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この記事はちゅらデータアドベントカレンダーの9日目の記事になります。

あなたは SCM を知ってますか?

もしかしたらこの記事を読む方の中にはSCMを知らない方がいるかも知れませんので、この後の文章を読んでもらうために少しだけ用語の解説をします。

SCM=サプライチェーンマネジメントです。
これは商品を製造して消費者が入手するところまでの一連の流れをマネジメントすることを指します。

原材料の調達はSCMの範囲に入れたり入れなかったり。
また消費者に商品を購入してもらうマーケティングは入らないことが多いです。
そしてその途中で重要なロジスティクス(流通)についてはSCMに包含されているような扱いになります。

この記事が扱う範囲

今日話すのはリテール(小売)から始めて、ロジスティクス(流通)の問題を軽く扱うくらいの範囲の話をして、製造についてはSCM視点のアプローチの方向性のみ触れようと思います。

というか、ToC本の 「ザ・クリスタルボール」 で扱っている話題を紹介しようかなという感じの記事です。
※本の中で扱われるROIや在庫回転率については、ぜひ本の方を読んでください。この記事で説明しようとすると小説のように長くなってしまうため割愛します。

さて問題です

あなたはあるチェーンの小売店の店長になろうとしてます。
お店では色んな商品を扱おうとしてます。(コンビニっぽいですね)

さて、あなたのお店には倉庫を作りますか?
倉庫を作る作らないで、どちらのほうが売上が高くなったりするんでしょう?
どちらのほうが欠品(機会損失)を減らせるのでしょう?

1. お店に倉庫を作る
2. お店に倉庫を作らない

はい、直感的に回答すると「1. お店に倉庫を作る」を選択される方が多いのかなと思います。

しかし、SCMの世界では「2. お店に倉庫を作らない」を選びます。

おそらく身近にあるため知っている人も多くなってきているとは思うのですが、参考になるのはコンビニですかね。

みなさん、身近な小売店といえばコンビニですよね?
それにあとは生鮮食品を扱うスーパーでしょうか?
どちらも倉庫を持っていませんよね。

そうなんです、現代的な小売店は倉庫を持ちません。

なぜでしょう

なぜかと言うと、それは地域の倉庫から毎日、もしくは数日起きに商品が補充をもらえるからなんですね。
ですので、小売店に必要なのは、数日の間に欠品しないだけの商品が店頭の棚に並んでいればOKなんです。

ただし実現するにはロジスティクスの改善が必要

これを実現する、すなわち 「小売店に倉庫のある世界から、小売店に倉庫のない世界へ移行する」 ためにはロジスティクスの改善が必要となります。

ロジスティクスの効率とはなんでしょう?
効率よく運ぶことですよね?
すなわちある程度まとまった量で小売店に品物を輸送することと考えられがちです。
たとえば一箱、1ロット、など複数商品をまとめた単位ですね。

これがじつは小売店に倉庫が必要な原因の一つになってしまっています。

効率の良いロジスティクスを実現しようとすると、1ロットなどで小売店に送らなければいけないため、小売店側では「棚には全部の商品を1ロットも並べられないよ!」みたいな事が起きます。
これはSKU単位(色別やグレード別など)に商品が分かれているため、小売店が店頭で扱う商品点数は想像以上に多くなりがちなためです。

SKUたくさん×ロット単位の補充=小売店に倉庫が必要

のような図式が出来上がります。
そのため、小売店の倉庫を廃止するには、SKUを削るか、ロット単位の補充をやめるかみたいな選択をしなければいけません。
SKUを減らすと売上が下がります。
ですので常識的に考えると、ロット単位で補充するというのをやめることになります。

頑張れロジスティクス!1SKUを1つずつ各店舗に仕分けして配送していくんだ!
というわけです。

※これがまさにコンビニや現代的なスーパーマーケットチェーン店がやってることです。

こうすると何が起きるか

不思議なことに、小売店に倉庫があった世界よりも倉庫がなくなった世界のほうが、なぜか小売店での欠品(機会損失)が減ります。

なぜ欠品が減るの? Why?

(ついてきてます?)
理由は簡単です。
これまでロット単位でしか補充できなかったため残っていた地域の倉庫にある半端な在庫を小売店には補充可能になるからです。
さらにこれまで各小売店の倉庫に眠っていた在庫が、地域の倉庫に戻ることで、ある小売店では足りなかった在庫が、他の小売店で欠品している場合の補充に回せるようになるからです。

はい、どうでしょう?

直感的には小売店に倉庫をもたせたほうが、欠品を減らし、すなわち機会損失を防ぎ、結果として売上増大に貢献するのかと思いきや、実はそれは常識を働かせて考えると間違いで、小売店で倉庫を持たずに、地域の倉庫で在庫を持つようにしたほうが、小売店での欠品が減り、売上が増大するんですね。

(ついてきてます?)

