数学

リベンジ: -1 × -1

この文章はDATUM STUDIO Advent Calendar 2017の18日目の記事です。
去年カクカク詐欺をしていた記事をABC予想査読通過?のニュースに一念発起して一年越しのリベンジです。
算数で説明が難しいものの代表格といえば
$$ -1 \times -1 = 1 $$
だと思いますが
これを数学を専門に勉強するとどう習うかを
自分の中での整理を書いていこうかと思います。

最初からある数

普通に数学で数を扱う場合に沿って
まず、自然数(人間の持つ数えるという能力に対応した数)は認めるとします。
$$ N:自然数 \\
N = \{0, 1, 2, 3, 4, \dots \} $$
0は、数えるものがない状態を表すとします。

最初からある数の演算

自然数は数えるという行為を表現しているので、2個数えた後、さらに3個数えるという行為の表現として
$$ 2 + 3 $$
という記号を導入します。いわゆる足し算です。2個数えた後、3個数えるのは、最初から5個数えるのと同じということで
$$ 2 + 3 = 5 $$
です。
この足し算は、任意の2個の自然数を選ぶと、全ての自然数を表現可能です。以下は特殊の0の表現です。
$$ 0 + 0 = 0 $$

さらに演算

自然数には、もう一つ掛け算と呼ばれる操作も考えられます
それは、2個数えるという行為を3セット行うことに対応する表現で
$$ 2 \times 3 $$
などとかきます
具体的には
$$ 2 \times 3 = 2 + 2 + 2 = 6 $$
このように任意の自然数二つを選んで掛け算した結果も
その計算の仕方から自然数となります。

逆に考えてみる

今までの話から、任意の自然数は、足し算によって表現可能ですので
逆に足し算によって、自然数を表現することを考えてみます。

足し算で改めて自然数を作ってみる

二つの自然数を足した結果は自然数となります。
つまり
$$ x = a + b \space \space a, b \in N \\
\Leftrightarrow x \in N $$
このxは、任意の自然数を表しますが、同じxになる足し算の組み合わせは無数にあるので
元の自然数全体「N」と新しく足し算で作った数の組合せ全体は完全に一致しません。
そこで、同じ足し算の結果を持つ組合せは同じだと思うことにします
つまり、「~」を同じものだと思う記号とすると
$$ (a, b) \sim (c, d) \Leftrightarrow a + b = c + d \\ a, b, c, d \in N $$
この同じと思う条件によって同じとみなせる数の組合せは無数にありますが
その一つの組合せだけを代表して取り出してきて
それがその同じとみなしている組合せ全てを表していると思い直します。
これは、足して同じになる数の組合せは、その足した結果の数と同じと思う事と一緒です。

具体的に

今までの話を具体的な数でやってみると
まず、4になる自然数の組合せは全て同じとみなします。
$$ 4 = 4 + 0 = 3 + 1 = 2 + 2 = 1 + 3 = 0 + 4 \\
\Leftrightarrow (4, 0) \sim (3, 1) \sim (2, 2) \sim (1, 3) \sim (0, 4) $$
この5つの同じとみなす自然数の組合せの一つをとって
(どれでも良いのですが、例えば(4, 0)などをとる)
それに記号をつけてみます

$$ \hat{4} \Leftrightarrow (4, 0),(3, 1), (2, 2), (1, 3), (0, 4)の代表 $$

といった感じです。
このような同じとみなす条件での代表を全て持って来れば、元の自然数全体と同じになります。
$$ \{ \hat{0}, \hat{1}, \hat{2}, \dots \} \sim \{ 0, 1, 2, \dots \} $$

足し算で作った自然数に対する足し算

足し算で作った自然数を
$$ \hat{N} $$
とするとこの自然数の要素二つは
$$ \hat{x}, \hat{y} \in \hat{N} \Leftrightarrow \hat{x} = (a, b), \hat{y} = (c, d) \space \space \space a,b,c,d \in N $$
となります。
ここでその要素に対する足し算の定義を
以下のように一番シンプルに考えてみます。
$$ (a, b) + (c, d) \Leftrightarrow (a + c, b + d) $$
この時
$$ \hat{1} + \hat{2} = (1, 0) + (1, 1) \\
= (1 + 1, 0 + 1) \\
= (2, 1) \\
= 2 + 1 \Rightarrow \hat{3} $$
もちろん全ての組合せに対して
$$ \hat{x} + \hat{y} = (a, b) + (c, d) \\
= (a + c, b + d) \\
= (a + c) + (b + d) \\
= (a + b) + (c + d) \\
= x + y \\
= \hat{x + y}
$$
以上のことから、シンプルに決めた足し算は
きちんと普通の自然数の足し算と同様の計算ができることがわかります。

