LoginSignup
5
2

More than 3 years have passed since last update.

Rustで自然数を作ってみた

Posted at

みなさん、自然数というと、何を思い浮かべますか?
まずは、ゼロですよね。(本記事では自然数はゼロを含むものとします。異論は認めません)

他にどんな自然数があるのか、よく分からないんですが、ゼロの次にくる自然数があるような気がします。その次にくる自然数もあるような気がします。
もっと言うと、どんな自然数に対しても、それの次の自然数があるような気がします。

これを、Rustのenum型で表すと次のようになります。

#![allow(dead_code)]
use std::rc::Rc;

#[derive(Clone, Debug)]
enum Nat {
    O,
    S(Rc<Nat>),
}

ここで、ゼロをO, なにかの次の自然数をSで表しました。

つまり、

アラビア数字 Nat
0 Nat::O
1 Nat::S(Rc::new(Nat::O))
2 Nat::S(Rc::new(Nat::S(Rc::new(Nat::O))))
... ...

と表せています。

Nat::S(Rc::new(...)) はめんどくさいので、succというメソッドを生やしましょう。

impl Nat {
    fn succ(n: Nat) -> Nat {
        Nat::S(Rc::new(n))
    }
}
アラビア数字 Nat
0 Nat::O
1 Nat::succ(Nat::O)
2 Nat::succ(Nat::succ(Nat::O))
... ...

と書けるようになりました。Nat::も外せるようにimplの外に書きたい、とか、いろいろ思うところはあるかもしれませんが。とりあえずこれでいきましょう。

さらに、succをいっぱい書くのもめんどくさいので、もっとメソッドを生やしてみましょう。

impl Nat {
    fn from_u32(n: u32) -> Nat {
        if n == 0 {
            Nat::O
        } else {
            Nat::succ(Nat::from_u32(n - 1))
        }
    }
}

再帰的にsuccをする関数です。

我々はu32型には詳しいので、u32型でこうやれば再帰ができることを知っていて、こういうコードが書けました。
Natでも再帰ができる気がするので、ちょっと考えてみます。

  • u32での再帰と同様、Natでも、再帰をどこかで止めたいです。具体的にはNat::Oのとき、何かを返すようにしたいです
  • Nat::Oじゃないとき、先ほどのelse節Nat::succ(Nat::from_u32(n - 1))のような雰囲気の形にしたいです
  • n - 1 ←こんな計算しらない。けど、Natでは、Nat::S(m)mの部分を使えばよさそうです。

これらを考えたとき、例えば次のような実装ができます。

impl Nat {
    fn rec<T>(c0: T, cs: &dyn Fn(&Nat, T) -> T, n: &Nat) -> T {
        match n {
            Nat::O => c0,
            Nat::S(m) => cs(m, Nat::rec(c0, &cs, m)),
        }
    }
}

これで、再帰ができるようになりました。
再帰によって、Natをu32に戻すには、次のようにすればいいですね。

impl Nat {
    fn to_u32(&self) -> u32 {
        Nat::rec(0, &|_, cnt: u32| cnt + 1, self)
    }
}

以下を動かすと、動作が確認できます。

fn main() {
    println!("Except: 100, Actual: {}", Nat::to_u32(&Nat::from_u32(100)));
}

最後に、足し算を定義してみます。

use std::ops::Add;

impl Add for Nat {
    type Output = Self;
    fn add(self, other: Self) -> Self {
        Self::rec(other.clone(), &|_, n: Nat| Nat::succ(n), &self)
    }
}

これは、u32での再帰風に書くと

fn add(this: u32, other: u32) -> u32 {
    if this == 0 {
        other
    } else {
        1 + add(this - 1, other)
    }
}

です。とても愚直ですが、確かに、足し算になっていることが分かります。
以下のコードで動作確認してみましょう。

fn main() {
    println!("Except: 7, Actual: {}",
             Nat::to_u32(&(Nat::from_u32(3) + Nat::from_u32(4))));
    println!("Except: 100, Actual: {}",
             Nat::to_u32(&(Nat::from_u32(43) + Nat::from_u32(57))));
}

続く……のか?

続けたいのですが、Rustだと、高階関数を作ろうと思うと、関数自体の置き場所、クロージャに渡すものの所有権やライフタイムなどが問題になってきて、非常につらいです。

余力のある方は、例えば、recの定義に適当に参照をつけたりとったり、あるいはrecの定義をCurry化してもコンパイルが通るかどうか、試してみて下さい。非常に苦労されると思います。

そのため「進捗が出たら続きを書く」という方式を取ります。

参考文献

HoTT bookの最初の方

5
2
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
5
2