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CCライセンスは機械学習のWeightに適用できるのか?適切な利用規約を考える

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注意・免責事項
本記事は情報の提供のみを目的としています。
本記事の内容を実行・適用・運用したことで何が起きようとも、それは実行・適用・運用した人自身の責任であり、著者や関係者はいかなる責任も負いません。

また、本記事の誤りやご指摘がありましたら、コメントに投稿いただきますようお願いいたします。

1. CCライセンスとは

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)は、著作物の利用範囲を明確化するための仕組みです。特定の条件を守ることで、著作権者に許可を求めることなく作品を利用することができます。代表的な条件には「著作者表示(BY)」や「非営利(NC)」などがあります。

CCライセンスは著作権に基づいて成り立っています。 ですから、著作権法で保護される作品であればライセンスを付けることができます。 著作権法で守られている作品としては、例えば書籍、ウェブサイト、ブログ、写真、映像、ビデオ、曲その他録音・録画物があります。
なお、プログラムも著作権法で保護されますが、CCライセンスを付けることはお薦めしていません(本FAQ「ソフトウェアにCCライセンスを付けるすることはできますか?」参照)。
CCライセンスを使って、あなたの作品をどのように利用してよいかを表すことができます。例えば、他の人があなたの作品を複製できる、改変できる、二次的著作物を創作できる、又は販売できるなどというメッセージを伝えることができます。これらは、著作権法上認められている引用等の利用行為に制限を加えるものではなく、また、そもそも著作権法では保護されない事実やアイデアといったものの利用を制限しようというものでもありません。
CCライセンスは、その作品を見た人に、ライセンスの条件に従った利用の許可を与えるものです。すなわち、もしボブがCCライセンスの付いているあなたの作品のコピーを所有している場合に、ボブはそのコピーをキャロルにあげることができ、キャロルもまたその作品をCCライセンスに則して利用することが許可されているということです。これで、あなたはボブとキャロルに対して、それぞれ利用許諾契約を結んだことになります。
気をつけなくてはいけないのは、CCライセンスは著作権に関するライセンスであるということです。その作品が商標権や特許権でも保護されているような場合、CCライセンスで商標の使用や特許発明の実施を許諾できるわけではありません。
CCライセンスは次の3段階で提示されます:
1)コモンズ証(一般的に読解できるもの)
2)利用許諾書(弁護士などの専門家向け)
3)メタデータ(コンピュータが読み取るもの)
CCライセンスを使うのに、特に署名などは必要ありません。
他に、CCライセンスについて理解しておいていただきたいことは、CCライセンスは、独占排他的なものではないということです。つまり、CCライセンスによって、作品を一般の人に対し利用を許諾しながら、それとは別に特定の人と利用許諾契約を結ぶこともできるということです。この場合、その利用許諾契約によって利益を得ることも可能です。
引用元:FAQ よくある質問と回答 2. CCライセンスはどのように機能しているのでしょうか?

つまり、CCライセンスの条件に従えば、著作者の著作権の許諾を得ることができるという仕組みです。

CCライセンスの許諾対応と著作権の関係を表にしてみました。

CCライセンス 複製 翻訳・翻案 公衆送信 上演・演奏 頒布 改変
CC BY
CC BY-SA 〇 (継承) 〇 (継承)
CC BY-ND × ×
CC BY-NC
CC BY-NC-SA 〇 (継承) 〇 (継承)
CC BY-NC-ND × ×

CCライセンスの要素説明

  • CC: Creative Commonsの略で、著作物の利用条件を明確化するためのライセンス体系。
  • BY (表示): 著作者の名前やクレジットを表示する必要があることを示します。
  • SA (継承): 改変後の著作物を同じ条件(ライセンス)で公開する必要があることを示します。
  • ND (改変禁止): 著作物の改変を禁止することを示します。
  • NC (非営利): 非営利目的に限り利用を許可することを示します。

著作権の説明

  • 複製: 著作物をコピーすること。
  • 翻訳・翻案: 著作物を翻訳したり、新たな形に改変すること。
  • 公衆送信: インターネットや放送で著作物を送信すること。
  • 上演・演奏: 著作物を公に上演・演奏すること。
  • 頒布: 著作物を配布または販売すること。
  • 改変: 著作物を変更すること。

注意事項

  • 著作者人格権(氏名表示権や同一性保持権)はCCライセンスでは放棄されないため、著作者への適切な配慮が必要です。

さて、本稿で提起したい問題は、
「CCライセンスは主にテキストや画像、音楽などの著作物を対象にしているが、果たして機械学習モデルのWeightに適用できるのか?」
ということです。

2. 機械学習のWeightは著作物ではない

機械学習モデルのWeight(重み付けパラメータ)は、データに基づく学習プロセスの結果として生成される数値の集合です。これ自体は創作性を持たず、通常の意味での「著作物」には該当しません。

例えば、小説や絵画が「著作物」として保護されるのは、それが人間の創作性に基づく成果物だからです。一方、Weightはアルゴリズムとデータの結果であり、創作性を直接的に持たないため、著作権法で保護される対象外と解釈されることが一般的です。

