そろそろ新年度で多くの会社で新人のエンジニアが入社してくる時期。
毎年この時期になると、研修の初日にどんな話をしようか色々考えをまとめていました。
もう講師業からは身を引くことにしましたが、今年は私の講師経験の集大成的な感じでビジネスマナーについてまとめようと思います。
ビジネスマナーは技術力
ビジネスの場における伝え方は、結論から先に述べることが重視されます。
そのコツに従ってここでも結論を先に伝えます。
エンジニアにおけるビジネスマナーは技術力のことです。
ですので、新人エンジニア(プログラマー)の方々はひたすらに技術力(プログラミングスキルをはじめとする、開発に必要な専門スキル)を磨いてほしいと思います。
なぜビジネスマナーが技術力なのかという理由は後述します。
マナー入門
そもそもマナーとは何か。
マナーとは相手から好印象を持たれるためのスキルです。
ビジネスマナーは、マナーの中でもビジネスの場にフォーカスを当て、一緒に仕事をするチームや組織、取引先や顧客などから良い印象を持たれるためのスキルです。
マナーの意義
社会人においてマナーは重要です。
なぜマナーが重要なのかというと、ほとんどの場合良い印象を持たれている人の方が仕事を円滑に進められるからです。
仕事は基本的に1人で行うことは少なく、チーム単位で動くことがほとんどです。
また、仕事は顧客や取引先との関わりがなければ成り立ちません。
仕事では社内外に関わらず、そして立場や年代に関係なく、多くの人と関わることになります。
多くの社会人は、印象が悪い人よりも印象が良い人と一緒に仕事をしたいと思うことでしょう。印象が良ければ周りとのコミュニケーションが取りやすくなるため、報連相がスムーズに行えたり、不明点を質問しやすくなります。逆に、印象が悪ければ、相手も積極的にコミュニケーションを取りたがりません。
コミュニケーションが消極的になると、認識のずれが生じて仕事の進捗に支障が出たり、新しい仕事のチャンスを逃すことにも繋がります。
そのため、相手から好印象を持たれている人の方が結果的に成果を出しやすくなります。
マナーにとって大切なこと
マナーに必要な3つのこと
マナーにおいて必要なことは本質的に3つしかありません。
1. 相手に興味を持って相手の目線で考える
2. 相手が喜ぶことを実践する
3. 相手が嫌がることをしない
この3つを意識して実践することができれば、大抵の場合相手から良い印象を持たれることでしょう。
マナーには正解がない
マナーには「これをやれば大丈夫」と言えるような絶対の正解はありません。
なぜなら、同じ振る舞いでも相手によって印象の捉え方が変わるからです。
人の考え方や価値観は人によって千差万別です。
何をされたら喜ぶのか、何をされたら嫌がるのかは人によって基準が変わります。
マナーの正解は人の数だけ存在すると言えるでしょう。
そのため、相手の立場で物事を考える想像力が大事になってきます。
そして、相手の立場を想像して考えた結果は相手に伝えなければ意味がありません。
考えたことを行動に移す行動力も大事です。
自分の頭で考えて行動した結果、相手から好印象を持たれればマナーとしては成功と言えます。
逆に、良かれと思った行動も、結果的に相手から悪い印象を持たれてしまうと、マナーとしては失敗です。しかし、何も行動しないよりは失敗しても行動に移す方が良いでしょう。失敗したと思った場合は、それを学びに昇華してマナーの成功率を上げるように努めましょう。
一般的なビジネスマナーの役割
一般にビジネスマナーというと以下のような内容を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
- 身だしなみ
- 言葉遣い
- 名刺交換
- 電話対応
- ビジネス文書の書き方
などなど。
上記のような一般的に言われるようなビジネスマナーはマナーの本質ではありませんが、知識として知っておくことには意味があります。
上記に挙げたようなマナーの知識は、悪い印象を持たれるリスクを減らす効果があります。
先にも述べた通り、マナーには絶対の正解はなく、相手によって正解が変わります。
