Pacemaker+DRBD+heartbeatでMySQLのクラスタ構成を作ってみる。
利用するパッケージは以下の通り。
- CentOS 5.6
- drbd83-8.3.12-2.el5.centos
- heartbeat-3.0.3-2.3.el5
- pacemaker-1.0.12-1.el5.centos
- mysql-server-5.0.95-1.el5_7.1
各プロダクトのインストールはyumで出来るので割愛。基本的には公式HPをもとにして、いろいろ補足を入れていきます。
作る環境は以下の通り
- 共有IP「192.168.4.30」 にMySQLを立てる
- ノード「db1」
- サービス用:eth1(192.168.4/24に接続)
- ヘルスチェック用:eth2(IP:192.168.5.31)
- ノード「db2」
- サービス用:eth1(192.168.4/24に接続)
** ヘルスチェック用:eth2(IP:192.168.5.32)
準備
まずDRBDの設定は以下の通り。/etc/drbd.confを編集。 (DRBDの初期化作業は割愛させてもらいます。 )
resource r0 {
protocol C;
device /dev/drbd0;
meta-disk internal;
on db1 {
address 192.168.5.31:7801;
disk /dev/xvdb1;
}
on db2 {
address 192.168.5.32:7801;
disk /dev/xvdb1;
}
}
heartbeatの設定は以下の通り。/etc/ha.d/ha.cfを編集。
pacemaker on
logfile /var/log/ha-log
logfacility local0
keepalive 2
udpport 694
ucast eth2 192.168.5.32 #←db2の方は192.168.5.31
node db1
node db2
次に、mysqlのデータディレクトリをDRBDのレプリケーションディレクトリに変える。/etc/my.cnfを編集。
[mysqld]
datadir=/service/mysql #←DRBDのレプリケーション対象の/service以下にする
(以下略)
ここまでできたら、heartbeatを起動。
# /etc/init.d/heartbeat start
起動したら、crm_monのコマンドで、クラスタの状態を確認。heartbeatが起動すると
============
Last updated: Sat Mar 17 12:01:31 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
0 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
になる。
これで準備はOK。
設定
pacemakerの設定に入っていく。どちらかのノードで、crmのコマンドを実行し、設定ツールを起動。その後configureを入力し、設定モードへ。
[root@db1 ~]# crm
crm(live)# configure
crm(live)configure#
この後は以下の順序で設定していく。
- 全体の設定
- 共有IPアドレスをリソースとして追加
- DRBDをリソースとして追加
- ファイルシステム(マウント定義)をリソースとして追加
- MySQLをリソースとして追加
- リソースのグループ、リソース間の制約・順序の設定
全体の設定
まず全体の設定は、以下コマンドをcrm(live)configure#のプロンプトに打ち込めばOK。
property $id="cib-bootstrap-options" no-quorum-policy="ignore" stonith-enabled="false"
no-quorum-policyは2台構成の場合は必ずignoreにしないといけないらしい。 stonith-enabledは相手が半死にした場合に止めを刺す機能だけど、止めておく。
共有IPアドレスのリソースの追加
次に、共有IPアドレスのリソースの追加
primitive ip_mysql ocf:heartbeat:IPaddr2 params ip="192.168.4.30" nic="eth1"
「ocf」っていうのはOpen Cluster Frameworkの略で、Open Cluster Framework projectが 推奨するタイプのスクリプト。/usr/lib/ocf/resource.d以下にある。
この段階で、一回commitして挙動を確認する。
crm(live)configure# commit
公式HPでは、全部設定してからcommitする手順になっているが、一つ一つ確認したほうが確実なので、こまめにcommitするのがよいと思う。
commitしてしばらくすると、crm_monの表示が以下のように変わる。
============
Last updated: Sat Mar 17 12:20:37 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
1 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
ip_mysql (ocf::heartbeat:IPaddr2): Started db1 (←リソースが追加された)
ifconfigを打つと、確かにdb1のeth1に192.168.4.30が付いていることが分かる(場合によってはdb2につく場合もある)。
DRBDのリソースを追加
次に、DRBDのリソースを追加していく。
primitive drbd_mysql ocf:linbit:drbd params drbd_resource="r0"
ms ms_drbd_mysql drbd_mysql meta master-max="1" master-node-max="1" clone-max="2" clone-node-max="1" notify="true"
「ms」というのは、マスタースレーブ構成の場合に設定する項目。内容は公式HP参照。
