はじめに
社内勉強会をはじめても、なかなか続かないことに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
続かない勉強会には、共通する特徴があります。具体的には、以下のいずれかに当てはまっている可能性が高いでしょう。
- 題材を探すのが大変である(何をしたらよいのかがわからない)
- 準備が大変である(発表者の立候補が現れない または 準備が間に合わない)
- 楽しくない・手応えがない(参加者のモチベーションが下がる)
この記事では、それらの問題を解決するために、私がこの1年間で実際に試した方法を紹介します。なお、以下で挙げる具体例は、すべてオンライン上の自主的な勉強会にて私が実践したものです。
試したアイデアとその具体例
1. 題材を外部から持ってくる
勉強会の発表内容を一から生み出そうとするのは大変です。準備が大変であるため、だんだん発表者の立候補が現れなくなってしまいます。
この問題に対するシンプルな解決策は、外部から、題材やすでに出来上がったコンテンツを持ってくることです。
今年の2月に私が登壇したDevelopers Summit 2021 / 楽しく学び続けるコミュニティをリモートワークの世界で0から作って育ててきた話では、課題を毎回用意する必要はないことを説明しました。インターネット上の良質なコンテンツを利用して、みんなで手を動かすだけでも十分に価値のある勉強会にすることができます。
ほかの例を挙げてみます。
今年の4月から、みんなで集まって一つの資料を読んで対話する、ゆるい読書会の「あつ読み」を開催しています。この会では、そのとき話題になっている記事を題材とすることが多いです。
題材とする記事を外部から持ってきていますので、勉強会を開催するペースよりも、新しい題材が生まれるペースのほうが上回ります。このため、特に準備に苦労することなく、簡単に続けることができます。
勉強会で発表する内容を一から創作しようとする必要はないのです。世界中の有名人も、だれも創作はしておらず、編集をしているのですから。
2. 過去の内容を再演する
途中から新たな参加者が増えそうな場合、その人たちに合わせて過去の内容をもう一度実施するのもおすすめです。せっかくの新しい参加者を、みすみす逃すわけにはいきませんから。
ただし、最初からの参加者にとっては同じ内容をもう一度聞くことになってしまいます。このため、不満が出ることを懸念するかもしれません。しかし、オンラインでの(自主的な)社内勉強会の良いところは、「わざわざ足を運んでもらっていない」ことです。つまり、直前に「予定を変えて、今日はこの内容を実施しますね」としても、参加者からの不満は出にくいと思われます。
または、後から参加する方向けの会を分けて開催してもよいでしょう。参加者の習熟度別に勉強会を分けるという方法です。塾などで用いられる習熟度別学習ですね。この場合、最初からの参加者に、後からの参加者向けの会を主催してもらうとよいでしょう。ただ説明を聞くよりも、実際に発表するほうが身につくためです。これを繰り返すことができれば、さながら版権に縛られない古典落語のように、少しずつアレンジが加わりながら伝承されていくかもしれません。
3. 前回の確認テストをする
参加者のモチベーションが下がる理由の一つに、いつの間にか内容についていけなくなってしまうというものがあります。
これを防ぐためには、勉強会のはじめに、前回実施した内容を軽くおさらいするとよいでしょう。発表者自身は伝えたつもりでも、参加者が内容を理解できていないということは意外と多いものです。
確認テストの形式は、文章中の一部の単語を空欄に変更した、穴埋め問題にするのがお手軽です。この方法であれば、クイズ感覚で参加できます。アイスブレイクとしても有効でしょう。
宿題として、参加者自身に穴埋め問題の製作をしてもらうという方法もあります。この方法であれば、主催者(発表者)が問題を作成する手間を減らすことができます。また、アウトプットするのが最も理解できるため、参加者の理解度を高めるのに有効になるでしょう。私も実際に試してみましたが、参加者がどこまで理解できているのかを測りやすかったです。
4. 勉強会のはじめに次回の発表を決める
勉強会の終わりに次回の発表者を決めようとすると、時間がなくてバタついてしまうことがあります。そのまま決めることができないと、勉強会が自然消滅してしまう可能性があります。
このため、次回の題材とその発表者は、勉強会のはじめに決めておくのがおすすめです。
ただ、何もないところから題材を決めるのは大変です。このため、最低でも、題材の候補はあらかじめ用意しておいたほうがよいでしょう。
5. これまでのふりかえりをする
「なんとなく勉強会がつまらなくなってきた」「手応えがなくなってきた」というときは、テコ入れをする必要があります。そのためには、これまでやってきたことをふりかえることが有効です。
ふりかえりのフレームワークとしては、KPT法が手軽でしょう。
KPT法のよいところは、知っている人が多いというところです。このため、事前の説明がほとんどなくても実施することができます。Keep(よかったこと、続けたいこと)から順番に、参加者に思いつく内容を順番に振っていき、その内容を箇条書きにして画面に映します。
主催者が気付くことができなかったような、ほかの参加者の本音を聞くことができれば、有意義な時間になると思います。その結果をもとに、今後の勉強会をどのようにするのかを参加者で話し合いましょう。
6. 一旦終わらせて、新たな形を模索する
ふりかえりの結果、勉強会を一旦終わらせるという結論に至る場合もあります。
私の周りでは、去年の9月から、朝稽古という社内勉強会をほぼ毎日続けていました。しかし、やはりどうしても講師(運営側)にばかり負担がかかり、開始から7ヶ月後の今年5月に休止をしました。そして、それ以降は「拡大」ではなく「分化」していくことを目標として宣言しました。
その後、本記事を書くために改めて確認したところ、開発部門だけでも35種類(社内全体だと50種類以上らしい)の勉強会が開催されていたことがわかりました。
長く続けることができているものを終わらせるのには、勇気が要ります。しかし、思い切って一旦終わらせることで、参加者のニーズと運営のずれを放置したまま、なんとなく続けてしまうことを防ぐことができます。また、新たに始める際には、そのタイミングで新たな参加者の登場を期待することができます。
おわりに
ふりかえってみると、私は今年、多くの勉強会に参加することができました。エンジニアとして働くようになって10年以上が経ちましたが、最も勉強会に参加できた年かもしれません。
それはリモートワーク(在宅勤務)でのはたらき方を身につけることができたからではないかと思っています。リモートワーク(在宅勤務)では、勉強会のために場所や機材などを用意する手間が省けます。また、他の事業所のエンジニアとのコミュニケーションもスムーズにおこなえます。
リモートワークの世界は、勉強会を立ち上げ、続けるハードルは低いと思っています。このため、小さな規模からでよいので、皆さんもぜひ勉強会を立ち上げてみてほしいです。また、ほかにも勉強会を続けるために試してみたアイデアがありましたら、ぜひコメントで紹介してもらえると嬉しいです。