります。実際に、我々も上司が無能な質問をしていても「幼稚な質問っすね、何を答えればいいっすか?」なんて言うことはないでしょう。
もはや「その人を改善させたい!」と思う人は現れません。面倒くさいから関わらないと、むしろ距離を置かれてしまいます。
とはいえ上司だしね…こっちが頑張るか。
と、ここまで上司をボロカスに言ってきましたが、最後に「それでも上司だから、こっちが積極的にコストを払ったほうがいいよね」ということを書いて締めようと思います。
「でも、実際は上司にはきちんと説明しないといけないですよね?」
と、多くも思ったのではないでしょうか。つまり、この記事はあくまでそういうメンタル面での重要性を強調するもので、内容的にはエンタメの要素であると。
はい。正解です。
残念ながら、上司が上司である限り、我々は奴隷のように配慮をする(積極的にコミュニケーションコストを払っていく)必要があります。なぜなら、あなたのほかにも配慮がうまい奴隷がいるからです。もし、そんな中で、あなたが配慮を怠ると相対的に「無能な奴」「できない新人」というレッテルを貼られてしまうでしょう。
ここまでボロクソに言ってきた私でも、普段は腰を低くして「えへへへ、こんな回答でよかったでしょうか」みたいな感じの笑顔でへらへらしてるわけですよ。これは避けることができません。
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ただ、メンタル的には「どうだった?」には「楽しかったです!」という回答でいいと思っています。これは、自分が「やらされている」と感じるのか「やってあげている」と感じるのかの違いで、精神的な健康に大きな影響を与えます。
もちろん、「やってあげている」と思う方が、自己肯定感が高まり、精神的に健康になります。「やれやれ、やさしい俺様が残念な上司のために1から10まで教えてやるか」と思えるようになるといいですね。
また、上司の質問にきちんと回答できなかったとしても「質問も悪かったしな」と少しでも思ってもらえればいいと思います。最近、そういうことで鬱になったりすることもあるので、抱え込んでも仕方ありません。
ただし「自分は悪くない」と開き直ってしまうのは良くありません。その上司と同じ道をたどることになるので、絶対にやめましょう。
以上です。