概要
世界初商用量子コンピュータとして注目を集めたD-Wave。その動作原理はどのようなものなのでしょうか。気になったので勉強し、ここにアウトプットすることにしました。
磁束量子ビット
D-Waveで取り入れているのは磁束量子ビットを用いたものです。磁束量子ビットは超伝導状態にある小さな回路で構成されています。この回路の内側に上向きの磁場が発生した状態を「上向き」、下向きの磁場が発生した状態を「下向き」としています。D-Waveではこの状態の重ね合わせを再現しているとのことですが、これにはどのようなバックグラウンドが隠れているのでしょうか。
回路構成図
以下に示すような2つの部分で構成されたリング状の回路を用います。以下では左側の小さなリングを回路I, 外側の大きなリングを回路IIと呼称しましょう。
qubitを作る
電磁誘導の法則
回路Iの内側に磁場を垂直にかけます。
すると高校物理の電磁誘導の法則から、その磁場を打ち消そうとする方向に電流が発生します。
Josephson結合というなのただの絶縁膜
電流が流れるということは電圧が発生し、電荷に偏りができるということを意味します。つまりこの絶縁膜を挟んでプラスとマイナスの電荷が蓄電することになります。ようはコンデンサと同じような状態ですね。
確率的に起こるトンネル効果、からの回路IIへの電流発生
量子力学では小さな粒は絶縁物質をすり抜けて移動することが確率的に起こります。これがトンネル効果です。試しに回路Iの左側の電荷がトンネル効果によって絶縁膜を飛び越えたとしましょう。
すると、回路Iの右側に蓄積されていた電荷だけが取り残されます。この電荷が外側の大きなリング回路IIを電流として流れていくのです。
確率的に回路Iの右側の電荷がトンネル効果によって絶縁膜を飛び越えることもあります。すると先ほどとは反対方向の電流が流れます。
右ねじの法則
外側の大きなリング回路IIに流れた電流によって、高校物理の右ねじの法則から磁場が発生します。確率的に電流の向きが決まるわけですから、当然ここで発生する磁場の向きも確率的に決まります。
qubit完成!
以上のような仕組みで上向き磁場状態と下向き磁場状態を確率的に重ね合わせる状態を作り上げることに、D-Waveの技術者は成功しました。
結言
ポイントは量子力学のトンネル効果を用いつつも、あくまでメインを司っているのは高校物理で習うようなマクロな電磁気学だったことがわかりました。「量子コンピュータ」は上向き・下向きの重ね合わせ状態を再現できさえすれば、その利用が可能であるということですね。