何回学ぼうとしても途中で投げ出してしまう。なにやらややこしいしあまり直感に合っていないことが出てくるので、ここでキーポイントをまとめた。
エアリーディスク
ピンホールから出てきた光をレンズに通し、スクリーンに映してよく見ると、同心円状のパターンを持っている(らしい)。パターン自体と、その1次元的な強度分布を以下に示す:
(出典: UCLA Core Imaging Facilities)
これをエアリーディスクという(Airy disk; Airyは人の名前)。なぜこのようなパターンができるかというと、これは光の波としての性質による。
ホイヘンス=フレネルの原理
ホイヘンスは、波の屈折や回折の現象を説明するために「ホイヘンスの原理」と呼ばれる方法論を考案した。大まかには、「ある時刻における波面は、その直前の時刻の波面から発生した無数の球面波を足し合わせたものである」(出典: cybernet 光学総合サイト)という考え方。もう少しわかりにくく言えば「波の伝播は、その媒体の振動の伝播として表せる」というふうに捉えることもできるかもしれない。ここで、この「無数の微小な球面波」は「素元波」とも呼ばれる。
ホイヘンスの原理は、後にフレネルが理論的に完成させて一般化したため、「ホイヘンス=フレネルの原理」とも呼ばれる。
これをもとにして上のピンホールの例を考えると、定性的には以下のように考えることができる:
- ピンホールから、同心円上に光が広がる。
- レンズを通ることで波面が反転する。
- 反転した同心円の個々の点から、球面波が発生する。
- 素元波同士がスクリーン上で回折を起こす。
図にすると下のようになる(らしい;出典: UCLA Core Imaging Facilities)。
1~3の部分が以下の図。
ピンホールAから出た波面$S_0$が、凸レンズ$O_1$を通って$S_1$に反転する。全体としては、$S_1$ は $A^\prime_0$ に集まって像を作る。$S_1$上の点$M_0$、$M_1$から、素元波が出てくる(矢印)。
$A^\prime_0$では$M_0$や$M_1$から来た波は(光路長が等しいので)高め合い、明るく結像する(上の図)。これに対して、$A^\prime_0$から少し離れた点$A^\prime_1$では、$M_0$と$M_1$から来た波は互いに逆位相になり、弱め合う。この結果$A^\prime_1$は暗くなる(下の図)。
これらが波面上の個々の点について起こった結果、エアリーディスクが形成される。
Point spread function (PSF、点像分布関数)
エアリーディスクの考え方を一般の光学系に拡張したものがpoint spread function (PSF, 点像分布関数)になる。「一般の光学系」の特徴として:
- 複数の光学機器(レンズなど)
- 光学機器が理想的な性能を持たない
- 対象物が3次元的な構造を持つ
という点が挙げられる。こうした光学系に対して「光学系を通した点光源(ピンホール)の3次元的な像」をプロットしたものがPSFになる。
例えばこんな感じ。右上が従来のエアリーディスク的な像で、左2つがそれを横から見たもの。像はXY方向(横方向)に比べて、Z方向(深さ方向)に長く広がっていることがわかる:
(出典:Wikipedia)
分解能
エアリーディスクを用いた分解能の計算
結局のところ、光学的な「分解能」とは、「近くにある2つの点がつくる2つのエアリーディスクを区別できるか?」という問題に帰着する。
「レイリーの判断基準」なるものに依拠すると、ひとつめの点のエアリーディスクの中心部が、もうひとつの点のエアリーディスクの第1暗環(一番内側の暗いリング)に重なった状態を『最大分解』と呼び、これを分解能の基準値にしているらしい。
エアリーディスクのパターンには、数学的な解が与えられている。スクリーン上の第1暗環の半径$q_1$は、大まかに以下の値になる(らしい;ただし空気中での計算)。
$$q_1 = 1.22\frac{R\lambda}{d}$$
ただし
- $R \quad $ピンホール(円形開口)からスクリーンまでの距離
- $d \quad $ピンホールの直径
- $\lambda \quad $光の波長
ちなみにここでは簡単のために、ピンホールの直後にレンズが置かれていると仮定している。それからよくわかっていないのだけれど、ここでの$1.22$は$\pi$のようなタイプの「特性を表す無次元数」なのだと思う。
上記PSFの議論を踏まえて3次元的に見ると、この$q_1$は焦点深度の指標にもなっている。
ここで、スクリーンの場所によらない分解能の指標として「分離角$\theta$」(レンズから見た2点の角度の差)を考える。$\theta$がとても小さいと考えると$\sin\theta \approx \frac{q_1}{R}$とと近似できるので、
$$\sin\theta \approx 1.22 \frac{\lambda}{d}$$
となる。これが、「開口部の直径$d$のピンホールの持つ波長$\lambda$の光に対する最小の分離角」を与える式になる。
開口数とは
開口部の直径が分解能に与える影響
上の式を見ると、開口部の直径$d$が大きくなればなるほど分離角$\theta$は小さくなり、結果として分解能は大きくなっていることがわかる。図は左から、小さい直径から大きい直径まで並べて、エアリーディスクの強度分布をプロットしたもの:
(出典: UCLA Core Imaging Facilities)
ホイヘンス=フレネル的な立場から解釈すると、「開口部の直径が大きくなることで球面波$S_1$のもつ角度が大きくなり、結果として像$A^{'}_0$への光の集合度が高まる」ということだと思う。
いちおう視覚的にこのような説明をしているところもあった。これもあながち間違いとは言えない。
ポイントとしては、「開口部から像を見たときの角度」が大きくなることが、高い分解能を得るための秘訣なのだと思う。つまりそれは、大きく以下の2つの当然な点に帰着する:
- 大きなレンズを使う
- 対象物に近づく
ちなみに上記エアリーディスクの式から、開口部の直径$d$を大きくすることで中心部の光の強度も上がることがわかる。
開口数の計算
普通にカメラを構える場合はあまり気にしないけれど、顕微鏡等の用途では水浸、油浸といった形でレンズと対象物の間に空気以外の媒質を満たすことがある。これは、屈折率の高い媒質を用いることで光が「より近い場所で、より大きな入射角で」結像することを狙っている。
下の図で、$i$が屈折率を表す。焦点距離がある程度自由になると考えた時に、屈折率$i$の違いが入射角にどれだけの違いを与えるかを示している。
上のような状況では、屈折率によって入射角(Angular aperture)の度合いを調節する必要がある。そこで使われるのが開口数(Numerical aperture, NA)である:
$$\mathrm{NA} = n \sin q$$
ここで$n$はレンズと対象物の間の媒質の屈折率、$q$は入射角の大きさを表す。こうすることで、屈折率に対して標準化された「開口部直径」を評価することができる。