そんでコミットすると、crm_monの表示は以下の通り。(タイムアウトが短いとかいうワーニングが出るが無視)
============
Last updated: Sat Mar 17 12:23:59 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
2 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
ip_mysql (ocf::heartbeat:IPaddr2): Started db1
Master/Slave Set: ms_drbd_mysql (←リソースが追加された)
Masters: [ db1 ]
Slaves: [ db2 ]
確認のために「cat /proc/drbd」を打つと、db1がprimaryになっていることが分かる。
ファイルシステム(マウント定義)のリソースを追加
続いて、ファイルシステムのリソースを追加する。
primitive fs_mysql ocf:heartbeat:Filesystem params device="/dev/drbd/by-res/r0" directory="/service/" fstype="ext3"
そんでコミットすると、crm_monの表示は以下の通り。
============
Last updated: Sat Mar 17 13:34:00 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
3 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
ip_mysql (ocf::heartbeat:IPaddr2): Started db1
Master/Slave Set: ms_drbd_mysql
Masters: [ db1 ]
Slaves: [ db2 ]
fs_mysql (ocf::heartbeat:Filesystem): Started db1
確認のために「df」コマンドを打つと、db1でDRBDのパーティションをマウントしていることが分かる。
MySQLのリソースの追加
続いて、MySQLのリソースの追加。
primitive mysqld lsb:mysqld
「lsb」というのは、Linux Standard Baseの略。Linux標準で提供される/etc/init.d以下にある起動スクリプトのこと。
で、コミットするとcrm_monは以下のようになる。
============
Last updated: Sat Mar 17 13:35:23 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
4 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
ip_mysql (ocf::heartbeat:IPaddr2): Started db1
Master/Slave Set: ms_drbd_mysql
Masters: [ db1 ]
Slaves: [ db2 ]
fs_mysql (ocf::heartbeat:Filesystem): Started db1
mysqld (lsb:mysqld): Started db1 (←追加された)
SELinuxが動いていると、別パーティションへのデータ保存はできないため、MySQLの起動エラーになる可能性あり。SELinuxを切ればOK
リソースのグループ、リソース間の制約・順序の設定
最後に、リソースのグループ、リソース間の制約・順序の設定する。
group mysql fs_mysql ip_mysql mysqld
colocation mysql_on_drbd inf: mysql ms_drbd_mysql:Master
order mysql_after_drbd inf: ms_drbd_mysql:promote mysql:start
設定の意味は、
1行目は「ファイルシステムと共有IPとMySQLをグループ『mysql』に指定」
2行目は「mysqlグループとDRBDのマスターは同時に存在しなくてはならない」
3行目は「DRBDのマスターが起動した後に、mysqlグループが起動しなくてはならない」
この指定によって、仮にちぐはぐにリソースが配置されいたとしても、上記の制約に従って自動的に再配置が行われる。
この「inf:」という文字列は謎で、公式HPを読んでも何も書いていない(筆者はInfinityの略ではないかと思っている)。よくわからないので、仕方なくいわれるがままに指定している。せめて公式HPにはオプションの意味ぐらい書いてほしいところだ。
最終的にcrm_monは以下のようになる。
============
Last updated: Sat Mar 17 13:36:23 2012
Stack: Heartbeat
Current DC: db2 (88696624-7159-4ad1-bdf3-aac07d645d99) - partition with quorum
Version: 1.0.12-unknown
2 Nodes configured, unknown expected votes
2 Resources configured.
============
Online: [ db1 db2 ]
Master/Slave Set: ms_drbd_mysql
Masters: [ db1 ]
Slaves: [ db2 ]
Resource Group: mysql (←まとまった)
fs_mysql (ocf::heartbeat:Filesystem): Started db1
ip_mysql (ocf::heartbeat:IPaddr2): Started db1
mysqld (lsb:mysqld): Started db1
設定のリセット
ちなみに、設定に失敗した場合は、以下の手順でリセットできる。
# /etc/init.d/heartbeat stop
# rm -rf /var/lib/heartbeat/crm/*