この記事で伝えたいこと
- チームビルディングでコミュニケーションに特化したワーキングアグリーメントをやってみよう!
- 聴覚障害があるメンバーにとって,音声だけ,音声中心のコミュニケーションにはアクセスしづらい・その場での内容把握・意見の表出が難しい
- そしてその"難しい"という事実をチームに伝えにくい
- 音声だけのコミュニケーションでチームのパフォーマンスは向上していますか?今のコミュニケーションでやりづらいと感じたことはありませんか?
- そのチームでどうコミュニケーションをすれば全員が気持ちよく思ったこと・考えたことを話せるのか,互いに伝わるのか考えて試してみませんか?
- スクラムのレトロスペクティブと一緒で定期的に見直すといいのかも?
わたしはだれ?
ふじえもんです.
伝音性難聴で骨伝導補聴器を使って補聴しています.
本📚と日本酒🍶と餃子🥟が大好きです.
2024年4月から,とある会社で音声認識製品のエンジニアいちねんめをやっています.
こちらのページではこれまで作ってきた成果物や登壇資料などをまとめています.
また,「聴こえに関係なく発言できる、伝わる環境づくり」に興味があります.
詳細はこちらの記事に書いていますが,ハッカソンを開いたりチーム開発でのコミュニケーションについて登壇したりしています.
コミュニケーションアグリーメントって?
コミュニケーションに特化したワーキングアグリーメントです.
チームや組織でコミュニケーションする際のルールを決めることで,これまで当たり前とされていたコミュニケーション方法や環境を見直し,チームや組織に属するメンバー同士で確実に発言できる・伝わるコミュニケーションを目指します.
各メンバーの経験や知見を表出しやすくしたりパフォーマンスを向上させたりすることが目的です.
スクフェス福岡2023での登壇中のフィードバックを経て生まれました
Scrum Fest Fukuoka2023のProposalから当日セッションの概要をご覧いただけます.
このセッションでは45分の時間のうち,20分はこれまで試してきたことの共有,その後の20分はメンタリングと称してDiscordやZoomにいらっしゃる聴衆のみなさまにメンターとしてふるまってもらい,わいわい議論をさせていただきました.
スライド全編はこちらから
セッションの最後には下記のスライドをその場で書き上げてまとめとしました.
ここでの仮説をもとにこの記事を書いてみています.
スライドの内容を書き起こしてみました.
ワーキングアグリーメントを行う
- 開発・コミュニケーションする前に,どんな情報をどこまで共有するか,どうやって共有するかを確認・同意を取る
- 認知特性のことも考えられると,チーム全員が情報を把握しやすくなるかも?
- 自分たちの聴こえの特性について,オープンに共有しておく
この記事では,聴覚障害があるメンバーがチームに入ったら”どうやって共有するかを確認・同意を取る”かについて触れます.
聴覚障害があるメンバーがチームに入ってよく起きるコミュニケーション課題
聴覚障害があるメンバーがチーム・組織に入ったら,皆さんはどうしていますか?
よく知人から聞く困ったこととするべき対応を箇条書きで書いてみます
- 会議で音声文字起こしはあるけど,誤字脱字だらけのままで読んで意味の分かる文章が少ない
- その場で修正しましょう.綺麗に書けば議事録の要約材料としても使えます
- 音声認識結果を修正できるソフトを使うのがベターです
- そもそもコミュニケーション手段が音声だけ
- 聴覚障害は,音が小さく聞こえる伝音性難聴とひずんで聞こえる感音性難聴,混合性難聴に分かれます
- そのため音声だけだとその場でのやりとりや情報を十分に把握することができません
- 議事録やチャットなど文字媒体でのやり取りも活用しましょう
- ログとしても残るので,言った言わない論争を避けることもできます
- 会議の場で意見を述べるためにチャットしても気づいてくれない
- (聴者の知人曰く)音声での会話に集中していると起こるんだそうです
- とくにハイブリッドだと,現地でのやり取りがオンライン側には見えづらかったり,現地で盛り上がっているとオンライン参加者からのチャットに気づかないことも(聴覚障害関係なく)あるようです
- チャットがあることに気づいたら誰かが拾いましょう
- チャットでの発言もコミュニケーションの手段として活用できることをチーム内で認識しましょう
- (聴者の知人曰く)音声での会話に集中していると起こるんだそうです
どうコミュニケーションアグリーメントを決めればいいの?
