はじめに
現在、フルリモート勤務で受託開発をしている@fussasyといいます。半年間、フルリモート環境下でプロジェクトリードをする立場として、チームを率いていました。プロジェクトが続く中で、自身では気づけないプロジェクトの運営に関する課題や、プロジェクトチームメンバーのモチベーション、およびチーム内コミュニケーションの機会を設けたい想いから、これまでの業務の振り返りを実施しました。
一般的にスクラム開発では週次、もしくは隔週の週末にレトロスペクティブと呼ばれる振り返りを実施しますが、当プロジェクトチームではスクラム開発を採用しているわけでもなく、開発納期も厳しかったため月末に設定し短時間で実施しました。
当記事では、「振り返り」のことを便宜的に「レトロスペクティブ」と称して、表現させていただきます。
一般的なレトロスペクティブの手順
1. 準備
・参加者を決定し、ミーティングの日程と場所を設定します。
・ミーティングの目的やアジェンダを事前に共有し、参加者に準備を促します。
2. 振り返り
・プロジェクトの過去の期間を振り返り、良かった点や改善点を挙げます。
・参加者が感じた問題点や改善点を共有します。
・参加者の意見を集約し、優先順位をつけます。
3. アクションプラン
・改善点を解決するためのアクションプランを策定します。
・誰が、何を、いつまでに行うかを決定し、責任者を明確にします。
・アクションプランの進捗状況を確認するためのフィードバックルールを設けます。
4. 次回のレトロスペクティブの準備
・次回のレトロスペクティブの日程と場所を設定します。
・参加者に準備を促し、次回のミーティングで解決するべきToDoを共有します。
参加者がオープンで建設的な議論をし、改善点を次のプロジェクト期間へ反映することが重要です。
フルリモートでレトロスペクティブをする際の一般的な注意点
フルリモート勤務でのレトロスペクティブを実施する場合、以下の点に注意します。
1. ツール・サービスの利用
・ビデオ会議やオンラインコラボレーションツールを使用して、参加者がリモート環境でもスムーズにミーティングに参加できるようにします。
・事前に参加者にツール・サービスの使い方を共有し、問題が発生した場合に備えた手順も準備します。
2. コミュニケーションの促進
・参加者が互いに意見を交換しやすいように、コミュニケーションを促進する手段や段取りをします。
・オンラインコラボレーションツール・サービスを利用して、アイデアを共有するためのドキュメントを作成します。
・グループチャットや個別チャットを活用して、参加者が議論の中で発言しやすい環境を作ります。
3. タイムマネジメント
・リモート環境の場合、参加者が仕事とプライベートのバランスを取るために必要な時間帯が異なる場合があります。
・事前にスケジュールを共有し、最適な時間帯を決定します。
・ミーティングの時間を短く設定することで、参加者がミーティングに集中できるようにします。
4. フィードバックの活用
・リモート環境では、コミュニケーションが限られるため、参加者からのフィードバックを積極的に活用します。
・ミーティング終了後にアンケートを行い、参加者がフィードバックを提供しやすい環境を作ります。
・フィードバックを受けた改善点に対して、次回のミーティングで取り組みを実施します。
以上が、リモート環境でのレトロスペクティブを実施する際に注意すべき事になります。
実際にフルリモート環境下でレトロスペクティブを実施してみる
今回は、利用頻度が最も高いKPTを採用しました。KPTは、レトロスペクティブにおいてよく使われるアイデア出しの手法の1つで、以下の3つのカテゴリーにアイデアを分類することで、改善点を整理する手法です。
・Keep(キープ): 今後も継続して取り入れるべきアイデアを列挙します。
・Problem(プロブレム): 改善すべき課題や問題点を列挙します。
・Try(トライ): 今後取り入れてみたい、実験的なアイデアを列挙します。
KPTの手法は、アイデア出しを促進し、アイデアの整理をしやすくするため、レトロスペクティブのようなチームでの改善活動においてよく利用されます。KPTは、アイデアの出しやすさ、整理のしやすさが評価されており、レトロスペクティブに限らず、会議やワークショップなどで幅広く使われています。
ツール・サービスについては以下を利用しました。
・Google Meet:
Googleが提供するビデオ会議サービスの一つで、ビデオチャットを通じて複数の人とオンライン上でコミュニケーションを行うことができます。
・Google jamboard:
Googleが提供するクラウドベースのホワイトボードアプリです。実際のホワイトボードに書くように、手書きやタイピングでテキストを入力し、写真やスクリーンショットを追加したり、Google Driveからファイルをインポートしたりすることができます。他、ブラウザ上で共有できるストップウォッチのWebサービスも利用しました。
https://stopwatch.onl.jp/
これらの手法、ツール・サービスを利用し、自身がファシリテーターとなって、以下の手順で実施しました。
①Google Meetにメンバーが入ってきてもらい、サービス・ツールの利用方法、およびレトロスペクティブとKPTの手法について説明しました。このとき、下記のWebサイトを画面共有しました。
https://do-scrum.com/retro/#index_id10
②自分がストップウォッチとGoogle jamboardを共有し3分間を測りました。「Keep(キープ)」について、メンバー各々で思うところを好きなだけ付箋に描いて貼っていただきました。メンバーも限られていたので、メンバー毎に付箋の色分けで対応しました。
③3分が経った後、持ち時間として約1分毎に、各々のメンバーから付箋の内容を簡単に話してもらいました。これを聞いていた他のメンバーより意見や感想が出なければ、ファシリテーターである自分が簡単に感想を述べました。
④次に、同様に3分間を測って「Problem(プロブレム)」について、メンバー各々で思うところを好きなだけ付箋に描いて貼っていただきました。3分が経った後、持ち時間の約1分で、メンバーから付箋の内容を簡単に話してもらいました。他のメンバーから意見や感想が出なければ、ファシリテーターである自分が簡単に感想を述べました。
⑤次に、「Try(トライ)」について、メンバー各々で思うところを好きなだけ付箋に描いて貼っていただきました。同様に3分が経った後、持ち時間の約1分で、各々のメンバーより付箋の内容を簡単に話してもらいました。他のメンバーから意見や感想が出なければ、ファシリテーターである自分が簡単に感想を述べました。
⑥最後に、「Try(トライ)」で貼られた付箋について、次回までに注力して取り組みたい内容を決めていただきました。また、「Problem(プロブレム)」で付箋として貼られた内容から、ToDoとして残りそうなものはメモし、後ほどSlackにて共有しました。
レトロスペクティブを実施してみた感想
自身がファシリテーターとなり、フルリモート環境下でのプロジェクトチームにて、レトロスペクティブを実施してみました。結論としては非常に良い取り組みになったと思いました。チーム構成が20代~30代と若手で構成されており、物珍しさを持って前向きな姿勢で取り組んでいただけたことも良かったと思います。こういった振り返りの機会を設けることにより、各メンバーの成長や課題を可視化することができますし、自分もプロジェクトチーム運営において、直近で取り組むべき事項がいくつか発見できました。
初回は説明の時間を含んだため1時間ほど要してしまいましたが、それらを省略すると30分前後で終わります。頻度も月次で実施すれば、手段の目的化も起きにくいですし、スクラム開発のプロジェクトチームに限らず、どのようなチームでも振り返りの機会を設けることは効果的なように思えます。ただ、10名を超えるようなチームになると、コミュニケーションが取りづらくなり、上手に機能しなくなる予感がしますので、そこだけは注意した方が良いです。
今後も、プロジェクトチームのリード・マネジメントをする機会は多くありますので、改善を重ねてメンバーの満足感の高い、良いチーム作りを目指していきたいです。