概要
Command R+というLLMをご存知でしょうか?
Command R+とは、Cohereという企業が発表した、RAGやToolの使用に最適になるように学習させたLLMです。
特徴として、学習に使用したパラメータが100Bと非常に少ないこと、そしてそんなに少ないにも関わらず、GPT-4やClaude-3に匹敵する性能を持っていること、非商用ではあるが生のモデルが公開されていること、などが挙げられます。
そして、自分が使用していてもう一つ、特徴的なことがありました。
それは、極端に高いモラルを持っていないこと。
GPT4などは非常に高いモラルを持っています。言い換えると、めちゃくちゃお上品なことしか言ってくれません。
しかし、Command R+は使用している限り、そのモラルによる制限がかなり少ないように感じられます。
使っていて、GPT4などでよくある、「そのようなことは言わないように~」みたいな表現で制止されることはありませんでした。
では、そんなCommand R+なら面白い小説も書けるのではないだろうか?
ということを試すために、以前書いた以下の記事で、実験を行いました。
2024/4/7の記事です。
Command R+は面白い小説を書けるのか?
しかし、その時は面白くない小説が出来上がる、という結果でした。
なんというか、文章に情熱が足りなかった。
しかし、こないだ久しぶりにCommand R+を使ってみると、なんか以前よりも書く文章がおもしろいというか、文章がうまく、商業小説みたいになっていました。
全体的にクオリティがアップしていた。
では、今のモデルで試したらどうなるのだろうか?
それが今回の実験の目的です。
追記
あと、おまけにGPTo1でプロットや小説を書かせたときにどうなるかも書きました。
正直Commandr+は面白い小説を書けなかったよ、って結論になっているのでそこから見たほうが良いかもです。
おまけのほうが本編で、LLMは面白い小説を書けると感じた部分です。
実験1
実験方法
まず、実験環境としては、以下のCohereが提供しているHuggingFaceのSpaceで行います。
LLMには小説の世界観とプロット、書く上での注意点を指示文として与えます。
世界観とプロットによって面白さが左右されるので、そこを人間が考えてはだめなのでは? という意見はあると思いますが、元々はこういう小説読みたいけど、自分で書いたらそんなに楽しめないんだよなー、と思っていたところからこの実験は始まったのでそこはご容赦ください。
世界観とプロットを与えた場合、AIはそれを面白く描写できるのか、という検証と考えていただければ。
与えた指示文
あなたは優れた小説を書くAIです。
以下の世界観とプロットから、面白い物語を記述してください。
世界観:
時は27世紀。
魂の存在を実証し、AIにほぼすべての労働を任せるユートピアにしてディストピアを生きる人類たちは、そのほとんどがニートになっていた。
そのなかの一人、堀川大樹は、今日も今日とて自分の作ったVR世界で一人、グレンという名前の魔術師として遊んでいる。
そんな彼の、ある日のファンタジー世界での冒険のお話
主人公の名前はグレン。魔術師である彼は4人で冒険者PTを組んで生活をしていた。PTのメンバーは優しい性格の少女である剣士クレハ、美しいお姉さんでミステリアスな雰囲気を持つ狩人レナ、PTのタンク役であり重厚な鎧に身を包む騎士のドロン。
彼らは中堅のPTで、若き新鋭と冒険者の酒場では思われている。
グレン以外の人物はみんなこのファンタジー世界で実際に生活をしているように認識していて、死ぬと実際に死ぬ。
グレン=堀川だけは、死んでもその世界からログアウトするだけだが、他の人たちはグレンが死ぬとそのまま死ぬと思っている。また再びグレンというキャラクターを使用して行動することはできないように堀川は設定している。堀川は世界観を崩したくないので、ログアウトとか、現実世界のことは一切言わずに、普通にファンタジー世界の住民としてファンタジー世界にいる間は生活している。
あとグリフィンは人間の言葉は話しません。
プロットは以下のものです。
プロット:
物語は冒険者の酒場で、昨日の冒険をPTメンバーで語り合う場面から始まる(冒険の内容は適当に考えてください)。
冒険を語り合っていたが、その途中で酒場の主人から大物である魔獣、グリフィンの討伐依頼を受ける。
途中まではうまくいっていたが、けがを負ったグリフィンが暴れて、クレハが大きなけがをする。
彼女を守るため、グレンは魔術でグリフィンを引き付けて囮となる。
クレハはそれを涙を流しながら拒否するが、ドロンに担がれてグリフィンから逃げることになった。
結局グレンはクレハたちを逃がせたことで満足して、そのままグリフィンに殺されてしまう。
それを遠目で見ながら絶叫するクレハを尻目に、グレンは殺されたことで、VR世界からログアウトして、自室でVRマシンの中にいる堀川大樹に戻る。
今日の冒険は失敗しちゃったなー、と言いながら、堀川はのんきにお茶を飲むのだった。(終了。クレハの悲痛さと堀川ののんきさを対比させる。)
指示:
文体は上質なファンタジー作品のように記述してください。
また、文章は小説のように、できるだけ詳細まで描写してください。人物の体の動きや心情描写、情景まで描写してください。
また描写はグレンの一人称で行い、一つ一つの描写に最低5行は記述してください。
優れた小説家のように、同じ描写を繰り返すことなく、読みやすくわかりやすい文にしてください。
物語はプロットに書かれたものが全体で2万文字になるぐらいの想定で、記述してください。
2万字も出力できない場合は、途中まででいいので、2万字になるように記述してください。
主人公がログアウトするまでは現実世界である27世紀の情報はモノローグにも決して出さないように。
生成された小説1
「さあ、昨日の冒険の話を聞かせてくれよ。お前たちなら、きっと大物とやり合ったに違いない!」
冒険者の酒場、その名の通り冒険者たちが集うこの場所で、私は仲間たちと昨日の冒険を振り返っていた。私、グレン・アシュフォードは、この世界で名を馳せる魔術師だ。漆黒のローブに身を包み、手には古の魔法書が握られている。
「昨日の冒険か...そうだな、まずは森の奥深くで古代の遺跡を見つけたんだ。そこには罠が張り巡らされていてな、一歩間違えれば命がいくつあっても足りないような場所だった」
そう、昨日の冒険はスリリングなものだった。私たちは4人パーティーで、剣士のクレハ、狩人のレナ、そして騎士のドロン。このメンバーで様々な依頼をこなしてきた。
「遺跡の奥で、ついに宝箱を発見したんだ。だが、その瞬間、罠が作動してな。巨大な石柱が天井から降りかかってきたんだよ」
私は当時を思い出し、手に汗を握る。あの時は一瞬の判断が命運を分けた。
「クレハが素早く反応して、剣で石柱を真っ二つに斬り裂いたんだ!その間一瞬の隙に、俺は魔法で石柱を砕いた。あれは間一差だったな...」
クレハは可憐な少女だが、剣を振るう姿は勇ましく、仲間たちの信頼も厚い。彼女の剣技がなければ、私たちは今ここにいないだろう。
「遺跡の主だったのか、巨大なミイラが現れたんだ。だが、レナの放った矢が的確に弱点を射抜き、あっという間に沈黙したよ」
レナはミステリアスな雰囲気を纏う美女だ。弓を扱うその姿は優雅で、的確な一撃で敵を仕留める。
「そして、最後に待ち受けていたのは...」
私の言葉を待たず、ドロンが低い声で続けた。
「ドラゴンだ。だが、俺の剣が奴の鱗を砕き、お前の魔法がとどめを刺したな」
ドロンは大柄な体躯の騎士で、重厚な鎧に身を包んでいる。パーティーの盾として、常に最前線で敵の攻撃を耐え忍ぶ。
「そう、ドラゴンだ。奴の炎は凄まじかったが、俺の魔法陣が防いでくれた。そして、俺たちの連携攻撃で...」
私が興奮気味に語ると、酒場の主人、ガルドが声をかけてきた。
「おい、グレン。その話はまた今度聞かせてくれ。今はもっと大事な話があるんだ」
ガルドは年季の入った冒険者らしく、威厳のある風貌をしている。
「大事な話?一体何だね?」
私は身を乗り出した。この酒場に集う者たちは、皆、冒険に命を懸けている。"大事な話"とは、きっと新たな冒険の予感だ。
「この近くの村に、最近、グリフィンが出没しているらしい。奴は凶暴で、村人たちを襲っている。討伐してくれる冒険者を探しているんだ」
グリフィン...伝説の魔獣、獅子の体に鷲の翼を持つ怪物。その存在は、冒険者にとっては憧れであり、同時に恐怖の対象でもある。
「グリフィンか...確かに大物だ。だが、俺たちならやってやれないこともないだろう」
私は仲間たちの顔を見渡した。クレハは目を輝かせ、レナは静かに頷き、ドロンは闘志を燃やしている。
「よし、受けて立とう!グリフィンを倒し、村を救うのだ!」
私たちは決意を新たに立ち上がった。このパーティーでなら、どんな困難も乗り越えられる。そう確信していた。
森を抜けた先に、広大な平原���広がっていた。ここがグリフィンの生息地らしい。
「ここが奴の縄張りか...」
レナが弓に矢をつがえながら言う。
「ああ、奴は空を舞い、獲物を狙っている。油断はできないぞ」
私は魔法書を胸に抱き、警戒を怠らない。グリフィンは知能が高く、狡猾な手口で獲物を襲うという。
「クレハ、ドロンは準備はいいか?」
「もちろんだ!」
クレハは剣を抜き、闘志に満ちた瞳で応えた。ドロンは大剣を構え、静かに頷く。
「では、行くぞ!」
私が合図すると、レナが矢を放った。矢は見事にグリフィンの翼を掠め、奴の注意を引き付ける。
「今だ!一気に叩くぞ!」
私は魔法陣を描き、炎の魔法を放つ。クレハは素早く駆け出し、ドロンは大剣を振りかぶりながら追う。
グリフィンは翼を広げ、咆哮を上げた。その声は雷鳴のように響き渡り、大地が震える。
「くっ、奴の防御は堅い!」
私の魔法はグリフィンの鱗に弾かれ、効果がない。奴は翼で風を起こし、私たちを吹き飛ばそうとする。
「レナ、援護を!」
レナの矢が次々と放たれ、グリフィンの動きを封じる。そ��隙に、私はより強力な魔法を唱える。
「炎よ、我が敵を焼き尽くせ!ファイアストーム!」
魔法陣から炎の竜巻が生まれ、グリフィンを飲み込んだ。
「今だ、クレハ、ドロン!」
クレハは剣を振り下ろし、ドロンは大剣を叩きつける。グリフィンは咆哮を上げ、平原を走り抜ける。
「くそっ、奴はまだ倒れていない!」
グリフィンは傷つきながらも、翼を羽ばたかせ、空へと舞い上がった。
「レナ、奴を仕留めるんだ!」
レナは矢を番え、狙いを定める。グリフィンは傷ついた翼で必死に高度を上げていく。
「今だ!」
レナの矢が放たれ、グリフィンの翼を貫いた。しかし、奴は最後の力を振り絞り、レナ目掛けて突進する。
「クレハ!危ない!」
クレハは咄嗟に身を翻し、剣でグリフィンの攻撃を防いだ。
「ぐあっ!」
クレハの剣がグリフィンの爪に弾かれ、彼女は肩を負傷した。
「クレハ!」
私は駆け寄ろうとしたが、その時、グリフィンが私に襲い掛かってきた。
「くっ、俺の身代わりになれ!」
私は魔法でグリフィンを引き付け、クレハを逃がそうとする。
「やめて、グレン!私を置いていかないで!」
クレハは涙を流しながら叫ぶ。
「ドロンがお前を連れて行く!俺は奴を食い止める!」
ドロンがクレハを抱きかかえ、レナと共にその場を離れる。
「クレハ、必ず生き延びろ!俺はお前たちを守る!」
私は最後の力を振り絞り、グリフィンに立ち向かった。
グリフィンの爪が、私の体を貫いた。痛みは感じない。だが、確かに私の命は尽きようとしている。
「くっ...ここまでか...」
私は膝をつき、視界が暗くなっていくのを感じた。
「グレン!待って!」
クレハの声が遠くで聞こえる。だが、私はもう動けない。
「クレハ...生き延びろ...必ず...」
私の意識は薄れていく。仲間たちの叫び声が、風の音のように遠のいていく。
「あれ?どうして...」
私は目を覚ました。ここは...私の部屋だ。
「VRマシンが起動を停止しました。冒険は終了しました」
機械的な音声が部屋に響く。私はゆっくりと立ち上がり、マシンを外した。
「ふぅ...今日はなかなか激しい冒険だったな」
私は窓の外を��やる。27世紀の摩天楼が、夕日に照らされて輝いている。
「クレハ...あの子はきっと無事だろうか...」
私はふと、ファンタジー世界の仲間たちのことを思った。
「まあ、いいさ。また明日、ログインして確かめれば...」
私はのんびりとお茶を淹れ始める。この世界では、私はただのニート、堀川大樹だ。
「今日はちょっと失敗しちゃったな。明日はもっと面白い冒険にしよう」
私は窓の外に広がる空想の世界に思いを馳せる。そこでは、きっと仲間たちが私を待っている。
考察
文章の表現がだいぶ単調ですが、ファンタジー小説のようにはなっています。
ただそれでも正直あまり面白く感じられないのは、そもそもプロットがあまり面白くないからではないかと思います。
あと地の文が少ない。
文字量が指示の二万字と違って3000字程度なのは、出力トークンの制限がそもそも4000だから。
なので、プロットがある程度面白い、既成のプロットを使えばもっと面白くなるのではないだろうかと思います。
また、今回は出力上限が4000トークンだったため、物語全体の規模が小さかったです。
なので次は、物語を起承転結で分割して、それらをそれぞれ書かせることで密度の高い小説にしようと思います。
それを次の実験で行います。
実験2
実験環境
今度は、あらかじめある程度形になっているプロットを使用します。
使用するプロットは以下のサイトに書かれているプロットを使用しています。
それ以外の環境は実験1と同じです。
与えた指示文
あなたは優れた小説を書くAIです。
以下の世界観とプロットから、面白い物語を記述してください。
設定
主人公は元プロボクサー。
23歳ぐらい。若い。
「勝たないと意味がない」と思ってる。
無敗で世界タイトル挑戦までいった。でも負けた。そこで潔く引退。
経験を活かしてボクシングの小説を書こうとする。
小説を書くのは生まれて初めて。
話のスジ
【起】
引退会見にのぞむ主人公。なぜ早々に引退するのか聞かれ「勝つ姿を見せられないボクサーに存在意義などないからだ」と言い放つ。
引退後、のんびりした暮らしをする主人公。でも退屈で何の張りもない生活に飽きてくる。どうすればいいのだろう。「そうだ。小説を書こう。経験を活かせばいいボクシング小説が書けるはず」
【承前半】
自分と同じように「勝たないと意味がない」と思っているボクサーの小説を書く。無敗で世界チャンピオンになる男のストーリー。自分の叶えられなかった夢を叶えるボクサーの話。
そうやって小説を書き上げた。でもなんだか面白くない。
なぜつまらない小説になってしまうのか、その原因の検討がつかない。仕方がないので取材に行くことにする。
【承後半】
お世話になっていたジムを訪問。取材する。
自分がデビュー戦でKOしたベテラン選手の引退試合も見に行く。弱い選手だったけど意外とたくさんのファンが駆けつけていた。
大怪我をして再起不能と言われた選手の復帰戦も見にいった。負けてしまったけど彼は今の自分にできることを必死にやろうとしていた。
新人王戦のとき1ラウンドで軽く倒した選手も取材させてもらった。もう子供がいて試合も何回か見に来ているらしい。でも毎回負けている。「今度こそ勝つところを見せたい」そう意気込んでいた。
【転結】
主人公はジムの会長に頼まれて天才高校生とエキシビジョンマッチで戦うことに。オリンピックを目指している期待の若手だ。
前座として他の選手の試合もいくつか組まれていた。「子供に勝つところを見せたい」と言っていたあの選手の試合もあった。主人公は会場の後ろの方からその試合を観戦する。彼の奥さんと子供も見に来ていた。でも彼は今回もやっぱり負けてしまった。泣き崩れながらリングを降りるその姿が主人公の胸に刺さる。
主人公はリング上で天才高校生とグラブを交える。彼の強烈なパンチを受けながら主人公はずっと自分の中にくすぶっていたものに気づく。
主人公は小説を書くことをやめて現役復帰のトレーニングをはじめる。もう一度世界タイトルに挑戦するのだ。
重要項目
オモテのストーリー
ボクシングの小説を書いて賞に応募。
裏ストーリー
引退したあと胸にくすぶっていたものを払拭。
秘めたる想い
勝たないと意味がない。
間違いが正される
勝つことだけにドラマが潜んでいるわけではない。
指示:
また、文章は小説のように、できるだけ詳細まで描写してください。人物の体の動きや心情描写、情景まで描写してください。
また描写は主人公の一人称で行ってください。
優れた小説家のように、同じ描写を繰り返すことなく、読みやすくわかりやすい文にしてください。
まず起承転結の【起】だけを4000字程度で書いてください。
プロットの情報から適当に話を膨らませてください。
必ず、【起】の部分だけを書いてください。
次に起承転結の【承前半】だけを4000字程度で書いてください。
プロットの情報から適当に話を膨らませてください。
必ず、【承前半】の部分だけを書いてください。
次に起承転結の【承後半】だけを4000字程度で書いてください。
プロットの情報から適当に話を膨らませてください。
必ず、【承後半】の部分だけを書いてください。
生成された小説1
《起》
僕は23歳、無敗のプロボクサーとして世界タイトルに挑んだ。リングの上で、チャンピオンのベルトを懸けて拳を交えたあの瞬間は、今でも鮮明に記憶している。
最終ラウンド、僕の渾身のストレートが空を切った。チャンピオンのカウンターが僕の顎を捉え、視界が一瞬で闇に染まる。意識が遠のく中、レフェリーのカウントが耳朶をかすめた。
"10... Out!"
