はじめに
文化庁が公開している『公用文作成の考え方』が、「分かりやすい文章」を書くうえで非常に参考になったため、オススメしたいです。
───とはいえ、ほとんどの人は興味がないかもしれません。
そこで、内容を端的にまとめ、サクッと読めるようにしました。この記事を読んで、「興味が出た!」「文章を書くのが好き!」という方は、ぜひ原文も読んでみてください。
出典:文化庁.「公用文作成の考え方(建議) 」(2022/1/7)- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf
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分かりやすい文章を書くために、大切な 3 つのポイントがあります。
☆ポイント
- 心がまえ - 読み手を意識し、伝わりやすい表現を心がける
- 文章の書き方 - シンプルで論理的な構成にする
- テクニック - 工夫やコツを活用する
それぞれのポイントについて、非常に基本的なことが述べられています。
心がまえ
読み手とのコミュニケーションを意識する
・伝えたいことを一方的に書き連ねるものではない。読み手がなにを知りたいと考えているのかを想像しながら作成する。必要な内容を誤りなくかつ過不足なくつたえる。
・「読み手が誰であるのか」をつねに考えながら書く。むしろ、読み手が限定されない場合の方がおおいと考え、ひろく通用する言葉を使う意識をもっておくとよい。
読み手に対応する
・特別な知識を持たない読み手であっても理解できる言葉を使ってつたえる。義務教育で学ぶ範囲の知識で理解できるように書くよう努める。特有の用語や表現については、分かりやすく言いかえる。
・「分かりやすく言いかえる」ときは、正確さを保つことを意識する。誇張された情報がないか、必要な情報までを省いていないか等、十分点検する。正確さと厳密さのバランスをとる。
遠回しな書き方は避ける
・伝えるべき重要なことは、はっきりと述べる。主旨をできるだけ明確に示し、読み手にさっしてもらわないと伝わらないような書き方はしない。
伝えることを絞る
・伝えるべき情報を絞り込んでおく。文章の量がふえると、分かりやすさは失われる。正確に誤りなく書こうとすると、全て詰め込もうとしてしまいがちである。まずは伝える情報を厳選するよう心がける。
敬意を伝える
・誰に対しても敬意が伝わるよう敬語を適切に用いる。敬体(です・ます体)を基本とし、敬意をあらわすよう意識する。情報を簡潔に伝えるときは、「である・だ」も使用する。
・過度の敬語を用いると、伝えるべき内容が分かりにくくなる。「申します」「参ります」は読み手に配慮する特別な場合を除いては使わない。丁寧さをだしたいときにも、「ございます」は用いない。
違和感や不快感を与えない言葉をさける
・偏見や差別につながる表現をさける。
・適切でない例えはすべきでない。中心地やそれが多く発生する場所を「~のメッカ」とあらわすことがある。メッカは宗教上の聖地であり、「交通事故のメッカ」などと用いるのは適切でない。
・特定の用語をさけるだけでなく読み手がどう感じるかをかんがえる。「~くらいであれば」「~にも可能である」といった言い回しは、その行為や能力を軽んじる意味合いと読み取られかねない。
文章の書き方
標題、見出しの付け方
・標題(タイトル)には、主題となる案件を示す言葉を入れる。鍵となる言葉は、できるだけ具体的なものにする。また、その主題についてどのようなメッセージを送るのか文書の性格を示す。
・見出しでは、回りくどい言い方や飾りの多い言葉遣いは避け、内容を端的に言い表す。見出しを追えば全体の内容がつかめるようにする。どのような順で情報を得るのが読み手にとって都合よいのかを意識しながら文書を構成する。
文書の構成
・結論は早めに示し、続けて理由や詳細を説明する。結論は、できれば最初の段落で示しておく。最後まで読まないと何を言おうとしているか分からないような書き方は避ける。
・読み手の視点で構成を考える。求められる情報を見極める。読み手の利益や不利益につながるような文書では、進めるべき手順に沿って書く。する必要のないことを明示することによって、読み手の不安を軽減できる。
文の書き方
・一文を短くする。一文を短くすることによって、読み取りにくい文にすることを防ぐことができる。適当な長さは一概に決められないが、50~60 字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよい。
・一文の論点は、一つにする。一つの文で扱う論点は、できるだけ一つとする。論点が変わるときには、文を区切った方が読み取りやすい。また、一文の中に主語述語の関係を幾つも作らないようにする。
・三つ以上の情報を並べるときには、箇条書を利用する。
・日本語では、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」という順で書かれることが多い。この語順を守っておけば、おおむね読み取りやすい文になる。
・主語(「何が(は)」)と述語(「どうする」「どんなだ」「何だ」)との呼応が読み取れるようにする。日本語の文では、主語が省略されることがあるが、それによって誤解が生じることもある。
・接続助詞の「が」や中止法を多用する書き方は避ける。そうすることで結果的に文は短くなる。「の」「に」「も」「て」などの助詞を連続して使うと、文が長くなるだけでなく稚拙な印象を与えてしまうので避けるほうがよい。
・修飾節は長いものから示すか、できれば文を分ける。