▼ 「学習済みモデル」は著作物なのか
まず、「学習済みモデル」は著作物なのかが問題となりますが、結論から言いますと著作物性を認めるのは非常に難しいと思います。
そもそもモデルは機械(プログラム)が自動的に生成しているものですから、人間の「創作」とは言えない可能性が高いでしょう。
さらに、たとえばニューラルネットワークの手法で生成された学習済みモデルは「ネットワークの構造+各リンクの重み」であり、「大量の数値の列」です。
このようなものが、著作権法における「データベースの著作物」や「プログラム」あるいはその他の著作物に該当するかというと、大いに疑問があります。
したがって、学習済みモデルは著作物に該当しないということになると思われます。
引用元:柿沼太一, STORIA法律事務所 , 「第三者のデータから学習用データセットや学習済みモデルを適法に生成・利用できるのはどのような場合か具体的に考えてみる」, 2017/02/04, 2024/12/29閲覧

3. WeightにCCライセンスを適用するのは適切ではない

CCライセンスは著作権に基づくルールを設定するものです。 もしWeightが著作物に該当しない場合、CCライセンスを適用する法的な基盤が存在しないことになります。

加えて、CCライセンスの仕組みは、著作物のコピーや改変を扱うことを前提としていますが、私はWeightはその利用方法がプロプライエタリソフトウェアに近いと考えているため、CCライセンスでは対応しきれない部分が多いと考えます。

4. WeightにはプロプライエタリソフトウェアのようなEULAが適切だと考えられる

Weightの利用を制御したい場合、プロプライエタリソフトウェアの利用規約(End User License Agreement, EULA)のような形が適切ではないでしょうか?EULAは著作権に基づいて利用条件を明示するだけでなく、技術的な制限や責任範囲などを柔軟に定義することが可能です。

利用規約は当事者間の合意による契約であるため、Weightが著作物に該当しない場合でも、利用者と提供者の合意に基づき利用を制限・許諾することができます。これにより、技術的特性や実際の使用シナリオに即した適切な条件を設定できます。

例えば、以下のような項目を含むことが考えられます:

  • 商用利用の制限
  • 再配布の条件
  • 責任の限定
  • 使用範囲(研究目的のみ、特定分野での使用限定など)

5. Weightの利用規約の草案を考えてみた

Weight利用のための利用規約の草案を考えてみました。以下のような内容でどうでしょうか?:

利用規約(Draft)

  1. Weightの定義
    本Weightとは、特定のタスクに対して機械学習アルゴリズムが最適化した数値パラメータ群を意味します。これらのパラメータは、モデルの振る舞いや性能を定義するものであり、数値データとして保存されます。
  2. 適用範囲
    1. 本規約は、提供者が提供するWeightに適用されます。
    2. 本規約は、提供者が明示的に適用外とした場合には適用されません。
  3. 利用目的
    1. 許可される利用目的:研究目的、非商用利用。
    2. 禁止される利用目的:商用利用、倫理的に問題のある行為、特定の分野における規制違反の使用。
  4. 改変と派生物の取扱い
    1. 本Weightを基に新たなモデルを構築することは可能です。
    2. 改変後のWeightや派生モデルを公開する場合、改変内容を明記しなければなりません。
  5. 再配布
    1. 本Weightの再配布は禁止されます。
    2. 学術目的での共有を行う場合には、事前に提供者の許可を取得してください。
  6. ライセンス条件
    1. 使用時には提供者の表示を行う必要があります。
    2. サードパーティとの共有や再配布には本規約を遵守する必要があります。
  7. 責任の限定
    1. 本Weightの使用により生じた損害について、提供者は一切の責任を負いません。
    2. 本Weightは現状のまま提供され、いかなる保証も行いません。
  8. 禁止事項
    1. 違法行為への利用。
    2. 倫理的に問題のある行為への利用。
  9. ライセンス終了条件
    1. 利用者が本規約に違反した場合、提供者は直ちにライセンスを終了する権利を有します。
    2. ライセンス終了後、利用者は本Weightの使用を直ちに中止しなければなりません。
  10. 準拠法と裁判管轄
    1. 本規約は提供者所在地の法律に準拠します。
    2. 紛争が生じた場合、提供者所在地の裁判所を専属的な管轄とします。
  11. 規約の改訂について
    1. 提供者は本規約を随時改訂する権利を有します。
    2. 改訂後の規約は、提供者が指定する日時から効力を持つものとします。
  12. 問い合わせ窓口
    本規約や利用方法に関する質問や申請については、以下の問い合わせ窓口までご連絡ください。
    • 問い合わせ先: hogehogehogehoge@hogehoge.comは事前通知なく改訂されることがあります。最新の規約は本プロジェクトの公式ページにて公開されます。

まとめ

CCライセンスは著作物の利用条件を規定するには便利ですが、機械学習のWeightのような著作物ではないデータには適用が困難です。そのため、Weightの利用条件を定めるには、EULAのような柔軟な利用規約が適していると考えます。

今後、機械学習分野での利用規約の検討が進むことで、こうしたルールの標準化が行われることを期待します。

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