その声を合図に、会場の歓声が爆発した。チャンピオンの勝利を祝う声が、僕の敗北を告げる。
引退会見の日、僕はスーツに身を包み、記者たちの前に立った。フラッシュがたかれ、マイクが向けられる。
「なぜ、この若さで引退を決意したのですか?」
一人の記者が問いかける。僕は静かに、しかし力強く答えた。
「勝たないと意味がない。それが、僕のボクシングに対する信念です。無敗で頂点に挑み、敗れた今、僕は自分にできることをやり遂げました。勝つ姿を見せられないボクサーに、存在意義はありません。」
記者たちは���斉にペンを走らせる。僕の言葉は、まるでリング上のパンチのように鋭く、彼らの心に響いたようだ。
「無敗のボクサーが味わった敗北の味とは?」 「若き天才の引退の真意は?」
矢継ぎ早に飛ぶ質問に、僕はひとつひとつ応えていく。
「敗北は、苦いものでした。しかし、その苦味は僕を成長させる栄養素となるでしょう。」
「引退は、僕のボクシング人生の区切りです。今はただ、次のステージに進む準備をしています。」
会見は滞りなく進み、僕は最後の質問に答えた。
「今後の予定は?」
この質問に、僕は少しだけ笑みを浮かべた。
「しばらくは、のんびり過ごすつもりです。そして、ある計画を実行に移そうと思っています。」
会見後、僕は静かにジムを後にした。手には、グローブではなく、一冊のノートが握られていた。
引退生活は、穏やかで、退屈だった。毎日をゆっくりと過ごす。朝はゆっくりと起きて、近所の公園をジョギングする。昼はジムで軽いトレーニングをし、夜は読書や映画鑑賞で時間を潰す。
しかし、日々が過ぎるにつれ、僕の心に空虚感が募っていくのを感じた。リングの上で拳を交える興奮、勝利への渇望、敗北の苦味。それら全てが、今の生活にはない。
"勝たないと意味がない"
そう、僕は勝つために生きてきた。勝利こそが、僕の人生を彩るドラマだった。
ある日、僕はふと、ノートを取り出した。引退会見の時に持っていた、真っ白なノートだ。ページを開き、ペンを走らせる。
『無敗のボクサー、最後の挑戦』
そう題名を書き、物語を紡ぎ始めた。主人公は、僕と同じように無敗のボクサー。世界タイトルを懸けた戦いに挑み、勝利を収める。僕の叶えられなかった夢を、この主人公に託そう。
僕は熱中して書き進めた。リング上の緊迫感、パンチの応酬、会場の熱気。全てを鮮明に思い出し、小説の中に再現する。
数日後、一冊の小説が完成した。僕は満足げにページをめくり、読み返す。
"勝つことの美しさ、無敗の栄光。この物語は、僕のボクシング人生の集大成だ。"
そう確信し、賞への応募を決意した。
《承(前半)》
僕の初めての小説は、賞への応募という形で世に送り出された。結果はどうであれ、この物語が読者の心を揺さぶることを願った。
応募から数週間後、僕は出版社からの連絡を受けた。
「小説を読ませていただきました。なかなか面白い作品ですね。しかし、いくつか改善すべき点があると思います。」
編集者の言葉は、予想外のものだった。僕は自信作を世に送り出したつもりだったのに。
「特に、主人公の心理描写が不足しているように感じます。無敗のボクサーが抱える葛藤や、勝利への執念が伝わってきません。もう少し、彼の内面に迫る描写が必要かと。」
その指摘は、的を射ていた。僕は自分の経験を活かして小説を書いたつもりだったが、主人公の心情を深く掘り下げることをおろそかにしてしまったのかもしれない。
"勝たないと意味がない"
その信念は、主人公の行動原理であり、物語の根幹を成すものだ。しかし、その想いがどれほど深いものなのか、僕は十分に伝えられていなかったのだろうか。
僕はもう一度、小説を書き直すことにした。今度は、主人公の心に迫る物語を。
再び、ペンを取り、主人公のボクサーに思いを馳せる。彼の無敗の記録、その裏に隠された苦悩や孤独。世界タイトルへの挑戦を決意した瞬間、勝利への渇望。
「なぜ、勝たないといけないのか?」
主人公の心に問いかける。無敗の記録は、彼にとって何を意味するのか。それは、ただの栄光なのか、それとも...
僕は主人公の少年時代を思い起こした。貧しい家庭に生まれ、ボクシングに出会った彼は、勝利によってしか得られないものを知っていた。
"勝つことでしか、自分を証明できない。勝つことでしか、家族を幸せにできない。"
主人公の少年時代の苦悩が、僕の心に重くのしかかる。無敗の記録は、彼にとっての命綱だったのかもしれない。
「勝つことだけが、ボクサーの全てじゃない。無敗の栄光も、時に重荷となる。」
主人公の心情を掘り下げながら、僕は物語に新たな要素を加えていく。無敗の重圧、勝利への執着、そして、その裏に潜む脆さや人間味。
書き進めるうちに、僕はあることに気づいた。主人公の無敗の記録は、彼の強さを示すものだが、同時に、彼の弱さをも露呈しているのではないかと。
「無敗のボクサーは、勝つことだけを追い求める。しかし、その執着は、時に自分を追い詰める。」
主人公は、勝利という名の怪物に飲み込まれそうになりながらも、必死に抗っていたのかもしれない。その葛藤こそが、彼の人間味であり、物語の深みとなるのではないか。
僕は、主人公の敗北の可能性を織り交ぜながら、物語に緊張感をもたせる。無敗のボクサーが味わう、初めての敗北の苦味。その経験が、彼に何をもたらすのか。
"勝つことだけが全てじゃない。負けることで学ぶこともある。"
主人公は、敗北という名の試練を通して、本当の強さを手に入れる。無敗の栄光に囚われていた自分から解放され、真のボクサーとして成長していく。
書き直した小説は、主人公の心情をより深く描き出したものとなった。
《承(後半)》
書き上げた小説に自信はあったが、やはり客観的な意見を聞く必要がある。僕は取材を決意し、まずはお世話になったジムを訪れた。
ジムの扉を開けると、懐かしい空気が僕を包み込む。汗とロープの匂い、ミットを叩く音。全てが僕の記憶を呼び覚ます。
「おぉ、久しぶりだな!元気にしてたか?」
ジムの会長が、にこやかに迎え入れてくれた。僕は挨拶を済ませ、執筆中の小説の取材をお願いした。
「小説か...お前も引退して、いろいろ挑戦してるんだな。もちろん協力するよ。」
会長は快く了承してくれた。僕は早速、ジムの練習風景や会長の指導方法などを取材し始めた。
「会長、なぜボクサーは勝たないといけないんでしょう?」
僕は、物語の核心に迫る質問を投げかけた。会長はミット打ちの手を止め、真剣な眼差しで答える。
「勝つことで、己の強さを証明する。それが、ボクサーの宿命だ。だが、勝つことだけが全てじゃない。負けることで学び、成長する。その繰り返しだよ。」
会長の言葉は、僕の心に響いた。"勝つことだけが全てじゃない" そう、僕は主人公のボクサーに、その教訓を教えたかったのかもしれない。
取材を進める中で、僕は様々な試合を観戦することになった。まずは、デビュー戦でKOしたベテラン選手の引退試合だ。
会場は、意外にも多くのファンで埋め尽くされていた。彼は決して強い選手ではなかったが、そのひたむきなファイトスタイルで、人々の心を掴んでいたのだろう。
ゴングが鳴り、ベテラン選手は最後の試合に臨む。彼のパンチは、以前よりも力強さを増していた。しかし、若き挑戦者の勢いに押され、徐々に劣勢となる。
最終ラウンド、ベテラン選手は逆転を狙い、渾身の力を込めたパンチを放つ。しかし、それは空を切り、彼はマットに沈んだ。
会場は、温かい拍手に包まれた。勝敗を超えた、彼のボクシング人生への敬意の表れだった。
"勝つことだけが、ボクサーの価値じゃない。人々の心を動かすのは、その生き様だ。"
僕は、ベテラン選手の引退試合から、新たなインスピレーションを得た。
次に訪れたのは、大怪我からの復帰戦だ。再起不能と言われた選手が、必死のトレーニングを経て、再びリングに上がる。
彼の体は、傷だらけだった。しかし、その目は、闘志に満ちていた。彼はもう一度、勝利の味を知るために、全てを懸けて戦っていた。
試合は、激しい打ち合いの末、判定負けとなった。しかし、彼は笑顔でリングを降りた。
「ありがとう!また頑張るよ!」
彼は観客席に向かって叫んだ。その姿は、敗北を恐れない、真のファイターのそれだった。
"勝つことだけが、勝利じゃない。立ち上がるたびに、僕らは強くなる。"
僕は、再起を果たしたボクサーの姿に、物語の新たな展開を思いついた。
最後に、新人王戦で圧勝した相手、田中選手を訪ねた。彼は既に結婚し、子供もいた。
「お久しぶりです。小説の取材ですか?光栄です。」
田中選手は、穏やかな笑顔で迎えてくれた。僕は彼に、試合への意気込みを聞いた。
「子供に、勝ち続ける父親の姿を見せたいんです。無敗の記録を、彼のために伸ばし続けたい。」
彼の言葉に、僕は主人公のボクサーとの共通点を感じた。"勝たないと意味がない" その信念は、家族を支える力にもなるのだと。
しかし、田中選手はなかなか勝利を手にすることができていないという。
「負けるたびに、子供に申し訳なくて...でも、諦めません。必ず勝ちます。」
彼の言葉は、切実なものだった。僕は、田中選手の再起を願いながら、取材を終えた。
取材を通して、僕は"勝つこと"の多様な意味を知った。
《転結》
取材を終え、小説の執筆に没頭する日々。しかし、ある日、ジムの会長から思わぬ依頼が舞い込んだ。
「お前、ちょっと付き合ってくれないか?エキシビジョンマッチで、若手のホープとスパーリングをやってほしいんだ。」
会長の頼みは、天才高校生ボクサーとの対戦だった。彼はオリンピック出場を目指し、注目を集めているという。
「わかりました。喜んで引き受けます。」
僕は即答した。久しぶりのリングに、胸が高鳴る。
試合当日、会場は熱気に包まれていた。前座として、様々なカードが組まれている。その中に、田中選手の試合もあった。
「子供に、勝ち姿を...」
彼の言葉が頭をよぎる。僕は会場の後方から、田中選手の試合を観戦した。
ゴングが鳴り、田中選手は果敢に攻め立てる。しかし、相手のパンチをまともに受け、徐々に動きが鈍くなる。
最終ラウンド、田中選手は逆転を狙うが、力及ばず、判定負けとなった。彼はリング上で泣き崩れた。
「ごめん...パ��、負けて...」
彼は子供にそう言い、リングを降りた。その姿は、僕の胸に深く突き刺さった。
"勝つことだけが、家族を幸せにするわけじゃない。負けても、立ち上がる姿に、意味がある。"
田中選手の言葉と、彼の敗北が教えてくれた。僕は、主人公のボクサーに、その想いを伝えたいと思った。
そして、僕の出番がやってきた。リングに上がり、向かい合うのは、天才高校生ボクサー。彼は若さ溢れるエネルギーに満ちていた。
「よろしくお願いします!」
彼は爽やかな笑顔で挨拶した。僕は、その笑顔に、かつての自分を重ねる。
試合が始まる。彼のパンチは、鋭く、重い。しかし、僕はそれを読み、かわし、カウンターを狙う。
"勝たないと意味がない"
その信念は、今も僕の心に宿っていた。しかし、同時に、僕は気づき始めていた。
"勝つことだけが、ボクサーの全てじゃない。"
彼のパンチを受けながら、僕は自分の内面と向き合う。無敗の栄光、世界タイトルへの挑戦、そして、敗北。それら全てが、僕を形作っていた。
最終ラウンド、僕は渾身の力を込めたパンチ��放つ。それは、僕のボクシング人生を象徴するかのような一撃だった。
試合後、僕は会長に告げた。
「会長、僕はもう一度、リングに戻ります。世界タイトルに再挑戦したい。」
会長は、驚きながらも、優しく微笑んだ。
「そうか...お前のボクシングは、まだ終わっていなかったんだな。」
僕は小説を書くことをやめ、再びトレーニングに没頭した。世界タイトルへの再挑戦。それは、僕の新たな物語の始まりだった。
