皆さん、いかがお過ごしですか?
これはアドカレ2024の記事です!しかもアドカレ初参加です。
気楽に読んでいって下さい!
Introduction:頭が良くなる「正しい読書法」とはなんだろうか
本記事のタイトルを「こう読めば頭が良くなる『正しい読書法』の提案」とした。正しい読書法を通じて、頭が良くなることを目指す。では
頭が良いとは一体なんだろうか。
そもそも読書を通じて何を得られるだろうか。Introductionとして、これらをごく簡単に検証したい。検証したうえで、改めて正しい読書法を提案する。
まずは、ある2人の読書に対する発言を引用する。1人目は岡田斗司夫氏(彼は評論家と呼べば良いのだろうか?)を挙げる。彼は物事を見抜き、言葉に落とし込む能力が高い人間の1人だと私は考えている。氏の言葉に
読書というのは脳みそのトレーニング であり、ネットというのは散歩みたいなものである。ネットというものはやりたいだけやって疲れちゃうことはあるんだけども、眺めているだけだ。それに比べて読書っていうのはちょっと汗をかいて、繰り返すことで、自分に得るものがある。
というものがある。これに共通するものとして、Youtubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」に出演している水野氏の見解がある。彼の本業は編集者であり、まさに「読みのプロ」であると言える。氏は同ラジオにて
私は 読書筋力 という概念を提唱したくてですね。(中略)読書って難しい本を読めたら簡単な本も読めるし、簡単な本しか読めなければ難しい本は読めないと思う。つまり、読書の能力がステップになっているんですね。
と語っている(これらの発言の語尾などは一部改変した)。読書というトレーニングを通じて何かを得て、成長し、頭が良くなり、更に難しい本に手を出し、もっと読書筋力が上がってステップアップする…といった循環が存在していると言えそうだ。些か自明ではあるが、読書と頭の良さは関係しているのである。
では岡田氏の言う「脳みそのトレーニングによって得られるもの」、或いは水野氏が言う「読書筋力」とはなんだろうか。私はこれらを 知識と論理 であると考えている。正しい読書法を通じて知的訓練することで、普遍的な能力が身につく。視線が滑って本が読めない要因は、これらが欠けているのだと思う。そして、知識を蓄えたり論理を磨いたりするための手法として(誤解を恐れずに言うと)、
- 知識の定着 $\to$ 何度もアウトプットして暗記を行う
- 論理の研磨 $\to$ 接続詞を意識して、主張の流れや緩急を掴む
ことが必要だと考える。つまり本記事において提案する頭が良くなる正しい読書法とは、 正しくアウトプットを行い、正しく主張の緩急を掴み、知識と論理の両輪で成長を目指す 手法であると言いたい。そして正しい筋トレ $=$ 知的訓練を日々繰り返し、日々積み重ねることを目指そう。正しい読書法を通じて得た知見は、読書以外にも活かせると確信している。例えば資格対策にも応用できるはずだ。論理力があれば各章での解説の流れや最も重要な部分を拾い上げることがより簡単になるだろう。また知識を身につける過程で行うアウトプットの取り組みは、資格試験に出題される知識を覚えるときにも有用なはず。
早く役に立つメソッドは早く役に立たなくなる。
読書を通じて知的訓練にじっくり向き合って欲しいと考えている1。
また、正しい本の選び方も付録として載せた。そちらも是非一読してみて欲しい。
正しい本の読み方
前提:正確な読解の真髄は「接続詞」にある
初めに前提の共有をしよう。しっかりとした読み書きを行うには、まず我々が論理的である必要がある。論理的能力とは、表現された思考を読み解く力(読み)、そして思考を表現する力(書き) のこと である。第一に我々は論理力を鍛えるべきだろうと考える。論理力を鍛え上げるための教材として、 論理トレーニング101題(以下、論理トレ)を推奨したい。約25年も前の本なのだが「正確に日本語を読むとはどういうことか?」という本質に迫ったテキストであるためか、古臭さは一切感じない。もちろん読書を通じて論理力を鍛えることもできるが、論理トレによって「日本語の読み方」を体系的に学ぶほうが成長度は大きいように思う。
水野氏は「読書能力はステップになっている」と語っていたが、論理トレに取り組むことでその階段を2段飛ばし、3段飛ばしで向上できるというわけだ。
本節では論理トレのトピックにおける基礎の基礎を紹介する。詳細は論理トレを参照したい。
接続詞に注意する
一文のみを提示されたところで、筆者が本当に何を言いたいかったのかは汲み取れない。簡単な例で確認しよう。
現代ではスマートフォンが必需品となった。
という一文があったとする。確かにその通りだ。もし続く文で
