はじめに
アクティブディレクトリ(AD)は、企業のネットワーク管理に欠かせない技術です。
特にDNSとの連携が重要であり、適切な設定が求められます。
本記事では、ADとDNSの関係について基本的な仕組みを解説します。
書こうと思ったきっかけ
ADを運用する上で、DNSの設定ミスによるトラブルが多いと感じました。
正しい知識を整理し、スムーズなネットワーク管理を実現するために書くことにしました。
初心者にもわかりやすく、実践的な情報を伝えることを目指します。
1. アクティブディレクトリとは?
アクティブディレクトリ(Active Directory、AD)は、Microsoftが提供するディレクトリサービスであり、組織内のネットワークリソース(ユーザー、コンピューター、プリンター、ファイル共有など)を一元管理するための仕組みです。
ADはドメインコントローラー(DC)によって管理され、ユーザー認証やアクセス制御の重要な役割を担っています。
2. DNS(ドメインネームシステム)とは?
DNS(Domain Name System)は、ドメイン名とIPアドレスを対応付けるためのシステムです。
インターネットや企業ネットワークではホスト名を使用して通信を行いますが、実際の通信にはIPアドレスが必要になります。
DNSはこの変換を行い、スムーズなネットワーク通信を実現します。
3. ADとDNSの関係
ADとDNSは密接に関連しており、DNSはADの適切な運用に不可欠です。主な関係は以下のとおりです。
3.1 ADにおける名前解決
AD環境では、クライアントやサーバーがドメインコントローラーを特定し、認証サービスを利用するためにDNSを使用します。
例えば、ユーザーがドメインにログインする際、クライアントはDNSを介してDCのIPアドレスを取得し、認証プロセスを進めます。
3.2 SRVレコードの利用
ADはDNSのSRV(Service Locator)レコードを活用し、特定のサービス(例:LDAPやKerberos認証)を提供するサーバーの位置を示します。
例えば、_ldap._tcp.<ドメイン名>
のSRVレコードにより、LDAPサービスを提供するDCの情報がDNSに登録され、クライアントが適切なDCに接続できるようになります。
3.3 動的更新
AD環境では、クライアントやサーバーのIPアドレスが変更されることがあります。
これに対応するため、AD統合DNSでは動的更新機能を使用してDNSレコードを自動的に更新できます。これにより、最新の名前解決情報が維持されます。
3.4 フォレストとドメインの管理
ADはフォレストやドメインといった論理的な階層構造を持ちます。それぞれのドメインには専用のDNSゾーンが必要です。
例えば、example.com
というドメインがある場合、example.com
用のDNSゾーンが作成され、ADの動作を支えます。
4. AD環境におけるDNSのベストプラクティス
AD環境でDNSを適切に管理するためには、以下のポイントに注意する必要があります。
- AD統合DNSの使用: DNSをADと統合することで、セキュリティや管理の効率性が向上します。
- 動的更新の有効化: クライアントやサーバーが自動的にDNSレコードを更新できるように設定し、管理の負担を軽減します。
- 複数のDNSサーバーを配置: 可用性を確保するため、少なくとも2台のDNSサーバー(通常はDC)を設置することが推奨されます。
- 適切なフォワーダーの設定: インターネットの名前解決を円滑にするために、外部のDNSサーバー(例:Google Public DNS 8.8.8.8)をフォワーダーとして設定することができます。
- 逆引きDNSの設定: IPアドレスからホスト名を解決できるように逆引きゾーンを設定すると、トラブルシューティングが容易になります。
まとめ
ADとDNSは相互に依存しており、DNSの問題がADの運用に重大な影響を及ぼす可能性があります。
名前解決、SRVレコードの利用、動的更新の管理を適切に行うことが、安定したAD環境の構築に不可欠です。
信頼性の高いAD環境を実現するために、DNSの適切な設定と運用を心掛けましょう。