概要
現在、受託開発企業でプロジェクトリードをしている、@fussasyです。所属企業では、顧客への派遣契約や、ビジネスパートナーの派遣要員を受入と管理に関する業務、および法務に関する必要な知識を包括的に理解するために、リーダーやマネジメント層では「派遣元責任者講習」の受講を推奨しています。今回、私も対象者として派遣元責任者講習を受講してきたので、アウトプットも兼ねた記録として記事を書かせていただきます。
派遣元責任者講習会について
派遣元責任者講習より、引用します。
派遣元責任者とは
労働者派遣事業者(派遣元事業主)は、適切な雇用管理により派遣労働者の保護などを図るため、派遣元責任者を選任し、配置しなければなりません(労働者派遣法第36条)。例えば、派遣社員からの苦情への対応や派遣先との連絡調整、派遣元管理台帳の作成などの労務管理が派遣元責任者の職務となります。そのために、派遣法や労働基準法における業務上の留意点などを理解している「派遣元責任者」の資格を持つ者を選任し、派遣元事業所の派遣社員数100人ごとに1人以上を配置する必要があります。
派遣元責任者となるための要件が12項ありますが、その中の一つに「派遣元責任者講習を受講して3年以内であること」と定められています。
派遣元責任者の12の要件
次の要件をいずれも満たす者から、選任しなければなりません。
- 未成年者でなく、労働者派遣法6条の第1号から第9号(3号を除く)に定める欠格事由に該当しないこと
- 派遣法施行規則第29条で定める要件(事業所ごとに派遣社員100人につき1人以上専属、等)に沿って、派遣元責任者の選任がなされていること
- 住所及び居所が一定しない等生活の根拠が不安定でない者
- 適正な雇用管理を行ううえで支障のない健康状態であること
- 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること
- 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行う恐れのない者であること
- 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとする者でないこと
- 一定の雇用管理などの経験等があること
- 派遣元責任者講習を受講して3年以内であること(平成21年10月以降5年以内が3年以内に変更となりました。)
- 精神の機能の障害により派遣元責任者の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者でないこと
- 外国人にあっては、一定の在留資格があること
- 派遣元責任者が苦情処理などの場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること
派遣元責任者の職務
- 派遣元事業主は「派遣元責任者」を選任し、次に掲げる業務を行わせます。
- 派遣労働者であることの明示等
- 就業条件などの明示
- 派遣先への通知
- 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存
- 派遣労働者に対する必要な助言及び指導の実施
- 派遣労働者から申出を受けた苦情処理
- 派遣先との連絡調整
- 派遣労働者の個人情報に関すること
- 当該派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること
(ア)段階的かつ体系的な教育訓練の実施に関すること
(イ)キャリア・コンサルティングの機会の確保に関すること- 安全衛生に関すること(派遣元事業所において労働者の安全衛生を統括管理する者及び派遣先との連絡調整)
厚生労働省の公式ページにおいて、派遣元責任者講習の日程と講習機関等に関する案内がされています。派遣元責任者講習の開催については、案内の通り各機関が実施しています。各機関の講習会のページに移り、受講申込の手続きをすれば良いです。
派遣元責任者講習会の諸注意
私が派遣元責任者講習会を受講した際、コチラは会社負担だったのですが受講費用は7,000円(会員価格)でした。
当日はメールにて事前連携される受講票と運転免許証、またはパスポートが必要となります。受講日当日は遅刻厳禁となっており、受付時間内に必ず受付手続きを済ませなければなりません。講習は約7時間(休憩有)続くのですが、この講習中における居眠りは厳禁であり、スマホやタブレットの操作も厳禁となります。定期的に監督者が受講者の状況を確認しているのですが、見つかった場合には受講証明書が発行してもらえません。さらに、講習中のトイレ休憩等による一時離席は可能なのですが、累積して2桁分に達する場合もアウトとなり、受講証明書が発行してもらえません。
受講証明書が発行してもらえない場合、再度受講料を支払ったうえで、再受講となります。オフライン開催と併せてオンライン開催もされているのですが、ルールはどちらも同様みたいです。ただし、飲食については可能です。個人的には、同じルールなのであれば地方在住でない限り、オフライン開催に参加した方が良いと考えます。
派遣元責任者講習の内容
配布される資料は以下の通りです。基本的にこれらは、どの機関で開催する講習会でも同様と思います。
・派遣元責任者講習 ハンドブック ※300ページくらいの冊子
・派遣元責任者講習 関係法令集 ※100ページくらいの冊子
・その他、厚生労働省が提供しているパンフレットが数点
・受講者アンケート
進め方としては、派遣元責任者講習の進め方に関する説明の後、ハンドブックを中心に実際の事例と併せて口頭説明していくというものでした。ハンドブックには、以下の事が大枠で記されております
労働力需給調整システム
労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護等に関する法律
労働者派遣異形の適正な運営の確保に関する措置
労働者派遣契約
派遣元事業主の講ずるべき措置等
派遣先の講ずるべき措置等
違法行為による罰則、行政処分等
労働基準法等の適用に関する特例等
労働基準法
労働安全衛生法
雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保に関する法律
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
労働契約法
職業安定法
労働組合法
労働保険制度・社会保険制度
派遣労働者の個人情報保護
個人情報保護法の遵守等
上記で最も注力して説明された箇所は、「労働力需給調整システム」となります。「労働者派遣」とは何か、歴史的な経緯から現在の法、そして違反事例や、労働者派遣を「業」として行う際の事業者の責任です。「労働者派遣」事業は国際的なニーズが非常に高くなっており社会に必要不可欠な事業です。しかし、これが正しいルールに則り、国からの正式な許可を経て運用されなければ、「強制労働」「人身売買」「中間搾取」になりかねません。「労働者派遣」事業は参入障壁が低いため、事業者も玉石混淆となりがちです。
悪意を以て(もしくは無知を以て)労働者派遣を「業」として行うものが現れると、業界のマイナスイメージが定着してしまいます。そのため、関連法案では非常に厳しい罰則(刑事罰)が設定され運用が続けられています。
おわりに
当研修を経て、特に「労働力需給調整システム」の要素である「労働者派遣」「職業紹介」「労働者供給」「労働者募集」の違いをしっかりと理解し、何が違法なのかを区別できるようになりました。意外と身近なビジネスでもある「人材派遣」について、きちんと理解しなければ簡単に法を犯してしまう危険性を抱えていると感じました。
正直なところ、自身が学生の頃から人が人を「支配」(それは師弟関係、先輩後輩関係、尊敬関係、恋愛関係でもです。)し、違法として「労働者供給」しているシーンは、幾度も見たことがある気がします。それはある意味グレーゾーン(もしくは一部レッドゾーン)でもあったのですが、繰り返すことで「業」となり、関係者は確実な刑事罰の対象となっていたのかもしれません。
IT・Web業界でも「労働者派遣」は身近な存在です。違法行為や中間搾取をしがちな業者が摘発されるニュースは、枚挙にいとまがありません。講師の先生も仰っていましたが、実際のところ明確な悪意があったというよりは、「何が違法なのか」を知らずに事業として行っていたパターンが多いのではないかと思います。
例えば、「労働者募集」に関するWebサービス事業で稼いでいる有名な事業会社は数多くあります。正直、関係者は派遣元責任者講習を一度は受講した方が良いのではないか?と思うくらい内容は濃かったです。自身が直接「業」をするわけではありませんが、今回の講習内容をしっかりと嚙み砕いて、あらゆる違法行為を未然に防止できるよう、責任者、あるいは管理者としてしっかり勤めていきたいと思いました。