言葉遣いでも、年上でもフランクに話すことを許容してくれる人もいれば、厳密な敬語を使わないと細かく指摘してくるような人もいることでしょう。
仮に言葉遣いに厳しい上司や顧客と仕事をする機会があったとすると、正しい敬語の使い方や正しいビジネス文書の書き方を知らなかった場合に悪い印象を持たれてしまう可能性があります。
満遍なく誰からも好かれるように振る舞う必要はありませんが、仕事上関わりが深くなる人や、プロジェクトの中でキーパーソンとなる人から悪い印象を持たれることはできるだけ避けたいです。できるだけ多くの人から、悪い印象を持たれないようにするための備えとして、必要最低限の知識は身につけておいて損はないでしょう。
常識よりも大切なもの
「身だしなみ」「言葉遣い」などは「マナー」というよりも「一般常識」と呼ぶ方が適切かもしれません。このような常識は、先にも述べた通り悪い印象を持たれないためのスキルとして一定の効果はあるものの、時代によって簡単に変動してしまうものでもあるため注意が必要です。
例えば、出社して働くことが当たり前の時代においては、身だしなみや電話対応は新社会人にとっては大事なマナーでした。
しかし、コロナ禍でリモートワークが一般的になると、身だしなみを整えることの意義はあまりなくなりました。打ち合わせもリモートで行うのが普通になってからは、電話対応や名刺交換をする機会も減ってきました。
近年は出社回帰の流れも強くなりコロナ以前の状態に戻っている企業も多いですが、コロナ禍を経たことで、仕事中も私服が許可されたり、ミーティングは原則リモートになった企業も多く、常識は変化していきました。
このように、常識は時代や環境によって変動されるもので、一度覚えれば一生涯使えるような絶対的なものではありません。
特に現代はIT技術の進化が速く、時代が変化するスピードも速いです。
常識に縛られていると、それが足枷になって「古い価値観に縛られている人」と思われる可能性もあります。
マナーにおいては、相手の立場を想像する想像力と、実際に行動に移す行動力こそが時代に左右されないスキルです。
自分自身が客としてサービスを受ける立場の時、「言葉遣いが完璧で無愛想な人」よりも、「言葉遣いが正確ではないが、お客さんを喜ばせようと気持ちを込めて対応している人」の方が良い印象を持つかと思います。
マナーの難しさ
相手目線で考えることの難しさ
繰り返しになりますが、ビジネスマナーは下記の3つが重要です。
- 相手に興味を持って相手の目線で考える
- 相手が喜ぶことを実践する
- 相手が嫌がることをしない
しかし、実際には相手の目線で考えて行動することは、それほど簡単なことではありません。
特に、新社会人になったばかりの段階ではなかなか難しいです。
なぜ難しのかというと、学生時代は相手目線で考える訓練をする機会が社会人と比べて少ないからです。
学生と社会人の違い
そもそも、仕事とは自分以外の誰かに価値を提供することです。
社会人として働くということは、自分以外の誰かのために役に立つことをすることでもあります。
一方で学生は勉強が本業だと言われる通り、自分以外の誰かのために行動することはあまり求められません。
もちろん、周りの人に迷惑をかけないように気を使うことはそれなりに大事ですが、自分以外の人を中心に物事を考えなければいけない場面は多くありません。
つまり、社会人は他人のために行動することが求められ、学生は自分ために行動することが中心です。誤解を恐れず言うと、学生は自分を中心に行動しており、社会人は他人を中心に行動しているとも言えます。どちらが良い悪い、ではなく、仕事と学業を比較すると元々そのような目的の違いがあります。
そのため、学生の段階では相手の立場で考える習慣が身に付いている人は少ないです。
「自分がやられて嫌なことは人にしない」というのは幼稚園生でも習うような人として当たり前のマナーです。
社会人として働く上では、さらに相手の立場を想像する想像力が必要になります。
エンジニアにとってのビジネスマナー
ここまで一般的なマナーについて話してきました。ここからはエンジニア向けの話。