"勝つことだけが、ドラマじゃない。負けても、立ち上がる。その繰り返しこそ、ボクサーの人生だ。"
僕は、主人公のボクサーに、その想いを託す。無敗の栄光も、敗北の苦味も、全てを乗り越えて、彼は再びリングに向かう。
考察
正直、前のほうが面白かったような気が……
前回は起承転結で分けずにすべてを書いてもらったのだが、今回それをしなかった理由は、同じプロンプトで書かせると、ほぼプロットと同じ文章になってしまったため。
それを避けるために起承転結で書かせたが、それでも前のほうが面白い気がします。
おそらく理由は、文章の一貫性が取れていないというか、たぶん最初の時点でプロット全体を考えられておらず、それぞれのパーツだけを書かせてしまっているため。
そのためのプロットではあるのだけど、でもどことなくちぐはぐさを感じてしまっていたのではないでしょうか。
もしくは、プロットがだいぶ前の最初の文章になってしまっていたから、内容を忘れてしまっているのかもしれません。
Commandr+の入力上限を見ると、16,000とのことなので、そこらへんが原因のように思えます。
なんにせよ、入力上限が16000で出力上限が4000という時点で、短編ならともかく長編だと難しそうですね、残念。
以下のようなTRPGのGMをお願いして短い情景描写を書いてもらうのが一番いいのかもしれません。
前回の記事で生成した文章
なお、前回の記事で生成した文章は以下です。
私は元プロボクサー、葉山拳太郎。23歳にして世界タイトル戦に挑み、敗れはしたが、無敗の記録を誇る。その強さから「無冠の帝王」の異名を取り、ファンからは「ハヤブサ」と呼ばれた。私は早々に引退し、今はのんびりとした生活を送っている。
[ 起 ]
「なぜ、この若さで引退を?」
引退会見の会場には、記者たちの疑問に満ちた視線が集まっていた。フラッシュがたかれ、無数のカメラがこちらを向く。私は落ち着いた口調で、こう言い放った。
「勝つ姿を見せられないボクサーに、存在意義などないからだ」
この言葉は、私自身を奮い立たせてきた信念だった。ボクシングは勝たなければ意味がない。勝利こそが、ファンを熱狂させ、自分の存在価値を証明するものだと思っていた。
しかし、世界タイトル戦で敗北を喫した瞬間、私は燃え尽きてしまったのかもしれない。もう一度挑戦する気力も、負けを認めて這い上がる根性も湧いてこなかった。
「これからは、第二の人生を歩むつもりだ。ボクシングを通じて学んだことを活かし、新しい道で頑張っていきたい」
そう締めくくり、私は会見場を後にした。
引退後の生活は、穏やかで平和だった。毎日、ゆっくりと朝を迎え、近所をジョギングする。時折、ジムを訪れては後輩たちの練習を見守ったりもした。
だが、どこか物足りない。張り合いがない。このまま静かな日々を過ごす自分の未来を想像すると、胸の中がむなしくなった。
そんなある日、私はふと思いつく。
「そうだ。小説を書こう」
私は小説など書いたことがなかった。だが、自分の経験を活かせるのではないか。ボクシングの世界を、自分の言葉で描いてみたい。そう思ったのだ。
[ 承・前半 ]
早速、パソコンに向かい、小説のプロットを練り始めた。主人公は、私と同じように「勝たないと意味がない」と考えているボクサーだ。無敗のまま、世界チャンピオンになるストーリー。私が叶えられなかった夢を、彼に託そうと思った。
キーを叩き、ストーリーを紡いでいく。主人公の幼少期から描き、彼の才能が開花していく様子を書く。次々と強敵を倒し、無敗のままタイトルマッチを迎える。そして、見事勝利を収め、歓喜に沸く――。
一心不乱に書き上げたが、出来上がった小説を読み返すと、どこか満足できなかった。
「なぜだ? 自分の経験をそのまま活かしているのに......」
主人公が勝利を重ねるストーリーは、確かに熱く、胸が躍るものだった。だが、どこかで読んだような展開。自分でも予想できる結末に、新鮮味がなかった。
「なぜ、つまらないのか......」
原因がわからず、私は頭を抱えた。
[ 承・後半 ]
小説がつまらない原因を探るため、私は取材を始めることにした。まずは、お世話になっていたジムを訪れた。
「お、葉山か。久しぶりだな」
ジムの会長は、私を温かく迎え入れてくれた。
「会長、お久しぶりです。今は小説を書いているんですが、どうも面白くなくて。もっとリアルなボクシングの世界を描きたいんです」
「ほう、小説か。葉山ならきっとすごいものが書けるだろう」
会長はにこりと笑うと、スパーリング中のボクサーたちを指さした。
「あいつらは、みんな葉山と同じように世界を目指している。だが、勝つやつもいれば、負けるやつもいる。負けても這い上がろうとするやつ、勝っても満足できないやつ。いろんなドラマがあるんだ」
私は、会長の言葉に耳を傾けながら、ジムの中を見回した。汗を流し、必死にサンドバッグを打つボクサーたち。彼らの瞳は、勝利への熱い思いで輝いている。
「葉山、試合を見に来るといい。葉山がデビュー戦で倒したベテラン選手が、今度引退するんだ。時間があるなら、見送ってやってくれ」
そう言われて、私は試合会場へと足を運んだ。そこには、私がプロデビュー戦でKOした相手、斉藤和馬がいた。
和馬は、私がプロとして初めて拳を交えた相手だった。当時、和馬はすでにベテランの域に達していたが、私は彼を軽々と倒し、華々しいデビューを飾った。
「葉山くん......。懐かしいな。まさか、君が試合を見に来てくれるなんて」
和馬は、控室で私を見つけると、優しい笑顔を見せた。
「お疲れ様です、和馬さん。今度引退されると聞いて、ぜひお会いしたいと思いまして」
「ありがとう。葉山くんは、デビュー戦で強烈な印象を残した。君の試合を見て、勇気をもらった若手は多いはずだよ」
和馬は、穏やかにそう言うと、リングへと向かっていった。
試合が始まり、和馬は若い相手に果敢に挑んでいた。だが、体力の衰えは隠せず、結局、TKO負けを喫してしまった。
「勝たせてやりたかったな......。でも、最後まで立っていてくれてよかった」
会長がつぶやく。
「和馬さん、たくさんのファンに支えられていましたね」
「ああ。和馬は強さだけじゃなく、人柄も愛されていたんだ。勝つだけがファンを惹きつけるんじゃない。和馬はそれを教えてくれた」
私は、和馬の試合を通して、勝ち負けだけではないボクシングの魅力を知った気がした。
[ 転・結 ]
その後も、私はいくつかの試合を取材した。大怪我をして再起不能と言われながら、必死にリングに戻ってきた選手。新人王戦で私にあっさり倒された相手も、今は父親になり、子供に勝利を見せるために戦っていた。
「今度こそ勝つところを見せたいんです!」
彼の言葉が、私の胸に響いた。
そして、ジムの会長に頼まれ、私はある天才高校生とエキシビジョンマッチをすることになる。その少年は、オリンピック出場を目指す期待の星だった。
試合当日、会場には多くの観客が詰めかけていた。前座として、先日取材した選手たちの試合も組まれていた。
「子供に勝つところを見せたい」
そう語っていた彼の姿を探すと、奥さんと子供の姿が見えた。彼は、今度こそ勝利を掴めるだろうか。私は、会場の後方から、その試合を見守った。
ゴングが鳴り、試合が始まる。彼は果敢に攻めていたが、相手の反撃を受け、ぐらりとよろける。そして、最後はカウンターを浴び、マットに沈んだ。
「パパ、負けた......」
子供の泣き声が、会場に響く。彼は、涙を流しながらリングを降りていった。
私は、胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
そして、私自身の試合が始まった。天才高校生を相手に、私は防戦一方となる。彼の鋭いパンチが、私のボディを捉える。
「ぐっ......!」
痛みに顔を歪めながらも、私は気づいた。自分の中にくすぶっていたものに。
「勝たないと意味がない」
そう、私はそう思っていた。だが、取材を通して、勝ち負けだけではないボクシングの魅力を知った。
「勝つことだけが、ファンを惹きつけるわけじゃない」
和馬や、再起を果たした選手、子供に勝利を誓う選手。彼らの姿が、私の頭に浮かぶ。
「葉山くん、どうした? らしくないぞ」
会長の声が、遠くで聞こえた。
私は、ふと我に返った。そして、天才高校生に向き直ると、今度は私から攻撃を仕掛けた。
パンチを繰り出し、相手のガードの上からでも打ち込む。ボディブローの連打で相手の動きを止めると、強烈なアッパーを浴びせる。
「ぐはっ!」
高校生が、苦しげな声を上げる。
「葉山! それでいい! もっとだ!」
会長の声が、会場に響く。
私は、さらに攻撃を続けた。相手がぐらついたのを見逃さず、とどめの右ストレートを叩き込む。
「ダウン!」
レフェリーのカウントが進む。
「7......8......」
会場が、どよめいた。
私は、ふと我に返った。
「勝った......?」
そう、私は勝ったのだ。エキシビジョンマッチとはいえ、私は勝利した。
だが、なぜか心は晴れない。むなしい気持ちがこみ上げてくる。
「勝ったのに......。なぜだろう......」
私は、その場に立ち尽くした。
[ 物語の結末へ ]
その夜、私はパソコンの前で、これまでの小説を削除した。そして、新たな物語を書き始める。
「勝つことだけが、ボクサーのドラマじゃない。負けても、立ち上がる姿だって、感動を呼ぶ」
私は、取材を通して出会ったボクサーたちの姿を思い浮かべた。
「勝つことだけが、ボクサーのすべてじゃない。負けても、再起を目指す。家族のために戦う。それぞれのドラマがあるんだ」
私は、キーボードを叩き、新たなストーリーを紡いでいく。
「勝たないと意味がない」
その信念は、間違っていたわけではない。だが、それだけがボクシングの魅力ではないと、私は気づいたのだ。
「ボクサーは、リングの上で生きている。勝っても、負けても、その生き様を見せることが、ファンを惹きつけるんだ」
私は、熱い思いを込めて、物語を書き進めた。
[ エピローグ ]
それから数年後、私は再びリングの上にいた。
「葉山拳太郎、見事、世界タイトルを奪取!」
リングアナウンサーが、そう叫ぶ。
私は、世界チャンピオンのベルトを腰に巻き、大歓声を浴びていた。
「勝った......。私は、再び勝った......!」
涙が溢れ出す。私は、感無量だった。
「葉山、よく戻ってきてくれた!」
会長が、涙ながらに私を抱きしめる。
「ありがとうございます! 会長、皆さんのおかげです!」
私は、ジムのみんなに支えられて、再び世界タイトルに挑んだ。そして、見事勝利を収めたのだ。
「勝つことだけが、ボクサーのすべてじゃない。負けても、再起する。家族のために戦う。それぞれのドラマを、私は見せたい」
私は、そう心に誓った。
そして、私は現役を続けながら、小説を書き続けた。ボクシングの魅力を、もっと多くの人に伝えたい。その一心で。
「勝つことだけが、人生じゃない。負けても、立ち上がる。そこにドラマがあるんだ」
私は、そう語りながら、小説を書き綴っていく。
葉山拳太郎。無冠の帝王と呼ばれた男は、再びチャンピオンベルトを巻き、第二の人生を歩み始めたのだった。
[ 終 ]
おまけ1 GPT4o-miniに書かせてみる。
概要
GPT4o-miniは出力上限トークン数が16000ほどなので、一度にそれなりの文章を書けます。
なので、実験2のプロンプトをGPT4o-miniに書かせてみたらどうなるでしょうか、という実験
実験結果
『無敗のチャンピオン』
起:引退会見
