はじめまして! @h_sugiです。
ゲーム業界に企画~QAと関わり、近年はスマホゲームを中心としたレビュー業務に携わってきました。数年にわたってユーザー目線で定性・定量含めて300件以上のレビューをしてきた中での、日本国内のスマホゲームの流れを振り返ってみたいと思います。
関係者の方にとってはいずれも周知のことで今更感があるかもしれませんが、レビューをしてきた側との答え合わせ的な観点でまとめてます。
ちょっと長めですが、ぜひ最後までお付き合いください。
1.長期運営タイトルによる上位固定化~新規参入の難しさ
これはもう皆さん周知のとおりですね。ランキング上位が長期運営タイトルにほぼ固定され、新規参入の余地がかなり少なくなってきました。最近の新規参入では『ウマ娘』や『原神』ぐらい。
ユーザーの限られたリソース(時間やお金)の奪い合いとなっている以上、どうしても継続して遊んでいるゲームから乗り換えのハードルは高くなってしまっています。
実際に過去レビューで5段階中オール3という場合を例にとると、2015年当時では及第点と言えましたが、現在の基準では「競合タイトルからの乗り換えには至らないため厳しい」という評価になってしまいます。
2.海外メーカーの台頭~オタク文化は国境を超える
これも皆さん周知の通り。『原神』をはじめとして、最近のIP作品以外の上位ランキングはほぼ海外メーカーじゃないかというぐらいです。
よく言われるのは技術力の差。日本国内がキャラクターや、それらを獲得するためのガチャを中心としたサイクル部分にプレイバリューを見出すゲームが多かった一方で、海外メーカーはPCオンラインゲームで培ったノウハウをスマホに最適化することで、3D表現などの技術を向上させてゲームジャンルの幅を広げていたように感じます。
もちろんそれもあると思うのですが、もう一つの理由として挙げたいのは、海外クリエイターが日本人と同じ感覚で、日本人の嗜好に合うゲームを作れるようになったことも大きいと考えます。
日本のアニメ等に触れて育った海外のクリエイターにとって、日本人とのオタク知識差は皆無で、そういった人が現場で実権を持つ年齢になり、技術を手にし、熱意をもって自由に作るものには、それ相応の魅力が宿るものだと思います。
私が海外メーカーのスマホゲームで日本との文化的なギャップが無いことを実感したのは、2017年にリリースされた『陰陽師』というゲームです。日本のメジャーな声優陣を使っていることもあって、海外メーカーであることを言われないと分からないレベルでした。
もう一つ、海外メーカー(特に中国)との差としては、あちらの方が手が早いですね。とりあえず作って公開し、不評な部分を逐次改修していくやりかたなので、ユーザーのニーズに素早く対応できるようで、これもPCオンラインゲームの制作スタイルの影響なのかもしれません。
3.IPコラボは人気だが二極化~幅広い層に人気のIPしか生き残れない?
ゲーム内イベントで漫画やアニメなどのIP作品とのコラボは相変わらず人気で、売り上げの増加や休眠ユーザーの復帰には一定の効果はあります。ただ、IPを冠した作品となると、一時期は様々な作品を扱ったゲームが多かったのですが、最近はドラクエ/FF/ドラゴンボール/ガンダムなどの、ファン層が広く絶対数の多い超メジャー作品に限定され、それ以外のIP作品ファンに向けたヒットゲームを作ることは難しくなってきているように感じます。
そういった意味では、今後リリースが予定されている『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』には注目するとともに期待しています。
IP作品を扱ったスマホゲームの変遷
- 初期 :ゲームシステムの新規性などで差別化
- 中期 :ゲームシステムが成熟したためIPによる差別化
- 現在 :長期運営タイトルが強く中途半端なIPでは太刀打ちできないが、超人気IPを使うには相応の資金が必要
もはやIPの利用は特定のファンに向けたものではなく、広い世代の共通言語として敷居を下げるためなのかもしれません。
『鬼滅の刃』は今現在絶大な人気ですが、以前に拝見したあるサイトでのアンケートでは漫画の読者は10代男性が中心でした。
