これは MIERUNE AdventCalendar 2024 の24日目の記事です。
昨日は @dadadadatte さんによる SvelteのLLMs向けドキュメントを使ってSvelteGPTを作ってみた話でした
こんにちは!MIERUNEの山本です。
札幌を拠点に、位置情報に特化したソリューションを提供する「MIERUNE」が大通沿いのオフィスに移転しました!
今回は、実際の鉄道やバスのダイヤのデータを用いて、オフィスまでの所要時間を計測することで、
- 旧オフィスと新オフィスでオフィスへの近づきやすさはどのように変化したのか?
- 前のオフィスに比べて「不便になった」「便利になった」場所はどこか?
- 所要時間だけでは見えない「利便性」の変化は?
といったところに着目して解析を行います。
想定する読者様としましては、
- 目的地が変わった時の所要時間の評価の仕方を知りたい!
- たまにしか運行されない路線も含めてその土地からの理論上最短の所要時間を知りたい!
- 逆に、路線の運行頻度も含めての所要時間を知りたい!
- オフィスが移転して不便になったので引越し代を会社に請求したい!
といった方におすすめの内容となっております。
到達圏を作る
OpenTripPlannerという解析ソフトを用いて、Google Mapなどに使われているデータ形式であるGTFS形式のデータを用いてデータを解析します。GTFS形式のデータには、交通機関の発着時刻や運賃などの情報が格納されています。
所要時間については、「到達圏」を作成するという方法で、特定の地点(今回はオフィス)への所要時間を比較します。
一定時間内に辿り着けるエリアを可視化することで、例えば目的地が病院や学校などの場合に、エリアの外側になってしまう人をできる限り減らせる方法を考えたりすることに使われます。
到達圏のイメージは、こんな感じです。
解析方法については、詳しい方法はこちらをご覧ください
今回は上記の記事で紹介したこちらのプラグインを利用して解析を行なっています。
解析
集めてきたデータ
GTFSデータは以下のものを中心に用いました
- 北海道中央バス
- ばんけいバス
- じょうてつバス
- 札幌市交通局(地下鉄と市電)
- JR北海道(鉄道)
JR北海道については、オープンデータが存在しないため自作しました。また、ジェイアール北海道バス(JHB)についても自作を試みましたが、時間切れのため準備できませんでした。
そのため今回の解析では、JHBの運行エリアの数値は正しくないと考えられます。
どんな解析をするか
指定した時刻間の各時刻において、オフィスまでかかる所要時間をひたすら計算していきます。この解析方法では、「朝8時着」や「朝10時着」といった決め打ちをして時刻を調べるといったことがないため、より細かく「どれくらいの時間で辿り着けるのか?」を可視化することが可能です。
ひたすら計算して出した到達圏を解析して最小値や最大値、中央値などの統計データを作成しますが、プラグインではこれらの動作を全て自動で行えます。
いざ定義
所要時間を計測するために、MIERUNEの実態に応じた通勤時間や到着時刻、計測範囲の場所などを定義しましょう。
通勤時間
MIERUNEでは、特に制限などはありませんが、札幌近郊に在住している場合は週3回以上の出社が必要です。今回は便宜上、通勤の限界とも言われる片道1時間半で設定しました。
ちなみに、通勤にかかる平均時間(往復)を調べてみると、
2021年実施の「社会生活基本調査」による10歳以上の人の通勤・通学の所要時間というものがでてきました。北海道:1時間4分(片道計算32分)
全国平均:1時間19分(片道計算40分)
神奈川県:1時間40分(片道計算50分)
だそうです。(平均時間であり実態を示すものとは限らないことに注意が必要です)
到着時刻
MIERUNEの就業規則では、8:00〜10:00の間に勤務を開始するように決められています。
そこで、8:00〜10:00の間に到着する場合を計測することとしました。
ちなみに実際には9:00〜9:30がボリュームゾーンです。
計測場所
旧社屋と新社屋の1階の入口位置を到着点としました。
旧社屋
サッポロファクトリー内。東4。
地下鉄東西線「バスセンター前」駅から5分ちょっと、10分はかからない。