現代ではスマートフォンが必需品となった。だから小学生であっても高齢者であっても、スマートフォンを正しく使いこなさなければならない。
とあれば、筆者はスマホ肯定の主張を展開したいのだろうと汲み取れる。一方で逆接を用いて
現代ではスマートフォンが必需品となった。しかしスマートフォンには深刻な中毒性がある。脳をスッキリとさせるためになるべく持ち運ばないほうが良い。
と続くならば、スマホ否定の主張を展開したいのだろうとわかる。「現代ではスマートフォンが必需品となった」という現代人ならば誰もが同意する一文を手前に持ってくることで、自らの見解を際立たせている。また
現代ではスマートフォンが必需品となった。例えばスマートフォンは決済インフラを構成する要素の一つであり、モバイルSuicaやバーコード決済の使用者数も伸びている。
と来れば、具体例を挙げて直前の論を補強してやろうと筆者が考えていると伝わる。
これらの簡単なサンプルからわかるように、文と文をつなぐ接続詞こそが思考を表現に落とし込む上で重要な働きを担うのである。したがって論理力を鍛える第一歩、すなわち表現から思考の流れを精密に拾い上げるための第一歩は 接続詞へ注意を払うこと であると言えそうだ。
「接続詞」を理解するためのデータベースを用意した。手書きで失礼ではあるが以下の図を見ていただきたい。
$A,B$ が一文あるいは文のまとまり、 $x$ が接続詞を意味する。文と文の関係をフローチャートのように追っていくと、接続詞 $x$ がどのように分類されるかが分かる。まず $A, B$ の主張の方向が同じかどうかを確認する。先程挙げた例でいくと、
現代ではスマートフォンが必需品となった。だから例え小学生であっても高齢者であっても、スマートフォンを正しく使いこなさなければならない。
現代ではスマートフォンが必需品となった。例えばスマートフォンは決済インフラを構成する要素の一つであり、モバイルSuicaやバーコード決済といった電子決済の使用者数も伸びている。
は同じ方向を向いて議論している。
現代ではスマートフォンが必需品となった。しかしスマートフォンには深刻な中毒性がある。脳をスッキリとさせるためになるべく持ち運ばないほうが良い。
は逆の方向を向いている。このように分類していくと、接続詞は青文字で書かれた7つにグループ分けが可能だ。
- 主張の方向が同じ
- 解説(つまり、すなわち)
$A=B$ - 例示(例えば)
$B$ が具体的 - 帰結(だから、それゆえ)
$A,B$ に因果関係があり、 $A$ が理由 - 理由(なぜならば)
$A,B$ に因果関係があり、 $B$ が理由 - 付加(そして、しかも)
$A,B$ の結びつきが弱い
- 解説(つまり、すなわち)
- 主張の方向が異なる
- 補足(ただし)
主張の重きが $A$ にある - 転換(しかし、一方で)
主張の重きが $B$ にある。
- 補足(ただし)
主張の重軽とは文字通り「筆者の言いたいことはどちらにあるのか?」という意味である。例を挙げよう。
現代ではスマートフォンが必需品となった。しかしスマートフォンには深刻な中毒性がある。脳をスッキリとさせるためになるべく持ち運ばないほうが良い。
という文脈では二・三文目こそ筆者の本当の主張であり、
現代ではスマートフォンが必需品となった。ただしガラパゴス携帯は、今や全く不要になったと言っていいだろう。
という文脈ではスマホの話題を中心に据えて、補足的にガラケーの話を二文目に出したに過ぎない。
ここまで解説したように接続詞はその名の通り、文と文を結合し、つながりに重要な意味を持たせている。そして7つのグループを更に4つに分類することで、論理展開を綺麗に理解する事ができる。それが赤で囲われた分類だ。
- 解説
- 根拠
- 付加
- 転換
このデータベースを頭に入れて文章を読むと、文章全体の論理構造が良く見え、スッと主張が頭に入ってくるのである。特に読書初心者は、このデータベースは暗記して欲しい。ある程度は論理トレーニングを行ってから改めて読書に取り組むと、見える世界が少し変わると思う。
読書前:初めは「まえがき・あとがき」を読む
まえがき・あとがきは共通して、書籍全体の流れを俯瞰することに役立つ。これらはだいたい、出版に至った経緯、執筆したモチベーション、関係各所への感謝などが記されている。出版に至るまでには想像もつかない苦労があるだろう2。「この筆者は大変な思いをしてまでなぜ執筆しようとしたのか?」「どこに重きを置いて執筆したのか」などの書籍の核を理解し、全体の流れを把握すべきだ。
読書前:目次に目を通し、読む章と読まない章を分類する