こうして我々はSCMの階段を一つ登ったわけです。

次の段階へ進みましょう

では第2問

さて、あなたのお店から、倉庫はなくなりました。
補充も毎日来るようになりました。

次にあなたはどうしますか。

1. 売れ筋の商品の在庫の一部を地域倉庫に返す
2. 売れ筋の商品を多めに地域倉庫から追加で補充してもらう

どうでしょう?
直感的に考えると「2. 売れ筋の商品を多めに地域倉庫から追加で補充してもらう」を選ぶかと思います。
これは売れ筋の商品が補充より前に欠品するという状況であれば正しいのですが、今は商品が毎日補充されるので、売れ筋商品だろうが欠品しないはずです
だから、売れ筋だからといって、追加で補充することはダメです。
むしろ他のSKUを並べることができる陳列スペースを圧迫します。

だから、正解は「1. 売れ筋の商品の在庫の一部を地域倉庫に返す」です。

ちょっと解説

実は小売店に倉庫を持たないようにすると、その後、棚がスカスカになって、より多くのSKUをお店に陳列することができるようになります。
これは、これまで小売店に倉庫があった場合かつロット単位で補充を受けている場合に起こっていた現象で、「売れ筋商品などに必要以上の陳列スペースを与えてしまう」効率を求めて直感的な挙動をしてしまった従業員のムーブが原因です。

そんな状況から、毎日補充をうける世界になると、数日分の販売数量以上に、商品を店に並べる必要がなくなるため、売れ筋だと思ってたけどそれほど売れていない商品の一部を地域倉庫に返却し陳列スペースを削減できるようになるんですね。

だから売れ筋商品は地域の倉庫に返却するのが正しいSCMでのやり方になります。
そうして小売店はより多くのSKUを陳列できるようになります

この副産物は強力です。

え?
だって、読んでるみなさんも欲しい商品(色やグレードや商品そのもの)がなくて、何も買わずに小売店を出たことありますよね?

※これを突き詰めて陳列可能なSKUを最大化して成功してるのがドン・キホーテさんとか、もしくはホームセンターのチェーンさんですね。

横道にそれてデータの話を少し

これ、データサイエンティストがよくハマるんですけど、何も買わずに出た人って、全然データになっていなくて、欠品=機会損失に気づけないんですよね。
だから私がリテール系のお客様のご相談をうけるときは、これの話を必ずするようにしてます。

データになってないことのほうが価値があるってやつですね。
※見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込むのはだれでしょう?そう、私です。

では第3問

では商品の調達の方に目を向けてみましょう。
あなたは海外のイケてる工場に足を運び、商品を仕入れようと調達のお仕事をしてます。
たくさん買うと値引きされるはずです。

タフな交渉が必要になると思いますが、「たくさん買うから値引きしてくれ!」が基本の作戦になると思います。「ついでにこれもつけてくれ」が次点の作戦でしょうか…。

さてあなたはついに大量購入で値引きを引き出しました。どう送ってもらいます?

1. いっぺんにまとめて港に送って
2. 送ってもらうのは少しずつ送って

直感的に考えると「いっぺんにまとめて港に送って」もらったほうが効率良いと思っちゃいません?
大量購入からの大量輸送、効率的な気がしませんか?
(これは引っかからないかな?)

ここでも、常識を働かせて考えてみましょう。
補充は地域倉庫から小売店に毎日行えるんです。だから、港に送ってもらうのも、少しずつで十分です。
なにより少しずつのほうなら、生産された物をより早く送ってもらえるようになりますから、消費者にもより早く届けることができるようになるんですね。

そして、売れなかったら、途中で商品の生産計画の見直しもできるようになります。

え?それほんと?

はい、ここが今日のゴールです。
あなたはイケてる工場と大量の商品を発注することで、1つあたりの単価を安く調達する契約をとって、喜んでいました。
けれど、その商品は売れないかもしれない。でも契約したのだから、その商品は後から後からどんどん送らてきてしまう。
これでは売れない在庫が山積みです。せっかく大量に安く購入できたと思ったら…

だから最後はこの問題を解決するために、工場を自前で用意するんですね。

生産から流通、そして小売までを1社もしくはグループ会社内で賄うことを「垂直統合」と呼びます。

自社で売りたい商品を自社で製造する。
そして、売れ行きに応じて、工場の生産をコントロールする。

どっかで聞いたことありません?
JIT=ジャストインタイムですね。

顧客の注文から、納品までにリードタイムを許容する例で言えば、自動車の販売がこれに当たります。
もしくはもっとリテール寄りの例だと、ユニクロさんなどファストファッション系の会社がこれに当たります。

終わり

いかがでしたか?

このようにSCMの肝の部分は直感に反してるけど、常識的に考えると答えにたどり着くみたいなテクニックが目白押しです。

これをここまで読んでくれた奇特な方にはぜひ、顧客へ価値を届けるのに必要なことは直感ではなく常識であることを肝に銘じていただければと思います。

※ちなみに私は頭がそこまで良くなく常識も足りないと自負していますので、本を大量に読んで物理で殴るようにしてます。

そうです!レッツ読書!!

あとここまで書いといてなんですが、SCMの専門家ではないので、間違ってたらマサカリをちょうだいいただけると、とても喜びます。
何卒宜しくお願いします。

それでは良いクリスマスを〜。(早いかしら?

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