はじめに
みなさまおつかれさまです。
ソフトウェアテスト業界でお仕事する方はご存知かと思いますが、今年の9月にJSTQB Foundation Levelシラバスのメジャーアップデートがありました。※JSTQBをご存知ない方はこちらをご参照ください(リンク)。
JSTQBは国際認定資格であるISTQBと相互認証されており、ISTQBで定義されたシラバスが日本語訳されてJSTQBからリリースされています。ISTQBで認定されているソフトウェアテストの技術領域は多種多様で、まだ翻訳されていないものもあります(後述するゲームテストのシラバスもまだ)。しかしながら、ここ数年でシラバスが多数日本語訳されており、特にスペシャリスト向けの内容が目立っています。
本記事ではこうした変化を読み解き、感じたことをまとめつつ、ゲームテストのシラバスについても少し触れてみようと思います。業界の流れやゲームテストに関心がある方はぜひご覧ください。
ISTQBに関する補足
ISTQBではテスト技術をAGILE、CORE、SPECIALISTの領域に分けており、Foundation Level、Advanced Level、Expert Levelの3段階が存在します。もっとも基礎となるのが、Certified Tester Foundation Level(以下、CTFL)で各領域共通となります(リンク)。
※ISTQB ホームページより
JSTQBの最近の動向
シラバスのリリース
前述のとおり、ここ数年で多くのシラバスが日本語リリース、アップデートされてきました。※細かい部分はJSTQBのホームページや該当シラバスの更新履歴を参照ください(リンク)。
■主な日本語シラバスのリリース※細かなアップデートは除く
日付 | 種類 | - | バージョン | 補足 |
---|---|---|---|---|
2023/9/25 | Foundation Level | - | 4.0_J01 | メジャーバージョンアップ |
2023/7/9 | Advanced Level | アジャイルテクニカルテスト担当者 | 1.1.J01 | 日本語版新規リリース |
2023/2/25 | FL Specialist | AIテスティング | 1.0.J01 | 日本語版新規リリース |
2022/4/16 | FL Specialist | 性能テスト担当者 | 2018.J01 | 日本語版新規リリース |
2021/7/15 | FL Specialist | モバイルアプリケーションテスト担当者 | 2019.J01 | 日本語版新規リリース |
2021/7/14 | Advanced Level | テストアナリスト | 3.1.1.J01 | マイナーバージョンアップ |
2020/9/30 | AL Specialist | テスト自動化エンジニア | 2016.J01 | 日本語版新規リリース |
2020/1/25 | FL Specialist | 自動車ソフトウェアテスト担当者 | 2018.J01 | 日本語版新規リリース |
2018/3/5 | Advanced Level | テクニカルテストアナリスト | 2012.J01 | 日本語版新規リリース |
このようにシラバスが細分化されていることとその内容から、より専門性が高まり開発現場で求められる技術レベルが高まっていると感じられます(その分、学びやすくもなってきています)。
パートナーシップの変化
JSTQBでは組織の認定者数に応じてパートナープログラムに加入することができます(リンク)。パートナーシップ企業も年々増えており、ソフトウェアテストの専門会社だけでなく事業会社も多く含まれています。働く現場での知識水準が上がり、また相応の知識が求められるようになってきたことが読み取れます。
■パートナー参加数
年 | Global | Platinum | Gold | Silver |
---|---|---|---|---|
2023 | - | 1 | - | 3 |
2022 | - | 1 | 3 | 4 |
2021 | 1 | 2 | 1 | 1 |
ゲームテストの現場
より専門性、知識が求められる時代になってきたという流れで進めてきましたが、ゲームテストの現場ではどうでしょうか。職場内では、ベースとなる考え方などはJSTQBを参考にしつつ、現場にあわせた用語やプロセスになっていることは事実としてあります。一方で、ベースにできる点の恩恵は大きく、QA内や開発チームとの打ち合わせ時に意思疎通がスムーズであると感じる場面は多いと感じます。
現時点で軸としているのはCTFL部分が主で、専門性部分は試行錯誤しながら知見をまとめている段階となります。ISTQBではすでにGame Testingのシラバスがありますが、まだ日本語訳はなく英語のシラバスを読み進めるのは専門用語も多く、英語に慣れていないと一定ハードルがあるように感じます。
