挨拶
初めまして、日本システム開発株式会社の鈴木です。
技術者として更なる向上を目指すためQiitaアウトプットをする取り組みを行っています。
技術者としては経験が浅く発信内容はとにかく試したものの覚書になります。
本稿は基本情報技術者の世間的な位置づけについての内容です。
はじめに
エンジニアとして自身の成長や知識の証明のため資格取得を目指すことはよくあることです。しかし、資格取得は資格を取ることだけが目的となりいかに効率よく試験に合格するかに注力をしがちです。
もちろん効率よく勉強することは成長や知識の証明に繋がります。ですが資格を取得する上でその資格試験が目的としていること、なぜその知識を問われるかを理解することはエンジニアとして成長するビジョンを形成する一助になったり効率の良い学習に繋がります。
そこで本稿では資格試験の代表として基本情報技術者試験を挙げ、その設立目的と試験範囲を紹介します。すでに資格を取得している方はITエンジニア像と照らし合わせ、まだ取得していない方は今後学習をする上でどのような試験に臨もうとしているのかを確認していただければ幸いです。
基本情報技術者試験と高度IT人材
基本情報技術者試験は情報処理推進機構(IPA)が管理する試験です。IPAとは経済産業省が所管する独立行政法人になります。IPAは日本のIT分野競争力を強化することを目的としており、基本情報技術者試験はIT人材育成活動の一つです。
まず、基本情報技術者試験はどのような技術者を対象としているのかを試験要綱から確認します。
情報処理技術者試験情報処理安全確保支援士試験 試験要綱ver4.8
によりますと対象者は以下の通りです(参照)。
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者
ここでいう「高度IT人材」とは経済産業省が日本のIT分野競争力を強化するにあたり求められるIT人材です。具体的には
- ITと経営を融合し各企業の課題をIT手段により解決する手段を立案できる人材
- ITアーキテクチャの変貌に対応し複雑な制約条件下で信頼性の高いシステムを総括できる人材
- グローバルなIT標準に知見を持ち安全性と信頼性の高いサービスの提供を行える人材
の3点が柱となっています(参照)。
元々高度IT人材とは、IT技術が産業の核に移行し非IT事業に生じた問題であっても解決にITを用いることができるという展望から、生じた問題に対してITによる解決ができる人材という位置づけで登場しました。そのため、単純にアルゴリズムとプログラミングができるだけでなく既存の問題解決のためチームマネジメントができる、経営戦略に対して知見があることが求められます。
つまり、基本情報技術者試験は(非IT分野を含む)企業内に生じた課題をIT技術により解決するために必要な知見を持っているか否かを試験することを目的としています。
基本情報技術者試験の試験内容
基本情報技術者試験の目的は高度IT技術者として事業の問題を解決する知見を得ているか否かを確認することでした。この前提の下でどのような設問がなされるのかを確認します。
基本情報技術者試験の試験範囲はシラバスで確認することができます。シラバスでは出題範囲をジャンル>大分類>中分類>小分類に分けていますが本稿では3つに分かれたジャンルに注目して確認していきます。
テクノロジ系
テクノロジ系ジャンルではプロセッサやメモリ、入出力規格などのコンピュータシステムやDB、マルチメディアなどの技術要素といった典型的な情報技術知識の他に離散数学などの基礎理論や要件定義、設計技法などのシステム開発技術及び開発環境管理や知的財産権などの開発管理技術に関する設問が含まれます。
基礎理論では担当事項について確率統計論や集合論を適用できることが設問の目的とされており、高度IT人材に基本的な数学教養が必要であることが示唆されています。
同様に、システム開発技術と知的財産管理も設問に含まれています。こちらも高度IT人材として既存の問題解決のためチームマネジメントができる、経営戦略に対して知見があることが求められていることが分かります。
マネジメント系
テクノロジ系にもプロジェクトマネジメントやソフトウェア知財の管理が含まれていましたが、マネジメント系はプロジェクト管理手法だけでなくプロジェクトを管理する上で必要な知識(プロセスの分類や構成要素)を問うジャンルになります。こちらはテクノロジ系とは異なり各小分類の設問目的が「担当事項に適用できること」から「理解していること」になっており必要な理解度合いはやや下げられています(応用情報技術者試験ではこちらも「適用できること」になっています)。また、大分類としてサービスマネジメントが含まれることもマネジメント系の特徴です。この分類は単にソフトウェアを保守するだけでなくソフトウェアを用いたサービスを維持、改善するための組織管理を扱っています。そのため一見情報技術に関係ないように見えるサービスや組織のマネジメント技術も基本情報技術者試験の範囲に入ります。
ストラテジ系
最後の分類はストラテジ系になります。ストラテジ系に分類される問題は高度IT人材の「ITを問題解決手段として活用できる」という要件を達成するための知識を問う分類です。具体的には、企業の経営戦略を理解しそのための情報システムを策定できる、業務とシステムをモデル化し最適なモデルを構築できると言った分野になります。つまり、現在課題のある業務と情報技術を適切に結び付け解決手法を立案できるかを問われる分野です。
また、業務に情報システムを活用するために活用促進に関する知識もこの分野の設問に含まれます。具体的にはシステム利用のためのマニュアルや教育活動の手法や意義の理解を問う問題や安全にシステムが利用されているかを監視するためのログ分析技術の設問などです。
まとめ
本稿では基本情報技術者の目的を通じて経済産業省が育成に取り組んでいる高度IT人材とそれに必要な知識を確認しました。高度IT人材とは非IT分野を含む事業の問題をITを駆使することで解決できる人材を指します。
基本情報技術者試験では学ぶべき項目としてテクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野が挙げられていました。テクノロジ系には情報技術だけでなくコンピュータに用いられる基礎数学や設計技法が含まれていました。マネジメント系ではシステムを業務で運営するための知識が問われる分野であり、単に技術的な知識を得ているだけでなくそれを非IT分野を含む事業の諸問題解決に活かせるかどうかが特に重視されていました。ストラテジ系では実際の業務にフィットしたシステムのモデルを策定するための知識が問われます。
総じて、単に技術力を持っているだけでなくそれを事業の課題解決に用いることができるかどうかも重視された内容となっていました。
本稿が読者の方のITキャリアやIT人材像を見直す一助となれば幸いです。