この記事は「Medley (メドレー) Advent Calendar 2024」の13日目の記事となります。
はじめに
今日の記事は株式会社メドレーの山河と牧野の共同執筆です!
(メドレーのアドベントカレンダーはこちら → Medley Advent Calendar 2024)
私達はジョブメドレーアカデミーという、オンライン動画研修サービスの開発を担当しています。
ジョブメドレーアカデミーは単なるオンライン動画研修ではなく、介護や障がい福祉、在宅医療などの各業種に特化した研修サービスです。
一般的な研修サービスとは異なり、以下のような特徴があります。
- 利用者は新卒から80代の方まで年齢層がバラバラで、パートで働く人や外国籍職員もいる。ITリテラシーもバラバラ(ブラウザを立ち上げるところから苦労する方もいらっしゃいます)
→ IT企業内にいるとなかなか接する機会がない属性の人たちが多く、イメージがつきにくい - 一般的な研修サービスはキャリアアップなどが目的だが、介護や障がい福祉、在宅医療の業界では法令で研修実施が義務付けられていたりする
→ 受講に対するモチベーションや満たすべきニーズが違い、同業界で経験がないとなかなかピンとこない
このような背景があり、普段開発をしているだけだとなかなか顧客の理解ができず、解像度が上がらないので、PdM、エンジニア、デザイナー、QAなど開発チームの全員で、定期的にユーザーヒアリングを実施しています。
ヒアリングの目的
ヒアリングを始めるにあたって、目的は以下のように定めました。いわゆる探索型のヒアリングです。
- 顧客のリアルな声を聞き、ジョブメドレーアカデミーの利用における課題を知ることで、企画の精度向上をはじめとしたプロダクトの改善に活かす
- 普段の生活や業務、利用しているアプリ・webサービス、学びへの姿勢など、ライフスタイルの中で、ジョブメドレーアカデミーがどのように組み込まれているかを把握し、画面上以外の出来事も組み合わせてUXを検討できるようにする
- どんな人がどんな環境で自分たちの作っているサービスを使っているのかを理解する
探索型のヒアリングは話が発散しやすく難しさもありますが、回数を重ねることで少しずつヒアリング自体のやり方も上手くなってきました。
進め方
大まかには以下のルールでヒアリングを行っています。
- 全員が毎月1回以上は行う
- 1回のヒアリングでは2人~3人が参加する
- オンライン/オフラインどちらも良いが、オフラインを優先する
- 毎朝行っている会議でヒアリング内容を共有する
- それぞれのヒアリング内容をまとめて課題を抽出するMTGを週1で実施する
振り返りはこのように、オンラインホワイトボードを用いて行っています。
やってみた結果
ヒアリング開始から4ヶ月程度で約60法人にヒアリングをさせていただきました。
その中で良かったこととこれから改善していきたい課題について書いていきます。
良かったこと
様々な発見や学びが得られましたが、ここではその中の一部をご紹介します。
- ジョブメドレーアカデミーを上手く使えている顧客と、使えていない顧客の解像度が上がり、そのギャップを埋めるための施策を作れた
- 既存の機能で「使えないことはないけど微妙に使いづらい…」みたいな点が多く見つかった
- 同じ業界でも、その中で様々な業態や職種があり、それぞれのユースケースに最適化できていなかった
- 実際の利用者の解像度が上がった
- 年齢層や生活スタイルごとの傾向(研修を受講するタイミングやデバイスなど)
- ヒアリング自体の精度や使い方も変わってきた
- 事前に顧客の特徴を調べて、今までヒアリングできていない特徴を持つ顧客だった場合はそこを重点的に聞く
- 各自のプロジェクト内で出てきた仮説に対して、こういうのどうですか?みたいな仮説検証型のヒアリングをする例も出てきた
あとは 「実際に使っている人からの声を聞けてやる気が出た」 というメンバーが多くいたのも、やって良かったポイントでした!