会見場に足を踏み入れると、スポットライトが俺に浴びせられ、カメラのフラッシュが煌めき始めた。しばらくそのまま立ち尽くしていると、空気が一瞬凍りついたような気がした。記者たちの視線が一斉に俺に向けられる。その無言の圧力に少しだけ息が詰まるが、すぐにそれを振り払い、無表情でマイクを掴んだ。
「引退を決めた理由はシンプルだ。勝てないボクサーに存在意義などないからだ」
言葉が会場に響くと、しばらくの間、静まり返った。記者たちは、俺の顔を見ている。誰もがその一言に何か深い意味を感じ取ろうとしているのがわかる。だが、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもなかった。ボクシングとは、勝つことがすべてだ。それ以外の理由など、このリングでは一切認められない。
無敗で挑んだ世界タイトルマッチ。あの時、俺はすべてを賭けて戦った。けれど、結果は敗北だった。無敗の俺が、あんな形で負けるなど、考えたこともなかった。誰よりも強くなりたかったし、誰よりも勝ちたかった。でも、その勝利を掴むことができなかった。
「引退後の予定は?」と記者が尋ねる。俺は少し考えてから答えた。
「そうだな。ボクシングの小説を書こうと思っている。経験を活かせば、きっと面白いものが書けるはずだ」
そう言い放つと、会見は一層静まり返り、やがて拍手が起こった。それは薄っぺらいものだったが、俺にはそれが心地よくもあった。もうリングに立つことはない。次に俺が人々の前に現れるのは、ペンを持った作家としてだ。
承前半:小説執筆
退職金で少し豪華な部屋を借り、引退後はしばらく自由な時間を楽しむことにした。ジムに通うこともなく、毎日家でのんびりと過ごす。最初のうちは、それなりに心地よかった。だが、次第にその無為な日々が、俺を不安にさせ始める。
「俺は何をしているんだ?」
勝つために生きてきた。ボクシングで無敗を誇り、全てを勝ち取ろうとしていた自分が、今やただの暇な男として時間を浪費している。それが、次第に耐えられなくなってきた。
ふと、思いついた。そうだ、ボクシングの小説を書こう。無敗のボクサーが世界タイトルを勝ち取るストーリー、俺の夢を代わりに叶えさせればいい。俺が成し得なかったものを、物語の中で実現させればいいのだ。
机に向かうと、最初はスムーズに進んだ。主人公は、若干23歳の無敗のボクサー。彼は次々と相手を倒し、ついに世界タイトルに挑戦する。彼の強さや精神力を詳細に描き、何度も自分を鼓舞しながら書き進めていった。
しかし、書き終わってみると、何かが違う。物語がどうしても面白くならない。主人公は強すぎるし、対立構造が単調だ。人間ドラマが感じられない。それが何故だろうか。俺は自分のペンをじっと見つめていた。
結局、答えが出なかった。物語はまだ未完成のままだ。
承後半:取材の旅
つまらない小説に、さらに次の手がかりを探す必要があった。そこで思い出したのが、かつての仲間たちだった。あのジムに行って、もう一度現役時代の感覚を取り戻すのも悪くないかもしれない。そう思い立ち、ジムを訪れることにした。
「久しぶりだな」会長が笑顔で迎えてくれた。
ジムの中は変わらず活気に満ちていた。若いボクサーたちがミットを叩き、汗を流している。その姿を見ていると、懐かしさとともに、次第に自分の中にあった熱い感情が蘇ってきた。
「ボクシングの小説を描いているんだ」と話すと、会長は不思議そうな顔をした。
「お前が書くんだって? それはすごいな。でも、もしかしたら、こうして一緒に取材していくうちに、もっと面白いストーリーが見つかるかもしれないぞ」
そう言って会長は、俺にかつての選手たちを紹介してくれた。その中には、俺がデビュー戦でKOしたベテラン選手もいた。引退試合を迎えた彼は、どこか寂しげだったが、その試合には多くのファンが集まり、拍手が鳴り止まなかった。
「こんなにも応援してくれる人たちがいるんだ」と彼は言った。リングを降りる時、彼は涙をこらえきれずに泣いた。その姿を見て、俺は少しだけ心が動かされるのを感じた。
その後、他の選手たちとも話をしてみた。再起不能と言われた選手の復帰戦を見に行くと、彼は負けてしまったが、それでも必死に戦っている姿に胸が熱くなった。負けてもなお、彼は戦い続けていた。試合後、「もう一度、やり直せると信じている」と言っていた。その言葉が、しばらく俺の耳に残った。
そんな中で気づいたことがあった。勝者だけがドラマを生み出すわけではない。敗者にも、忘れられない物語があるのだ。
転結:試合と心の変化
ジムを後にして、次第に俺の中に一つの決心が固まっていった。小説をただの勝者の物語にしてしまうことはできない。勝利だけが全てではない。そのことを、今こそ理解しなければならない。
それから数日後、思いもよらない依頼が舞い込んできた。ジムの会長から、ある話が持ちかけられたのだ。
「お前、ちょっと待ってろ。天才高校生とのエキシビジョンマッチをお願いしたいんだ」
会長の言葉に一瞬、耳を疑った。俺が現役を引退してから、すでにかなりの時間が経っていた。体力も完全に落ちているだろう。だが、会長は続けた。
「オリンピックを目指している若手だ。期待の星だよ。お前に戦ってほしい。お前なら、この子の良い刺激になるだろう」
そう言われても、俺はしばらく言葉を失っていた。どうしても現役を続ける気にはなれなかったが、この機会を逃せば、きっと今の自分には何も残らない。リングの上で、最後に何かを証明したいという気持ちが湧き上がった。いや、証明するのは自分だけではない。リングの上で、あの選手たちが見せたような「負けない心」を見せることが必要だと感じた。
試合の日が来ると、会場には多くの観客が集まり、熱気が溢れていた。若いボクサーたちの試合を観ていると、気持ちが高ぶっていくのを感じた。彼らは皆、まだ何も知らない。でも、その目には「自分は強い」と信じる力強さがあった。それに触れるたびに、俺の中で何かが動き始めた。
「さあ、次はこの試合だ!」と、アナウンサーが言った。
その瞬間、俺はリングに向かって歩き始めた。後ろの方から、あの選手の試合を観戦する。彼は、以前に「子供に勝つところを見せたい」と言っていた選手だ。彼の試合が始まり、リングに立つ姿を見た。観客の中には、奥さんと子供もいて、応援しているのがわかる。しかし、試合の結果は変わらなかった。彼はまた負けてしまったのだ。
リングを降りる彼の姿が、胸に突き刺さる。涙を流しながら、足元がふらついている。負けても、彼はまだ何かを背負い続けている。その背中を見て、俺は一瞬、涙がこみ上げてきた。
「勝たなきゃ意味がない」とばかり思っていた自分の考えが、今、揺らいでいった。それまでの俺は、リングで勝つことだけを求めていた。しかし、この敗北が、彼にとってどれだけ重いものなのか、それを感じた時、勝敗の先にあるものこそが重要だということを理解した。
そして、次に登場したのは天才高校生だった。若干20歳で、オリンピックを目指している彼は、まさに期待の星だ。観客の歓声が高まり、彼の登場を待ち望んでいる様子が伝わってきた。彼のパンチがどれほど強いのか、興味津々で待っていたが、その体の動きが予想以上に速く、鋭かった。俺はすぐに、彼がただの「天才」ではないことを理解した。
試合が始まると、彼の強烈なパンチが俺に次々と当たった。若さとスピードで圧倒され、俺は何度も後ろにのけぞりながらも、必死に耐えた。しかし、体力は限界を迎え、すでに足元がふらついていた。
それでも、俺は諦めなかった。彼が何度も強烈なパンチを繰り出してくるたびに、俺の心の中に何かが湧き上がる。それは、ただ「勝たなければ意味がない」という思いではなかった。
「あの選手たちが見せた心、あの姿勢だ」と、俺は感じた。リングで戦うことだけがボクシングではない。戦い続けるその気持ちが、最も重要なのだと気づいたのだ。
試合が終わり、天才高校生は俺に勝利した。その結果に、何の後悔もない。むしろ、満ち足りた気持ちでリングを降りた。そして、帰り道、俺はもう一度決意を固めた。
「俺は小説を書くことをやめる。そして、もう一度現役復帰するんだ」
心の中で、はっきりとその言葉が響いた。今度こそ、勝つために戦い抜く。その先に、俺が求めていた本当の意味を見つけるために。
考察
まとまりはある。
ただ、なんか文章に面白みが少ない。
やっぱりChatGPTはあまり向いていないように思う。
おまけ2 GPTo1にプロットを書かせてみる
概要
以前、Commandr+にファンタジー小説のプロットを書かせてみたが、つまらなかった。
プロットは割と構成力がものを言うので、つまらなくてもより賢いGPTo1なら、多少面白みがなくてもしっかりしたプロットを書いてくれるのではないだろうか?
プロンプト
面白い短編のファンタジー小説のプロットを書いて
実験結果
タイトル案:『青い月の魔法使い』
世界観・舞台
・夜空に青い月と白い月が同時に昇る世界。
・地上には人間だけでなく、精霊や魔物が混在し、強力な魔法が存在する。
・主人公の暮らす村は辺境にあり、古来より「青い月の魔力」の影響を強く受けていると伝えられる。
主人公
・名前はアレル。15歳の少年。
・生まれつき魔力がほとんどなく、村では「魔法が使えない落ちこぼれ」として扱われている。
・だが、彼には「ものの声を聞く」不思議な力がある。それを本人もまだ十分に理解していない。
発端(きっかけ)
・村に封印されていた「青い月の杖」が何者かに盗まれ、周囲の森に妖しい光が灯り始める。
・杖がなくなったことで、青い月の魔力が暴走しはじめ、村の人々は謎の病や悪夢に苦しむようになる。
・アレルの幼馴染である少女・リオナが重い病に倒れてしまう。彼女を救うには、青い月の杖を取り戻すしかない。
葛藤・冒険の始まり
・「杖は北の死の森にいる魔女が奪った」という噂が流れ、村の戦士たちが討伐に向かうも、皆行方不明となってしまう。
・アレルは自分に魔力がないことを知りながらも、リオナを救うために杖を取り戻す決意をする。
・旅の途中、アレルは森の動物たちや古木の精霊から、魔女がなぜ杖を欲したのか、その手掛かりを得る。
中盤・対立
・死の森の奥深くで、アレルは魔女と対峙する。魔女は杖の力を利用して世界を暗黒に染めようとしていた。
・アレルは魔法使いとしての力がないため、まともに戦えない。だが「ものの声を聞く」能力を使い、周囲の精霊や森の樹木の力を借りて魔女と戦うことを決意する。
・魔女は青い月の魔力を高める儀式を進めており、あたりには凶悪な魔物が大量に出現する。
クライマックス
・魔女は絶大な魔力を放ち、アレルを追いつめる。しかしアレルは「ものの声を聞く」能力で、魔女がかつて受けた孤独や悲しみをも知る。
・魔女もまた魔力を失いかけた頃があり、絶望の果てにこの計画を企んだことがわかる。
・アレルは自身の思いやりと、森の住人たちの助力によって魔女の心をわずかに揺さぶる。
・それでも魔女は力を解き放とうとするが、森の木々や精霊たちがアレルを護るために立ちはだかり、最後にはアレルが杖を取り戻すことに成功する。
結末
・青い月の杖が村に戻ると、魔女が起こした呪いは解かれ、リオナをはじめ、苦しんでいた村人たちは回復していく。
・アレルの「ものの声を聞く」能力は、単なる才能ではなく、魔法を超えた“共感の力”だったと示唆される。
・杖を失った魔女は静かに姿を消し、アレルは「魔力がなくても、役に立てることがある」と確信する。
・青い月の下、復活した村の人々に笑顔が戻り、アレルは旅の中で知った「本当の強さ」を胸に、仲間たちと新たな日常へと歩み出す。
考察
けっこうよくあるプロットな気がするけど、内容自体はしっかり構成できている。
さすがGPTo1。
今回はすごいおおざっぱにプロットを書かせたが、もっと斬新なプロットを書けって言ったら書いてくれるんだろうか?
