はじめに
AWSを使った本番環境へのデプロイ方法として、EC2とECSのどちらを選ぶべきか悩む人は多いと思います。
特に初学者にとっては、どちらの方法が簡単で、どのような違いがあるのかを理解するのは難しいかもしれません。
本記事では、EC2とECS(特にFargate)のデプロイ方法の違いや、初学者にとってどちらが学びやすいかを整理しながら考察していきます。
書こうと思ったきっかけ
現在、受講しているITスクールのハッカソン活動で、本番環境へのデプロイ方法を選定する機会がありました。
その際、従来のEC2ではなくECS(Fargate)を採用することになりました。
ただ、実際に触ってみると、ECSにはコンテナの概念やAWS特有の設定が必要で、初学者にとっては一見ハードルが高いようにも感じました。
そこで、「EC2とECSはどちらが初学者にとって理解しやすいのか?」という視点でまとめることにしました。
EC2 vs ECS:初学者にとってどちらが難しいか?
結論から言うと、初学者にとってはEC2の方が理解しやすいが、ECS(特にFargate)を使った方が運用は楽になる という特徴があります。
EC2でのデプロイの難しさ
EC2 は仮想マシン(VM)を提供するサービスであり、従来のサーバー管理と同じ感覚で扱えます。
そのため、「物理サーバーの知識がある人」 にとってはわかりやすいですが、初学者にとっては以下の点で難易度が高くなります。
1. OSの管理が必要
- EC2インスタンスを作成すると、OS(Amazon Linux, Ubuntu など)が含まれているため、Linuxコマンドやパッケージ管理の知識が必要。
- セキュリティパッチやOSアップデートを 手動 で行う必要がある。
2. アプリケーションの環境構築
- Node.js、Python、Java などを使う場合、OS上でアプリの 依存関係を手動で設定 しなければならない。
-
pip install
やnpm install
などのパッケージ管理が必要。 - ミドルウェア(Nginx, Apache, MySQL など)を手動で設定する必要がある。
3. デプロイの手順が複雑
- SSHでログインし、手動でコードをアップロードして起動する必要がある。
-
scp
やrsync
などを使ってファイルを転送、またはGitを活用する必要がある。 - PM2やsystemdなどのプロセス管理ツールの知識が必要になる場合もある。
4. スケーリングが手動
- 負荷が増えたとき、Auto Scalingを設定しないと手動でインスタンスを追加 する必要がある。
- 高可用性を確保するには、複数のEC2インスタンスを用意し、ELB(Elastic Load Balancer)で負荷分散 する必要がある。
ECS(特にFargate)でのデプロイの難しさ
ECS はコンテナ(Docker)を使ってアプリをデプロイする仕組みです。
ECSには EC2モード と Fargateモード がありますが、初学者向けにはFargateの方がシンプル です。
1. Dockerの知識が必要
- アプリケーションをDockerコンテナにするため、Dockerfileの作成や
docker build
docker push
などのコマンドを習得する必要がある。 -
docker-compose
を使って ローカル環境で動作確認するスキル も求められる。
2. ECSの概念を理解する必要がある
-
ECSの基本概念 を学ぶ必要がある。
- タスク(Task) → 1つのアプリケーションコンテナの単位
- サービス(Service) → タスクを複数稼働させてスケール管理する仕組み
- クラスター(Cluster) → ECSのリソースを管理する単位
- ロードバランサー(ALBなど)との連携 など、AWS特有の設定を理解する必要がある。
3. CI/CDの知識が必要
- ECSでは通常、ECR(Elastic Container Registry)を使ってDockerイメージを管理 するため、GitHub ActionsやAWS CodePipelineを活用した自動デプロイの知識が求められる。
4. ログ管理がAWS依存
- ログはCloudWatch Logsに送られるため、CloudWatchの設定やログの確認方法を学ぶ必要がある。
どちらが初学者にとって難しいか?
項目 | EC2 | ECS (Fargate) |
---|---|---|
基本的な理解のしやすさ | ◎(サーバーの感覚に近い) | △(コンテナの概念が必要) |
初期設定の手間 | △(OS設定が必要) | ◎(Fargateなら不要) |
デプロイのしやすさ | △(SSH接続や手動作業が多い) | ○(DockerとECRの知識があれば楽) |
スケーリング | △(Auto Scalingの設定が必要) | ◎(タスク単位で自動スケール) |
運用のしやすさ | △(OSのメンテが必要) | ◎(サーバーレスで管理不要) |
初学者にとっての選択肢
- 「サーバーの概念を理解したいなら EC2」
- 「デプロイや運用をシンプルにしたいなら ECS on Fargate」
初学者が選ぶべきは?
短期間で動かしたいなら → ECS on Fargate
メリット
- サーバーレス でEC2の管理が不要
- デプロイがシンプル(DockerイメージをECRにプッシュするだけ)
- スケーリングやCI/CDの設定が簡単(自動スケール対応)
注意点
- Dockerの知識が必須
サーバー管理の基礎を学びたいなら → EC2
メリット
- Linuxの基本操作やサーバーの設定を学べる
- 手動でのデプロイ手順を理解できる(SSH接続、パッケージ管理 など)
- クラウド環境でのOS管理を経験できる(セキュリティパッチ適用など)
注意点
- 運用の手間が大きい
まとめ
- EC2 は従来のサーバー管理に近く、初学者にとっては馴染みやすいが、運用の手間が大きい。
- ECS(Fargate) はインフラ管理が不要でスケーラブルだが、DockerやAWSの知識が必要。
- 短期間でアプリを動かしたいなら ECS on Fargate が便利。
- サーバー管理の基礎を学びたいなら EC2 も良い選択肢。
- 長期的な運用のしやすさを考えると、ECS(Fargate)の方が優れていると感じた。
これからAWSを学ぶ人にとって、どちらの選択肢が自分に合っているのか の参考になれば幸いです。