ゲームテストシラバスを読んでみる
シラバスの内容に少し触れていきます。前述のように未翻訳ではありますが、ISTQBにはゲームテストのシラバスがあります(リンク)。シラバスの冒頭には「ISTQB® ゲーム テスト認定資格は、ゲーム プロジェクトのあらゆるレベルでテストを実行および管理するために必要な理解とスキルに重点を置いています。」(Google翻訳)との記載があるので、参考になる内容が多々ありそうです。
次に目次を見てみます。目次だけでもけっこう面白そうです。
0.Introduction to this Syllabus
1.Specificity of Game Testing
2.Testing Game Mechanics
3.Graphics Testing
4.Sound Testing
5.Game Level Testing
6.Game Controllers Testing
7.Localization Testing
8.References
9~.Appendix
用語もゲームに特化したものが定義されています。普段なにげなく使っている用語などもあるので、ゲームをプレイされる方には馴染みがあるかもしれません(sound effectsなど)。シラバス全体に目を通して、各章の気になったところを少し記載してみます。
1.1.Game Testing Basicsより
シラバスの序盤から以下のような記載があります。
The explosive development of the video game industry has led to their distribution on many different platforms. Games have become larger, more complex and more demanding on technical resources. At the same time, the audience of players has increased significantly, becoming more sophisticated and demanding of game quality.
要約すると「市場の成長に伴い開発が複雑化している上に、プレイヤー層も増えているので品質が大事」という感じです(Google翻訳からなんとなく読み取った内容)。そのあとの流れで、ゲーム分野特有のリスクやよく見られるバグの内容も出てきます。このあたりを読むだけでも参考になる内容がありそうです。
2.1 Game Mechanicsより
ここではゲームを構造として整理した内容がまとめられています。ゲームとはなんぞや、を一歩踏み込んで学ぶことができそうです。2.1.4 Difference between Testing Client, Server and Client-Server Mechanicsといった項目もあり、要素ごとに整理されていることが読み取れます。また、テストするときに注意するポイントなどもまとめられていました。2章は全体的に難易度が高めになっているので、テスト設計者やテスト管理者向けかもしれません。
3~6 各要素ごとのテスト
3章からゲームコンテンツの主要な部分にフォーカスしたテストについてまとめられています。例えば3章のグラフィックスではマップやコリジョン、テクスチャー、アニメーションなど。4章の4.1.2 Sound Effects and TechnologyではBinaural effectの説明があったり、各章幅広く整理されているのがポイントです。
7.3 Localization Testing Approaches and Executionより
昨今のゲームは多言語に対応して、各国でリリースされることが主流になってきました。この章では、地域や文化に適応しているか、言語として間違っていないか、ユーザーインターフェースや外観に文字あふれなどがないか、といったテストアプローチがまとめられています。ローカライズのテストについてここまで整理された資料を見たことがないので、非常に参考になりました。
ゲームテストシラバスを読んだ所感
ゲームテストについて体系的に書かれている文献が少ないので、翻訳ツールを使いつつ英語のシラバスを読んでみました(けっこう飛ばしながら読みました・・・)がなかなか大変でした。ただ、どうテストしたら良いか、どういった観点があるのか、などは非常に参考になりましたし、ゲーム開発における一般的な知識も得ることができたので、テスト担当者だけでなくゲーム開発に関わる方でしたら一読の価値があるのではと思います。
さいごに
より専門性、知識が求められる時代になってきた、と前述しましたが、専門性と知識があれば活躍できる人材になれると言い換えることもできます。ゲーム開発の現場も日々変化していますので、我々もレベルアップしていければと思います。