一方で、例えば『ガンダム』は40年以上の歴史でいくつものブームの山があるのでファン層が広く、トータルでは大衆文化レベルだと言えます。
スマホゲームを数多くレビューしてきた中で、IP作品も数多く扱ってきました。IP作品を評価する際に重視するのは「IPファンに対して新たな価値を提供できるか?」です。IP作品を「再利用」ではなく「創造」しているかとも言えます。
IP作品が多くあった中期には、過去のアニメ作品のカットシーンを見せるものも多く、一部ファンには受けが良かったのですが、最終的には「DVD観ればいいや」となってしまいがちです。これが「再利用」のケース。
一方で「創造」のケースの代表例は『FGO』ですね。奈須きのこ氏の新作発表の媒体が、小説からゲームに代わったとも言えるレベルで、ファンにとって絶対的な価値を提供しています。
4.ゲームのリッチ化~マルチプラットフォーム化
これはスマホ端末の技術進歩からある程度想像できた部分ですが、いまやマルチプレイヤーシューティング(FPS/TPS)もスマホで遊べる時代になりました。PCやコンシューマゲームの技術的進化はある程度頭打ちで鈍化してきており、感覚的にはスマホゲームが追いついた感じです。グラフィックやフレームレートの差は依然あるものの、遊べるゲームに差が無なくなってきています。近年では、PCとコンシューマゲーム機のマルチプラットフォームに、スマホゲームも加わるようになってきました。
この技術進化も、海外メーカーが日本の上位ランクに増えてきた一因と言えると思います。
5.マネタイズの多様化~これからは世界標準に近づく?
そもそも日本のガチャ文化が特殊という話でもありますが・・・。
これも海外メーカーのゲームの増加の影響が大きいと思います。例えば『アズールレーン』にもガチャはありますが、無課金で全ユニットが集まる程度のチケットが手に入ります。キャラの衣装(1000円前後)販売が収益の中心と思われるため、その衣装を着せるキャラを全ユーザーが獲得状態にしておく下地として、ほぼ無料で配布という戦略です。
結果として、日本のガチャが相対的に割高に感じられるようになります。ガチャの緊迫感を楽しみとしている一部の上位課金者を除くと、ガチャ以外の課金システムにも広がっていくのは自然の流れなのかもしれません。
主な課金の目的(効果)
- ユニット獲得 :ガチャ。一部の国では規制の対象。強さがインフレしていくので、(新規参入が少ないと)徐々にコアファンに固定化されていく。
- 効率化 :時短や獲得率アップなど。VIP制度や定額会員もこの恩恵を目的としたものが多い。決められた上限までの強化もこちらに含まれる。
- 強化(上限突破) :強化した分だけ際限なく強くできる仕組みの場合、お金をかけたほうが圧倒的に強いマネーゲームとなる。収益を支える上位課金者にとっては、課金の恩恵を最も実感できる。
- 着飾り :アバターなど性能に直結しないもの。PvP型のゲームは基本これを採用。
「強化(上限突破)」は、『マフィア・シティ』や『ロードモバイル』などのストラテジータイプのMMORPGによくみられる仕組みで、上位課金者に「お金で世界を動かす快感」を堪能してもらうことで成立するシステムです。
あくまでも個人的な意見なのですが、ゲームが長期運営型(長い付き合い)になってきている以上、単にお金を払う/貰うという関係ではなく、「応援するからこのお金でもっと面白くしてね」という方が関係が継続しやすいように感じます。例えばガチャに対して後ろめたいなというユーザーも居ますので、「効率化」や「着飾り」などガチャ以外への課金も整備して、お金を使う選択肢を増やしていく方が、長期的には安定した収益につながるのではないかと思います。
以上、ここ数年の振り返りでした。
これからのゲームを予想してみると、ツール類の発展と、国境やプラットフォームの垣根がなくなってきたことから、より自由に様々なゲームが生まれてくる可能性が増え期待感がいっぱいです。
日本の良いところを活かしつつ、世界で評価されるゲームがこれからもどんどん出てくることを楽しみに、一ゲームファンとして見守りたいと思います。
最後に、弊社AIQVE ONEでも「FunQA」というゲームに特化したユーザーレビューサービスを展開していますので、興味がありましたらぜひ営業までお問い合わせください。