SIer(システムインテグレーター)がこれから成長し、価格競争から抜け出すためには、単なる営業活動や技術力だけでは足りません。
この記事では、元となるマーケティングの原則を踏まえつつ、「SIerならではの実行指針」に落とし込んでご紹介します。
1. 価格戦略:WTPと価格弾力性を味方に
- WTP(支払意思額)は金銭的価値だけでなく、「業務効率化」「リスク低減」などの非金銭的要素も加味して評価する
- セグメントごとの価格弾力性を把握し、提案金額を調整する
- 公共案件やミッションクリティカル領域=価格弾力性低い
- 新規導入や裁量予算案件=価格弾力性高い
- 初期は低価格で参入し、保守や追加機能で利益を確保するモデルも有効
2. ターゲティングと市場細分化
- セグメントを細かく切りすぎない。特定企業専用開発ではなく、業界共通課題に応える準汎用ソリューションを持つ
- 顧客規模に応じて重点戦略を変える
- 小規模顧客:クラウド活用、短納期、定額サービス
- 大規模顧客:カスタマイズ対応、長期契約、大規模運用サポート
- 購買フェーズ別アプローチ
- 新規購買:PoCや事例提示で信頼構築
- 修正再購買:コスト改善提案
- 単純再購買:契約更新時のアップセル・クロスセル
3. 差別化戦略
- 差別化軸(技術力、業務知見、サポート体制、セキュリティ、地域密着など)を明確に
- Web経由のリードは同質化リスクが高い → 価格よりコンセプトで勝負
- スイッチングコストを高める仕組みを作る
- 導入後の業務データ連携
- 独自の保守ツール
- 改善ロードマップ提示
4. プロモーション戦略:PushとPullの使い分け
- 導入期はPush型営業(訪問提案・パートナー営業)で導入障壁を突破
- 成熟期はPull型(セミナー、事例記事、検索広告)で引き合いを増やす
- インサイドセールスとフィールドセールスを組み合わせ、営業効率を最大化
- BtoBでは成功事例の横展開が難しいため、業界団体・学会・パートナー網を活用
5. 成長戦略
- 成長期には販路とリソースを一気に拡大
- 開発チームの増員
- 提携企業拡大
- 地域営業拠点の追加
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アンゾフの成長マトリクスで戦略を整理
- 既存顧客×新技術=アップセル
- 新市場×既存技術=業界横展開
- クロスセルを重視し、単発案件依存を回避
6. 普及理論を踏まえた提案設計
提案内容を次の6要素で評価し、障害を事前に取り除くことが重要です。
- 比較優位性:ROI試算を提示
- 両立性:既存システムとの親和性を強調
- 複雑性低減:導入プロセスを簡素化
- 試用可能性:PoCやトライアル提供
- コミュニケーション可能性:導入事例を積極発信
- リスク低減:段階導入、返金保証、冗長化設計
7. 運営・オペレーション改善
- プロジェクトリソース配分の最適化で待機要員を減らす
- 複数サービスを持ち、営業・保守コストを配賦(範囲の経済)
- ロングテール案件でも利益を確保するため、再利用可能なモジュール化を進める
8. KPI設定とPDCA
- KPIは「項目」「水準」「期間」で設定
例:年間契約件数50件、アップセル率20%、平均契約単価+15% - KPIとコンセプトの整合性を毎期レビュー
- 価格・提案内容・チャネル戦略のPDCAを回し続ける
まとめ:SIerが成功するための5つの鍵
- 顧客課題の共通化と準汎用化でスケールする
- コンセプトとターゲットの一致で価格競争から脱却
- Push型→Pull型への移行を段階的に進める
- 普及理論を活用した提案設計で導入障壁を下げる
- クロスセルと範囲の経済で利益を積み上げる
「価格競争から抜け出したい」「営業効率を上げたい」と考えているSIerは、今日からこの戦略を順番に試してみてください。
一歩ずつでも、確実に利益体質の企業へ近づいていけるはずです。