まだこうやるべき!といえるほどの事例を経験していないので学部時代にアクセシビリティ研究会にて発表した研究の結果を共有してみます.
コミュニケーションアグリーメントを決める際に,2つやってみると良さそうです.
詳細は下記のnoteに書いたのでそちらを読んでください.
note 当事者研究とAACでの発表|ふじえもん 結論-セルフアドボカシーとコミュニケーションストラテジーが大事
- セルフアドボカシーとして,自身の聞こえ方や受け取り方を共有する
- 上記をもとにコミュニケーションストラテジーをチームで考える
- どうコミュニケーションするかを決める
- 付箋やホワイトボード,チャットを使う
- 口元が見えるようにマスクを外す,カメラをオンにする
- どうコミュニケーションするかを決める
研究報告はこちら情報学広場:情報処理学会電子図書館 ろう・難聴者と聴者のグループ対話における理解度・参加度の高いコミュニケーションストラテジーからダウンロードできます.
そもそもワーキングアグリーメントって?
ワーキングアグリーメント | Agile Studioの解説によれば,
ワーキングアグリーメントとは、スクラムチームがパフォーマンスを向上させ、対立を軽減し、気持ちよく仕事ができるようにチーム全員で決めたチームの約束事のことである。
とのことです.
チームとして動く際にパフォーマンスを向上させること,対立を減らすこと,気持ちよく仕事できるようにすることを実現させるためのルールです.
また,なぜやるかについても引用します.
ワーキングアグリーメントを作成することでチームメンバー間のお互いの期待を明確にし、価値観を共有することができる。また、生産性を高め、心のゆとりを生み出すことができる。
私たちは基本的には主観的にものごとを考えるため、相手に対する期待についても相手が考えていることとは違っていることが多い。その事がすれ違いを生み、失望を招く。この失望が積み重なることでチームメンバー間の対立が深まり、最悪の場合チームが崩壊することになる。
暗黙の期待ではなく約束事を明示することで、スムーズなコミュニケーションがうまれ、創造性を発揮することができる。つまり心理的安全性を担保する手助けとなる。
このように、ワーキングアグリーメントは、理想的で生産的なチームづくりの役に立ち、お互いの対立につながるような誤解を防ぐこともできる。
とくに"私たちは基本的には主観的にものごとを考えるため、相手に対する期待についても相手が考えていることとは違っていることが多い。その事がすれ違いを生み、失望を招く。"の考えに賛成しています.
これについて,聴覚障害について何も知らなければ,どうコミュニケーションしていいのか,そもそもどんなことで困っているのかわからないと思います.
それぞれの想像や経験から,「こうすればいいんでしょ?」,「こうしたらあとはそれでいいんだよね?」のような主観的な考えに伴う発言をしてしまうことがあります.
そうしたすれ違いから,コミュニケーション環境が整備されず当事者は十分に情報を受け取れない,周りからは「静かだな,発言しないな」と勘違いされる状況につながってしまいます.
ろう・難聴者(最近では社会モデルの観点から聴覚障害者とは書かず,このように記されることが一般的です.)当事者からの,聴覚障害に関する説明や自身の聞こえ方,どうコミュニケーションしてほしいのかを話すことも重要ですが,それが話しやすい雰囲気・環境であることもさらに重要です.
たとえば一過性でその場だけの対応で終わってしまうのであれば,今後継続してのコミュニケーションに関する相談は難しいと感じるのは難しくありません.また,相談中の対応や反応がネガティブなものであれば,遠慮してしまい相手や周囲に合わせてコミュニケーションしづらい環境のままで働かざるを得ないこともあるでしょう.
そうした場で果たして十分にその人のパフォーマンスが引き出せるでしょうか?
チームとしてメンバーのパフォーマンスが引き出せているか,チームとして全員が動けているのか考えてみる今一度必要があるのではないでしょうか.
まとめ
スクフェス福岡2023でのセッションをもとに,改めてチームでのコミュニケーションについて書いてみました.
聴覚障害の有無にかかわらずチームでのコミュニケーションを見直すきっかけになれば幸いです.
あとがき
以前からこちらのテーマには興味があり,最近の活動と学びを言語化・共有する機会に恵まれた!と思っていたのですが,なかなか着手できず気づけば期限当日になってしまいました...
あとで認識の誤りや誤字脱字を見つけたら都度修正します.
コメントや質問などありましたらお気軽にお書きください.