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IT契約入門〜雇用契約、請負契約から準委任まで

Last updated at Posted at 2024-03-27

この記事は?

著者は、エンジニアにとって最も大事なものの一つは契約であると考えます。なぜなら、契約によって我々はお金を得ることができ、労働対価を受け取って生きていくことができるからです。プロジェクトにおいてトラブルが発生すると、契約はメンバーを守ってくれるものになります。したがって、雇用契約、請負契約、準委任契約など何の契約であっても隅々まで確認し、不利にならないようにしないといけません。社員であれば誠実に職務に向き合う必要があります。請負契約であれば対価を得るために納品する必要がありますし、準委任契約であれば善管注意義務を背負いプロとして日々業務を行なっていく必要があります。一方で、著者は長くにわたって業務委託契約でパートナーとして参加してくださっているエンジニアたちと長らく協働してきた経験がありますが、ユーザーとしてもベンダーが妨害要素なく働けるように、協力義務を果たす必要があります 。つまり、持ちつ持たれつ開発を協力しあって進めていくことが大事です。

なお、本記事作成にあたっては複数の法律家による本を参考させていただきました。後述する参考図書のコーナーにて紹介させていただきます。

序論) 契約は権利と義務を生む

まず初めに、基本的には契約に書いてあることには効力がある、ということは押さえておくべきでしょう。契約にサインしたことは基本同意と見做されるので、契約内容にはしっかり読んでからサインする必要があります。不利な項目があれば双方でコミュニケーションをとって改善していくことが大事です。

なお、契約内容の義務を履行しないことは契約不履行 と呼ばれます。後述する債務不履行に基づく損害賠償とは、契約上果たすべき義務を守らなかったことにより、相手方に損害を発生させた場合に必要になる損害賠償のことです。

基礎) 請負契約と準委任の違い

請負契約と準委任契約の最も大きな違いは仕事を完成させる必要があるかどうか です。請負契約においては契約不適合責任を負います。請負契約では納品後のバグなどについても対応しないといけないなどの契約不適合責任を負いますが、準委任では業務完成ではなく業務を処理することが契約になるので契約不適合責任は発生しません。その代わり、プロとしての働きを行う注意を求められる善管注意義務が課されます。それとともに、受注者は一定のプロジェクトマネジメント義務 を負うので、業務を行う上での阻害要因などがあれば発注側と連携して解決をしていく必要があります。請負契約のように仕事の完成責務はないですが、プロのエンジニアとして業務を遂行する必要があるので、それに沿わない場合は契約解除などのリスクがあります。なお、各当事者にとって不利な時期の解雇には損害賠償のリスクが伴うため、注意です(民法651条)。契約においては、解除の場合は何週間前までに申し入れること、などの記載がある場合が多い印象です。

報酬) 報酬はいつ発生するのか?

請負契約については、仕事の完成をもって、委託者から受託者へ報酬が支払われます(民法第632条)。 一方、準委任契約については、業務の遂行をもって、委託者から受託者へ報酬が支払われます。 したがって、たとえ事務処理が途中であった場合でも、報酬は発生します(民法第648条3項)。報酬の支払日に関しては、報酬が発生する日付から最大60日までに支払うことが下請法によって定められています。発注元からの支払い遅延のリスクを防ぐためには、支払いが遅れた場合には受注者が損害賠償請求を行う旨を、契約に盛り込んでおくことでリスクヘッジができます(その場合ですと年利14.6% など適正値になることが多いようです)。

納期) 納期とは何か?法的拘束力

納期という言葉は曖昧なので注意が必要です。請負契約に関しては、通常契約に報酬を受け取るための成果物と納品日を定めるため、それを持って納期と言えたとしても、準委任契約で業務を行う上では、開発目安や予定は前述の請負契約における納品日のような法的拘束力を持ったものではなく、遅れたからといって直ちに債務不履行とはならないことは注目に値する点だと言えます。この点に関しては、後述する参考図書「紛争解決のためのシステム開発法務」において著者が詳しく述べているため、そちらをご参照ください。

義務) 善管注意/PM義務及び協力義務

請負契約の場合、成果の完成によって報酬を得ることが原則なのは前述の通りです。一方、準委任契約において生じるプロとして果たすべき注意義務のことを善管注意義務(善良な管理者の注意義務) といいます。また、プロジェクトマネジメント義務 と言って受託者には適切に業務の進捗を管理したり、委託者に業務遂行に対しての阻害要因を解消するよう促す義務があります。それとセットで、発注側には、協力義務と言って受託者が円滑に業務遂行を行えるように協力を行う義務があります。これらに違反した結果損害が発生した場合、後述する損害賠償などのリスクがあるため注意が必要です。

NDA) NDAとは何か?なぜ大事なのか?

現場のコードをそのまま流出させたり、外部公開していない情報を出されてしまうと、不利益なのは自然でしょう。ですから、契約を結ぶにあたっては通常NDAと言って秘密保持契約を結んでそう言った不利益な情報の流出を防ぐとともに、それによって損害が発生した場合の措置や損害賠償を取り決めます。

リスク) 契約において起こりうるリスクは?

・損害賠償

仕事を進めていく上で双方が一方に損害を与えるような事態になったとして、示談で収まらない時には、損害が発生した場合には損害を賠償する責務が発生するケースも存在します。損害賠償額を含める詳細は裁判によって裁かれることはポイントです。個人と法人では法人 が、法人対法人ではお金を持っている方 が有利になりやすいのは、裁判ではお金を積めたほうが有利になるから、と考えれば自然でしょう。

開発を引き受ける側が不利にならないよう、損害賠償の上限を契約金額を上限とする、と記載して賠償額が青天井にならないように行うことができます。

・偽装請負

また、業務委託契約においては、発注者は受注者に指揮命令権を持たないので、仕事の進め方や勤務時間、働く場所を直接指示ができないことは注意が必要です。こういった偽装請負とは、契約形態が業務委託契約であるにもかかわらず、企業から労働者へ直接の指示があるなど、実態が労働者派遣と同様の状態であることを指しますこの状態は「本来締結すべき労働者派遣契約を締結せずに労働者派遣を行っている状態」であり、違法行為にあたります(労働基準法第6条、職業安定法44条)。違法の場合は以下のような罰則が考えられます:

・無許可で労働者派遣事業をおこなったとして、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条第1項第2号)
・無許可で労働者供給事業をおこなったとして、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(職業安定法64条9号)
・労働基準法の中間搾取をおこなったとして、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(労働基準法118条1項)

こう言ったリスクを避けつつ、契約に際しては両者でしっかりと同意を取り、ITサービス開発を通じて健全な利益を生み出すことに向かっていくべきです。

参考図書

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