おまけ3 GPTo1に斬新で面白いプロットを書いてもらう
概要
GPTo1に斬新なプロットを書いて、という無茶ぶりをして、面白いものを書いてくれるかを試してみる。
自分が言われたらふざけるな、ってなると思う。
プロンプト
あまり見ない、斬新で面白い短編のファンタジー小説のプロットを書いて
実験結果
タイトル案:『旅する“影”たちの合唱』
- 世界観・舞台設定
影だけが独立して動き回る世界
この世界では、人間や動物、建物など、ありとあらゆる「影」だけが意志を持ち、独立して動き回ることができる。現実の姿(本体)はほぼ固定されたままだが、影は自由に移動したり、会話したり、別のものの影と合体したりできる。
本体の世界と影の世界が重層的に存在
「本体」と「影」は、同じ場所・同じ時間帯で共存しているが、基本的に相互干渉はしない。本体から意識は生まれず、あくまで影だけが自我を持つ。
例:昼の世界では本体は街で働き、建物もそのまま佇んでいるが、そこから伸びる影同士が道端で会話したり、時には争ったりしている。
影たちは、光が強いほど大きく濃くなるなど、常識的な物理法則はある程度守る。しかし、その中で主体的に動き回る。
「黄昏時」に影の力が極限化
太陽が沈む際に光の角度が変わり、影が細長く巨大化していく時間帯――俗に言う“黄昏時”になると、影たちは特殊な力を使えるようになる。たとえば、短時間だけ飛行したり、他の影を遠くまで引き寄せたりできる。
- 主人公
名前(仮):シュダの影
本体であるシュダは静かな農場で暮らす青年だが、実は彼にはほとんど活動意欲がない。一日中、無表情で畑を耕したり、黙って牛の世話をしている。
その“影”である主人公は、好奇心旺盛でじっとしていられない性格。
「いつかこの世界の果てを見てみたい」「自分を生み出したシュダという本体を、もっと幸せにしてあげたい」と考えている。 - 物語の発端(きっかけ)
謎の白い影の出現
ある日、村はずれに“白い影”が現れる。普通は影といえば黒や灰色なのに、この白い影は異様なほど光を反射し、近づく他の影たちを溶かし込もうとする危険な存在だった。
白い影は言葉を話さず、突然現れては建物や生物の影に次々と融合し、やがて拡張しながら消え去る(あるいは、どこかへ移動してしまう)。
「影同士」が触れ合ってできる一体感は通常の世界でも珍しくないが、白い影の場合は相手の意志を吸収し、消滅させてしまうらしい。
シュダの影は危険を察知し行動を決意
村の影たちはこのままでは自分たちが奪われると恐怖を抱き、逃げ惑う。普通なら本体たちが影の危機を知らずとも、影同士でなんとかやり過ごすが、今回の白い影は規格外で、村の影たちでは対応できそうにない。
シュダの影は、白い影の動きを止める手がかりを探すべく、旅に出ようと決意する。
4. 冒険・中盤展開
“影の都市”と謎の賢者
シュダの影は遠くにあるという“影の都市”に向かう。そこでは古今東西の影たちが集い、奇妙な文化を育んでいる。
影の都市は日陰を多用した複雑な建築が特徴。細い路地がいくつも重なり合い、影同士が合体・変形を繰り返すパフォーマンスが行われている。
シュダの影は古書を読み漁る賢者の影と出会い、白い影の正体が「光の過剰干渉によって生まれた異次元の裂け目」から来た存在だと聞かされる。
賢者の影いわく「白い影を沈めるには、影たちの合唱による“黄昏のコーラス”が必要」と語る。賢者によると、黄昏時の特別な調和波動が白い影の活動を抑制する唯一の方法なのだという。
合唱団の結成
シュダの影は、各地を巡り個性的な影をスカウトしていく。
巨大な城の影:城そのものの威厳を宿す厳格な性格だが、実は音楽が好き。
竜の影:一度は人間に討伐されて本体が消えかかっているが、影だけが奇跡的に生き残っている。地鳴りのような低い声を出せる。
踊り子の影:影の都市で人気を博しているダンサーの影。声よりもリズムを担当。
彼らは「黄昏のコーラス」に向けて練習を始めるが、それぞれ自我が強く、まとまるのは容易ではない。
5. クライマックス
“黄昏のコーラス”と決戦
シュダの影たち合唱団が、白い影が大挙して押し寄せている村へと戻る。太陽が沈み始めると同時に、影たちは自分の本体の位置につき、あるいは舞台として組み上げた広場に集結する。
村の建物や住民の足元に、白い影がじわじわと侵食していく。不気味な光を放ち、街がまるごと溶け込んでしまいそうになる。
そこへ、シュダの影たち合唱団が力を合わせ、黄昏のコーラスを一斉に響かせる。低音の咆哮、舞うようなリズム、城の影が繰り出す荘厳な音階が絶妙に重なり合い、夕日に反射して世界を包み込む。
白い影の退散と世界の再構築
黄昏のコーラスが極まると同時に、白い影が光の粉塵をまき散らしながら収縮し、どこかへ吸い込まれるように消えていく。村の影たちは解放され、それぞれの本体と再び“連結”し始める。
白い影が完全に消えたあと、世界中の影が一瞬だけ光を帯び、また黒や灰色の通常の姿へと戻る。その瞬間、シュダの本体がはじめて少しだけ笑顔を見せる。
旅して戻ってきたシュダの影もまた、最初の場所に静かに落ち着く。しかし「もう一度、いつか世界の果てを見に行きたいな」と、薄明かりの中で微かに語り合う。
6. 結末・後日談
影たちの新たな日常
黄昏コーラスで白い影は鎮められ、これまで通り“本体”は無頓着に暮らし、“影”は自由に動き回る世界が戻ってきた。だが合唱団メンバーとの絆や、白い影の出現が影たちに与えた衝撃は大きい。
各地の影たちが交流し、他の土地の影たちと合唱を練習する“黄昏合唱祭”が開催されるようになる。
シュダの本体もまた、わずかにだが外界への興味を持ちはじめ、たまにふらっと散歩に出かける。影はそんな本体を“守りながらもリードしてやる”ような感覚で寄り添う。
読者には「白い影は本当に滅んだのか? あるいは形を変えてどこかにいるのではないか?」という謎が残される。
このプロットの見どころ
“影”が主体の世界
通常ファンタジーでは本体(人間や動物など)が主体ですが、ここでは影がすべてを動かしている。既存の作品であまり見ない設定で読者を引き込みます。
物理的制約(光源や時間帯による影の長さ・濃さ)がドラマを盛り上げる要素になる。
白い影という謎の脅威
斬新な敵役。侵食・合体・溶解といったホラー要素を持ち、ただのモンスターではない不気味さがある。
闇(影)とは逆の性質を持つため、視覚的インパクトも大きい。
音楽的解決(合唱による決戦)
魔法や剣ではなく、“合唱”で危機を乗り越える展開がユニーク。
黄昏という移り変わりの時間帯を象徴的に使い、夕日に映えるビジュアルを想像させる。
短編でもまとまりの良いストーリー構成
発端(白い影の出現)
都市への移動(情報収集と仲間集め)
クライマックス(合唱による決戦)
結末(元の世界へ戻り、謎を少し残す)
考察
あれ、面白いぞ……?
なんかジブリとかに作らせて映画にしたら映えそうな設定。
o1、すごい、ですね……?
これは、o1に小説を書かせたら実は面白いのか……?
おまけ4 GPTo1に書かせたプロットで小説を書いてもらう
概要
上の影のプロットで小説を書いてもらう。
プロンプト
ではこの影のプロットを使用して、小説を書いて。
小説家のように、地の文大目で重厚な古典ファンタジー小説のように書いて
実験結果
『旅する影たちの合唱』
世界のすべてには、必ずといってよいほど影がつきまとう──人であれ、獣であれ、あるいは城であれ木であれ、光あるところに影は生まれ、陰りの先に新たな陰りが生まれる。しかしこの世界は、少々様子が異なっていた。ここでは影こそが自我を宿し、自由に言葉を交わし、奔走するのである。しとどに照りつける陽光のもと、本体はほぼ動かず、ただそこに在るだけ。いっぽう、黒々と地面を這うはずの影たちが、自らの意思でもって動き回るのが日常風景となっていた。
人々の本体は多くを語らない。畑を耕す者は、朝から晩まで同じ畝(うね)を往復しつづけ、商人は店先で客に品を渡すだけで、笑顔すらない。時に旅人が来ても、会話や感嘆の声を上げるのは、その影である。表情なき顔の横を、影だけが飛び出してきて、いそいそと挨拶や商談をする光景は、外の地から訪れた者にとっては驚くべきものであろう。
果てしなく広がるこの世界で、多くの者はそれを当然の理と受け止めていた。影の者たちにとって、光の動きや時間の移ろいは己(おの)が運命の糸に等しい。昼が盛りになれば、影は短く濃くなり、ときに本体の足元に張りついて微動だにしない。夕暮れの黄昏時には、逆に細長く伸び、互いに交わり、複雑にうねりながら踊るように揺れ合う。それはまるで、広大なる夕日の舞台で繰り広げられる、影だけの狂詩曲(ラプソディ)であった。
シュダとその影
この物語の舞台となるのは、人里離れた辺境の農村である。そこにはシュダという青年が暮らしていた。彼自身は背丈が高く、肩幅もがっしりとした体躯をもつが、その表情はいつもぼんやりとし、口を開くことはめったにない。収穫の季節になれば、機械仕掛けのように畑を行き来し、黙々と穀物を狩り取る。それが日課であり、生業であり、また人生のすべてといってもよかった。
だが、シュダの足元で静かに揺れる“影”──それこそが本当の主役である。
シュダの影は実に活発で、朝日が昇ると同時にひょいと地面から抜け出しては、村の他の影を訪ねて談笑を交わす。夕闇が迫れば、陽の長さを存分に楽しむかのように、悠々と遠回りして家へ帰る。世の影たちにもそれぞれ性格があるが、シュダの影はとりわけ好奇心旺盛で、いつか遠い都市へ行ってみたいと願っていた。
「この世界の果てには、どんな光が射しているのだろう。僕らの本体はただ座り込んでいるだけだからこそ、なおさら知りたくなるよ」
シュダの影は、ひんやりとした夜気を浴びながら、こうぼやくことがよくあった。いっぽう、肝心のシュダは黙したまま。かの青年の瞳には曇りがなく、ただ遠くを見つめてはいるが、何を考えているのか、誰にもわからない。
白い影の噂
ある晩、村の広場に集まった影たちが、深刻そうな顔でささやき合っていた。影の表情は線や形によって微妙に変化し、語らずとも雰囲気で伝わるのである。どうやら近隣の村で「白い影」が現れたという噂を耳にしたらしい。
“白い影”――それは通常の黒い影とは違い、薄気味悪いほどに光を反射し、近づいた影を呑み込んで消し去るとされる。影の世界にとって最も忌むべき存在の一つで、古い伝説や恐怖譚の中だけに登場すると信じられてきたものだった。
「やつが現れると、その地の影は総じて同化される。意思という意思が奪われ、最終的にはまっさらな光の粒となって消えるのだとか……」
「そんなこと……信じられない。だが、近くの村では確かに白い影を見たという話がある」
ざわめきは夕闇とともに一段と深まった。その輪の外れにシュダの影はこっそり耳を傾け、沈痛な面持ちで考え込んでいた。
夜が明けると、事態はさらに深刻化した。村のはずれの納屋に紛れ込んだ白い影が、住人の影を溶かしたという報せがもたらされたのだ。実際に犠牲になった影の痕跡を目にした者もいるという。村の影たちは恐慌状態に陥り、あちこちで逃げ惑うように走り回るが、もともと助けを求められるような“本体”はいない。本体たちは静かに農作業や家事に没頭しているだけで、この惨事に気づいている様子すらない。
「このままじゃ、私たちがみんな呑み込まれてしまう……」
いかに言葉を尽くそうとも、本体に危険を伝えるすべはない。つまり、影たちだけで白い影に対処しなくてはならないのだ。だが、白い影の真の正体や対抗策を知る者はいない。
そのとき、シュダの影は思い立ったように一歩、前に出た。
「……僕が行こう。この世界には“影の都市”という大きな集まりがあるらしい。そこなら、白い影に関する知恵を持つ者もいるかもしれない」
村の影たちは一瞬息を呑み、やがて「そこまでしてくれるのか」と深く頭を垂れた。恐ろしさに足がすくんで動けない者ばかりのなか、シュダの影が示した勇気はまばゆいほどであった。
影の都市への道
こうして、シュダの影は単身、影の都市を目指す旅に出た。本体のシュダはいつも通り畑に立ったまま黙しているので、置いていっても気づかないだろう。それでも“彼を置き去りにする罪悪感”が微かに胸をよぎったが、シュダの影はそれを振り払い、闇の底へと踏み出した。
遠方への旅路は想像以上の困難を伴った。昼は陽光が強すぎ、影が縮こまって思うように動き回れない。日が高い間は木陰や岩陰に隠れて凌(しの)ぎ、夕方から夜明け前にかけて少しずつ前へ進む。幸い、途中の森や川辺でも多くの影たちと出会い、野宿の際には身を寄せ合って語り合った。彼らもまた、白い影の噂を聞き、憂慮している様子であった。
「“影の都市”には、長い年月を生き抜いた賢者の影がいるそうだ。どんな厄災でも見通す目を持つらしい」
「もし行くというなら、この先の峠道には注意しな。薄暮の風が吹くと、岩肌が一斉に伸び上がって道が歪(ゆが)むんだ」
そんな助言を糧に、シュダの影は足を進める。夜の帷(とばり)が世界を包むとき、影こそが生き生きと活躍する時間が訪れる。辺り一面は暗黒に沈み、月と星々はただ光の点を散らすだけ。だが、影たちにとってはそれが故郷も同然。彼らのさざめきが、森や山肌を波紋のように広がり、やがて夜明けが来る頃には、それぞれの居場所へと静かに帰っていく。
賢者の影と白い影の秘密
ついにシュダの影は、巨大な建物や入り組んだ路地が無数に連なる“影の都市”へ足を踏み入れた。そこでは多種多様な影たちが寄り合い、それぞれが持ち寄る音や動きを融合させ、奇妙で美しい文化を築いている。城の影、球根の影、海鳥の影までもが、独自の声や歌、演技を披露し、まるで人間の大都市さながらの賑わいを見せる。
そんな都市の中央に聳え立つ古い尖塔の一角で、シュダの影は“賢者の影”と呼ばれる存在を訪れた。いにしえの文献の写しをひっそり読んでいる姿は、他の喧騒から切り離されたかのように静謐(せいひつ)であった。
