本記事はラダー言語を対象として記述しています。
GX_Works3とiQ-Fは普及しているのか
iQ-Fとの関わりについて
わたしが業務で主に使用するPLCは三菱電機のFXシリーズです。
- 2014年6月30日 iQ-R発売(GX_Works3誕生)
- 2015年1月30日 iQ-F発売
GX_Works3はデビューから10年、iQ-Fは9年経つが未だに見聞きする業界の主力はQの上位互換機種だったり、最近GX_Works2に切り替えたとかそんな情報ばかり。
わたしが業務で設計する制御盤はFX3Uレベルで十分ですが、FX3Uがデビューから10数年経った時点でポツポツとFX5Uに切替を始めていました。
コロナ禍の物不足でキーエンスのKV-NANOを触り、ローカルラベルの使用やKV_scriptの使用感が良かったのでここ1,2年、iQ-Fでのラベルプログラミングについて情報を集めていました。
わたしは昔の様に名著が数冊有れば良いというスタンスで技術情報や技術書籍が氾濫する世の中に辟易してはいるのですが、あまりの情報の少なさに情報発信してみることにしました。
FX5Uの登場当初のネガティブメージと現在の状況
PCとの接続ポートがLANのみ
- 当初のユーザーの評判
- 発売当初にかなりの不評を受け、後の兄弟機ではUSBポートを設けることになった
- 伝わらなかったメーカー仕様
- 1:1でFX5UとPCを接続する分にはネットワークアダプタを指定した「直結接続」でIPアドレスを設定しなくても繋がる
- FX5UとPCがどのようなIPアドレス設定になっていてもほぼ繋がる
「Webサーバー機能アプリケーションガイド」に繋がらない例の記載がありますが、ほぼ使用しない設定です。
- USB有線LANアダプターを持ち歩けばPCのどんな場合でもIPアドレス設定を触る必要は無く、実質FX5U接続用USBケーブルと一緒
- 1:1でFX5UとPCを接続する分にはネットワークアダプタを指定した「直結接続」でIPアドレスを設定しなくても繋がる
- 現在の私の評価
- USB端子は搭載されていてもminiBタイプだし、GOTとの試運転なども考慮すると接続ポートがLANだけで正解だった
- 追加ユニット無しで色々な機器とEthernet接続できるのでコスト的にも有利
- 標準のLANポートではメール送信に対応していないのは残念
プログラムツールのGX_Works3は重い、見にくい、使いにくい
- 当初のユーザーの評判
- GX Works2にさえも切り替わっていないユーザーが多く盛大な拒絶反応あり
- Works3を使おうとすると立上げさえも非常に待たされ、使用できても頻繁に固まる
- 伝わらなかったメーカー仕様
- ラベルプログラムを初めて見るとラベルを修正がすぐにプログラム全体に反映されるなどかなりの高機能感あり
- ラベルエディタへEXCELで作成したデータをコピペできたりかなり自由度の高い操作ができる設計になっている
- だから重い
- 現在の私の評価
- PCの性能向上の効果もありWorks3を使用していて重いと感じることはほぼ無くなった
- 例外としてウォッチに大量のラベルをモニタしたときは未だに非常に重い
- ウィンドウがバラバラと開くので見にくさはもう少し改善してほしい
- ローカルプログラムとローカルラベルのウィンドウを合体させるとか
- 機能が増え巨大なソフトになっているので一貫性の無さや見にくさは慣れが必要
- PCの性能向上の効果もありWorks3を使用していて重いと感じることはほぼ無くなった
その他の印象の強いFX3シリーズとの違いについて
下位機種との互換性が高くなった
- 下位機種のFX5UJ,FX5Sでも接続ユニットに違いがなければほぼ同じプログラムを走らせることができるようになった
- 仕様的にFX5UJより下位のFX5Sの方が優れている部分が多く、FX5UJはちょっと要らない子に感じる
システムデバイスの種類と番号が変わった
- FX3シリーズまではM8000番以降、D8000番以降がシステムデバイスだった
- FX5シリーズではデバイス種別はSM、SDとなり下記の2種のアドレス空間が用意されいる
- Qシリーズ互換のアドレス(例:常時ON SM400)
- FX3互換のアドレス(例:常時ON SM8000)
- 分かりやすい方を使えば良いですが、ちょっと混乱を招く部分ではある
通信チャンネルが通信ボードや通信アダプタ毎に固定になった
- FX3では取り付けた通信ボードやアダプタの順にCH1から連番で通信チャンネルが振られていた
- FX5では内蔵ポートがCh1、通信ボードがCh2、アダプターは取り付けた順にCh3から連番となった
強力な拡張ユニットが増えた
- 安くマルチにアナログ入力が可能なFX5-8AD
- 電流も電圧も熱電対も測温抵抗体もいける
- QシリーズのCC-LINK以上の点数を扱えるCC-LINK IE TSN ユニット
- マスタでも使える!
GX_Works3でラダープログラムをしてみてどうだったか
デバイスプログラムで使うなら操作はGX_Works2とほぼ一緒
- 回路の表示がグリッドだったり、表示の調整は必要だがキーボードショートカットなどほぼ同じ操作感でプログラムできる
- 一応、グリッド線は設定で消せる
パラメータで設定できる項目が増えている
- 各種ユニットの設定などをラダー上で行う必要が無い
プログラムを複数に分けることができる
- Qシーリズなどと同様にプログラムを複数に分けることができるので整理しやすい
モニタにはややクセがある
- 分けたプログラム毎にウィンドウが開いてゴチャゴチャする
- 一括切り替えもあるがウィンドウ毎にモニタ状態が切り替わる
- ワードデバイスをテストする際はウォッチに登録する必要がある
- ラベルプログラミングでは理解できる仕様ではある
作業環境として大きなディスプレイモニタが欲しくなる
- 開くウィンドウの枚数が増えるので大きなディスプレイモニタが欲しくなる
- 机上でロジックのテストを済ませて現場ではたくさんのウィンドウを開かずに作業できるようにしたい
FX5UとGX_Works3は本当に使いにくいのか
発売当初、接続ポートがLANしか無いという仕様はユーザーを混乱させましたが、実はそれはよく考えられた、使いやすい問題の無いものでした。
他にもハードウェア的にはシリアル通信、アナログ入出力を備えていて価格も接点数が同等の従来機種と同じで非常に魅力的です。
GX_Works3も高機能と自由度の高さゆえの見た目のゴチャゴチャ感はありますがデバイスプログラミングを行う上ではGX_Works2と使用感に大差ありません。
懸念が晴れたなら、ぜひGX_Works3への移行してみてください。
新しいPLCプログラミングの世界も開けます。
そして本当の性能を引き出すためにはラベルプログラミングでファンクションブロックの作成などにチャレンジしてみてください。
GX_Works3は下位互換性が無く、iQシリーズ以前のPLCのプログラミングを行うことはできません。
iQシリーズ以前のプロジェクトを読み込んだ場合、GX_Works2が起動します。