はじめに

フツーはやらないと思いますが、

uint64_t double2uint64_t(double x)
{
    return (uint64_t)x;
}

こういうやつですね、gcc が uint32_t や int64_t への変換に比べて残念なコード吐くのに気付いたのでメモ。

#include <stdint.h>

uint32_t double2uint32_t(double x)
{
    return (uint32_t)x;
}

int64_t double2int64_t(double x)
{
    return (int64_t)x;
}

uint64_t double2uint64_t(double x)
{
    return (uint64_t)x;
}

double2uint32_t:
        cvttsd2siq      %xmm0, %rax
        ret
double2int64_t:
        cvttsd2siq      %xmm0, %rax
        ret
double2uint64_t:
        movsd   .LC0(%rip), %xmm1
        comisd  %xmm1, %xmm0
        jnb     .L5
        cvttsd2siq      %xmm0, %rax
        ret
.L5:
        subsd   %xmm1, %xmm0
        cvttsd2siq      %xmm0, %rax
        btcq    $63, %rax
        ret
.LC0:
        .long   0
        .long   1138753536

どうしてこうなった

x86-64 では double から uint32_t や int64_t へは 1命令で変換できる命令があるが、uint64_t へはそういう命令がない、ということですね。
あ、ひとつウソ書きました。x86-64 でも AVX-512 に対応しているプロセッサであれば double を uint64_t に 1命令で変換することができるようです。

double2uint64_t:
        vcvttsd2usi     %xmm0, %rax
        ret

で、この煩いコードは何やってんの?

gcc で下記のソースをコンパイルすると凡そ同等のコードを吐かせることができます。

#include <stdint.h>

uint64_t double2uint64_t(double x)
{
    if (x <= INT64_MAX) {
        // int64_t の最大値以下であれば int64_t へ変換
        return (int64_t)x;
    } else {
        // int64_t の最大値より大きければ int64_t の最大値+1 の値を引き int64_t へ変換
        int64_t y = x - (INT64_MAX + 1UL);
        // MSB を反転することでさっき引いた int64_t の最大値+1 分を足したのと同じにする
        return y ^ (1UL << 63);
    }
}

double2uint64_t:
        vmovsd  .LC0(%rip), %xmm1
        vcomisd %xmm0, %xmm1
        jb      .L6
        vcvttsd2siq     %xmm0, %rax
        ret
.L6:
        vsubsd  %xmm1, %xmm0, %xmm0
        vcvttsd2siq     %xmm0, %rax
        btcq    $63, %rax
        ret
.LC0:
        .long   0
        .long   1138753536

要は、元の値が 0～INT64_MAX の範囲であれば double → int64_t の命令を使用して変換、それより大きい場合は INT64_MAX+1 分ゲタ履いてることにして double → int64_t 変換するということです。

なぜ気付いた

こちらの記事で x86-64 用に不思議なコードを吐かせているのを見掛けたことがきっかけでした。株式会社フィックスターズ様と記事を書かれた方には感謝いたします。

おわりに

おわりです。