システム開発において重要なことのひとつは,共同開発者やクライアントに対して情報を正確に伝えること.そして情報を正確に伝えるために特に重要なことは,
- 伝え方・手段
- 事前知識
の共通認識が,伝える側・受け取る側であらかじめとられていることである.
伝え方・手段の共通認識
人は,概念として理解している情報を文章化して話したり図を描いて見せたりすることで他人に伝える.このとき無意識的に,概念を文章や図といった人に伝えるための形に変換する作業を行っている.受け取る側は逆に,伝えられた文章や図から概念に変換することで情報を理解する.
「概念 ⇆ 人に伝えるための形」の変換のために必要なものが,共通の言語や文章・図のフォーマットであり,「概念」と「伝える/伝えられたもの」との対応表である.
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伝える | 受け取る |
共通の言語や文章・図のフォーマットを持つことのできていない2者間では情報を正確に伝えることはできない.英語しか理解できない相手に対しては,日本語でどれだけ丁寧に説明しても伝えたい情報を伝えることはできないのと同じことである.
共通の言語やフォーマットを0から作るのは容易ではない.容易にそれらの共通認識を取るためには,広く一般的に定義されているものを用いるのが良い.システムの設計について伝える際には,既存の仕様書と同様のフォーマットで新しい仕様書を書く,UML などの統一モデリング言語を利用する,編み出した独自の単語はなるべく使わずに辞書に記載されている言葉と意味を堅持するなどの方法が挙げられる.
一般的に定義されていないものを取り扱う場合には,伝える側と受け取る側双方が協力して新しい言葉やフォーマットを明確に定義する必要がある.
事前知識の共通認識
齟齬のない情報伝達とは,自分の理解と相手の理解を一致させることであると言える.自分の理解と相手の理解を一致させるためには,これから伝えようとしていることに関して相手がどれだけの事前知識を持っているかを理解しておくことが必要である.そうすることによって,情報伝達の齟齬をなくすことができると同時に最低限の労力で相手に情報を伝えることができる.
相手の事前知識が理解できている場合:
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相手の事前知識を理解 | 自分と相手の理解が一致 |
相手の事前知識が理解できていない場合:
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相手の事前知識を理解していない | 自分と相手の理解に齟齬 |
事前知識も含めて網羅的に伝えることで,相手の事前知識に依存せずに情報を正確に伝えることができるかもしれないが,情報伝達だけにかけられる時間や労力は限られているのでそれは難しい.
まとめ
情報を齟齬なく伝えるために重要なこと:
- 一般的な定義に基づいた言語やフォーマットを用いる
- 一般的に定義されていない手段を用いる場合や一般の定義とは異なる使い方をする場合,その手段を明確に定義し,共通の認識を持った上で用いる
- 相手の事前知識を理解した上で情報の伝達を行う