AWSで大阪リージョンが開設されてから4か月が経過しました。
その間に色々なサービスが利用開始となり、利用環境として整備されてきたように思います。その為、大阪リージョンについて、現状を整理して見ました。
■大阪リージョンの歴史を簡単に振り返る(私見含む)
まず大阪リージョンの位置づけを説明します。
「大阪リージョン」の歴史は前身の「大阪ローカルリージョン」から始まります。
◆大阪ローカルリージョン開設
『【 AWS 新リージョン】 AWS 大阪ローカルリージョンが本日より利用可能になりました』
2018年2月に開設した「大阪ローカルリージョン」はバックアップとDR(障害復旧)をメインとしたリージョンでした。その為、メインリージョンとして利用することはできず、機能面でも多くの制限がありました。大規模災害で東京リージョンが利用不可となった時に、最低限の復旧を想定した環境だった訳です。
ただ、それだと重要システムのBCP要件を十分には満たせませんでした。当時他のクラウド(例えばAzureやGCP)は東西フルリージョンを所持していたので、ここがAWSの弱みでした。今後クラウド活用が推進される中、「大阪ローカルリージョン」のフルリージョン昇格は必須事項だった訳です。
◆大阪ローカルリージョンをフルリージョンに拡張すると発表
『AWS 大阪ローカルリージョンをフルリージョンへ拡張中』
『ソニー銀行、勘定系を含む全てのシステムに AWS の利用可能範囲を拡大』
その結果、2020年1月にフルリージョンへの昇格が大々的に発表されました。それと同時にソニー銀行が「勘定系システムのAWS移行」を発表しています。AWS社としても大々的にPRしており、国内的に要望が大きく待ち望まれていた事がよく分かります。
◆大阪リージョン開設
『AWS アジアパシフィック (大阪) リージョンが3つのAZと多くのサービスと共に開設』
そして2021年3月2日に「大阪リージョン」が開設した訳です。AWSの日本国内における大きな弱点が1つ消え去った瞬間でもありました。ちなみに3月2日に開設したのは「東京リージョン」の開設した「2011年3月2日」から10年目という記念日に合わせた訳です。AWSの日本部門にとって「3月2日」は特別思い入れのある日になった訳です。
■大阪リージョンで開始されたサービスの履歴(2021年7月4日時点)
この開設以降、西日本ユーザは皆が大阪リージョンを利用するかというと、まだそういう状況ではあませんでした。なぜなら東京リージョンと比較した場合、大阪リージョンにはまだまだ利用できないサービスが多々あったからです。私は大阪リージョンのサービス開始に関しては「Amazon Web Services ブログ」を参考にしています。最近多くのサービスがリリースされており、一旦リリース状況を纏めてみました。
日時 | サービス名 |
---|---|
2021年3月2日 | 大阪リージョン開設 |
2021年03月03日 | Amazon EFS |
2021年03月17日 | AWS Batch |
2021年03月24日 | Amazon VPC Endpoints For Amazon EC2 |
2021年03月24日 | Amazon Redshift Spectrum |
2021年03月24日 | AWS Backup |
2021年03月30日 | AWS Security Hub |
2021年04月06日 | Amazon Macie |
2021年04月06日 | Amazon MQ |
2021年04月09日 | Amazon GuardDuty |
2021年04月13日 | AWS Console Mobile Application |
2021年04月15日 | AWS CodeCommit |
2021年04月23日 | AWS Service Catalog |
2021年04月27日 | AWS TransitGateway |
2021年04月30日 | AWS Network Firewall (MultiAZ) |
2021年04月30日 | Amazon RDS for SQL Server (MultiAZ) |
2021年05月20日 | Amazon Route 53 Resolver Endpoints for Hybrid Cloud |
2021年05月28日 | Amazon CloudWatch Synthetics |
2021年06月02日 | AWS WAF |
2021年06月24日 | AWS Outposts |
2021年06月30日 | AWS Firewall Manager |
随分と機能がリリースされています。開設当初に「えっないの?」と話題となった「Amazon GuardDuty
」もリリースされました。そして個人的に無くては利用が厳しいと感じていた「Amazon VPC Endpoints
For Amazon EC2」や「Amazon Route 53 Resolver Endpoints for Hybrid Cloud」が利用可能になったことは大きいです。私はハイブリッド構成での環境構築をすることが多く、こういった機能が利用できないことは結構致命的でした。
そう考えると、随分利用できる状態になってきたように思います。
■大阪リージョンの活用に向けて
上記の通りAWSの大阪リージョンも利用可能な状況になってきたように思います。
◆「西日本だから大阪リージョンを利用する」は間違い
単純に西日本だからといって大阪リージョンを利用するのは間違いです。
使いたい機能が使えるか?何を優先すべきかをしっかり考えて、東京リージョンと使い分ける必要があると思います。
◆大阪リージョンのサービスリリース情報を把握する
大阪リージョンでは日々利用できるサービスが増えており、これを把握する必要があります。その把握手段として私がお勧めするのは「Amazon Web Services ブログ」の閲覧です。ここでは重要な機能リリースは公開されるので、注目しておいた方がよいと思います。
◆大阪リージョンを利用した事前テストは必須
「東京リージョンと同じサービスが使える」と思わず、必ず事前にテストすることをお勧めします。使ってみないと分からない部分が多々あるからです。私が「Amazon VPC Endpoints For Amazon EC2」のサービスリリースに注目した通り、「VPC」が利用できるからといって「VPCエンドポイント」が利用できるとは限らないわけです。エンドポイントはDirectConnect接続等を想定した閉域環境の場合、利用できないことは致命的になったりします。こうした差は実際に使ってみなくては拾いきれません。
もちろん多くの機能が利用できるようになってはいますが、事前確認は必須だと思います。
今後、大阪リージョンの利用を検討されている方の参考になれば、と思います。