コンピュータにおけるメモリの種類と特徴は、基本情報技術者試験でも頻出のトピックです。この記事では、主要なメモリの種類と特徴を整理し、覚え方のコツも紹介します。
1. RAMとROMの基本的な違い
まずは、コンピュータの主要なメモリであるRAMとROMの基本的な違いを理解しましょう。
RAM (Random Access Memory)
定義:
電源がONの間だけデータを保持できる揮発性メモリ。読み書き自由。
特徴:
- 電源を切るとデータが消える(揮発性)
- データの読み書きが自由にできる
- 一般的にROMより高速
- OSやアプリケーションの実行時に使用される
用途:
- プログラムの実行時のワークエリア
- 一時的なデータの保存
- OSやアプリケーションの動作領域
ROM (Read Only Memory)
定義:
電源がOFFでもデータを保持できる不揮発性メモリ。基本的に読み取り専用。
特徴:
- 電源を切ってもデータが残る(不揮発性)
- 基本的に読み取り専用(書き換えが難しいか、書き込み回数に制限がある)
- 一般的にRAMより低速
- 書き換えが少ないシステムプログラムなどに使用される
用途:
- BIOS/UEFIなどのファームウェア
- 組み込み機器の制御プログラム
- 起動時に必要な基本プログラム
RAMとROMの比較表
比較項目 | RAM | ROM |
---|---|---|
データ保持 | 電源ON時のみ(揮発性) | 電源OFF時も保持(不揮発性) |
読み書き | 自由に読み書き可能 | 基本的に読み取り専用、書き込みは限定的 |
動作速度 | 高速 | 比較的低速 |
コスト | 比較的高価 | 比較的安価 |
主な用途 | プログラム実行、データ処理 | ファームウェア、起動プログラム |
RAMとROMの覚え方
こじつけですが...
RAM:
- 「Random Access Memory」の頭文字
- 「Read And Modify」(読んで書き換え可能)と覚える
- 「RAMen(ラーメン)は作りたてを食べないと味が落ちる」→電源がないとダメになる(揮発性)
ROM:
- 「Read Only Memory」の頭文字
- 「Reading Only, Mate!」(読むだけだよ!)と覚える
- 「ROMa(ローマ)は一日にして成らず→長持ちする」→電源がなくても消えない(不揮発性)
2. RAMの種類
RAMには主に以下の2種類があります。
DRAM (Dynamic RAM)
定義:
コンデンサにデータを電荷として保存し、定期的なリフレッシュが必要なRAM。
特徴:
- 構造が単純で高密度化しやすい
- リフレッシュ動作が必要(定期的に内容を再書き込み)
- 比較的安価
- 電力消費が比較的多い
用途:
- メインメモリ(PC・サーバーの主記憶装置)
- 大容量が必要な場合
SRAM (Static RAM)
定義:
フリップフロップ回路でデータを保持し、リフレッシュが不要なRAM。
特徴:
- リフレッシュ動作が不要
- 高速動作が可能
- DRAMより複雑で高コスト
- 電力消費が少ない
用途:
- CPUのキャッシュメモリ
- 高速動作が必要な領域
DRAMとSRAMの比較表
比較項目 | DRAM | SRAM |
---|---|---|
構造 | コンデンサ | フリップフロップ回路 |
リフレッシュ | 必要 | 不要 |
集積度 | 高い | 低い |
速度 | 比較的遅い | 高速 |
コスト | 安価 | 高価 |
電力消費 | 比較的多い | 少ない |
主な用途 | メインメモリ | キャッシュメモリ |
DRAMとSRAMの覚え方
DRAM:
- 「Dynamic」は「動的」→常に動いている、リフレッシュが必要
- 「Dram(ドラム)はたたき続けないと音が消える」→リフレッシュが必要
SRAM:
- 「Static」は「静的」→じっとしている、リフレッシュ不要
- 「Stay RAM」→状態を保持し続ける
3. 不揮発性メモリ
ROMの一種として、主要な不揮発性メモリについて説明します。
フラッシュメモリ