足し算で作った自然数に対する掛け算

同様に新しく作った自然数の二つの要素は
$$ \hat{x}, \hat{y} \in \hat{N} \\
\hat{x} = (a, b) \space \space \space \hat{y} = (c, d) $$
となり
この要素二つに対してシンプルに掛け算を決めてみると
$$ x \times y = (a + b) \times (c + d) \\
= a \times (c + d) + b \times (c + d) \\
= ac + ad + bc + bd \\
= (ac + bd) + (ad + bc) \\
= (ac + bd, ad + bc) $$

具体的には

$$ \hat{2} \times \hat{3} = (1, 1) \times (1, 2) \\
= (1 \times 1 + 1 \times 2, 1 \times 2 + 1 \times 1) \\
= (3, 3) \\
= 3 + 3 \\
= \hat{6}
$$
よって、この掛け算の決め方も普通の自然数の掛け算と同様の計算になっていそうです。

マイナスの数をもつ数を足し算で作ってみる

さて以上を踏まえて
足し算で自然数を作った場合と同様に、足し算と自然数でマイナスを持つ数を作ってみます
自然数の二つの組みで
二つの自然数間の大きさを表している
以下のような計算が成り立つ数xを考えてみます
$$ x + a = b \\ a, b \in N$$
これは、マイナス(引き算というもの)をもし認めると以下のようにかけます
$$ x = b - a \\ a, b \in N $$
この自然数間の大きさが同じものは同じとみなす条件を考えてみると
まずは、マイナスを仮に認めると
$$ (a, b) \sim (c, d) \Leftrightarrow a - b = c - d \\ a, b, c, d \in N $$
足し算だけで記述したいので(引き算/マイナスは自然数の範囲を超えてしまう場合があって定義できないので)
式を変形して
$$ (a, b) \sim (c, d) \Leftrightarrow a + d = c + b \\ a, b, c, d \in N $$
を同じとみなす条件とします。
さて、この条件で同じとみなされるものの代表を全て集めてくるとどうなるでしょうか?

具体的にその2

自然数間の差が4になるようなものを考えて、同じとみなすと
$$ 4 = 4 - 0 = 5 - 1 = 6 - 2 = \dots \\ (4, 0) \sim (5, 1) \sim (6, 2) \sim \dots $$
マイナスを使わないで書くと
$$ (4, 0) \sim (5, 1) \sim (6, 2) \sim \dots \\
\Leftrightarrow 4 + 1 = 5 + 0, \space \space 4 + 2 = 6 + 0, \space \space 5 + 2 = 6 + 1, \space \space \dots $$
つまり
$$ \hat{4} \Leftrightarrow (4, 0), (5, 1), (6, 2), \dots の代表 $$
このように二つの自然数の差のうち、最初の数が大きい場合の代表を全て集めてくると
前回と同様に自然数と同じような数が作れます。
更に、上のような組み合わせ以外の組合せは
二つの自然数の差のうち、最初の数が小さい場合になるので
そのような組合せの代表を「マイナスの数」と呼んで行きます。
具体的な、マイナスの数とは
$$ \hat{-4} \Leftrightarrow (0, 4) \sim (1, 5) \sim (2, 6) \sim \dots の代表 $$
つまり
$$ (0, 4) \sim (1, 5) \sim (2, 6) \sim \dots \\
\Leftrightarrow 0 + 5 = 1 + 4, \space \space 0 + 6 = 2 + 4, \space \space 1 + 6 = 2 + 5, \space \space \dots を満たす組合せの代表 $$
以上のことから
自然数とマイナスの数を合わせた以下のような組合せの全体が
この条件から作られる数となリます。
$$ \{ \dots, \hat{-2}, \hat{-1}, \hat{0}, \hat{1}, \hat{2}, \dots \} $$