新社屋
大通沿い。西8。
地下鉄東西線「西11丁目」駅から5分は絶対かかる、10分はかからない。
地下鉄全線「大通」駅から10分はかからない。
実際に結果を見てみよう
このプラグインでは、実際に算出した到達圏をラスタデータにして統計値を計算します。もちろん、生データをベクタとして扱うことも可能です。今回は、標準地域メッシュの2分の1地域メッシュ(500mメッシュ)を活用してラスタ化しているため、タイルの幅は大体500mくらいです。
旧オフィスへの最短所要時間
0分〜90分までを干渉色で表示しています。真ん中が黄色なので45分くらいです。交通路線沿いに同心円が広がっていることがわかります。
緑、オレンジ、青で色付けされた地下鉄全線の駅は、どこも45分以内にアクセスできていることがわかるため、地下鉄駅から15分以内の家なら60分でオフィスまで辿り着く計算ですね。
新オフィスへの最短所要時間
新オフィスでは移転に合わせて中心点がやや西側に移動しました。
新オフィスでも同様に、地下鉄のアクセスは非常に良好です。雪でも安心ですね。
ここから各種指標で比較していきましょう。
90分で到達可能/不可能になったエリア
それぞれのラスタデータを一色でベタ塗りしました。青色は旧オフィスに90分以内で辿り着けるエリア、赤色は新オフィスで90分以内に辿り着けるエリアです。紫色のエリアではどちらも90分以内に到達することができます。
東側エリアで90分以内に辿り着けるエリアが小さくなりました。
ただし、ここでは「90分以内に辿り着けるか」を議題としており、「何分で着くか」は一切考慮していないことに注意してください。
具体的には、東側の函館本線(旭川方面)で駅からの到達圏が少なくなっているようです。
新オフィスでは、札幌駅から乗る地下鉄の方面が逆になるため、JRから地下鉄への乗り継ぎ時間などの違いから所要時間が長くなったと思われます。
特に目立って違いのある場所の具体的な名前を挙げてみます。
新オフィスになって所要時間が90分を切った場所
- 北海道中央バス厚田線「望来」「望来坂下」
新オフィスになって所要時間が90分をオーバーした場所
- 高速みかさ号 (岩見沢ターミナル〜三笠市民会館)
- 月形線(岩見沢駅前〜10号線)
GISを活用して、社員の出社に対する到達圏を調べると、例えばこのようなエリアに住む社員がいた場合、引越しの補助や出社義務の緩和などができるのかもしれませんね。
新オフィスになって所要時間が大きく変わった場所
最後に、新オフィスと旧オフィスへの最短到達圏の差分を見てみましょう。
青系の色のエリアは新オフィスの方が近いエリアで、赤系の色のエリアは旧オフィスの方が近いエリアを示しています。
札幌駅から西側については、新オフィスへの所要時間がおおむね短くなっています。
また、東西線(オレンジ)や東豊線(ブルー)の東側でも所要時間にほとんど差のない点が特徴的です。
唯一、25分以上追加で時間がかかるようになったエリアは北海道中央バスが運行し、江別駅前から札幌ターミナルまでを結ぶ「札江線」の角山橋、世田ケ谷の2停留所でした。この路線は、旧オフィスが入っていた「サッポロファクトリー前」停留所が存在したため、他の路線で向かう際に大幅に時間がかかるようになるのかもしれません。
運行本数の違い
最短の所要時間と最大の所要時間における差分がどれくらいあるのかを計算した地図です。
特にバスの本数が少ないところについては、出発する時間が40分異なってしまう場所もあることがわかります。こちらは「オフィス選び」というよりも「家選び」に使えそうなデータですね。朝が得意でなかったり、準備に時間がかかる方は無色か青色のエリアに住むのが良さそうです。
地下鉄沿線については、概ね何時に出ても同じ所要時間で到着しますが、JRについては移動する時刻によって所要時間少し差があるということがわかります。
この記事からわかること
今回は、「到達圏」という切り口で公共交通機関を使った「利便性」を考えてみました。今までは、経路検索ソフトや時刻表を用いて「1時点」での切り口で所要時間を考えることはあっても、より広い時間軸で所要時間のポテンシャルを眺めるということはなかったのでないでしょうか。
GTFSを使ってぜひ皆様も快適な到達圏ライフを!