対象
- 「質問するのが申し訳ない」と言ったことのある新人エンジニア
- 言われたことのある全てのエンジニア
はじめに
**「質問するのが申し訳ない」「〇〇さんの時間を奪うのが申し訳ない」**という言葉を発したこと、もしくは言われたこと、ありますか?
自分はエンジニア1年目の頃この言葉を発したことがあり、そのたびに先輩に下記のアドバイスをいただいていました。
- 自分が2時間考えても分からないことを先輩に質問して5分で解決するのであれば、そのほうが工数の面で得である。
- したがってチームの生産性を上げるために、有識者への質問は積極的にすべきである。
上記のアドバイスは非常に合理的です。「そりゃそうだよな」と感じられる方も多いのではないでしょうか。
一方で、みなさま、過去にこのアドバイスを伝えたあとに「ハイ、わかりました!」と答えた新人はどれくらいいましたでしょうか。釈然としない顔をしていなかったでしょうか。
自分は正直**「新人から先輩への質問が必要なことは分かったんだけど…それでも気が進まないな…ああ明日も仕事か…」**と当時思っていました。
今回は**「申し訳ない」の奥に何か本音が隠れているのではないか**、という問題提起と、(絶対解は無いという前提の上での)仮説、そして対策を書いていければと思います。
新人エンジニア本音に対してアプローチすることで、アドバイスがより的を得たものとなり、適切なコミュニケーションや職場環境構築に役立つと考えておりますので、よろしければ最後までお付き合いください。
仮説:「質問するのが申し訳ない」=「以前質問した時に嫌な思いをしたので、もう質問したくない」ではないか?
自分が新人の頃、不明点を先輩(○○さん)に質問した事があったのですが、自分があまりにも何も知らないのでなかなか理解できず時間を30分ほど使ってしまいました。
その後、別の先輩に注意されました。
「○○さんは▲▲の仕事があってこっちを進めないといけないからあんまり質問して時間を奪っちゃいけないよ」
当時の主観を(客観的に見たら「オイオイそれは仕事のやり方の注意であって人格否定ではないでしょう」だと認識したうえで)書くのですが、
自分にとってはそれがすごくショックでした。そもそも質問しないとできないようなタスクを渡されて、一生懸命自分で調べたのに分からなくて、質問なんてしたくないのに勇気を奮い立たせて行動したのです。その結果が、先輩の時間を奪う邪魔な無能扱いされて、自分の頑張りを全否定された形になった、と受け取ったわけです。
その時に口をついて涙まじりに出た言葉が、今でも覚えているのですが、下記でした。
「・・・○○さんの時間を奪ってしまって申し訳ないです・・・」
本音を大幅に丸めて話したのが伝わりますでしょうか。
「もう質問するの嫌だ!傷つきたくない」を「申し訳ない」とあたかも相手に配慮しているかのような言葉で丸めたのです。
自分、今、本当のことを話していないなというモヤモヤが溜まっていくのを感じました。。。
よって、自分の経験に基づく仮説として
- 「申し訳ない」は無能感、無能扱いされているという認識の現れでありアイデンティティの崩壊である。
- 頑張っているのに評価されない。自分のやっていることは無意味であり、それどころか人の邪魔をしてしまっているためマイナスでしかない。
- 質問したら怒られるからもう質問したくない。
- しかし、質問しなくても仕事が進まなくて怒られる。
- それならば、そんな自分なんていないほうがいいと認識している。
- しかしこれをそのまま話すとあまりにも幼稚なので相手に配慮を見せるような言葉で丸めて話す。
を提唱してみたいと思います。
仮説を立てた後に考える対策
いきなり自分の例を放り込んでしまいましたが、
- 「申し訳ない」という訴えへの回答
- 「以前質問した時に嫌な思いをしたので、もう質問したくない」への回答
この二つでは、答え方に違いが出てくるのではないでしょうか。
後者であれば**「(嫌な思いをせずに)うまく質問する方法」**からのアプローチができそうです。
この後「○○さんじゃなくて◆◆さんに聞くといいよ」とか、下記のようなライフハックを教えて頂いたりして少しずつうまくやっていけるようになりました。
駆け出しエンジニアの頃「先輩に質問して時間を奪うのが申し訳ない」と思っていました。
— えたふぉ (@Rei_minus_mi) February 23, 2022
その時に隣のチームの先輩に頂いたアドバイス「同じ質問を同じ人にすると怪しまれる。つまり違う人にはしていいわけだから、チームの人数回質問できる」は、適度に肩の荷を下ろす金言として今も大事にしています pic.twitter.com/A7786G1VYJ
その他の仮説のあぶり出し方
この世界には他にも様々な「申し訳なさ」が存在していると思いますので、
「それってどういう意味で使ってるんだろう?」とアプローチしていくためのより一般的な問いを記載してみました。よろしければお役立てください。
問:「申し訳ない」と思うのはどんな時か?
- 想定回答として自分がパッと浮かんだのは、新人研修期間中、担当のメンターさんに質問・相談をしまくった日、夕方の進捗報告会でそのメンターさんの進捗が殆どなかった時。「俺のせいやん・・・」となる、といった内容です。
- 相手に具体的な場面を想起してもらうことで「申し訳ない」のニュアンスがわかりやすくなるかと思います。
問:いつでもどこでも質問できる環境(有料のプログラミングスクール、ECサイトの有人問い合わせチャット、etc)で質問するときに「申し訳ない」と思うだろうか?
- 想定回答としては「お金を払う立場なので申し訳ないというよりも持ち合わせた権利として質問する」などでしょうか。
- 具体的な場面を提示して絞るのも良いかなと思っています。
さいごに・参考文献
本記事は@yosaprog さんの記事「駆け出しエンジニアが1年以内に「エンジニア」を辞めてしまう問題」を読んで鳥肌が止まらず書かずにはいられないと思い書いたものです。
何が衝撃だったかと言うとこの部分です。
「先輩の時間を奪う罪悪感が精神的に耐えきれなかった」
自分の過去の記憶も連鎖してもう「わかるー!」といった親近感と、当時の絶望感と、思いを変に丸めたモヤモヤでぐちゃぐちゃでした。
ここからさらに一歩踏み込んで、「つまり自分はもう嫌な思いをしたくないんだな」「こうすると嫌な思いをせずに先輩にもそんなに迷惑をかけずに立ち回れるんだな」まで落とし込めると、(自分の場合)少し希望が見えてきた気がするので共有します。
お役に立てますと嬉しいです!