(変な言い方だけど)足し算で作ったマイナスの数をもつ数の足し算

以上のように作成した数を以下の記号でかいてみます。
$$ \hat{Z} $$
この数上の足し算を組合せで作った自然数と同様のやり方で定義してみます。
つまり、この数に属する二つの要素
$$ \hat{x}, \hat{y} \in \hat{Z} \Leftrightarrow \hat{x} = (a, b), \hat{y} = (c, d) \space \space \space a,b,c,d \in N $$
に対して、その二つの要素間の足し算を
$$ \hat{x} + \hat{y} = (a, b) + (c, d) \Leftrightarrow (a + c, b + d) $$
とします

具体的な足し算

$$ \hat{1} + \hat{2} = (2, 1) + (3, 1) = (2 + 3, 1 + 1) = (5, 2) = 5 - 2 \Rightarrow \hat{3} \\
\hat{1} + \hat{-1} = (1, 0) + (0 + 1) = (1 + 0, 0 + 1) = (1, 1) = 1 - 1 \Rightarrow \hat{0} \\
\hat{2} + \hat{-3} = (3, 1) + (1, 4) = (3 + 1, 1 + 4) = (4, 5) = 4 - 5 \Rightarrow \hat{-1}
$$
以上のことから、自然数の時と同様に、マイナスも含めて計算できていることがわかります。

更に、足し算で作ったマイナスの数をもつ数での掛け算

こちらも自然数の場合と同様な掛け算を定義してみます。
つまり、この数の二つの要素
$$ \hat{x}, \hat{y} \in \hat{Z} \Leftrightarrow \hat{x} = (a, b), \hat{y} = (c, d) \space \space \space a,b,c,d \in N $$
に対して、その要素間の掛け算は
$$ \hat{x} \times \hat{y} = (a, b) \times (c, d) \Leftrightarrow (ac + bd, ad + bc) $$
とします。

具体的な掛け算

$$ \hat{1} \times \hat{2} = (2, 1) \times (3, 1) = (2 \times 3 + 1 \times 1, 2 \times 1 + 1 \times 3) = (7, 5) = 7 - 5 \Rightarrow \hat{2} \\
\hat{2} \times \hat{-3} = (3, 1) \times (1, 4) = (3 \times 1 + 1 \times 4, 3 \times 4 + 1 \times 1) = (7, 13) = 7 - 13 \Rightarrow \hat{-6}
$$
そして、みなさんお待ちかね
$$ \hat{-1} \times \hat{-1} = (1, 2) \times (1, 2) = (1 \times 1 + 2 \times 2, 1 \times 2 + 2 \times 1) = (5, 4) = 5 - 4 \Rightarrow \hat{1} $$
この掛け算も、マイナスの場合を含めきちんと計算できています。

結局

二つの自然数の組みに対して
$$ (a, b) \sim (c, d) \Leftrightarrow a + d = c + b \\ a, b, c, d \in N $$
この条件を満たす組みわせを同じとみなして、その代表を集めてきた数は以下のようになります。
$$ \hat{Z} = \{ \dots, \hat{-2}, \hat{-1}, \hat{0}, \hat{1}, \hat{2}, \dots \} $$
そして、その二つの要素
$$ \hat{x}, \hat{y} \in \hat{Z} $$
に対して
以下のように、足し算、掛け算を決めたものが、整数(自然数にマイナスを付け加えた数)ということになります。
$$ \hat{x} + \hat{y} = (a, b) + (c, d) \Leftrightarrow (a + c, b + d) $$
$$ \hat{x} \times \hat{y} = (a, b) \times (c, d) \Leftrightarrow (ac + bd, ad + bc) $$
このように決めると、先ほどの計算から
$$ \hat{-1} \times \hat{-1} = \hat{1} $$
となります。
ここで普通の整数の各要素と、上で作ったマイナスを含む数(実際は自然数の組合せ)
$$ x \in Z, \space \space \space \hat{x} \in \hat{Z} $$
に対して
$$ x \sim \hat{x} $$
と言う同一視を行えば
$$ -1 \times -1 = 1 $$
となります。
つまり、逆に言えば、整数とは、上のような作り方で、自然数から構成された数だと思える
ということになります。