ぼ すう [2]【母数】
①推計学で、母集団の特性を表す値。
②歩合算で、元金をいう語。
③媒介変数のこと。助変数。パラメーター。
出典: 三省堂 大辞林 第三版
https://www.weblio.jp/content/%E6%AF%8D%E6%95%B0
「母数」という単語は、よく「集団の総数(サンプルサイズ)」や「分母」の意味で使われますが、この使い方は誤用とされています。
母数とは、統計学等での「母集団の特性を表す値」のことです。
この記事によれば、一部の古い国語辞典でも母数の説明が「分母のこと」「統計学で,母集団の数」のように間違った説明になっているものもあるそうで、母数の誤用問題が相当根深いことがわかります。
母数は英語でいうと parameter
で、 para-
は「〜の側の」を表す接頭辞、 meter
は「測定」を表す接尾語であり、すなわち 「(数式の)外側から与えられる数」というのが parameter
の語源です。
Wiktionaryによる解説:
Googleによる解説:
母数の「母」の部分は英語の para-
の部分から来ているようで、「外側から与えられた」の意味だったようなのですが、日本語で「母」という漢字を見ると「分母」や「母集団」といった「全体」を表す単語に見えてしまい、「集団の総数(サンプルサイズ)」や「分母」のような誤用が広まってしまったようです。
他の漢字文化圏でも同様の問題が起こっていないか、見てみます。
中国語では「参数(cānshù)」と書くようです。こちらのほうが100倍わかりやすいですね。
日本語も、いまからでもparameterのことを「参数」と呼べば、誤用のない平和な世界が訪れそうな気がします。
- 「さんすう」と読むと「算数」と同音なので、読むときは「まいりすう」とでも読めば良さそう。
韓国語では「모수」(mosu, モス)、漢字表記だと「母数」で日本語と全く同じです。
日韓で同じ漢字表記なので、どちらかがどちらかの表現を借用したっぽい感じがします。(調べてない)
韓国だと日本と同様に「サンプルサイズ」の意味で「모수」が誤用されていたりするのでしょうか?
- 韓国語の모수は「母数」と、「毛遂(中国史に登場する人物)」の同音異義語のため、「모수 유래(母数 由来)」でググると毛遂の情報しか出てこない。
- namu.wiki では「모집단(population)의 수(母集団の数)」となっており、日本語と同じ誤用が説明されている気がする。
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https://namu.wiki/w/%EB%AA%A8%EC%88%98
- でもその下の「통계학에서 모 평균, 모 표준 편차, 모 분산 등 모집단의 데이터를 말한다.」は正しい説明になってるな……
- 「표본조사」(標本調査)のページでは、日本語の母数(parameter)と同じ定義で正しく모수が使われている。
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https://namu.wiki/w/%EB%AA%A8%EC%88%98
昨今は master/slave => primary/replica とか blacklist/whitelist => allowlist/blocklist 等のポリティカルコレクトネス言い換えが流行っており、母数も「母」というジェンダーみのある漢字が入っていることから、ポリコレの波に飲まれて言い換えが必要にならないか心配になってきました。
いや、もっとわかりやすい語が当たるならそれでもいいんですが……
というわけで、「母数」と「分母、サンプルサイズ」は正しく使い分けていきましょう。
また、同僚が母数を誤用しているのを見つけても「分母、サンプルサイズ」の意味だと察してあげるようにしましょう。