はじめに
ネットワーク通信において、IPアドレスとMACアドレスはどちらも重要な役割を果たします。
しかし、それぞれの目的や役割は異なり、両方が必要不可欠です。
本記事では、それらの違いと、なぜ2種類のアドレスが必要なのかを解説します。
IPアドレスとは?
IPアドレスの役割
IPアドレス(Internet Protocol Address)は、インターネットやローカルネットワーク内でデバイスを識別するためのアドレスです。
主な役割は以下の通りです:
- ネットワーク上のデバイスを識別する
- データを送信先のデバイスまで正しく届ける
- ネットワークの階層的な管理を可能にする
IPアドレスの特徴
- 変更可能:ネットワーク環境が変わるとIPアドレスも変わることがある(例:Wi-Fiを切り替えると変わる)。
- 論理アドレス:ネットワーク管理者が割り当てるアドレスであり、ネットワークの構造によって変化する。
- 階層構造を持つ:IPv4の場合、「192.168.1.1」のようにネットワーク部分とホスト部分に分かれる。
MACアドレスとは?
MACアドレスの役割
MACアドレス(Media Access Control Address)は、ネットワーク機器(LANカードやWi-Fiモジュールなど)に割り当てられた固有の識別子です。
主な役割は以下の通りです:
- 同じネットワーク内でデバイスを特定する
- データリンク層(OSI参照モデルの第層)で通信する
- 一意性を保証する(各デバイスに異なるアドレスが割り当てられる)
MACアドレスの特徴
- 基本的に変更不可:デバイスのハードウェアに組み込まれている(例外として一部のOSでは変更可能)。
- 物理アドレス:製造時に一意に割り当てられる。
- 階層構造を持たない:フラットなアドレス体系であり、ネットワークの構造には依存しない。
IPアドレスとMACアドレスの違い
項目 | IPアドレス | MACアドレス |
---|---|---|
役割 | ネットワーク全体での識別 | 同じネットワーク内での識別 |
管理者 | ネットワーク管理者やDHCPサーバー | 製造メーカー(デバイスごとに割り当て) |
変更の可否 | 変更可能(動的に割り当てられることもある) | 基本的に変更不可(ただし変更可能な場合もある) |
階層構造 | あり(ネットワーク部分とホスト部分) | なし(フラットな識別子) |
適用範囲 | インターネット全体、ルーティングに関与 | 同じLAN内、スイッチングに関与 |
なぜ2種類のアドレスが必要なのか?
IPアドレスだけでは不十分な理由
IPアドレスだけでは、ネットワーク内のデバイスを直接特定できません。例えば、ルーターがネットワーク内のどの機器にデータを送るべきかを決定する際、MACアドレスが必要になります。
MACアドレスだけでは不十分な理由
MACアドレスは、ネットワーク機器ごとに固定されているため、異なるネットワーク間で通信する場合には使えません。インターネットのような大規模なネットワークでは、IPアドレスによる経路制御が必要です。
役割分担の仕組み
- IPアドレスは「郵便番号+住所」:ネットワーク全体でどこに送るかを決める
- MACアドレスは「家の玄関の表札」:同じネットワーク内でどのデバイスかを特定する
例えば、あなたが友人に手紙を送る場合を考えましょう。
- IPアドレス(郵便番号+住所):町のどの家に送るかを決める(ネットワークのルーティング)
- MACアドレス(家の玄関の表札):その家のどの人が受け取るべきかを決める(ネットワーク内の通信)
このように、IPアドレスとMACアドレスは互いに補完し合いながら、ネットワーク通信を成立させています。
まとめ
- IPアドレスはネットワーク全体での識別、MACアドレスは同じネットワーク内での識別に使われる。
- IPアドレスは論理的な割り当てが可能であり、ネットワーク間のルーティングに役立つ。
- MACアドレスはデバイスごとに固有であり、同じネットワーク内でのデータのやり取りに使われる。
- 2種類のアドレスを併用することで、インターネットのような大規模なネットワークでもスムーズに通信ができる。
ネットワーク通信を理解する上で、IPアドレスとMACアドレスの違いをしっかり把握することは非常に重要です。
今後、ネットワーク関連の設定やトラブルシューティングを行う際にも役立つ知識となるでしょう。