ソフトウェアテストの小ネタ Advent Calendar 2019 25日目の記事です。
何度かの転職を経て、キャリアについて考える際のポイントを、まとめてみましたので、ご一読いただければ幸いです。
■ キャリアと聞いて・・・
みなさんは、「キャリア」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
「キャリア」「キャリアプラン」「キャリアデザイン」「キャリア形成」「キャリア・コンサルタント」等々、聞き覚えのある言葉は、いろいろ、あると思いますが・・・
多くの方は、どうして良いかわからずに、日々の業務をこなしているのではないでしょうか?
Wikipedia を参照すると下記のような記述があります。
◆ キャリア
- 経歴
- 専門技能を持って職に就いている者 → プロフェッショナル
- キャリア (国家公務員) - 日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又はI種試験(旧外務I種を含む)等に合格し、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員の俗称である
その他にも、「積み重ねた実地の経験」などもあります。
上記のように、「経験」「積み重ねた実地の経験」と考えた場合、ほとんどのみなさんに、「キャリア」という言葉は、身近なものになるのではないでしょうか?
しかし前述したとおりに、日頃あまり意識していないの現状だと思います。
今回は、キャリアについて、下記のような観点でまとめてみました!
- 技能(スキル)&技術(テクノロジー、体系的に説明可能である)
- 経験(職務経歴等を通して、自身の成果をまとめる)
- ビジョン(自身で大事にしている、軸のようなもの)
□ 技能&技術
前提として、お伝えしたいのは、この資料の中で「技能」と「技術」が異なるということです。
テスト実施者の方で・・・
とても良い**技能(スキル)**を持ち合わせているのに、**技術(体系的な知識)**と紐付いていないために、不具合発見効率が高いのに説明ができずに「なんで、この不具合を発見できたんですか!?」という称賛の声に、「・・・なんとなく・・・」「・・・勘・・・」と言われる、テスト実施者の方は、少なく有りません。
テスト設計者の方も同様に・・・
経験&前任者の知見等から、良いテストケースを作成できるが、「なぜ効率的なのか?」と言われると、技法を適用していても「端と端を見ています」「全パターンは無理なので、斜めに組合せています」等の回答が返ってくることも、多々見受けられます。
テストマネージャの方について・・・
もともと予定されていたことから、スコープを狭めることばかり考えて守りに入ってしまい、期間内で最大の効果をあげようとしないパターンもあります。
個人的な考え方として、前述のような方は、個人的にはテスト管理者の中でも、テストマネージャとは呼ばずに、テストコントローラーと定義しています。
ただし、実際の業務おいては・・・
ステークホルダーとの合意内容等からの手戻りを考えると、期間・工数的にスコープを狭めることが現実的なもの理解できます。
しかし、考え抜くことを諦めて・・・
より良いものを求めて思考し続けることをやめてしまうと、一見スマートで生産性が高いように見えるかもしれませんが、「なぜそうしたのか?」「他の選択肢はなかったのか?」考え抜かれていない「技能」は、汎用性&説得力がないために、「技術」がある人にとっては「稚拙」に思えることもあり、ある一定以上のキャリアを考えるのであれば、何らかの形でブレークスルーが必要だと考えます。
いずれにしても、自身の技能(スキル・能力)を技術的に説明できるようにしておくと、現状のスキルについて再確認できることと、一般的に求められていることを紐付けることができます。
上記が可能になれば、他業種での技能・技術とも紐付けができるので、次のキャリアを考えるときの可能性と選択肢が広がります!
-
**「技能」**について、例として下記のようなものがあります
- テスト実施者ならば、効率的な「テスト実施」「不具合発見」できること
- テスト設計者ならば、効率的な「テストケース」「テストスクリプト」作成できること
- テストマネージャならば、計画的&効率的な「テストプロジェクト」運用できること
-
**「技術」**について、例として下記のようなものがあります
- 各種テスト技法 (「テスト技法ドリル」参照)
- 点 : 3色ボールペン(間、対称、類推、外側)
- 線 : 境界値分析、同値分割
- 面 : ドメイン分析、ディシジョンテーブル、原因結果グラフ、CFD法
- 立体 : HAYST法(因子・水準、FV表)、ペアワイズ(PICT)、直交表
- 時間 : 状態遷移テスト、Nスイッチカバレッジ
- 多次元 :
- 資格試験
- ISTQB、IVEC、JCSQE、etc
- スキル標準
- Test.SSF、ITSS、ETSS、UISS
- 知識体系
- SQuBOK、SWEBOK、PMBOK、BABOK、REBOK、EABOK、etc
- 規格(ISO/IEC/IEEE)
- 29119(829)、25000(9126)
- 改善手法
- TPI Next、TMMI、SaPID、etc
- 各種テスト技法 (「テスト技法ドリル」参照)
□ 経験
本記事では、**「キャリア」**について、「経験」「積み重ねた実地の経験」と考えておりますので、多くの方にとっては、身近なものだと思います。
ソフトウェアテストに従事している方については、「キャリア」「経験」≒「職務経歴」というケースがほとんどなのではないでしょうか?