次は「あなたの興味はどこにあるか?」「筆者は何を大切にして執筆したのか?」が念頭に、目次に目を通す。すると明らかに読まなくても良さそうな章があるだろう。そういった章は読まなくても良い。要は取捨選択である。0から細かに全て読んでいって、結局挫折することが一番良くない。基本的に、読書とは必要な情報はなにか?を考えて、そこから逆算して行うつまみ食いであると覚えていて欲しい。ただし歴史の入門書など、まんべんなくどこも大事そうな類の本は「ここは読まなくても良い!」と断言できる章がそう多くないのもまた事実である。そこはケース・バイ・ケースで考えて欲しい。“慣れ親しんだ”であろう縄文時代、弥生時代…あたりで挫折するよりは、興味がある部分(近代〜現代史だけ、とか)をつまみ食いする方が良いと思う。
繰り返すが、「あなたの興味はどこにあるか?」「筆者は何を大切にして執筆したのか?」が重要である。
画像0:溝口優司「アフリカで誕生した人類が日本人になるまで」
例えば私は「アフリカで誕生した人類が日本人になるまで(溝口)」を読んだのは、まさにアフリカで誕生したのが日本人になるまでの経緯を知りたかったためである。そのため、目次にざっと目を通して、不要なパートはバサバサ削った。だからオーストラリア、シベリア、南太平洋の島々の話に興味がなかったため読まなかった。もちろん読みながら「あ、これ(自分の興味とは)関係なさそうだな」と思ったらその章は飛ばし読みする。
読書中:何でもかんでも本に書き込む
読書を通じて鍛えられる能力は知識力と論理力である。本にアレコレ書き込むことで、論理を追うことができ、そして高速で何度もアウトプットを行うことで知識の定着を図ることができる。
なお、私は紙の本で読書をしている。電子書籍よりかさばるものの、書き込みがしやすく、ページの行ったり来たりもしやすいためだ。手をしっかり動かして書き込むことで、目が滑って「気づいたら2~3ページ進んでいたのに、読んだ内容を覚えていない」ことを予防できるメリットもある3。
例えば、私はこのように読書をしている。
画像1:上念司「経済で読み解く日本史」より
電車に乗っているときは、車体が揺れてとんでもなく汚い文字になるが、まあ自分が読めればそれで良い。(教科書も含めた)本全般に言えることだが、最後の所有者は自分だと思って汚く読むべきだと考える。では具体的に何をどう書き込めば良いか、私は何を書き込んでいるのかをこの節で整理したい。
接続詞(論理を追う)
特に読書に不慣れなうちは視線がすべらないようにするためにも、意識的に論理の流れを掴むために接続詞にマークすべきだろう。画像を見てもらえると分かるだろうが、文字の上に記号を直接書き込んでいる。それぞれの接続詞に対して、私は次のようにマーキングしている。
- 解説
「つまり」「例えば」は直前までの文脈と同じ内容を表現する $A=B$ ため、 「 $=$ 」で表す。 - 根拠
根拠から帰結に向かうように 「$\rightarrow$」や「 $\leftarrow$ 」を書き込む。例えば「 $A$。なぜならば $B。$ 」という文脈なら、「 $A。 \leftarrow B$。 」と書き込む。 - 付加
「そして」「しかも」は内容を付け足すため、「 $+$ 」を書き込む。 - 転換
「しかし」「ところが」は接続詞のあとの文にこそ重きが置いているため、不等号「 $>$ 」を書き込む。 - (補足)
「ただし」は接続詞の前の文に重きが置いているため、不等号「 $<$ 」を書き込む。
このように全て記号で表すと、論理の流れが視覚的につかめるという利点がある。
流れの整理
私は区切りの良いところまで読んだとき、画像1(ページ左)のように適宜そこまでの流れを整理する。これには2つのメリットがある。
- 本の中身が頭に残る(後述)
- 見返したときに流れを思い出しやすい
また各章での話題を目次ページに書き記すことで一目でOutlineを思い出せる。
画像2:香西秀信「レトリックと詭弁」より
自分の感想・疑問点
他愛ない感想や、素朴な疑問点を書き込んでも良いだろう。私は後で調べたい箇所は本のページを折りたたんでいる。
抽象化
そこまでの話を一言でまとめた表現を書き込むのも手だ。
読書中・読了後:何度もアウトプットをする(知識の整理)
当然、アウトプットが重要である。Qiitaに無限の記事が溢れかえっているのも、我々の大半が「アウトプットしたい」という執筆動機に突き動かされているのだろうと考える。
高速アウトプット
「流れの整理」という節で紹介したように、読書中は数ページ読むごとにそこまでの話題の展開を整理することを進める。まさに高速でアウトプットを回すのである。
ALLアウトプット
読了後、本の内容をすべてアウトプットすべきだ。
私は初めに目次を見て、各章の内容を思い出す。この段階ではまだ目次しか見ない。そしてノートやiPadに一気に覚えていることを書き出す。殴り書きで良い。自分が読めれば良い。もはや自分も読めないくらい汚くても良いかも知れない。覚えていることを書き出してから、もう一度本の中身にさらりと目を通す。ただし一文一文を丁寧に読む必要は無い。高速アウトプットで書いたメモだけを追っていけば良い。そしてこれらのメモを見て一通り本の内容を思い出したら、忘れていた内容をもう一度ノートに一気に書き出す。これである程度頭に定着できるだろう。
