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ベテランSEの事件簿 ~スケジュールが遅延してくるとついついやってしまうアレ~

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プロローグ

プロジェクトが繫忙期を迎え、リソースが足りないとスケジュールが遅延し始めます。

スケジュールをリカバリするため、急遽アクション会議が開かれ
あることを実行することが決まりました。

しかしながら、実行した結果は芳しくなく、むしろさらにスケジュールは遅れていったのです。

事件内容

私はあるプロジェクトにおいて5名ほどの開発チームのリーダーを任されていました。

開発する対象のシステムは見積もり段階よりも機能数が多く、また開発難易度の高いものが多いため
徐々にスケジュールが遅延し始めていました。

状況を察知したプロジェクトマネージャーが私に声をかけ、
スケジュール遅延の原因を聞いてきます。

私は正直に、開発ボリュームが多く、また仕様が複雑で時間がかかっていますと答えました。

「分かった。対策を考える。」
と言ってプロジェクトマネージャーはどこかに行ってしまいました。
数時間後、偉い人たちが集められ、緊急のアクション会議が開かれることになったようです。

会議はすぐに終わり、再度プロジェクトマネージャーに呼ばれました。
「お前のチームの遅延をリカバリするために来週からメンバーを3名追加することに決まったから」

「今、人を増やしても改善しませんよ?」と話してもあとの祭り。
すでに追加メンバーが決定していることをプロジェクトマネージャーの口から告げられました。。

私は遅延がより膨らむ覚悟をしたのでした。

事件その後

私のチームに3名の新規メンバーが入ってきました。
全員、エンジニア経験もあり人柄も問題ありません。やる気もあります。

新規メンバーに対しては、プロジェクトの説明会を行ったり資料の読み込んでもらったりします。
不明点に対して既存メンバーが回答する必要もあります。

すでに遅延しているスケジュールの作業に加えて、新規メンバーの受け入れという作業が加わったのです。

本来やるべきプロジェクト作業ができず、さらに遅延していく状況。。。
思うように改善されず頭を悩ますプロジェクトマネージャー。

対策として安易に実施したプロジェクトメンバーの追加によって、
プロジェクトは最悪な方向に進んでいったのでした。

エピローグ(教訓)

このエピソード、システム開発現場で働いたことがある方なら一度は遭遇したことがある状況だと思います。

「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」
というブルックスの法則があるように、本当によくあることなのです。

ブルックスの法則の成り立つ理由は以下の通りらしいです。

1.新たに投入された開発者が生産性の向上に貢献するまでには、時間がかかる。
ソフトウェアプロジェクトは、複雑な作業である。また、新たにプロジェクトに参加した人は、
仕事に取りかかる前に、まず開発の現状や設計の詳細などを理解しなければならない。
つまり、新たに人員を追加するには、その人員を教育するために、リソースを割かなければならないのである。
したがって、人員の増加がチームの生産性に与える効果は、短期的にはマイナスになる。
また、プロジェクトに慣れない間はミスを犯しやすいので、新たなバグが挿入されることが多くなり、
その結果、プロジェクトがさらに遅れる可能性もある。

2.人員の投下は、チーム内のコミュニケーションコストを増大させる。
プロジェクトを進めるうえで、プロジェクトチームは、協力して同じ課題に取り組む必要がある。
しかし、これを実現するには、調整のためのコストがかかる。一般に、n人が協調して仕事を進めるためには、
n(n-1)のコミュニケーションチャンネルを調整する必要がある。したがって、プロジェクトの人員に対して
コミュニケーションコストは、n^2のオーダーで増加することになる。
単純にいえば、開発メンバーを2倍に増やしたチームは、
それに伴って4倍のコミュニケーションコストを負担するのである。

3.タスクの分解可能性には限界がある。
ホテルの部屋の清掃のような分解可能性の高いタスクであれば、
人員投入によってタスク全体の所要時間は短くなる(作業者同士の干渉が起きないかぎり)。
しかし、分解可能性の低いタスクもある。1人の妊婦が9か月で赤ちゃんを出産できても、
9人の妊婦が1ヶ月で赤ちゃんを出産することはできないのである。

(引用元) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

これを読むと、「当たり前だよな」と思う人がほとんどなのではないでしょうか。
でも実際の現場ではなぜか、日常茶飯事で起きているのです。不思議ですね。

きっと、焦っているプロジェクトマネージャーは
『何か対策を打たないと!』
『このプロジェクトにはブルックスの法則は当てはまらない(から人を入れれば何とかなる!)』
と考えてしまうのだと想像します。

遅延しないことが一番なので、受注時の見積もりや要件定義で自分の首を絞めないようにすることは言わずもがなです。

もし遅延に対して手を打つなら素早い行動が一番です。
そうすればメンバーの教育の時間も取れますので・・・

というわけで『スケジュールが遅延してくるとついついやってしまうアレ』とはプロジェクトメンバーの安易な追加のことでした。

プロジェクトメンバーの追加は慎重に。

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