課題
実験的に数ヶ月やっていて、気になったことが2つありました。
課題1:事前準備
1つ目が、事前準備にかなりの時間がかかるということです。
ヒアリングの前には、協力してくださる法人について、以下の項目をはじめとして情報を集め、質問事項の準備をしています。
- 事業形態(介護業界であれば、訪問介護か、特別養護老人ホームか、など)
- 法人の規模(従業員数や利用者数など)
- いつ、どういった経緯で契約したか
- サービスの活用状況
しかし、これらの情報は1箇所にまとまっておらず、事業所のホームページ、営業のデータ、サービス内のデータなどを行き来して調査を行う必要がありました。そのため、情報の収集だけでかなりの時間がかかってしまっています。特に、複数のヒアリングの日程が重なると、業務時間の半分以上をヒアリング準備に充てているという日もありました。
課題2:質問内容
2つ目の課題が、どの法人でも共通した質問事項が多く、法人ならではの話に時間を割けていないということです。
現在は、全法人共通でどういった機能を使っているかをお伺いし、その回答を踏まえて深掘りをするポイントをその場で決めながら進めています。
しかし、その場で深掘りをするポイントを決めているので、事後の振り返りにおいて、もう少し背景を聞くべきだった、などの反省が起きています。また、そもそも、「どういった機能を使っているか」は本来ログデータから事前にわかることであり、その質問に時間を割くのはベターではありません。
お忙しい中ヒアリングのお時間をいただいているので、できるだけ短い時間の中でたくさんの話を聞けるのがベスト。そのため、こちら側でできるデータは事前に確認し、利用状況を踏まえた質問を準備しておき、より詳細な背景やお話をお伺いするところにヒアリング時間を使いたいです。
とは言え現状は、前述の通り事前準備のコストも課題点であり、あまり詳細な調査と質問準備まではできていませんでした……。
継続するための工夫を考える
上述の通り、エンジニアメンバーも参加するユーザーヒアリングは多様な効果をもたらすことがわかりました!そのため、今後も定期的にいろいろな法人にお話をお伺いし、ユーザーの理解や、より良いサービス作りに注力したいと考えています。
今後も継続するにあたり、より有意義な時間にするためにも、上記の2つの課題はクリアしておきたいところです。
そこで、社内にあるデータを加工して、ヒアリング前に確認できると良い情報を、なんらかの形で一目で把握できるようにしようと考えました。
法人名を入力するだけで必要なデータがパッと出てくると、事前準備の工数も削減できるし、詳細な質問の検討もしやすくなります。それに、我々はエンジニアですから、クエリを書くのは得意(なはず)です!
ジョブメドレーアカデミーでは、ログデータをBigQueryに蓄積しており、そのデータはBIツールであるMetabaseに接続されているので、今回はMetabaseを使って作成してみました。
Metabaseのダッシュボードに追加するのは、事前調査で取得していた情報と、過去の質問の中から抽出した内容です。
過去の質問の中からは、
- 〇〇(ex: 検索機能)は使っていますか?
- 〇〇(ex: 研修の作成)はどんな設定で利用していますか?
- どんな端末を利用していますか?
といった質問を拾っていきました。
ちなみに、データからわかるはずの質問数を、過去にヒアリングを実施したとある法人の質問記録をもとに数えると、72の質問中26項目もありました。とても時間が勿体無いですね、反省……。
作成中のダッシュボードをチラ見せ
Metabaseは、ダッシュボードとフィルターの機能を使うことにしました。これらを使うことで、法人のIDが指定されると一括でデータを表示する、ということができます。
実際に作成中の画面がこちらです!
詳細なデータはお見せできませんが、
- 各種機能の利用回数
- 設定値
- ユーザーが使用している端末
- アクセスの多い時間
をはじめとした、統計的に取れる情報が一目でわかるものができてきました!
これをもとにすれば、どういったポイントを深掘りしていきたいかが事前に決めやすくなるはずです。12月以降のヒアリングで順次使用し、より使いやすくなるように改善していきます。
今後の展望
上記のダッシュボードは、ヒアリングをより低コストに・より精度高く行うために作成しています。しかし、そもそも、法人のログデータを簡単にみられる箇所がなかったということ自体があまり良くないのでは?と考えています。
例えばカスタマーサクセスチームがなんらかのアプローチをする際に、過去の利用実績を手軽に見られると活用しやすい、ということは大いに考えられるはず。
ヒアリングに関わらずいろいろな取り組みで使えるデータのはずなので、非エンジニア・PMの人も確認しやすい形に持っていきたいです。