これまで話した通り、ビジネスマナーは大事ですが、相手の立場で考える想像力を身に着けるのはそれなりに大変です。(私自身できている気がしません。)
ですが、エンジニアの場合、技術の学習に力を入れることで、結果的に好印象な評価を受けることが少なくありません。
そのため、プログラミングスキルと社会人スキルの両方を鍛えるのが大変だと感じる場合、まずはプログラミングスキルを磨くことに全力を注いでも良いかもしれません。
技術力と社会人スキルの評価指標
私は数年ほどIT企業向けの新入社員研修の講師をしてきました。
私が講師を務める研修では、研修生に対する評価軸が2つあります。
1つは技術力で、もう1つは社会人スキルです。
技術力は単純にプログラミングスキルで、私が担当した研修ではWebアプリを開発するための基礎知識を身に着けてもらっていました。技術力の成績は、研修の中で実施される演習問題の提出状況やテストの点数などをもとに総合的に判断します。
社会人スキルは、いわゆるビジネスマナーに関するスキルで、報連相やコミュニケーションなどを評価軸にし、日々の研修の成果物や振る舞いなどから評価します。
社会人スキルについての評価はなかなか難しいものがありますが、ざっくり言えば評価者からみて一緒に働きたいと思える人、現場で部下にしたいと思えるような人は高評価になり、逆に、一緒に働きたくないと思う人は低評価になるイメージです。
どういう人が好印象になるかは評価者によっても変わるので、あくまでも担当している講師の主観による評価になります。
技術力と社会人スキルの関係性
この記事の冒頭で、エンジニアにとってのビジネスマナーは技術力であると述べました。
なぜそのような主張をしたかというと、私が講師を務めた研修の中では、技術力が高い人ほど、社会人スキルも高い傾向にあったからです。誤解のないように補足しておくと、ビジネスマナーと技術力がイコール、という意味ではないのでご注意ください。
技術面の成績が良い人は、社会人スキルの成績も良い場合が多かったです。
逆に、技術面の成績が低い人は、社会人スキルの成績も悪い場合が多かったです。
もちろん、必ずそうなるわけではなく、例外もあります。
技術力が高くても態度が悪く、印象が悪い人もいれば、逆にコミュニケーション能力が長けていて好印象でも技術力があまり伸びない人もいます。
しかし、これらはあくまでも例外であり、傾向としては技術力と社会人としての振る舞いの良し悪しには相関関係がありました。
技術面で好成績の人が社会人スキルも好成績な理由
受講態度
研修の中で、技術面で好成績の人が社会人スキルでも好成績になるのはちゃんと理由もあります。技術面の成績が良いは、以下のような特徴があります。
- 真面目に講義を聞いてメモをとっている
- (おそらく)研修以外の時間で自主学習している
- わからないことは積極的に周りの研修生や講師に質問している
技術面での成績が悪い人は、逆の特徴があります。
- 講義を真面目に聞いていない
- (おそらく)自主学習をしていない
- わからないことを放置している
真面目に人の話を聞き、メモを取る。理解が足りない部分は自主学習で補いつつ、わからないことは積極的に質問する。技術を学ぶことへの興味・関心が高いや、社会人としての責任を持って行動している人にとって、このような行動は当たり前のことかもしれませんが、このような当たり前のことができている人こそ、社会人の振る舞いとしてとても印象が良いですし、このような人とは一緒に働きたいと思います。
自信
技術力の高い人は、技術力の低い人に比べて自分に自信をっている人が多い傾向にあります。
自分に自信持っていると、人前でも堂々とした振る舞いができたり、複数人の前で積極的に発言をしたり、周りを先導してリーダーシップを発揮しやすくなります。
私が講師を担当した研修では、社会人スキル向上の一環でスピーチやディスカッションなども実施しています。また、研修の後半はチームで共同開発をする演習もあります。
スピーチやディスカッション、共同開発では自分に自信を持っている人の方が良い印象に映るため、結果として技術力の高い人の方が社会人スキルの評価も上がる傾向にあります。
