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単一責任の原則(Single Responsibility Principle)とJavaの活用法

Last updated at Posted at 2023-07-11

ソフトウェア開発の原則において、非常に重要な原則である「単一責任の原則」(Single Responsibility Principle, SRP)についてお話しします。この原則をうまく活用することで、可読性、保守性、再利用性の高いコードを書くことができます。

単一責任の原則とは何か

まずは、単一責任の原則について理解していきましょう。この原則は、「ソフトウェアのコンポーネント(クラス、関数など)は、それぞれが1つの役割だけを担うべきである」という原則です。つまり、一つのクラスやメソッドは一つの機能だけを持つべきだという考え方です。

なぜこの原則が重要なのか

単一責任の原則を適用すると、以下のようなメリットが得られます。

  • 変更の影響範囲が明確になる:各クラスが1つの役割だけを担っている場合、そのクラスに変更が加えられたときの影響範囲を容易に理解することができます。
  • 再利用性が高まる:単一の役割を持つクラスは、他の部分で必要となったときに再利用しやすくなります。
  • コードの可読性が向上する:各クラスや関数が単一の役割を果たすことで、コードの意図が明確になり、可読性が向上します。

Javaでの適用例

では、具体的にJavaのコードで単一責任の原則をどのように適用するか見ていきましょう。

// Bad example
class Employee {
    String name;
    String address;
    
    public String calculateSalary() {
        // salary calculation logic here
    }

    public void saveEmployee() {
        // save employee to database
    }
}

この例では、Employeeクラスが2つの役割を担っています。一つは給料の計算(calculateSalaryメソッド)、もう一つはデータベースへの保存(saveEmployeeメソッド)です。

これを単一責任の原則に従ってリファクタリングすると以下のようになります。

// Good example
class Employee {
    String name;
    String address;
    
    public String calculateSalary() {
        // salary calculation logic here
    }
}

class EmployeeDB {
    public void saveEmployee(Employee e) {
        // save employee to database
    }
}

ここで、Employeeクラスは給料の計算のみを担当し、新たに作成したEmployeeDBクラスがデータベースへの保存を担当します。各クラスの役割が明確になりました。

単一責任の原則の適用範囲

単一責任の原則はクラスの設計だけでなく、関数やメソッドの設計にも適用できます。つまり、一つのメソッドも一つの機能だけを持つべきだという考え方です。これにより、それぞれのメソッドが何をしているのかを理解しやすくなります。

// Bad example
public void processEmployee(Employee e) {
    calculateSalary(e);
    saveEmployee(e);
    sendEmail(e);
}

// Good example
public void calculateSalary(Employee e) {
    // calculate salary here
}

public void saveEmployee(Employee e) {
    // save to database here
}

public void sendEmail(Employee e) {
    // send email here
}

上記の例では、processEmployeeメソッドが複数の役割を持っています。それぞれの役割を個別のメソッドに分割することで、それぞれのメソッドが何を行っているのかが明確になります。

適切な役割の定義方法

それでは、「役割」とは何か、どのように定義すればよいのでしょうか。これは設計の段階で考慮すべき問題であり、明確なルールはありません。しかし、一つの指針として「変更の理由」を考えることがあります。つまり、あるクラスやメソッドが何のために変更されるのか、その変更の理由が一つであれば、そのクラスやメソッドは一つの役割を持っていると言えます。

注意点

単一責任の原則は非常に有用ですが、過剰に適用すると逆効果になることもあります。無理にクラスやメソッドを分割すれば、逆にコードの複雑性が増す可能性があります。そのため、この原則はガイドラインの一つであり、常に適切な判断が求められます。

以上が、単一責任の原則についての解説となります。

単一責任の原則とDRY原則:バランスの重要性

こんにちは、Javaエンジニアの皆さん!前回は単一責任の原則についてお話しましたが、今回はそれにDRY原則を組み合わせて、ソフトウェア開発の更なる洞察を得る方法について解説します。

DRY原則とは何か

まずは、DRY(Don't Repeat Yourself)原則をおさらいしましょう。DRY原則は、「同じコードを二度書かない」というソフトウェア開発の基本原則です。同じロジックが複数箇所に存在すると、バグの発生や保守性の低下を招きます。そのため、共通のロジックは一箇所にまとめ、それを必要な箇所から呼び出すようにします。

単一責任の原則とDRY原則のバランス

単一責任の原則とDRY原則は、一見すると互いに補完し合うように見えます。しかし、実際にはこれらの原則を適切にバランスさせることが必要です。

例えば、あるクラス内に似たような機能を持つメソッドが複数ある場合を考えてみましょう。

class Employee {
    String name;
    String address;

    public void sendEmailToEmployee() {
        // send email to employee
    }

    public void sendEmailToManager() {
        // send email to manager
    }
}

このEmployeeクラスには、従業員へのメール送信とマネージャーへのメール送信という、似て非なる二つの責任があります。これらのメソッドは共通の処理(メール送信)を行うため、DRY原則に従って一つのメソッドにまとめることを考えるかもしれません。

class Employee {
    String name;
    String address;

    public void sendEmail(String recipient) {
        // send email to recipient
    }
}

しかし、これは単一責任の原則に反する可能性があります。従業員へのメール送信とマネージャーへのメール送信は、似ているようでいて異なる責務を持っています。例えば、メールの内容や形式、送信のタイミングなど、細部の違いが生じる可能性があります。

このような場合、共通化することでバグを生む可能性があります。メール送信のロジックが一箇所にまとまっていると、そのロジックを変更するときに従業員向けとマネージャー向けの両方に影響を及ぼす可能性があります。例えば、従業員向けのメール形式を変更すると、誤ってマネージャー向けのメール形式も変更してしまうといった事態が考えられます。

結論

このように、単一責任の原則とDRY原則は重要なガイドラインでありながら、適切にバランスを取ることが重要です。一見似ている責務でも、それぞれが独自の意味を持つ場合は、適切に分割して管理することが望ましいです。

それでは、次回も素晴らしいコーディングを!

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