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知っておいて損はない!?ソフトウェア開発における契約とは(請負契約・準委任契約)

Last updated at Posted at 2022-12-18

はじめに

受託開発企業に約1年ほど勤めて、契約に関して、請負契約と準委任契約があるのは知っていましたが、ざっくりと説明はできるものの、しっかり調べたわけではなかったので、これを機に調べた内容を以下にまとめました。

この記事は、ITビジネスの契約実務〔第2版〕をもとに、まとめています。
記事の最後に参考文献として、載せています。

ソフトウェア開発委託契約とは

ソフトウェアの発注者が、システムベンダに対してソフトウェア開発に関する業務を委託する際に締結する契約です。

基本構造としては、以下になります。
ベンダ ▶︎ ソフトウェアの開発・提供 ▶︎ ユーザ
ユーザ ▶︎ 対価の支払い ▶︎ ベンダ

ソフトウェア開発委託契約は、両当事者間の権利義務関係を明確にするのみならず、開発プロセスにおける両当事者の役割や行動に関する指針となるような内容とするよう意識しなければなりません。

請負契約と準委任契約

ソフトウェア開発取引における各個別契約は、請負契約あるいは準委任契約として締結されるのが通常です。
契約を締結する場合は、主に以下になります。

  • 請負契約:予め決められた成果物を納品すること等、仕事の完成を目的とする場合
  • 準委任契約:事務の処理(エンジニア等の専門スキルの提供)を目的とする場合

なお、請負契約か準委任契約かというのは、契約の実質的な内容が、仕事の完成を内容とするものなのか、事務の委託を内容とするものなのかによって定まるものであって、契約の名称や、条項に「請負契約である」等と記載することによって定まるものではないとのことです。
実質的には事務の委託を目的とする契約である場合に契約書に「請負契約」と謳ったとしても、その法質性質が請負契約とされることはないそうです。

また、契約を締結する際には必ずしもいずれかの典型契約に決めなければならないというものではないそうです。
請負契約や準委任契約に関する民法の諸規定の多くは任意規定であるから、契約によって上書きすることが可能のためです。

請負契約と準委任契約の性質を比較すると、以下になります。

請負契約 準委任契約
委託の主題 仕事の完成 事務の処理
ベンダの義務 仕事を完成させる義務 善良なる管理者の注意をもって事務処理を行う義務(善管注意義務)
ベンダの主な責任 ・仕事の完成が遅れたことによる債務不履行責任
・契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合における契約不適合責任
善良なる管理者の注意を払わないことによる債務不履行責任
再委託 特に定めなし 原則としてできない
報酬支払時期 目的物の引渡しと同時 ・委任事務を履行した後
・期間によって定めたときは期間の経過後
・成果の引渡しを要するときは引渡しと同時
中途終了時の報酬 可分な部分について注文者が受ける利益の割合に応じて請求可能 既にした履行の割合に応じて請求可能
解除 債務不履行解除 債務不履行解除
任意解除(解約) 完成前は、ユーザはいつでも解除できる(ただし、損害賠償義務あり。) 両当事者はいつでも解除できる(ただし相手方に不利な時期に解除すると損害賠償義務あり。)
解除の遡及効 あり なし

準委任契約といって、ベンダは事務を履行しさえすれば結果はどうあろうとかまわないということはないし、事後的に責任を問われることはないというのは誤解です。
準委任契約においても、受任者(ベンダ)は善管注意義務という、いわば専門家として適切に業務を遂行すべき義務を負うのであって、業務を全く遂行しなかった場合のみならず、業務の遂行方法や結果に問題があった場合にも、責任を問われ得るなど、責任は重いです。

成果報酬型の準委任契約

民法改正により、従来型の準委任契約に加え、新たに事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うという類型(成果報酬型)に関する規定が追加されました。

成果に対して報酬が支払われるのであるから、請負契約と類似していると考えられますが、成果報酬型の準委任契約は、受任者がその成果を達成する義務を負っていないという点に違いがあります。

また、成果報酬型の場合、民法の原則としては、ベンダは、成果の達成義務を負っていないのであるから、成果報酬型を採用とすると、かえってユーザにとって不都合なことあります。
ただ、履行割合型か成果報酬型かを区別すること自体が決定的に重要ではありません。準委任契約を採用した場合でも、期間の経過をもって報酬請求権が発生するのではなく、予め定められた成果物の提出および確認をもって報酬請求権が発生するといったアレンジも可能のため、実務的にもこう言った定め方をする例は少なくないそうです。

請負契約と準委任契約のいずれを選択するべきか

各個別契約を締結するにあたって、請負契約と準委任契約(さらには履行割合型か成果報酬型か)のいずれを選択すべきかということが契約交渉の本質とはいえないです。

ただ、その中でどう選択するかは、以下にまとめています。

  • システム外部設計とシステムテスト業務はユーザ側の業務要件に関わる部分が多く、その点では準委任に馴染むが、従来の実務では請負で行われている場合も多い。
  • ソフトウェアで実現するユーザ業務の固有性が強く、そこで使用される画面、帳票等にもユーザの固有性が現れるような場合には、ユーザが作業主体となる結果、準委任が適している。
  • ユーザの固有情報に比較的左右されないような場合、長期の取引関係等からベンダにおいてユーザの固有性を把握できているような場合などは、ベンダ主体となり、請負契約が適している。

契約交渉の現場では、両者の特徴を正確に理解し、実施しようとしている業務と両当事者の役割、経験や実力などの実情を踏まえて、実情に合った契約形態を選択すべきです。

まとめ

今回は、以下のことをまとめました。

  • ソフトウェア開発委託契約とは
  • 請負契約と準委任契約
  • 成果報酬型の準委任契約
  • 請負契約と準委任契約のいずれを選択するべきか

自分は直接契約に関する場面には業務上あり得ないですが、このように知識として知っておくと、実際にの業務にも生きてくるだろうと思いました。
それぞれの契約の理解や、どう選択するかの背景部分は、今一度しっかり押さえておこうと思います。

この記事を読んで、少しでも契約に関して、理解していただけたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献

  • ITビジネスの契約実務〔第2版〕

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