Introduction
量子力学における根本の一つ、「不確定性原理」。それを電子に電磁波をぶつけることを例にわかりやすく解説します。
観測する = 光(電磁波)をぶつける。
よく人が物体を視覚として捉える説明として、光の「反射・屈折・吸収」なんてものがありますよね。つまり、人が物体を観測したり、測定したりするためには光が必要なのです。
光とはあるエネルギーを持った波動である。
光の振動数を$\nu$とすると、そのときの光のエネルギーは$h \nu$になることが知られています。これを電子にぶつけてみましょう。
光(電磁波)とは電場と磁場が振動する波である。
磁場によるローレンツ力は電場に比べて非常に小さい(光の速度分の1)のでそれは無視します。つまり電子君は電場によって加速され、振動運動を始めることになりますね。
電子が受け取った運動エネルギーから不確定性原理をざっくり計算してみよう。
電子が受け取ったエネルギーを$\Delta E$とすると、これは光の持つエネルギーに大体等しいはずですね。だって電子と光が出会ったことで生まれた運動エネルギーですから。
\Delta E \simeq h \nu
ここで$\nu$が光の振動数であることを思い出しましょう。電子の位置や運動量を観察しようと光をぶつけたのに、電子はこの振動数で運動することになります。光の振動数、もとい電子の運動の振動数は光の周期$\Delta t$を用いて$1/\Delta t$と書けますから、
\Delta E \Delta t \simeq h
という不確定性原理のエネルギー・時間バージョンが導けました。
さらに変形。
運動エネルギー
E = \frac{p^2}{2m} \ \Longrightarrow \
\Delta E = \frac{p}{m} \Delta p = v \Delta p
= \frac{\Delta x}{\Delta t} \Delta p
を代入すれば、皆様おなじみの
\Delta x \Delta p \simeq h
という不確定性原理を導くことができました。
総括
電子に光をぶつけて観察する、という物理的に理解しやすい現象から不確定性原理を説明してみました。結果、電磁波がぶつかることで電子にもその波動の物理が適用されることがわかりました。もちろんこれは直感的にわかりやすく不確定性原理を理解するためのものであって、不完全な説明です。なぜなら「じゃあ電荷を持たない素粒子はどう説明するの?」となるからです。それを理解するには数学的導出やオブザーバブルな量についての知識が必要になります。つまりこの説明は古典的な説明にすぎません。もし興味が沸いたら、そのうちまた記事を投下します。