しかしながら「職務経歴」を棚卸しするのは、転職・就職活動の時に限られているのではないでしょうか?
また「職務経歴書」に書かれる内容は、どのような内容をイメージされるでしょうか?
多くの転職サービスサイトでは、下記のようなフォーマットが多く見られると思います。
期間 | 業務内容 | 役割・規模 |
---|---|---|
YYYY年 MM月 〜 YYYY年 MM月 | 金融系 Webサイト | テストマネージャ |
テスト管理、テスト計画作成、テストケース作成 | 20名 | |
YYYY年 MM月 〜 YYYY年 MM月 | 音楽再生プレイヤー 組込み | サブリーダー |
テストケース作成、テスト実施 | 10名 |
しかしながら・・・
ソフトウェアテストに従事している方々の実力は、上記内容ではなかなか伝わらないの現状です。
「職務経歴書」を作成する時のポイントは、ご自身が各業務において、**「考え抜いた」「どのような工夫し」「どのような成果を上げた」**かが重要です!
例えば、各役職において以下のようになります!!
-
テストマネージャ
- 業務効率向上、リードタイム削減、組織の品質力向上
-
テストリーダー
- テストプロジェクトの効果的な運用、テストチームの力量強化
-
テストエンジニア
- 効率的なテスト設計・実施、不具合分析、再発防止策の検討
◇ 「職務経歴書」は定期的にアップデートしましょう!
みなさんは、上記のように**「考え抜いた」こと「どのような工夫」**をしたのか等について、数年前のことを、すぐに説明できますか?
私自身は、最初に職務経歴書を作成したときには、とても時間がかかりました・・・
だからこそ、「職務経歴書」は定期的にアップデートすることをオススメします!
「職務経歴書」を、まとめる際に入社時・転職時から時間が立ってしまうと、どうしても記憶が薄れてしまいますので、あまり期間をあけずにアップデートすることほうが良いと思います。
例えば、多くの組織では、3ヶ月から1年のスパンで、MBO・OKR等を用いて、目標設定・評価等が行われていると思いますので、同等のタイミングで実施しては、いかがでしょうか? または、PJ単位でアプデートするのも良いかもしれません。
◇ 「職務経歴書」で見ているポイント
上記でも一部記述しましたが・・・個人的に「職務経歴書」で見ているポイントは、下記のようになります。
簡単に言えば、求めている人材として、現場で活躍している姿が想像できるかということになります。
- 定型的な内容になっていないか?
- 業務経験が募集要項にマッチしているか?
- 業務毎の成果が書かれているか?
・コネタ
□ ビジョン
◇ 大事なことは・・・
キャリアビジョンを考える上で、大事なことがいくつかあります・・・
- もっとも優先すべきは**「個人の幸せ!」と「心身の健康!」**
- 「過去の経歴」をベースに「未来(夢≒ビジョン)をつなぐ!」
- つないだ未来を**「キャリアビジョン(プラン)」**にする!