ただし、自信過剰になりすぎてしまうと、傲慢な人という印象になって、逆に印象が悪くなることもあるため注意が必要です。自信過剰にならないような謙虚さを持ちつつも、適度な自信を持つことは社会人の振る舞いとして重要です。
心の余裕
研修に関して言うと、技術の成績が悪い人は心に余裕のない人が多いです。
それもそのはずで、研修は講義のスピードがそれなりに速いので、内容を理解できないまま講義の中で次々に新しいことが出てくるので、講義についていけず焦りが出ます。
分からないことが多すぎて焦った結果、心に余裕がなくなってしまうのです。
基本的に心に余裕がなくなると、人は視野が狭くなります。
そのため、周りの人がアドバイスをしても聞き入れることができなかったり、冷静に客観的な判断ができず、成長の機会を逃してしまいます。
一方、技術力の高い人は、理解できないことが少ない分、心に余裕をもって研修に取り組めます。
心に余裕があると、視野を広く持つことができるので、アドバイスを素直に聞き入れたり、周りの人を観察しながらほかのメンバーをフォローする人も多くなります。結果として、技術力の高い人の方が良い印象につながります。
納期意識
社会人として働く上で、期限を守ることは大事です。
研修の中では日々の演習や課題があります。
それらの演習によってプログラミングスキルを評価するとともに、期限に間に合うように提出できたかどうかによって納期への意識も評価対象にしています。
ここでも、技術力の高さによって差が出てきます。
そもそも、講義内容を高いレベルで理解している人たちは、期限内に演習を提出することが可能なので、納期意識の評価を下げるポイントがありません。
しかし、技術力が低い人は、そもそもの理解不足によって提出期限までに提出することができないため、納期意識という点でも評価が下がってしまいます。
論理的思考力
そもそもプログラミングを理解するにはある程度の論理的思考力が必要です。
そのため、全体としては論理的思考力の高い人が技術面の成績も高くなる傾向にあります。
論理的思考力は、文章を構成する際にも重要となる能力です。
報告内容、質問、プレゼン資料など、ビジネスにおいて何かの文章を構成する上では内容を論理的にするべき場面は多々あります。
プログラミングスキルの高い人は、論理的思考力も高い人が多いため、文章構成においてもコツを掴めばすぐに論理的な構成で文章を作れるようになります。
そのため、研修内における質問の仕方やスピーチにおける文章構成など、様々な場面で「伝え方」に関する評価は高くなりやすいです。
逆に、プログラミングの習得に時間がかかる人は、論理的思考力も十分に鍛えられていないことが多く、そのような人は文章構成においては論理的でないことが多く、マイナス評価を受けやすくなります。
エンジニアに好かれるエンジニア
私自身がエンジニアとして開発現場で働く際に、どのようなエンジニアと一緒に働きたいかというと、「技術力が高い人」か「技術に対して学習意欲が高い人」です。
一緒に働くことで私自身が多くの学びを得られる人、もしくは私から多くのことを学ぼうとしている教えがいのある人が、私にとって一緒に働きたいエンジニアです。
なぜなら、その方がチームとして価値のあるプロダクトを開発できる可能性が高まるからです。
経験が浅いうちから高い技術力は求めていませんが、高い技術力を身につけようとする興味・好奇心は求めています。
エンジニアも考え方は人それぞれですが、少なくとも技術志向の強いエンジニアと共に働く場合、技術への好奇心の強さがそのままその人への印象に直結します。
好奇心がすべて
結局のところ、技術が伸びる人というのは、技術に対して強い好奇心を持っている人です。
現代はAIの進化によってプログラミングに対するハードルも劇的に下がりました。
また、優秀なAIツールを使うことで開発の生産性が劇的に向上するようにもなりました。
プロジェクトの中に中途半端に技術が分かる人を入れるよりも、優秀な人がAIと一緒に仕事をする方が開発スピードは上がる時代です。