・受身形をむやみに使わない。言われる」「述べられる」のような受身形の表現は、文の構造を難しくしたり責任の所在を曖昧にしたりする場合がある。受身形の使用が効果的な場合もある。主張や意見を客観的に見せることができる。
・「~しないわけではない」のような、二重否定はどうしても必要なとき以外には使わない。
・主語と述語、修飾語・修飾節と被修飾語、目的語と述語など、係り受けの関係がある語は、近くに置くと関係が分かりやすい。同様に、指示語を用いるときにも、指示される内容の近くに置く。
■ 筆者の補足
修飾節の話と、係り受け関係を近くに置く話は、両立しない場合があります。そういうときは、修飾節のルールを優先します。問題の本質は、いわゆる「主語・述語」関係ではないのだ。たとえば次のような例を考えてみる。
Ⓐ明日はたぶん大雨になるのではないかと私は思った。
Ⓑ私は明日はたぶん大雨になるのではないかと思った。右の二つでは、Ⓐの方がイライラしなくて読める。なるほどこの場合は、いわゆる「主語・述語」がⒶの方が近いからわかりやすいともいえよう。では、次の例はどうか。
ⓐ明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した。
ⓑこの地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した。この二例では、明らかにⓑの方がわかりやすい。しかしいわゆる主従関係からすれば、ⓐの方がわかりやすくなければならぬはずである。これは実は当然であって、「主従関係」などというものは、日本語の作文を考える時、百害あって一利もないのである。
本多勝一 著, 『日本語の作文技術』P56(朝日文庫、1982年)
テクニック
句読点や括弧の使い方
・点には「。」読点には「、」を用いる。横書きでは、読点に「,」を用いてもよい。
・【】は項目を示したり、注意点や強調すべき点を目立たせたりする目的で多く使用される。
・括弧は、()(丸括弧)と「」(かぎ括弧)を用いることを基本とする。()や「」の中に、更に()や「」を用いる場合にも、そのまま重ねて用いる。
・括弧の中で文が終わる場合には、閉じ括弧の前に句点(。)を打つ。引用部分や文以外(名詞、単語としての使用、強調表現、日付等)に用いる場合には打たない。
・①文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。②二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。③そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略してもよい。
①の例:当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。
②の例:当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)
③の例:年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。
算用数字を使う横書きか
・横書きで算用数字を用いる場合には「3か所」「7か月」と平仮名を用いて書く。一般の社会生活でよく使われる「3ヶ所」「7カ月」といった表記はしない。
・概数を示すために漢数字を用いる場合には、「数箇所」「数十箇所」のように「箇」を使って書く。
符号の使い方
・「?」「!」の後に文が続く場合には、全角又は半角1文字分空ける。
・「:」「―」「‐」「~」「…」は文書内での用法を統一するとともに、むやみに多用しない。「―」(ダッシュ) は文の流れを切り、間を置く。発言の中断や言いよどみを表す。
・矢印や箇条書等の冒頭に用いる符号や、単位を表す符号を用いる場合は、文書内で用法を統一して使う。
表現の工夫
・文書の重厚感や正確さを高めるには、述部に漢語を用いる。訓読みの動詞(和語の動詞)を漢語にすると、効果が得られることがある。ただし、分かりやすさ、親しみやすさを妨げるおそれがあることに留意する。
・逆に、分かりやすさや親しみやすさを高めるには、述部に訓読みの動詞を用いる。ただし、訓読みの動詞は意味の範囲が広いため、厳密に意味を特定しなければならないときには不向き。
・常体には「である・であろう・であった」と「だ・だろう・だった」の形がある。「である・であろう・であった」は書き言葉専用の文体であり、論理的に結論を導き出すような文章にふさわしい。「だ・だろう・だった」は敬意を示す必要のない相手に対して、日常会話でも用いられるため、親しみやすさを示すために活用する場合もある。
・「べき」は、「~するべき…」ではなく「~すべき…」の形で使う。見出しや箇条書の文末を「~すべき」で終える形が見られることがあるが、「べき」は連体形であり、本来は後に「である」「もの」などを付ける。
以上です。
Appendix
そのほか「分かりやすい文章」を書くための、最強と名高いサイトはこちら。
エリート的な文章の書き方.(2012)- http://disadvantaged.web.fc2.com/ :文の構造的欠陥に詳しい。コラム・エッセイ・論文等の単なる雑文以上の文章を書く人向け。
株式会社ICS. 「エンジニアのための、いますぐ使える文章校正テクニック」(2023/3/16)- https://ics.media/entry/19096/ :エンジニア向けの文章校正テクニック。メールやチャットにも使える、文章の推敲手引き。