○「個人の幸せ!」&「心身の健康!」
個人的な考え方で・・・多くの方々には、周知のことかもしれませんが・・・
**「個人の成長」と「組織の成果」**には、密接な関係があると考えています。
**「個人のキャリア」と「業務の目標」がマッチした方が双方にとって、より成果が得られると思います。
特にソフトウェア開発においては、「ピープルウェア」に記載されているとおりに、「個人のモチベーション」により、生産性が20倍ほどの違いが出るそうです。
そのためには、「個人のモチベーション」を高めるためには、「個人の希望」**とマッチしていることが重要です。
**「個人のモチベーション」が「業務の目標」を達成して、「組織の成果」となり「個人の成長・キャリア」**につながります。
○「過去の経歴」
**「過去の経歴」**を、棚卸しするには、いくつかのアプローチがあると思います。
**「キャリアの棚卸し」については、「経験」で記述したとおりに自身の業務について、「成果」「効果」**を軸に棚卸しすることをおすすめします。
**「スキルの棚卸し」**については、「Test.SSF」の「SSFに基づくテスト技術スキルフレームワーク」を使って、棚卸しをすることをおすすめします。
○「未来(夢≒ビジョン)をつなぐ!」
**「未来(夢≒ビジョン)」**は、先々のキャリアについて、さまざまな組織・規格等で定義されていますので、いくつか列挙します。
- 「ISTEB」
「ISTQB」トップページから抜粋(https://www.istqb.org/)
- 「IVEC」
「IVEC(認定試験)」から抜粋(https://www.ivia.or.jp/item43)
- 「SSF」
「i コンピテンシ ディクショナリ(iCD)オフィシャルサイト」から抜粋(https://icd.ipa.go.jp/icd/icd/download)
- 「ビズリーチ」
「JaSST 2019 Tokyo レポート」から抜粋(http://www.jasst.jp/symposium/jasst19tokyo/report.html#session)
○「キャリアビジョン(プラン)」
- 簡単なキャリアプランを考える
- 自身のスキル&キャリアと親和性が高い、スキル標準・組織標準等を活用して、目指すべき、キャリア(ロール・ポジション・etc)との差分・ギャップを、どのように埋めるか具体的に計画を立ててみましょう。
- 業務で達成できるものと業務外で達成すべきものを分ける
- 現状・体制・組織・業務形態・etc、さまざまな要因で伸ばしたいスキルを、業務として携われない状況は、多々あると思います。
- ただし、それを補うための学習方法は、いろいろありますので、探して・マッピングしてはいかがでしょう。(資格・規格・スキル標準・コミュニティー・etc)
- ロードマップを作成する
- キャリアプランを考える上で、半年後・1年後・3年後・5年後・10年後等、スケジュール感はいろいろあると思います。
- まずは、これから1年後のどうなりたいかを軸に、3ヶ月単位でどうなりたいか、ロードマップを作成することを、オススメします。
まとめ
- キャリアは、個人の幸せのためにある(意見には個人差がありますので、ご注意ください!)
- スキル標準を用いて、相手を知り、己を知れり、未来を考える
- キャリアパス&スキル標準で、未来(キャリアアップ)への階段(キャリアラダー)を考える
おまけ
「序 : キャリアチェンジの準備 ~ 棚卸し、面接準備 ~」から、抜粋
(https://www.slideshare.net/kunioyamamoto519/you-are-not-alone-70223443)
最後に
本記事が、キャリアについて、悩んでいる方々の一助になれば、幸いです。
■ 参考書籍
-
テスト技法ドリル 〜 テスト設計の考え方と実際 〜
https://www.juse-p.co.jp/products/view/372 -
SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル
https://www.amazon.co.jp/dp/4822251551/ -
CAREER SKILLS ソフトウェア開発者の完全キャリアガイド
https://www.amazon.co.jp/dp/4822255743/ -
エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド
https://www.amazon.co.jp/dp/4873118484/ -
人材マネジメントの壺
https://www.amazon.co.jp/dp/B07HSK1K87/
■ 参考サイト
- Test.SSF:SSFに基づくテスト技術スキルフレームワーク
http://aster.or.jp/business/testssf.html
■ 講演資料
-
序 : キャリアチェンジの準備 ~ 棚卸し、面接準備 ~
【JaSST Kyushu 2016】
https://www.slideshare.net/kunioyamamoto519/you-are-not-alone-70223443 -
破 : キャリアプランを考える ~ スキル標準、Test.SSF、ISTQB の活用 ~
【JaSST Kyushu 2016】
https://www.slideshare.net/kunioyamamoto519/ss-70223469 -
急 : キャリアチェンジ・アップの次に ~ キャリアチェンジ後の活動経験 ~
【第9回Ques 2016年】
https://www.slideshare.net/kunioyamamoto519/qa-q-70223852 -
Q裏 : キャリアチェンジ・アップの次に ~ キャリアチェンジ後の活動経験 ~ 【失敗談編!】 ~
【WACATE 2016年 冬】
https://www.slideshare.net/kunioyamamoto519/q-wacate2016winter