そんなこともあり、そもそも技術に対してあまり好奇心を持っていないエンジニアは徐々にAIに淘汰されていくことでしょう。
とはいえ、プログラミングができない段階ではあまり好奇心が持てなかったが、できるようになることで徐々に好きになる、というパターンもあります。
(私自身がどちらかというとそのパターンでした)
なので、技術に対して好奇心を持てるようになるために、まずはプログラミング学習に全力を注いでも良いと思います。
それが結果としてエンジニアとしての印象の良さにつながります。
ここまでのまとめ
ここまでの内容まとめると以下のようになります。
- 技術を深く学び、理解しようとする姿勢がそもそも好印象
- 技術を学ぶことで自分に自信を持てるようになり、社会人としての振る舞いにもプラスに働く
- 論理的思考力があると文章構成にも役立ち、社会人スキルにもプラスに働く
- 技術が好きなエンジニアからすれば、技術に対して好奇心の強さがそのまま印象の良さに繋がる
- 技術を学んでできるようになることで、好奇心が芽生えてより印象が良くなる(可能性がある)
記事の冒頭でビジネスマナーは技術力であると結論づけましたが、誤解のないように補足しておくと、新人のうちから高い技術力を求めてはいません。
未経験でIT業界に入った人が経験の浅いうちから高い技術力を持っているはずはなく、それや現場の人間も理解しています。
重要なことは、技術に対して興味を持ち、わからないことを積極的に学ぼうとする姿勢です。若手のうちは、前向きに学ぼうとする姿勢こそがビジネスマナーそのものです。
そして、学んだ結果でできることが増えた分だけ自分に自信を持ち、そこで身につけた論理的思考をその他の作業にも応用することで、社会人としてのスキルも向上します。
鶏が先か卵が先か
ここまでは、技術力を学ぶことで社会人スキルが身につく、というスタンスで書きました。
つまり、技術力 → 社会人スキルという流れです。
しかし、順番が逆だと思う人もいるかと思います。
そもそも社会人として責任感を持っており、まじめに取り組む姿勢があるからこそ、技術力が身についている、と。
つまり、社会人スキル → 技術力ではないか、という意見です。
こんなことを書くと本末転倒な気もしますが、もともと社会人スキルが高いから技術力の習得が速い、というパターンの人の方が多いような気もします。
ですが、責任感や主体性といった要素は、家庭環境や学生生活での経験などで人によって大きく差があり、研修の期間だけで身に着けさせるのは困難だと感じるようになりました。
であれば、技術の習得を目標にし、その過程で行動習慣を変えることによって社会人としてのスキルやマナーを身に着ける近道ではないかなとも思っています。
AIとの向き合い方
今の時代、エンジニアとして働いていく上では、AIとどう向き合うかも重要です。
AIの使用可否については対象となる研修や現場によって定められており、色々議論もありますが、私個人としては学習支援のためには積極的に活用してほしいと思っています。
学習サポートツールとしてのAI
ChatGPTのようなAIツールは分からないことを質問すればなんでも返してくれるので、学習のサポートツールとして最適です。
100日チャレンジのように、ChatGPTを使ってプログラミングを爆速で学習した例もあります。
どのような学習方法が向いているかは人それぞれですが、いずれにしても学習を支援する使い方をすれば学習スピードを上げることができるはずなので、積極的に活用することが望ましいです。
ただし、研修内でAIを使う場合、自分が理解していないままAIにコードを書かせて提出だけを先に行うケースもあります。
研修という場は自分自身のスキル習得が目的であるため、内容を理解しないままに成績のためだけにAIを使うのはNGです。
プログラミングスキルが身につかないだけでなく、周りからの印象も悪いため、結局社会人としての評価も下がってしまいます。
あくまでも、理解を助けるためのツールとして活用することが大事です。
AIと周りの人間を上手に使い分ける
AIは分からないことを質問すると、人間以上に素早く、かつ丁寧に何でも答えてくれます。