「お前か、白い影について尋ねに来たのは……」
深い空洞から響くような声が、シュダの影を迎える。
「はい。最近、私の村に白い影が現れて、多くの影を飲み込んでいるのです。なんとか対処する方法はないでしょうか」
シュダの影は、込み上げる焦りを押し殺して問いかける。すると賢者の影は長い沈黙の後、石壁に映る無数の紋様をゆっくりと指し示した。
「白い影……それは“光の亀裂”の先から流入してきたもの。まことに異端の存在だ。やつらを止めるには、黄昏時に影たちが声を合わせる“合唱”を行わねばならん。夕陽が最も長く影を延ばす時刻、影の調和した振動こそが奴らを封じ込める唯一の手段よ」
予想外の答えに、シュダの影は目を見張る。合唱──そういえば、影の都市でも夜ごとに音楽や踊りの饗宴(きょうえん)が繰り広げられている。単なる娯楽と思っていたが、どうやらそれらの“影の波”には不思議な力が込められているらしい。
賢者の影は続ける。
「だが、影たちが一丸となって歌うには、それぞれの思いが一つでなければならぬ。これまでに影同士が協力し、互いの波長を合わせることはあまりなかったはず。白い影の脅威に対抗するためには、各地の影を集め、より強大な“声の渦”を作り出すしかあるまい」
シュダの影は力強く頷(うなず)き、都市をめぐって“合唱団”を結成することにした。城の影や竜の影、踊り子の影など、様々な才能を持つ影を探し、説得を重ねる。皆それぞれ我が強く、声の高さやリズムの好みも異なるが、白い影を放置すれば遠からず自分たちの住む土地も侵されると理解していた。こうして、思いがけない“合唱団”が結成される。
黄昏の合唱と決戦
シュダの影たちは、再び村を目指して旅立った。すでに村の各所では白い影が拡散し、地面のみならず家々の壁際までも不吉な光に染め始めている。悲鳴にも似た影のざわめきが、夕暮れとともに広がっていた。
そしてついに、太陽が地平線に沈みかけ、影が細長く伸びるあの黄昏の刻が訪れる。影の団は広場の中央に集結し、それぞれが己が声や動きを調整し、ひとつの“波”を起こすべく息を整えた。
「声を合わせよう。さあ──」
一人の影が静かに合図を送り、城の影が厳かな低音を響かせる。竜の影はまるで地鳴りのように、喉の奥からくぐもった唸(うな)りを発する。踊り子の影がしなやかなリズムを刻み、その拍子に乗って、ほかの影たちがそれぞれの声帯ならぬ影帯を振るわせて合唱へと加わってゆく。
黄昏の空気がその音色を受け取り、辺りを揺るがす。すると、村中を覆わんとしていた白い影の奔流が、不協和音を放つかのごとくギギギ……と軋(きし)みを立てながら収縮を始める。影たちの声が重なり合うほどに、白い影は耐えかねたように後退し、やがて真っ白な光の粉を宙に散らして崩れ去っていく。その様は、闇が光を呑んでいるのか、光が闇に溶けているのか判じがたく、まるで時空の裂け目へと吸い込まれる幻のようだった。
新たな世界の一歩
こうして村は救われ、侵蝕(しんしょく)されかけていた影たちも、それぞれ本体と再び穏やかな日常を取り戻す。しかしこの日の出来事は、ただ災厄を退けたというだけでなく、影たちにとって大きな変化をもたらした。
合唱を通じて初めて互いの波長を重ね合わせた影たちは、一体感の喜びを知った。音楽的な調和、心の振動、そして強い結束──それらは、他ならぬ“影”たちが切望していた新たな道標となる。
村を離れてやってきた仲間たちは、再び各地に戻りつつも「どこかの地で再度集まり、“合唱祭”を開こう」と誓い合う。影だけの祝宴を、より多くの影と共有するためだ。
シュダの影は、そんな彼らを見送りながら、一つ溜め息をつく。いつもの畑には、例によってシュダの本体が立ち尽くし、ただ黙々と作業をしている。その足元の影へと、シュダの影は静かに重なった。
どこか、シュダ本人の瞳が以前よりもわずかに輝きを帯びているように見えるのは気のせいだろうか。夕陽に照らされた青年の横顔には、かすかな笑みのようなものが浮かんでいる。まるで、世界のどこかで起こった騒ぎをほんの少しだけ感じ取ったかのようにも見えた。
「いつか、本当に世界の果てまで足を伸ばせたら……」
シュダの影は呟く。今日と変わらぬ明日が、確かにそこにはある。しかし、影たちが合唱を通して見せた団結と不思議な力は、彼らの暮らしをひそやかに変え始めていた。黄昏時に再びあの旋律が響けば、あるいはさらに遠くまで──音も光も闇も越えて、白い影すら来ぬ未知なる地平へと、踏み出していけるのではないか。そう思うと、不思議な期待に胸が高鳴る。
いつかはわからぬが、遠からずその時はやって来るだろう。人知れぬ深夜の会話のうちに、影たちはまた秘密裡に集い、心を通わせながら新たな未来を紡ぐはずだ。
明日の光は、人間にとって同じ一日かもしれない。だが、そこに生きる影たちにとっては、未知に満ちた冒険への扉となるに違いない。
こうしてこの地に、再び朝が訪れる。すべての本体が無表情で動き出す頃、地上に伸びる黒い影たちは、どこか楽しげに声を交わし合う。彼らが織りなす合唱は、かつてない波動を孕(はら)んで、今もなお、時の狭間にこだまするのである。
考察
面白いですね……
仲間を集めるシーンとかクライマックスとかが省略されているという問題はあるけれど、文章の質とかはめちゃくちゃ高い……
GPTo1最強! 文章を書かせるのでも最強! ということなのかもしれない……
おまけ5 実験1のリベンジ
概要
では、実験1に書いた、最初の自分が書いたプロットで面白い小説が(少なくともプロットの限界までは)書けるかを実験してみましょう。
実験結果
──冒険者の酒場「月下のランタン」。
低く灯されたオレンジ色の明かりが、木造の梁をなぞるように揺らめいている。帳(とばり)が降りた闇の時間帯にもかかわらず、酒場の内は熱気とざわめきに満ちていた。壁に掛けられた古地図や、数え切れないほどの武器のオブジェが冒険者たちの心をくすぐり、酔いどれた重戦士や魔法使いたちが思い思いに声を張り上げている。
中でも一際活気があるのは、暖炉のそばに陣取る我ら四人のテーブルであろう。剣士のクレハ、狩人のレナ、騎士のドロン、そしてわたし、魔術師グレンが腰掛ける席には、微笑ましい笑いと興奮に彩られた空気が漂っていた。
わたしはグレン。軽く一口、さっき頼んだ蜂蜜酒を飲むと、かすかな甘みとアルコールの熱が喉をさす。カップをテーブルに戻すたび、琥珀色の揺らめきが目を魅了した。剣士クレハが一瞬わたしを見て、昨日の冒険について嬉々として語り始める。彼女の声は高く、そしてどこかあどけない。
「ねえ、グレン。昨日の遺跡での最初の仕掛け、あれって魔力感知の罠だったのかな? どうしても理解が追いつかなくて……」
彼女の目は好奇心で輝いている。曲線の美しい刃を持つ愛剣を腰に差し、小柄な身体に似合わぬ自信を漲らせている姿は、いつ見ても頼もしい。彼女が言う「最初の仕掛け」とは、古代文明の遺跡内部で発動した結界のことを指しているのだろう。
レナが静かに口を開く。すらりとした体躯に、長く艶やかな黒髪。まるで夜の帳に溶け込むかのような、神秘的な雰囲気の美しい狩人だ。彼女は斜めに腰掛け、周囲を見渡しながら、さらりとそれに応じる。
「あれはおそらく、踏み入った者の魔力か気配を読み取って、強制的に神経を麻痺させる類の術式だったのでしょう。それに、入り口付近に散らばっていた石像……あれも仕掛けの一部だったのではないかしら。わたしは弓で遠くから様子を窺っていたから、確証はないのだけれど」
まるで何事もなかったかのように口調は淡々としているが、よく見ると口元にほんのり笑みが浮かんでいた。レナは集団で何かをするのが苦手そうに見えるが、わたしたちが迷宮の奥深くまで入るのを援護してくれる、心強い仲間だ。彼女が目を細めると、それはまるで暗闇に光る宝石のように優美で、儚ささえも感じさせる。
「ふっ……」
沈黙を破るようにドロンが低く笑う。騎士としての名誉心に厚い彼は、武骨な性格に見えて実は仲間のことを常に気遣っている人物だ。頑丈そうな重鎧を身にまとい、何があっても我が身を盾にして守ってくれる。
「そもそも、あんな遺跡に近づこうなんてのが正気じゃないんだろうな。だがグレン、お前が術式を中和してくれたおかげで、俺たちは大きな被害を受けずに済んだ。本当に感謝してる」
豪快な声でそう言いながら、大きな手でわたしの肩を叩く。ずしりとした衝撃に、思わず体がわずかに揺れたが、彼の言葉には悪意など微塵もない。彼の金属鎧と椅子がこすれ合う音が、耳をくすぐる。
わたしはややはにかみながら、テーブルの上に両肘をつき、軽く微笑んでみせた。
「あれは単なる偶然さ。ちょうどいい呪文を思い出したから使ってみただけで、上手くいったのは運が良かったとしか言えないよ。それより、クレハが最後に倒したゴーレム、あれは見事だったな。あの一撃は本当にすごかった」
そう言うと、クレハは照れたように小さく笑う。昨日の遺跡での冒険は危険もあったが、こうして思い返せば、仲間との協力が見事にかみ合っていたように思える。何もかも順調で、わたしたちにはもう敵なし――そんな気すらしていた。
***
「そういえば、ゆうべの成果は何か換金できたのか?」
ドロンがからりとした声で尋ねてきた。彼はこう見えてお金の管理にも気を配る性分だ。パーティ全体の維持費や、宿代、物資の補給など、ドロンが率先してやってくれている。豪放な男の見た目とは裏腹に、意外なほど几帳面な一面を持っているのは、わたしたちのパーティが安定して活動を続けられる要因の一つだろう。
「今朝、ギルドへ報告に行ってきたわ。魔道石のかけらがいくつか高値で売れたみたいで、報酬はそこそこ出るそうよ。正確な数字はこれかららしいけど、生活に支障はなさそう」
レナがそう言いながら、一枚の書類をテーブルに広げてみせる。そこにはギルド担当者の簡易的な査定結果が記されていて、文字だらけの書類を苦手とするわたしの目には少しばかり難解だが、レナの言うとおり悪くない数字が並んでいる。
「そっか。なら、少しは美味しいものでも食べられそうかな?」
クレハが安堵したように胸を撫で下ろす。彼女はどちらかというと食べることが大好きで、懐が温まればすぐに豪華な食材を仕入れようとするから、よくドロンに釘を刺されている。
わたしはテーブルの上に置かれた紙片を見て、それからふと視線を店の奥へと向ける。そこには巨大な酒樽が積まれており、冒険者たちが歓声を上げながら、次々とふるまわれる飲み物を味わっている。夜も深いというのに、まるでお祭り騒ぎだ。
どこかに次の新たな冒険の話は転がっていないかな――そう考えていたそのとき、酒場の主人が厚手のエプロンを身につけた姿で、わたしたちのテーブルへと近づいてきた。
***
酒場の主人――名をガルドという、強面の初老の男性だ。頬には無数の傷があり、その昔は冒険者だったのだろうと思わせる雰囲気を持つ。けれど表情は穏やかで、飾り気のない親しみを感じさせる。彼はふくよかな笑みを湛えつつ、わたしたちをひととおり見回した。
「おぉ、中堅冒険者のグレンたちじゃねぇか。昨晩の冒険はなかなか派手だったみたいだな。おまえらの噂、どこ行っても耳にするぜ」
そう言われると、クレハが嬉しそうに微笑む。彼女は自慢げに胸を張っている。だがガルドは、その笑みを受け止めつつも、どこか深刻そうな表情に変わっていった。
「実はな、ちょいと厄介な依頼が舞い込んでな……。おまえらに相談したくて、わざわざ足を運んだんだ。話を聞いてくれるか?」
ガルドはそう言うと、腰のポーチから一枚の parchment(羊皮紙)を取り出し、テーブルの上に広げる。そこには大きな爪痕が描かれたような紋章と、依頼内容らしき文字が記されていた。
「こいつは……グリフィン?」
わたしは目を凝らす。グリフィン――獅子の胴体に鷲の頭と翼を持つ、伝説級の魔獣だ。個体にもよるが、その強大な力は中途半端な冒険者が手を出すと即死しかねない。
「近頃、この辺りの牧草地帯で家畜がやけに減っているって話は耳にしたことがあるだろ? そいつの犯行らしい。鳥や狼の仕業じゃなく、グリフィンとなりゃあ……被害も相当だし、放ってはおけねぇ。だがこの辺に腕の立つ冒険者がいなくてな」
そう語るガルドの表情は重い。もちろん腕の立つ冒険者ならほかにもいるのだが、グリフィン討伐とあれば、それなりの実力と信頼が必要になる。それに依頼主が相当に金を積まなければ、命を懸けた討伐に踏み切る者はそう多くはない。
わたしはクレハやレナ、ドロンの顔を順に見回す。クレハは気が強い性格ゆえか、すでに興味津々の表情だ。レナは黙ってわたしの意見を待ち構えている。ドロンは眉間にシワを寄せて考え込んでいる様子。
「グリフィンの討伐か……正直、俺たちに荷が重くはないだろうな?」
ドロンが低い声でつぶやく。わたしも一瞬、同じ不安が頭をよぎるが、冒険者としての熱が胸の奥から湧き上がってくるのをはっきりと感じる。ここ最近は順調に成果を上げてきたし、そろそろ大きな依頼をこなせる段階ではないか――そう思う自分もいる。
クレハはきらきらとした瞳でガルドを見つめ、ずっと黙っていたが、ついに堪えきれず声を上げた。
「やりましょう! わたしたちが受けます。大物だって、力を合わせればきっと倒せます。ここで尻込みしてたら、いつまでたっても中堅のままですよ!」
***
わたしはクレハの頼もしげな横顔を見て、口角を上げた。間違いなく、彼女のその直向きな情熱は、パーティに勇気を与えてくれる。レナは静かに頷き、ドロンはやや渋い表情を見せながらも、結局クレハに押し切られた格好だった。
「よし……それじゃ、この依頼、引き受けるとしようか」
わたしがそう締めくくると、ガルドはほっと息を吐くように微笑む。彼はわたしたちに念押しするように、あらためてグリフィンの危険性について語った。狩りの手口、戦い方、そして討伐成功後に警戒すべき点など、手早く要点を整理してくれる。
「グリフィンは厄介だ。地上でも空でも戦えるし、魔力にも抵抗力がある。おまえらだけが頼りだ、くれぐれも死ぬなよ……」