定義:
電気的に一括消去・書き込みが可能な不揮発性メモリ。
特徴:
- 電源OFFでもデータ保持(不揮発性)
- 書き込み回数に上限がある(10万〜100万回程度)
- ブロック単位での消去が必要
- 書き込み時間がROMより短い
種類:
-
NOR型フラッシュ:
- 高速読み出し可能
- バイト単位でのランダムアクセスが可能
- BIOSなどの実行コード用途に適している
-
NAND型フラッシュ:
- 高密度・大容量
- ページ単位での読み書き
- SSD、USBメモリ、SDカードなど記憶媒体に使用
用途:
- SSD(Solid State Drive)
- USBメモリ
- SDカード
- スマートフォンの内部ストレージ
EEPROM (Electrically Erasable Programmable ROM)
定義:
電気的に書き換え可能なROM。
特徴:
- バイト単位で書き換え可能
- フラッシュメモリより書き換え回数が多い
- 容量が小さい
- 低速
用途:
- 設定データの保存
- シリアル番号の保存
- BIOS設定の保存
フラッシュメモリとEEPROMの比較表
比較項目 | フラッシュメモリ | EEPROM |
---|---|---|
書き換え単位 | ブロック単位 | バイト単位 |
容量 | 大容量可能 | 比較的小容量 |
書き換え速度 | 比較的速い | 低速 |
書き換え回数 | 約10万〜100万回 | 約100万回 |
主な用途 | SSD、USBメモリ | 設定データ保存 |
4. メモリの階層構造
コンピュータシステムでは、速度と容量のトレードオフを考慮して、メモリが階層構造になっています。上から下へ行くほど、高速だが容量が小さく高価になります。
- レジスタ:CPU内の超高速メモリ
-
キャッシュメモリ:CPUとメインメモリの間の高速バッファ(SRAM)
- L1キャッシュ(最も高速)
- L2キャッシュ
- L3キャッシュ
- メインメモリ:プログラム実行時の主記憶装置(DRAM)
- ストレージ:大容量データの保存(SSD、HDD)
5. 総合比較表:主要メモリの特徴まとめ
メモリの種類 | 揮発性 | 読み書き | 速度 | 容量 | コスト | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
SRAM | 揮発性 | 読み書き自由 | 最速 | 小 | 最高 | CPUキャッシュ |
DRAM | 揮発性 | 読み書き自由 | 速い | 中〜大 | 高い | メインメモリ |
フラッシュメモリ | 不揮発性 | 書き込み制限あり | 中程度 | 大 | 中程度 | SSD、USBメモリ |
EEPROM | 不揮発性 | 書き込み制限あり | 遅い | 小 | 中程度 | 設定データ保存 |
マスクROM | 不揮発性 | 読み取り専用 | 遅い | 中 | 安い | BIOS、ファームウェア |
6. 覚え方のまとめ
揮発性と不揮発性
- 揮発性:電源を切ると消える → RAM
- 不揮発性:電源を切っても残る → ROM、フラッシュメモリ
速度の順
SRAM > DRAM > フラッシュメモリ > EEPROM > マスクROM
容量の一般的な順
フラッシュメモリ > DRAM > SRAM > EEPROM
用途で覚える
- 一時的な処理:RAM(SRAM、DRAM)
- 永続的な保存:ROM、フラッシュメモリ
- 高速アクセス必要:SRAM
- 大容量必要:DRAM、フラッシュメモリ
- 設定データ:EEPROM
- ファームウェア:マスクROM、フラッシュROM
まとめ
基本情報技術者試験では、各メモリの特徴と用途の違いを理解し、適切な使い分けができることが求められます。試験では、特性の比較や適切な用途に関する問題が出題されることが多いので、この記事で整理した内容をしっかり理解しておきましょう。
それぞれのメモリには一長一短があり、用途によって最適なメモリが異なります。高速性、容量、コスト、不揮発性といった観点から、それぞれの特徴を整理して覚えておくことが効果的です。