しかし、どんな質問AIに聞く方が答えを早く得られるとは限りません。
特に、研修という場においては、全員が同じ演習・課題に取り組んでいるため、AIに聞くよりも周りの研修生や講師に聞いた方が欲しい答えを速く得られる場合が多くあります。
人に聞けばすぐに解決する問題を、1人でずっとAIと向き合っているのは、コミュニケーション能力に難ありと評価されて、印象は悪いです。
開発現場においても、AIよりも知見のある人に聞いた方が素早く適切な答えが得られる場合も少なくありません。
AIはとても便利なツールですが、質問したい内容によって、どちらに質問した方が良いのかを判断し、適切なコミュニケーションを行うことが大事です。
社会人スキルを鍛える
ここからは、エンジニアに限定しない社会人スキル(マナー + 成果を出せるようになるためのプラスアルファのスキル)の鍛え方について。
自分がどう思われるかは気にしない
マナーとは相手から好印象を持たれるためのスキルだと述べました。
誤解のないよう細くしておくと、ここでの「好印象を持たれる」とは、空気を読んで相手に合わせるとか、相手に媚びるという意味ではありません。
もっというと、マナーにおいては自分がどう思われるかを考える必要はありません。
空気を読んで相手に合わせたり、相手に媚びるという行為は、自分がどう思われるかを気にしての行動であり、自分本位の行動といえます。
マナーとは、あくまでも相手本位であることが重要であり、主語を相手にして、相手がどう思うかを考えることが大事です。
評価は気にしよう
自分がどう思われるかは気にしなくても良いですが、自分がどう評価されているかは気にした方が良いでしょう。
以前、私が講師をしていた研修で教えていた受講生で、「会社からの評価を全然気にしていない」と言って自由気ままな振る舞いをしている人がいました。
当然評価は低く、技術力の成績も低かったです。
評価を気にしないという生き方自体を否定する気はありませんが、企業の中で社会人として働くのいであれば考えを改めた方が良いでしょう。
組織の中では一定の評価がなければ誰も一緒に働きたいとは思わないため、お荷物社員になってしまいます。
成果を上げているにも関わらず評価が上がらないのであれば、それはその企業の評価制度に問題があると考ても良いですが、評価を気にしていないという理由から成果を出すことを諦めている人は、そもそも社会人に向いていません。
価値提供を基準に考える
仕事とは、誰かに対して価値を提供することです。
どうすれば価値を最大化できるのかを考え、考えたことを行動に移していけば、自然と成果が出て評価も上がってくきます。
この記事では「マナーは相手から好印象を持たれるスキル」としましたが、それは空気を読んで意見を相手に合わせたり、媚びたりすることではありません。
むしろ、ほとんどの場合、自分の意見をしっかりと伝える人の方が好印象を持たれます。
ただし、その意見が明らかに自分本位のもの(例えば、自分だけが楽をするための意見など)であれば、悪い印象を持たれる可能性もあります。
大事なことは、どうすれば価値を最大化できるかを考えた上での意見を伝えること。
顧客への価値を増やすためにどうすれば良いか、チームの仕事の進め方をもっと良くするためにどうすれば良いか、といった、価値提供を基準にした意見を考えて行動に移すことで、周りからの評価は勝手に良くなってきます。
相手の時間を奪わないことに全力を注ぐ
マナーでは相手が嫌がることをしないことは大事です。
どんな行為を嫌がるのかは相手によって様々ですが、多くの人は仕事中に無駄に時間を奪われることを嫌います。
例えば、上司や先輩の元へ質問や報告をする際に、話の内容がまとまっておらずダラダラと長時間話されると多くの人は嫌がります。また、一度説明した内容を再度説明することも嫌がられます。
短時間で要件を済ますにはどうすれば良いかというと、伝えたい内容を簡潔にまとめて、結論から先に伝えると良いです。相手に何度も同じ説明をさせないためには、メモを取る習慣を身につけると良いでしょう。