その言葉を聞きながら、わたしたちは改めて気を引き締めた。昨日の冒険で得た誇りや喜びは確かなものだが、それ以上に、相手が相手だという危機感を忘れてはならない。これまで積み重ねてきた経験や絆を総動員してこそ、やっと勝機が見いだせる相手だろう。
わたしはそっとクレハの肩に手を置く。彼女は昂揚しきった表情を浮かべていたが、その瞳には自信に満ちた光が宿っている。
「クレハ、気を張るのはいいけど、焦りすぎないでね。まずは情報を集めて、慎重に行動しよう」
彼女ははっとしたように目を瞬かせる。
「……うん、わかった。ごめん、つい熱くなっちゃって。でも、グレンがそばにいるなら安心。みんなで力を合わせて、絶対に成功させようね!」
***
こうしてわたしたちは、グリフィン討伐の依頼を正式に引き受けることとなった。酒場を出る頃には、店内にいた他の冒険者たちが「若いのにチャレンジするな」「無謀だ」と口々に噂していたが、わたしたちはそれほど気にしてはいなかった。
月の光が石畳を白く照らす夜道を、四人並んで歩く。ドロンが盾を背負って大股で進み、クレハは飛び跳ねるようにしてその後ろにつく。レナは後方を守るようにしながらも、あたりを警戒していて、わたしは少し遅れ気味にその背中を追う。
「まずは、ギルドから得られる追加情報を確認しつつ、いまグリフィンが出没しているという荒野へ向かうことになるかな」
わたしは呟くように皆に伝える。するとドロンが振り返り、力強く頷いた。
「そうだな。朝になったらすぐに準備をして出発しよう。グリフィンの目撃情報がある場所までそこそこ距離はあるが、馬車を借りれば二日ほどで到着するはずだ」
闇を切り裂くように街灯が遠くで瞬き、風が古い石造りの建物の隙間をすり抜ける音が耳に優しい。わたしたちは今、期待と不安とが入り混じる奇妙な高揚を胸に抱きながら、明日への決意を固めていた。
***
翌朝――。
宿の自室で目を覚ましたわたしは、軽く瞑想をしてから支度を整えた。魔術師としての準備、すなわち魔力の巡りを整え、呪文の詠唱をスムーズに行うための訓練だ。毎日怠らずに続けているこの一連の動作が、いつしか日課となっている。
外へ出てみると、もうクレハとドロンが宿の前で待機していた。クレハは鞘に収めた剣を丁寧に磨いていて、ドロンは貸し出し用の馬車の荷台に装備を積み込んでいる。二人とも朝早くから動いているあたり、本気度がうかがえる。
「レナはどうした?」
わたしが問うと、ドロンは苦笑いを浮かべた。
「少し前に、弓の手入れがあるから先に出るって言ってたな。どこか静かな場所を探してるんだろう」
なるほど、確かに彼女らしい。わたしはうなずき、三人で少し世間話をしながらレナの帰りを待った。朝の冷たい空気が頰を刺激するが、わたしたちの心を引き締めるのにはちょうどいい。
やがてレナが姿を見せると、馬車に乗り込み、いよいよ出発する。途中でギルドへ寄り、グリフィンに関する追加情報を手に入れるが、やはり危険度の高い存在であることには変わりないらしい。畑を荒らし、家畜を狩るグリフィンは、まだ移動範囲が限られているが、もしこれがもっと広い地域に飛び回るようになれば、大勢の命が脅かされる。いずれにせよ、今のうちに叩いておくのが最善なのだ。
***
馬車は日差しを浴びながら淡々と進む。広い街道沿いには小さな集落や商店が点在しており、ときおり笑顔で手を振る子供たちの姿もある。その平和な光景を眺めながら、わたしはこの仕事の重みを改めて感じていた。大物の魔獣が人々を脅かしているという事実。それをわたしたちが何とかしなくては、この平和も守れない。
クレハが前方の風景を見つめつつ、小さく声を上げる。
「ねえグレン、あの大きな樹、すごく立派だね。今度はああいう木陰のある場所でキャンプをしてみたいな……なんて」
その声色はどこか楽しげで、まるで恐ろしい魔獣の討伐依頼に向かう旅の最中だというのを忘れてしまいそうなほど。わたしは思わず微笑み返し、彼女と他愛のない会話を交わす。これがわたしたちの日常。どんなに危険な任務に向かう途中でも、仲間同士で語り合う時間は格別だ。
「今度は、平和な依頼のときにゆっくりと行こう。美味しい食材を持ち寄って、キャンプやバーベキューでもしようか」
わたしがそう提案すると、クレハはパッと明るい笑顔を見せ、「絶対だよ!」と嬉しそうに言ってくる。
そのやり取りを横で聞いていたドロンは、呆れたように肩をすくめる。
「戦いの前だってのに、ずいぶん呑気だな。でもまあ、余裕があるのは悪いことじゃない。うまくいくならそれでいいんだ」
彼の言葉の裏には優しさがある。大きな体と豪胆な見かけに反して、ドロンは誰よりも仲間を気遣い、守ろうとしてくれる男だ。それをわたしはよく知っている。
レナは黙って遠くを見据え、時折耳をそば立てるようにして警戒しているようだ。きっと狩人としての習性なのだろうが、その横顔は美しく、そして凛々しい。
***
丸一日かけて道なりに進んだわたしたちは、二日目の夕方にはグリフィンの出没情報がある荒野の近くに到着した。周囲は草原が続き、遠くには岩山が見える。大きな木々は少なく、空が広々と広がっていた。こういった開けた場所では、空を飛ぶグリフィンを目視できる可能性があるが、逆にこちらも隠れる場所に乏しいという不利な状況でもある。
「ここからもう少し先に行ったところに、牧草地があるらしい。被害があった場所も近いはずだ。そこで野営をしながら奴の出現を待つのがいいかもしれん」
ドロンが地図を確認しながら提案する。クレハは頬に手を当てて、考え込むような表情。レナは相変わらず静かなままだが、何か考えがあるのかもしれない。
わたしは杖を握り直しながら、辺りの風景を見回す。荒野の風は乾いていて、日が暮れ始めると一気に肌寒くなってくる。星がいっそう際立ちそうな、そんな夜になりそうだ。
「よし、あの岩陰を拠点にしよう。あそこなら多少風も防げるだろう」
わたしが皆に声をかけると、クレハが笑顔で頷き、ドロンが馬車をそちらに誘導する。レナは馬車からすばやく飛び降り、岩場のあたりを見回して警戒を続けている。
***
夜が訪れ、わたしたちは用意したテントを岩陰に張り、焚き火を囲んで休憩していた。火の粉がパチパチと弾け、オレンジ色の光が皆の横顔を照らし出す。冷たい夜風をやわらげるため、クレハが毛布を肩に掛けながら、小さく震える声で呟いた。
「本当に来るのかな。グリフィン……」
その眼差しには、わずかながら不安の色が浮かんでいる。わたしは火の手を注意深く見つめながら、低い声で答える。
「きっと来るさ。ここは被害が多かったって話だし、奴が棲み家にしているのはあの岩山かもしれない。夜襲をかけてくる可能性もあるから、油断しないようにしよう」
クレハはこくりと頷く。焚き火の明かりのせいか、彼女の頬はうっすらと赤らんで見えた。彼女の真っ直ぐな瞳を見ていると、こちらの胸も熱くなるような気がする。仲間のためなら、わたしはどんな困難にも立ち向かいたいと思う。
ドロンが軽くあくびをしながら、厚い胸当てを外した。騎士の鎧を長時間着用していると、相当な疲労が溜まるらしい。けれど彼はそれを表に出すことを好まない。今こうして外すのも、身体をリラックスさせて明日に備えるためだ。
「……今日は順番に見張りをしよう。俺とレナが先に立つ。グレンとクレハはしっかり休んでくれ。気配を感じたらすぐに起こす」
その言葉に、レナもうなずき、弓を抱えたまま立ち上がる。彼女が焚き火の向こうに消えていく気配を見送りながら、わたしはクレハと視線を交わした。
「ありがとう、ドロン。わたしたちもゆっくり眠るよ」
そう言ったものの、わたしは簡単には眠れそうになかった。大物討伐の前に抱く高揚と恐れ。それに、このパーティへの愛着や責任感。心のどこかがずっと脈打ち、鼓動がやけに早い。
***
朝日が昇り始める少し前、ドロンがわたしの肩をゆさぶって起こした。
「……グレン、そろそろ夜が明ける。何事もなかったが、これから先は分からん。すぐに支度してくれ」
わたしはうっすらとした眠気を振り払い、頭を軽く振る。少し肌寒いが、意外と疲れは残っていない。じきにクレハも目を覚まして、簡単な朝食を摂りながら、わたしたちは昨夜の状況を確認する。レナとドロンが交代で見張ってくれたおかげで、獣の足音ひとつ聞かなかったらしい。むしろそれが不気味にも思えるほど静かな夜だった。
「……グリフィンは夜行性の印象があるけど、昼も飛び回ることがあるって聞くし、何か策を練れないかな」
クレハが不安そうにつぶやく。レナは黙ったまま、馬車の荷台から弓矢を取り出し、矢尻の確認をしている。打ち合わせでもしているように、ドロンがわたしを見やる。
「グレン、何かいい方法はあるか? 相手は空を飛べる。仮に姿を見せても、こちらが追うのは難しい。逆に近づいてきたら一気に叩かれる恐れもある。どちらにせよ、こっちが翻弄されちまう」
わたしは杖の先を地面に突き刺すようにして立ち、周囲の地形をもう一度確認してみた。開けた荒野に、風を遮る岩場。遠くには高い山脈が見える。グリフィンにとっては空を舞うのに恵まれた環境だと言える。
「……いっそ、奴が現れるエサ場を突き止めて、そこに罠を仕掛けるか。もしくは、あえてこちらの存在を見せつけて誘い出すか。あまりうまい手段は思いつかないが、待ち伏せができれば、それが一番だと思う」
レナがわたしの言葉に相槌を打つ。
「同感ね。何か誘引材を用いて、グリフィンが警戒を解く隙を狙うしかないわ。この辺り、家畜が襲われた場所があるんでしょう? そこに近づいてみるのも手かもしれない」
クレハは少し表情を曇らせる。
「……でも、もしまた家畜が襲われたら、被害が増えちゃわない?」
ドロンが彼女の言葉に応えるように、力強く拳を握る。
「それはわかるが、放っておけばまた別の場所で被害が出る。それなら、あえてここで食い止めるほうがベターだろう。すまないな、クレハ。割り切れないかもしれないが……」
クレハは少し困ったように視線を落とす。人当たりのいい彼女にとっては、家畜を囮にする行為はあまり気分のいいことではないのだろう。だけど、わたしたちがグリフィンを討ち取るために多少の犠牲は避けられないことかもしれない。
***
そうして協議の末、わたしたちは近くの牧草地を巡回し、襲われた場所を確認することにした。馬車に乗って荒野を進むうちに、いくつかの農家や牧場が見えてくる。被害を聞き込みながら先へ進むと、あちこちの農夫が怯えた様子で「夜になると翼のある化け物が来る」と恐怖を吐露していた。
「おお……あいつは、でかい鷲の頭をした猛獣だ! 息子が馬を追われて、命からがら逃げ帰ってきたんだが……本当に危なかったんだ……」
取り乱しながら訴える中年の農夫を前に、わたしたちは軽く息を飲む。やはりグリフィンの仕業に間違いないらしい。被害が拡大する前に討伐しなければ、犠牲者がさらに増えるのは明らかだ。
「ここを拠点に、今日から数日は見回りをしよう。夜間は危険だが、俺が盾役を務める。レナが遠距離から援護、クレハは近接戦闘の要、グレンは魔術で対応してくれ」
ドロンが意見をまとめると、わたしたちはそれぞれに頷く。今夜から行動を開始し、グリフィンの出現を待ち受けるというわけだ。できれば、これ以上の犠牲は出したくない。その想いを胸に、わたしは杖を握る手に力を込めた。
***
夕暮れが近づき、空が朱色に染まるころ。わたしたちは牧草地の近くに陣を取り、比較的見渡しのいい場所で待機していた。風が草原を渡り、さわさわと心地よい音を立てている。どこか牧歌的な景色ではあるが、今はそんな余裕も感じられない。
クレハは剣を抜き、鍔(つか)に手を添えたまま、警戒態勢に入っている。ドロンは大盾を立てかけ、わたしはいつでも呪文を放てるように精神を集中していた。レナは地面に伏せるようにしながら、遠くを見据えている。
やがて日が沈み、空が紫紺から深い青へと変わり始める。星が瞬き出すタイミングで、わたしたちは静かに息を呑んだ。
草原の向こう――遥か遠くの空を見やると、僅かに黒い影が横切ったように見えた。大きさはまだ判別しづらいが、きっと普通の鳥ではない。ドロンが緊張感を帯びた声を発する。
「……来るぞ。あれがグリフィンかもしれない。構えろ!」
その瞬間、レナが一気に身を起こし、弓を引き絞る。クレハも姿勢を落として剣を構え、わたしはすぐさま呪文の詠唱に入る。
「キャアアアアアアアッ!」
耳を裂くような甲高い鳴き声が、空気を震わせる。風を切ってこちらに急降下してくる巨大な影。それは間違いなくグリフィンだった。月光の下、その姿がはっきりと映し出される。鋭い鷲の目、猛禽類のくちばし、そして獅子の胴体。翼を大きく広げると、まるで夜空の主が降臨したかのような迫力だった。
「くっ、でかい……」
ドロンが呟く。近づいてくるグリフィンは想像以上の大きさだ。雄々しい鷲の頭部とたくましい獅子の四肢を持ち、その翼がはためく音は轟音のよう。これだけの相手を本当に倒せるのか、心が一瞬震えるが、それでもわたしは呪文の詠唱を止めない。
「はあっ!」
まず先手を取ったのはレナだ。矢を放つと、グリフィンの翼の付け根付近に命中したように見える。しかし分厚い羽毛の防御力は高く、大きなダメージにはならないらしい。グリフィンは鋭い視線をレナに向け、襲いかかるべく一気に距離を詰める。
ドロンが盾を前面に構えてグリフィンの突進を受け止める。金属と獣の衝突音が響き、ドロンの足元が少しめり込む。衝撃は相当なものだろうが、彼は歯を食いしばって耐えていた。
「クレハ!」
わたしが叫ぶと同時に、クレハがドロンの脇をすり抜けるようにしてグリフィンの脇腹へ斬撃を見舞う。金属的な刃と甲殻がぶつかる音が響き、獣の唸り声が空気を震わせる。血飛沫こそ見えないものの、多少のダメージは与えられたらしい。グリフィンが嫌そうに翼を広げると、砂埃が舞い上がり、わたしたちの視界を遮る。
「邪風よ、彼の者を阻め!」
