2017年10月に発売されたばかりのヤマハのルーターRTX830に触れる機会がありました。
最近のヤマハのルーターには素敵なGUI管理画面が備わっているのですが、残念ながらGUIでのWake On LAN(以下WOLと略します)はできません。
幸い「カスタムGUI」という機能により任意でGUIを追加できるようなので、試してみました。
対象としている人
- ヤマハのルーターを使ってる人
- VPN機能がある機種
- カスタムGUIに対応している機種(対応機種はコチラ)
- 離れた場所からパソコンの電源を入れたい人
- CUIよりGUIで簡単に操作したい人
- ネットワーク越しのWOLは避けたい人
遠隔地からVPNで管理画面に入りGUIでパソコンに電源を入れる…という使い方を想定しています。
0.サンプル
- ルーターのIPアドレス:
192.168.100.1
- 接続に使用するパソコンのIPアドレス:
192.168.100.5
- ルーターの管理者パスワード:
adminpass
- WOL専用ユーザー名:
woluser
- WOL専用ユーザーパスワード:
wolpass
- カスタムGUIファイルの保存先:
C:\Users\qiita\Desktop\wol.html
として以下を説明していますので、適宜読み替えてください。
1.WOLを有効にする
対象とするパソコンのWOLを有効にしておいてください。
2.専用ユーザーを作成する(5で行ってもOK)
WOL用の専用ユーザーを作成します。このユーザーは通常の管理画面にはアクセスできなくなりますので注意してください。
GUI管理画面から or CUIから…どちらの方法でもOKです。※CUIで作成する場合は、この手順はスキップし後でまとめて行っても構いません。
便宜上…
# login user woluser wolpass
user : woluser
pass : wolpass
とする事にします。(上記コマンドの意味が分からなくても大丈夫です)
3.カスタムGUI用のファイルを用意する
ヤマハのホームページにサンプルファイルが用意されています。
zipファイルをダウンロードすると、中に wol.html
というファイルが入っていますので、分かりやすい場所に移動してください。
これをそのまま使ってもOKですが、昭和の香りがするとても素敵なデザインなので、気になる方は適宜カスタマイズしましょう。
4.TFTPクライアントを用意する
3で用意したファイルをルーターに転送する手段として、今回はTFTP1を利用します。2
…といっても、ファイルを1つ転送するだけですので、専用のアプリを別途用意する必要はありません。OSにはじめから用意されているCUIクライアントを利用します。
ただ、最近のWindowsではデフォルトで使えない状態になっていると思います。コマンドプロンプトに tftp
と打ち込んでみて「そんなコマンドは無いよ」と怒られた時は、下記のサイトを参考に使える状態にしておいて下さい。(Macintosh向けの説明もあります。)
5.ルーターにTFTPの受け入れを設定する
5-1.ルーターにTelnet接続する
任意のTelnetクライアントでルーターに接続します。
Windowsであれば、Windowsキー+R
(ファイル名を指定して実行) ⇒ cmd
と打ってコマンドプロンプトを開くのが手っ取り早いです。
> telnet 192.168.100.1
Password:
RTX830 Rev.15.02.01 (Thu Jun 22 16:17:56 2017)
Copyright (c) 1994-2017 Yamaha Corporation. All Rights Reserved.
To display the software copyright statement, use 'show copyright' command.
5-2.管理ユーザーへの昇格
接続後に ad
と入力すると、自動補完で administrator
というコマンドが入力されますので、管理ユーザーに昇格させます。
> administrator
Password:
#
手順2を飛ばした場合は、WOL専用ユーザーを作成してください。
# login user woluser wolpass
5-3.TFTPの受け入れを設定する
tftp host
コマンドを使用します。
any
は全てのIPからのTFTPを許可するという意味です。状況に応じて、後者のように自分のIPアドレスのみを許可するようにしてください。※後ほど none
に戻します。
# tftp host any
もしくは
# tftp host 192.168.100.5
quit save
で設定を保存しつつ管理者権限から抜け、もう一度 quit
でTelnetを終了させます。
# quit save
セーブ中... CONFIG0 終了
> quit
ホストとの接続が切断されました。
6.TFTPでファイルを転送する
ファイルのパスは絶対パスで指定します。
転送先のパスに続けて /ルーターの管理者パスワード
を指定する点に注意してください。※管理者パスワードを設定していない場合は、/adminpass
の部分は不要です。
>tftp 192.168.100.1 put C:\Users\qiita\Desktop\wol.html /wol.html/adminpass
転送を正常に完了しました: 1 秒間に 5802 バイト、5802 バイト/秒
もし以下のようなエラーが出た場合は、5のTFTPの接続許可に失敗しているか、管理者パスワードの指定が間違っています。
サーバー上のエラー: Access violation
接続要求に失敗しました
7.カスタムGUIを有効にする
再度ルーターにTelnet接続し、念のため show file list
コマンドで、ファイルが指定の場所にアップロードされている事を確認します。
> telnet 192.168.100.1
> show file list / all
[ / ]
2017/11/02 18:00:00 5802 wol.html
ad
と入力し管理ユーザーへ昇格後、httpd custom-gui
コマンドで、カスタムGUIを有効にします。
> administrator
Password:
# httpd custom-gui use on
# httpd custom-gui user woluser directory=/ index=wol.html
忘れない内に、5-3で設定したTFTPの受け入れを none
に戻しておきます。
# tftp host none
以上で設定は終了です。設定を保存しつつ管理者権限から抜け、Telnetを終了させます。
# quit save
セーブ中... CONFIG0 終了
> quit
ホストとの接続が切断されました。
8.WOL用のGUI管理画面にアクセスしてみる
管理画面に woluser / wolpass でログインし、カスタムGUIになっている事を確認してください。
RTX830の管理画面はベーシック認証ですので、もしセキュリティ上問題がないのであれば…
http://woluser:wolpass@192.168.100.1/
…というURLをブックマークしておくと便利だと思います。(環境によってはこのURL形式には対応していません。)
参考URL
-
Trivial File Transfer Protocolの略。Trivial FTP…つまり簡易なFTPです。 ↩