結論から伝えることも、メモを取る習慣も大事なビジネススキルですが、これらは日頃から人の時間を奪わないことを意識して行動していれば身につきやすいスキルです。
休憩時間や業務時間外での雑談などでは、文章構成を考えたり時間を奪う意識を持つ必要はありませんが、業務に関わるコミュニケーションのやり取りにおいては、他人から時間を奪わない意識を持って行動することで、相手から悪い印象を持たれる可能性を大きく下げることができます。
予習こそマナー
仕事の成功率はどれだけ準備したかで決まります。
営業の仕事の場合、訪問先の企業のことを事前に調べておく人が結果を残しやすいでしょう。何かを提案する場合、提案の資料作りやプレゼンの練習をどれだけしたかで成功率が変わってきます。ソフトウェア開発の仕事の場合、開発で使用する技術を事前にどれだけ学べているかによって、プロダクトの品質や開発スピードが大きく変わってきます。
新人研修で言えば、講義で扱う内容を事前に予習しておくことで、講義内容の理解がスムーズになり、演習やテストの成績もよくなります。
どんな仕事でも、やることが事前わかっているのであれば、その対象に対してどれだけ準備(予習)したかによって成果の速さと大きさが変わってきます。
そのため、日頃から仕事に対して予習をすることが、そのまま印象の良さに繋がります。
成果を出すための自発性
予習することが大事だと述べましたが、新人研修においては講義のスピードが速いため、途中から内容の理解が追いつかなくなる人は多くいます。
そもそも基礎的な内容を理解していないまま応用的な内容を学習しても、理解の助けにならないどころかストレスを感じて学習が嫌になる可能性もあります。
予習ができるほど実力が追いついていない場合は、今の自分には何が足りていないのか、今自分がやるべきことは何なのかを自分で考えて行動することが大事です。
基礎が理解できていないのであれば、基礎を理解する必要があります。
基礎的な内容を復習しても理解ができない場合は、根本的な読解力や論理的思考力、コンピュータの基礎知識が足りていない可能性もあります。
いずれにせよ、成果を出せるようになるために何をするべきかを自発的に考えて行動することが大事です。
マナースキルを他人から盗む
相手に喜んでもらうためのマナースキルを手っ取り早く身につけるには、自分自身が様々なサービスを受けて、他人からマナーのノウハウを盗むのが一番です。
お店で接客を受けた場合や、何らかのサービスを受けた際に、自分が良いと思った振る舞いがあれば真似をして、不快に感じた振る舞いがあれば反面教師にして自分がそのような振る舞いをしないようにすることがマナーを身につける近道です。
基本的に、良いサービスを受けられる場所というのは、その分高価になります。
質の高いサービス業(高価な飲食店やホテルなど)に自腹を切って体験することで、マナーを短期間で学ぶことができるでしょう。
誠実さ
色々書きましたが結局のところ、誠実さが大事なのかなと思います。
- ウソをつかない
- 必定以上に見栄を張らない
割と当たり前のことですが、仕事に対して誠実であることが伝われば、それが一番のビジネスマナーになるかなと思います。
全体のまとめ
- マナーの基本
- マナーは人から好印象を持たれるためのスキル
- マナーは仕事を円滑に進めるために大事なスキル
- マナーにとって大切なこと
- 相手に興味を持って相手の目線で考える
- 相手が喜ぶことを実践する
- 相手が嫌がることをしない
- 「身だしなみ」「言葉遣い」などの一般常識は悪い印象を持たれるリスクを減らせる
- エンジニアのマナーは技術力
- 技術を身に着ける姿勢がマナー
- 技術があると自信が身につく
- 論理的思考が社会人スキルに直結する
- 技術への好奇心がエンジニアに好かれる
- AIとの向き合い方
- 学習サポートツールとして活用する
- 人に聞いた方が早いときは人に聞く
- 社会人スキルの習得
- 自分がどう思われるか気にしない
- 評価は気にする
- 価値提供を基準に意見はちゃんと伝える
- 人の時間を奪わないことに全力を注ぐ
- 準備(予習)する
- 自発的に動く
- 人からマナースキルを盗む
- 誠実さ大事