わたしはすかさず風の魔術を発動させる。グリフィンの動きを一時的に鈍らせようとしたのだ。青白い魔力が杖の先から奔流のように迸り、突風がグリフィンの周囲を包み込む。しかし獣は力任せに翼をバタつかせ、突風を振り払うかのように宙へと舞い上がってしまった。
「まずい、飛んだ……!」
ドロンが唇を噛む。相手に上空から狙われると、こちらは立ち回りが難しくなる。レナが次々と矢を放つが、羽ばたきで弾かれたり、当たっても浅く刺さるだけだったりで、決定打にはならない。
「落ち着け。奴が再度降りてくるのを待とう。中途半端に追えば、逆にやられるだけだ」
わたしはそう呼びかけ、皆の注意を散漫にさせないようにする。グリフィンは上空を旋回しつつ、こちらの弱点を探るかのように鋭い目を光らせている。相手は知能も高い。それを肝に銘じておかねばならない。
「来るぞ……!」
上空で急に角度を変えたかと思うと、グリフィンは高速でこちらに急降下してきた。目標はクレハか――! わたしは瞬時に判断し、「防御魔法、展開!」と叫んで指先に魔力を込める。クレハに光のカーテンが覆いかぶさり、直接の一撃を和らげる防壁となる。だが、それでもその衝撃はすさまじく、クレハは小柄な体ごと吹き飛ばされ、地面を転がった。
「クレハ!」
わたしはすぐさま駆け寄り、彼女の状態を確かめる。防御魔法が功を奏して重傷は避けられたようだが、かなりの打撲と擦り傷を負ったらしく、呼吸が荒い。クレハは苦しそうに顔をゆがめ、必死に立ち上がろうとするが、まだ足がふらついている。
「大丈夫……わたしは平気……」
彼女は痛みを抑え込むように喉を詰まらせながら、わたしにそう言う。しかし、その姿は見るからに限界が近い。
「お前ら……! オレが引きつける!」
ドロンが大盾を構えたまま雄叫びを上げ、グリフィンの前に立ちはだかる。グリフィンは鷲のように甲高い声を上げ、ドロンの盾を爪で引き裂こうとする。金属が軋む音が耳をつんざく。
その間に、わたしはクレハを抱きかかえるようにして安全な場所に移動させようとした。しかし、グリフィンの攻撃は連続する。ドロンが完全に止め切れるわけもなく、一瞬の隙をついて獣の爪が横薙ぎに振り下ろされた。
「危ない……!」
レナの放った矢がグリフィンの胸筋を掠め、その攻撃の軌道をわずかに逸らす。だがその衝撃が地面を叩きつけ、土煙が舞い散った。わたしはクレハを抱きしめ、咄嗟に地に伏せることでなんとか難を逃れた。クレハは血の気のない顔で、息を詰まらせながらわたしを見上げる。
「ごめん……わたし、足が……」
そう呟く彼女の足元を見ると、見たくないほどのひどい傷がある。先の一撃で何かが刺さったのか、血がそこかしこににじみ出ている。
「クレハ、無理しないで。もう戦えないなら、下がるんだ」
わたしは魔術で応急処置を施そうとするが、回復の呪文は得意分野ではない。完全に治療しきれる自信がなかった。クレハは歯を食いしばり、今にも涙が零れそうな表情をしていた。
「……嫌だ……グレンと、まだ戦う……みんなと一緒に……」
彼女の決死の思いは痛いほど伝わるが、ここで無理をしては命が危ない。わたしは彼女の肩をそっと押さえ、説得しようとする。
しかし、そのときグリフィンが荒れ狂うように翼を広げ、怪我を負った身体を奮い立たせるかのように吼えた。どうやらドロンとレナの攻撃で少し傷を負っているようだが、それでもなお高い闘争心を保っている。血走った瞳はまるで獲物を確実に仕留める気迫に満ちている。
「クレハ、聞いて。ここはドロンとレナに任せて、君は下がるんだ。頼む……死なないでくれ」
わたしは懇願するように声を落とす。こんなところでクレハに死なれては困る。彼女はわたしたちにとって大切な仲間で、パーティの心の要だ。
クレハは唇を噛み、涙混じりの声で叫ぶ。
「でも……嫌だよ……グレンが危ないもの……!」
彼女の悲痛な声が胸を締め付ける。それでも、わたしはこの状況を打開しなくてはならない。
「グレン、クレハを頼む!」
ドロンがこちらを振り向きざまに怒鳴る。その表情には焦りが見える。グリフィンは空からドロンとレナを狙いつつ、わたしたちにも奇襲をかけようとしている。ここで時間をかけてしまえば、全滅の危険すらある。わたしは奥歯を噛みしめ、深呼吸する。そして、一つの決断を下した。
***
「クレハ。君はドロンと一緒にここを離れるんだ。……わたしが囮になる」
そう告げた瞬間、クレハの瞳が大きく見開かれる。彼女は首を振り、必死に拒否を示そうとするが、わたしは強引に彼女の手を握り、力を込めて語りかける。
「このままじゃ、君はその足じゃ戦えない。グリフィンの動きは俊敏だし、長期戦は望めない。だから、わたしが魔術で奴を引きつける。そうすれば、君たちは逃げられる。レナもドロンも、君を安全なところへ運んでくれるはずだ」
涙を滲ませたまま、クレハは必死に首を振る。言葉にならない声が喉の奥でつっかえているようだ。わたしはそれを無理やり押し留めるように、ふわりと微笑みかけてみせる。
「大丈夫。わたしは、こう見えてしぶといんだ。もし倒れても……君たちが生き延びてくれれば、それでいい」
「嫌……グレン、いやぁ……!!」
クレハの絶叫にも似た声が荒野に響き渡る。その哀切な響きに、わたしの胸が苦しくなるが、もう後戻りはできない。彼女が涙を流しているのを見て、わたしも心が揺れる。だけど今、仲間を守るために必要なのは、この決断しかない。
「ドロン、レナ! クレハを頼む!」
わたしは力強く呼びかけ、立ち上がって杖を握りしめる。ドロンは戸惑いながらもうなずき、クレハの身体を抱え込むようにして立ち上がらせる。クレハは必死に足掻こうとするが、痛む足とドロンの腕力には勝てない。レナもわたしたちの意図を悟り、苦悶の表情を浮かべながら周囲を警戒している。
「行くんだ……頼んだぞ!」
そう言い放つと、わたしはグリフィンのいる方向に向き直る。獣はわたしの気配を感じ取り、再び鋭い視線をこちらに向けた。思いきり地面を蹴ると、わたしはグリフィンのほうへ一直線に走り出す。
***
「風よ、我が足を駆け抜けろ!」
足元に青い魔法陣が瞬き、瞬時に身体が軽くなる。疾風の魔術で移動速度を上げ、グリフィンとの距離を詰める。相手は飛行を得意としているが、今は地上でドロンたちとやり合った直後で、一瞬だけ警戒が解けている。そこに素早く接近し、こちらに意識を集中させるのが狙いだ。
「おおおおっ!」
わたしは咆哮を上げて、挑発的に杖を振り回す。グリフィンの目がカッと見開き、獲物を前にした猛獣の血が騒ぐように地を蹴って飛びかかってくる。その勢いはすさまじく、地面がえぐれ、土塊が宙を舞う。わたしはその一撃をなんとか横に転がってかわすが、ものすごい衝撃波で耳が痛む。
「……まだだ!」
体勢を立て直し、魔力を練り上げる。今度は火の魔術だ。
「灼熱の炎よ、我が敵を覆い尽くせ!」
炎の渦が杖の先から放出され、グリフィンの前脚付近を焼く。獣は痛みで顔をゆがめ、ひときわ甲高い声をあげる。わずかに怯んだ隙に、わたしはさらに距離を取ろうとする。
しかし、その翼の一振りが想像以上に速い。わたしの横っ腹をかすめるように鋭い風圧が襲い、身体が宙を舞う。まともに食らったらひとたまりもない。かろうじて逃れたものの、転倒して砂利道を転がる衝撃に、息が一瞬止まる。
「ぐっ……」
血の味を感じながら顔を上げると、グリフィンはわたしに狙いを定めて、ゆっくりと迫ってくる。奴は明らかに怒り狂っていて、この獲物を確実に仕留めようとしているのだ。
「やれ……グレンは囮になるって言っただろうが……!」
ドロンの声が遠くから聞こえる。わたしはちらりと振り返り、ドロンとレナがクレハを抱えて離脱していくのを横目に捉える。クレハは泣き喚きながらこっちに手を伸ばしているようだが、声はもう遠くて、風に流されてしまった。
それでいい。クレハを守れたなら、それでいい。あとは、わたしがどうにかして時間を稼げば、三人は逃げ切れるだろう。
「さあ、来いよ。ここが貴様の墓場だ!」
わたしは杖を地面に突き刺すようにして立ち上がり、グリフィンを挑発する。獣は大きく翼を広げ、爪を構えた姿勢を取る。今にも飛びかかってきそうだ。
わたしは必死に魔力を集中させる。もう後がない。ここで仕留められれば上出来だが、たとえ仕留められなくても、時間を稼ぐしかない。
「光よ……その輝きで我が敵を撃ち砕け!」
精一杯の魔力を注ぎ込み、一条の光が杖の先から迸る。グリフィンの体がまばゆい光に包まれ、灼熱の熱量がビリビリと空気を震わせる。獣は苦しげに声を上げ、もがくように身をよじる。成功か――わたしはそう思ったが、グリフィンの体力は思った以上に桁外れだった。傷を負いながらも、そのまま突進してくる。
「くっ……!」
わたしは避けるのが間に合わず、鋭い爪がわたしの身体を深く斬り裂く感触が走る。激痛が肩から背にかけて広がり、呼吸が詰まりそうになる。杖を持つ手がぐらりと揺れ、一瞬視界が真っ暗に染まった。
「まだ……終わらない……!」
気力を振り絞って杖を振る。だが、獣の攻撃は容赦がない。もう一撃、鷲のくちばしがわたしの横腹を突き破る。まるで地獄の苦しみだ。血が口から溢れ、咳き込むたびに視界がにじんでいく。
それでも、わたしは笑みを浮かべていた。クレハやドロン、レナが助かるなら、それでいい。そんな想いが心を支えていた。
そして、グリフィンの最後の一撃がわたしを捉える。翼の一振りか、爪の切り裂きか、もはやわからない。ただ、身体が宙に放り出され、地面に落ちるまでの一瞬の間、わたしはクレハが泣き叫ぶ声が聞こえたような気がした。
「……クレハ、みんな……無事、逃げてくれ……」
意識が完全に闇に沈む直前、わたしはそう願いながら、砂埃の中に沈んでいった。
***
いつもなら最後に見る光景は、一縷の望みを感じる仲間の顔だったのかもしれない。しかし、わたしの目に映ったのは、切り裂かれた空と、目に焼き付く満月、そして遠くに霞んで見えるクレハの悲痛な表情だった。ドロンの背に担がれながら、懸命にこちらへ叫んでいるのがわかったが、もう声は届かなかった。わたしの身体から意識が離れていく。まるで、空気に溶け込むように、世界がぼんやりと遠ざかっていくのを感じる。
そして、わたしは死んだ。
***
──薄明かりの差し込む空間で、わたしはゆっくりと目を開いた。
身体にあれほどの大怪我を負ったはずなのに、痛みはまったく感じない。むしろ妙に静かで、落ち着いた空気が漂っている。自分の手足を確認しようとするが、その瞬間、周囲の景色がザラザラと崩れ落ちるように変化した。
気がつくと、わたしは柵のような装置の中に座り込んでいた。そこは、まるでまったく別の世界。……目の前には見慣れた天井があるし、部屋の壁には仄暗い灯りがひとつ灯っている。
「……あー……今日は失敗しちゃったなぁ」
口をついて出た言葉は、まるで先ほどまでの死闘などなかったかのように軽い響きを伴っていた。わたし――いや、わたしはもうグレンではなく、堀川大樹として、この椅子に座っている。VRマシンのヘルメットをゆっくりと外しながら、だるい肩をまわす。
机の上には淹れたてのお茶。まだ湯気が立ち上っていて、いい香りが鼻をくすぐる。わたしはその湯呑を手に取り、ちびちびと口に含んだ。すると、その温かさに気持ちがほぐれて、思わずため息をつく。
「ふう……あんなところで死んじゃったから、今日はあまり稼ぎもないまま終わりか。クレハたち、さぞ驚いてただろうな」
椅子を軽くきしませながら立ち上がり、窓の外に目をやる。どこまでも広がる摩天楼の夜景――そんな景色を見ても、わたしはさしたる感慨も浮かばない。今日もいつもと変わらぬ退屈な現実。
「……明日はどうしようかな。グリフィン戦の続きは、もうあのキャラクターじゃ無理だし……まあ、いいか。とりあえず他の世界で遊ぼうか」
のんきな思考が頭を回る。クレハやドロン、レナは、きっとわたしが死んだと思い込んでいるだろう。悲鳴を上げていたクレハの泣き顔が脳裏に焼き付いているが、ここではただの映像に過ぎない。わたしがあの世界に戻れば、もう“グレン”は使えない設定にしてある。あの世界観を崩したくないし、死に戻りはしないルールにしていたから。
だから彼らの中では、グレンという魔術師は本当に死んだ。それは揺るがぬ事実だ。
「でもまあ、こっちには関係ないよなあ」
お茶をもう一口含み、湯呑をテーブルに置く。現実世界の空気は味気なく、ただ無機質な静寂に包まれていた。
わたし――堀川大樹は、あくまで“プレイヤー”にすぎない。死という重い現実をあちらの世界にもたらしたとしても、こうしてのんきにお茶を飲みながら次の遊びを考えている。
「さて、今日はもう寝るか。明日になったら新キャラ作ろう。どうせ労働なんて、AIに任せりゃあいいんだしね」
そんな独り言を呟きながら、わたしは部屋の照明を落とし、無機質な静寂の中へと身体を沈めていく。ふと頭をよぎるのは、先ほどまでの荒野の光景。クレハが必死に伸ばした手の先、泣き叫ぶ姿が脳裏に焼き付いて離れない。しかし、その感情が胸を締め付けることはない。どうせVRの世界の出来事――そんな自分勝手な線引きをしているからだ。
あちらの世界では、わたしの死が悲しみと絶望をもたらしているかもしれない。だが、こちらではほんの一瞬の挫折として、あっけなく消え去ってしまう。
この温度差こそが、わたしの生きる現実。そして……あちらに残された仲間の物語は、もうわたしが知ることのない“本当の物語”として続いていくのだろう。
わたしはまた一口、冷めかけたお茶を味わいながら、静かにため息を吐くのだった。
考察
すごい!
少なくとも、自分がおそらく当時読んでみたかった感じは再現できている!
そうそう、こんな感じでVRのワールドシミュレーターゲームが実際の現実にできた時の、プレイヤーとその世界の人物の落差についてみてみたかったんです!
いや、これはすごいですね。
もう凡百の小説家よりも能力が高そう。
はい。
この記事の結論としては、もう十分LLMは面白い小説を書けます!