最も、本腰を入れてノートに書き出すのが面倒くさいのならば、頭の中で思い出して反芻するだけでも良い。例えば画像2のような目次を見て、「赤シャツは論点をすり替えて二者択一を迫り、坊っちゃんに沈黙を強いることで…」などを各章における話題や主張を思い出すだけで、十二分の効果があると思う。
読んだ本の内容を人に話す
定期的に読んだ本の内容を他人に話すことはアウトプットとして非常に効果的だと考えている。ALLアウトプットも知識の定着としては効果的だが、あくまで自分の中で完結する作業である。これに対し、他人に話すことは知識の定着以上の意味がある。相手に話が伝わるように筋道立てて、論理的に語らう必要がある。話す機会が無いのなら、読書コミュニティに所属するのもアリかも知れない。或いは美容院に行ったときこちらから「最近読書にハマっているんですよ〜」などと切り出せば、向こうから「どんな本を読んだんですか?」と聞いてくる。こんな感じで誰かを見つけて壁打ちするだけでも良いだろう。
読書のまとめノートを作る
A4ノートだったりNotion
だったりにまとめページを作っても良いだろう。ただ、色々書きすぎても続かないだろうし、正直面倒くさい。非推奨である。読書において重要なのは、繰り返し知識をアウトプットすること論理力を磨くことである。
最後に
自分の興味に従って本を選び、そして読書やお勉強を通じて知識と論理 を磨くことが成長できると思う。読書は自己成長につながる営みであり、なにより読書は楽しいのである。だから無理だけはせず、毎日ちょっとずつでも読書をするのが良いんだと考えている。
良き読書ライフを!
付録:正しい本の選び方
正しく本を選定するポイントは2つある。
- 本屋さんに行く(ネットだけで完結しない)
- 背伸びをしない
1についてはあくまで「選ぶ際は本屋さんに行こう」という話なのでネット通販で買ってもいいし、電子書籍で買ってもいい。本音を言えばちゃんと本屋さんのためにもそこで買って欲しいが。さて、本を手にとってみることで、厚さや内容や文体の雰囲気が感じ取れると思う。そのうえで次は今の自分に合ったレベルを選んで欲しい。ここでのレベルとはもちろん、 知識と論理 のことである。 全く知識の無い分野に対しては、絵多め文字少なめの中高生向けの本からスタートしても良いだろう。先ほど名前を出したゆる言語学ラジオの中で
東京大学特任講師の方がいるんですけど、「新しい分野の研究は何から始めますか?」と聞いたら、それこそ中学生向けの「簡単な一般書を読みます」と。
といったエピソードが登場している。彼は卒論を論文としてpublishしたところ被引用数100件を超えたような天才なのだが、それでも「簡単な一般書」からスタートしているのだ。なんと、論理の極みでもあるそのような方も、知識が少ない分野では背伸びをしていないのだ。
このように本を選ぶ際はこれら2つの点に注意して欲しい。参考文献にも載せた「読書ガチ勢が、本を読むコツを教えます【◯◯を読んではいけない】」は本の選び方をてテーマとして取り上げているため、聞いてみても良いかもしれない。
参考文献
- 論理トレーニング101題(矢野)
- 大人のための読書の全技術(斎藤)
- 読書の技法(佐藤)
- 最高の勉強法・効率的な覚え方【科学的根拠のある効果的な学習方法について医者が解説】
- 読書ガチ勢が、本を読むコツを教えます【◯◯を読んではいけない】
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論理的に考える力も身につけるために読書をする人がめちゃくちゃ多いのなら、「◯◯力」「神◯◯」「◯◯術」「◯◯大学式」…とかいう中身もなく行間が広いだけの本が毎年数十万部も売れないだろう。本筋からそれるが、私はこの手のビジネス書はあまり好きではないし、基本的にはお金の無駄だと思っている。この中身の薄いビジネス書批判の文脈は「読みたいことを書けば良い(田中)」にもある。氏は世のビジネス書を「ハーバード流スタンフォード術」と揶揄し、「1500円で買った本が人生の根本から変えて、めきめきハーバードしたりスタンフォードするなら苦労しない」といった見解を述べている。 ↩
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私にとってはこんな短い記事を書くだけでもめちゃくちゃ大変…。 ↩
-
それとKindle含め世の多くの電子書籍は、紙の書籍と同額を支払って閲覧権を購入しているという点が個人的に気に食わない。中古で売っぱらうことも出来ない。 ↩